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女神はギャンブルへ、教徒はせっせと布教活動⑤
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「ちょっとお待ちください。ここに来る前に使い切ったはずの瓶に液体が入っているのはおかしいです。取り上げた後に何か他の液体を入れましたね?」
「質問しているのはこちらです。勝手な発言はおやめください。見苦しい言い訳にしか聞こえませんよ」
確かに空だったことの証明ができなければ意味がない。あの時の聖騎士たちがいればよかったが、周りの聖騎士達は全員フルプレートのせいで誰が誰だか分からない。
リーフの印象操作は今のところ上手くいっているようで、
「言い訳してんなよ!」
「さっさと白状しろ」
「いちゃもんつけてんじゃねーよ」
などのヤジまで飛び出していた。
口を出したら捕らえられるはずが、尋問官の追い風になるような言葉には一切動かない聖騎士たち。
「もう一度お聞きします。この中身はポーションですね」
「渡されたときはポーションだと言われましたが、ただのポーションではなく神の力を持ったポーションだと思います」
言い方を変えてはみたものの天秤の傾きは変わる事は無かった。
ブハッサも正直、中身の液体がなんなのか正確に分からない。その迷いが言葉に乗ってしまっているようだった。
ここが見せ場だと感じたリーフは、立ち上がり民衆に向かって話始める
「皆さん、どうでしょう。どんな巧みに嘘を隠そうとしても、この天秤の前では無力と言うことです。この者が詐欺師ということがこれで証明されました」
ここでテーブルと天秤は下げられる。次のステージ作りだ。
「何か言いたいことはありますか? 自白していただければ少しは罪が軽くなるかもしれませんよ」
「私は聖水の力で多くの人の傷や病気を治してきました。それに治療費はいただいておりません。数人から寄付はいただきましたが、全て教会へ譲渡しております。この言葉に嘘はございません」
天秤を下げておいて良かったと安堵するリーフ。勘だがブハッサの言葉に嘘があるとは感じられなかったからだ。
「……分かりました。仕方ありませんね。あなたがそこまで仰るのであれば、聖水の力をここで見せていただきましょう。あなたの体に少々傷をつけますので、こちらの聖水で治してみましょう。最後は自分の身で潔白を証明してください」
「そんな、その中身は――」
リーフの言葉で会場がショーのように盛り上がってしまい、ブハッサの言葉に耳を傾ける者などいなかった。
「聖水なんだろ? この場で治して見せろ!!」
「浅いと傷だと普通のポーションでも治っちまうから深めにイケ!」
「どうせ詐欺師だろ、殺す勢いでやれよ!!」
民衆の声に紛れるようにリーフは傷つけ役の聖騎士に耳打ちをする。
「余計な事を喋らせないようを口に布でも詰めておきなさい。それと、傷でははく右腕を切り落としてかまいません」
さすがにやり過ぎではないかと戸惑う聖騎士であったが
「これは詐欺師全体への見せしめも兼ねています。あなたに責任はありません、ルマーブ教皇も許可されております」
その一言でやっとやる気になってくれた聖騎士に一安心し、切断ショーを開演するのであった。
ブハッサの右腕の拘束だけを解き、真横に上げる形で右手首をがっちりと掴まれ固定される。
「それでは始めてもらいましょう。少々痛いかも知れませんが我慢してください聖水はすぐに振りかけてあげますので」
「ゔーゔー」
声もまとも出せず反論の余地は一切ない。
そこへ傷つけ役の聖騎士が近づいてきて
「恨みは無いが許せ、一瞬で済ませる」
と、耳元で喋った瞬間だった。
腕に何かが当たったような感じかしたと思ったら、聖騎士はもう剣を鞘にしまっている。見る人が見れば、スキルと剣技を使った見事な剣だっただろう。
右肩より少し先の部分が、じんわりと熱くなってきた直後に激痛が走る。
「ゔゔゔぅぅぅぅ!!!!!!」
叫びのような声を上げたところで、右手首を掴んでいた者も手を離すと、
ボトン ゴロ
右腕が下に落ちたのだ。
勢いよく吹き出す血液。左腕は拘束されたままなので自分で押さえることもできない。
溢れだす大量の血のせいで意識も保てなくなっていた。
民衆は悲鳴を上げる者、目を逸らす者、血を見て倒れこむ者と様々だったが、リーフだけはニッタリと笑っていた。
「それではここに聖水をかけて奇跡とやらを見せてもらいましょう」
瓶の蓋を開け、切りたての切断面にゆっくりとかけていく。
自らが手掛けたストーリー通りに事が進んでご満悦なリーフは笑い声を押さえるのに必死だった。
公開尋問から始まり、最終的には女神の御前で公開処刑をする。まるで自分が神の代行者になったかのような優越感に浸っていたのだ。
ブハッサの様子を心配した教徒も我慢の限界を超え、捕縛覚悟で舞台の近くまできて声をあげ、泣き、叫んでいた。
「聖人様! お気を確かに!」
「聖人様に止血を! 早く!!」
「聖水はもうほとんど残っていなかったはず。それは偽物だ!!」
この期に及んでブハッサを聖人と呼ぶことが気に入らなかったリーフは、その者たちに近づいていき
「お前らも詐欺師の仲間か? こうなりたくなければ黙っていろ」
といって瓶を投げつけたのだ。
その瓶を大事そうに拾い上げる教徒。
涙の訴えも聞き入れては貰えなかった。
詐欺師が死のうが生きようが、リーフにはどうでもよかった。とりあえず邪魔者を1人消すことができ、残りの2人も同じように消してやろうと、考えていた矢先
「女神様から頂いた物を投げるとは、それでもフローラ教の枢機卿か!」
強い口調で怒鳴られ混乱するリーフ。
慌てて振り向くと腕が治っているブハッサがいたのだ。
「質問しているのはこちらです。勝手な発言はおやめください。見苦しい言い訳にしか聞こえませんよ」
確かに空だったことの証明ができなければ意味がない。あの時の聖騎士たちがいればよかったが、周りの聖騎士達は全員フルプレートのせいで誰が誰だか分からない。
リーフの印象操作は今のところ上手くいっているようで、
「言い訳してんなよ!」
「さっさと白状しろ」
「いちゃもんつけてんじゃねーよ」
などのヤジまで飛び出していた。
口を出したら捕らえられるはずが、尋問官の追い風になるような言葉には一切動かない聖騎士たち。
「もう一度お聞きします。この中身はポーションですね」
「渡されたときはポーションだと言われましたが、ただのポーションではなく神の力を持ったポーションだと思います」
言い方を変えてはみたものの天秤の傾きは変わる事は無かった。
ブハッサも正直、中身の液体がなんなのか正確に分からない。その迷いが言葉に乗ってしまっているようだった。
ここが見せ場だと感じたリーフは、立ち上がり民衆に向かって話始める
「皆さん、どうでしょう。どんな巧みに嘘を隠そうとしても、この天秤の前では無力と言うことです。この者が詐欺師ということがこれで証明されました」
ここでテーブルと天秤は下げられる。次のステージ作りだ。
「何か言いたいことはありますか? 自白していただければ少しは罪が軽くなるかもしれませんよ」
「私は聖水の力で多くの人の傷や病気を治してきました。それに治療費はいただいておりません。数人から寄付はいただきましたが、全て教会へ譲渡しております。この言葉に嘘はございません」
天秤を下げておいて良かったと安堵するリーフ。勘だがブハッサの言葉に嘘があるとは感じられなかったからだ。
「……分かりました。仕方ありませんね。あなたがそこまで仰るのであれば、聖水の力をここで見せていただきましょう。あなたの体に少々傷をつけますので、こちらの聖水で治してみましょう。最後は自分の身で潔白を証明してください」
「そんな、その中身は――」
リーフの言葉で会場がショーのように盛り上がってしまい、ブハッサの言葉に耳を傾ける者などいなかった。
「聖水なんだろ? この場で治して見せろ!!」
「浅いと傷だと普通のポーションでも治っちまうから深めにイケ!」
「どうせ詐欺師だろ、殺す勢いでやれよ!!」
民衆の声に紛れるようにリーフは傷つけ役の聖騎士に耳打ちをする。
「余計な事を喋らせないようを口に布でも詰めておきなさい。それと、傷でははく右腕を切り落としてかまいません」
さすがにやり過ぎではないかと戸惑う聖騎士であったが
「これは詐欺師全体への見せしめも兼ねています。あなたに責任はありません、ルマーブ教皇も許可されております」
その一言でやっとやる気になってくれた聖騎士に一安心し、切断ショーを開演するのであった。
ブハッサの右腕の拘束だけを解き、真横に上げる形で右手首をがっちりと掴まれ固定される。
「それでは始めてもらいましょう。少々痛いかも知れませんが我慢してください聖水はすぐに振りかけてあげますので」
「ゔーゔー」
声もまとも出せず反論の余地は一切ない。
そこへ傷つけ役の聖騎士が近づいてきて
「恨みは無いが許せ、一瞬で済ませる」
と、耳元で喋った瞬間だった。
腕に何かが当たったような感じかしたと思ったら、聖騎士はもう剣を鞘にしまっている。見る人が見れば、スキルと剣技を使った見事な剣だっただろう。
右肩より少し先の部分が、じんわりと熱くなってきた直後に激痛が走る。
「ゔゔゔぅぅぅぅ!!!!!!」
叫びのような声を上げたところで、右手首を掴んでいた者も手を離すと、
ボトン ゴロ
右腕が下に落ちたのだ。
勢いよく吹き出す血液。左腕は拘束されたままなので自分で押さえることもできない。
溢れだす大量の血のせいで意識も保てなくなっていた。
民衆は悲鳴を上げる者、目を逸らす者、血を見て倒れこむ者と様々だったが、リーフだけはニッタリと笑っていた。
「それではここに聖水をかけて奇跡とやらを見せてもらいましょう」
瓶の蓋を開け、切りたての切断面にゆっくりとかけていく。
自らが手掛けたストーリー通りに事が進んでご満悦なリーフは笑い声を押さえるのに必死だった。
公開尋問から始まり、最終的には女神の御前で公開処刑をする。まるで自分が神の代行者になったかのような優越感に浸っていたのだ。
ブハッサの様子を心配した教徒も我慢の限界を超え、捕縛覚悟で舞台の近くまできて声をあげ、泣き、叫んでいた。
「聖人様! お気を確かに!」
「聖人様に止血を! 早く!!」
「聖水はもうほとんど残っていなかったはず。それは偽物だ!!」
この期に及んでブハッサを聖人と呼ぶことが気に入らなかったリーフは、その者たちに近づいていき
「お前らも詐欺師の仲間か? こうなりたくなければ黙っていろ」
といって瓶を投げつけたのだ。
その瓶を大事そうに拾い上げる教徒。
涙の訴えも聞き入れては貰えなかった。
詐欺師が死のうが生きようが、リーフにはどうでもよかった。とりあえず邪魔者を1人消すことができ、残りの2人も同じように消してやろうと、考えていた矢先
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