79 / 221
女神はギャンブルへ、教徒はせっせと布教活動⑤
しおりを挟む
「ちょっとお待ちください。ここに来る前に使い切ったはずの瓶に液体が入っているのはおかしいです。取り上げた後に何か他の液体を入れましたね?」
「質問しているのはこちらです。勝手な発言はおやめください。見苦しい言い訳にしか聞こえませんよ」
確かに空だったことの証明ができなければ意味がない。あの時の聖騎士たちがいればよかったが、周りの聖騎士達は全員フルプレートのせいで誰が誰だか分からない。
リーフの印象操作は今のところ上手くいっているようで、
「言い訳してんなよ!」
「さっさと白状しろ」
「いちゃもんつけてんじゃねーよ」
などのヤジまで飛び出していた。
口を出したら捕らえられるはずが、尋問官の追い風になるような言葉には一切動かない聖騎士たち。
「もう一度お聞きします。この中身はポーションですね」
「渡されたときはポーションだと言われましたが、ただのポーションではなく神の力を持ったポーションだと思います」
言い方を変えてはみたものの天秤の傾きは変わる事は無かった。
ブハッサも正直、中身の液体がなんなのか正確に分からない。その迷いが言葉に乗ってしまっているようだった。
ここが見せ場だと感じたリーフは、立ち上がり民衆に向かって話始める
「皆さん、どうでしょう。どんな巧みに嘘を隠そうとしても、この天秤の前では無力と言うことです。この者が詐欺師ということがこれで証明されました」
ここでテーブルと天秤は下げられる。次のステージ作りだ。
「何か言いたいことはありますか? 自白していただければ少しは罪が軽くなるかもしれませんよ」
「私は聖水の力で多くの人の傷や病気を治してきました。それに治療費はいただいておりません。数人から寄付はいただきましたが、全て教会へ譲渡しております。この言葉に嘘はございません」
天秤を下げておいて良かったと安堵するリーフ。勘だがブハッサの言葉に嘘があるとは感じられなかったからだ。
「……分かりました。仕方ありませんね。あなたがそこまで仰るのであれば、聖水の力をここで見せていただきましょう。あなたの体に少々傷をつけますので、こちらの聖水で治してみましょう。最後は自分の身で潔白を証明してください」
「そんな、その中身は――」
リーフの言葉で会場がショーのように盛り上がってしまい、ブハッサの言葉に耳を傾ける者などいなかった。
「聖水なんだろ? この場で治して見せろ!!」
「浅いと傷だと普通のポーションでも治っちまうから深めにイケ!」
「どうせ詐欺師だろ、殺す勢いでやれよ!!」
民衆の声に紛れるようにリーフは傷つけ役の聖騎士に耳打ちをする。
「余計な事を喋らせないようを口に布でも詰めておきなさい。それと、傷でははく右腕を切り落としてかまいません」
さすがにやり過ぎではないかと戸惑う聖騎士であったが
「これは詐欺師全体への見せしめも兼ねています。あなたに責任はありません、ルマーブ教皇も許可されております」
その一言でやっとやる気になってくれた聖騎士に一安心し、切断ショーを開演するのであった。
ブハッサの右腕の拘束だけを解き、真横に上げる形で右手首をがっちりと掴まれ固定される。
「それでは始めてもらいましょう。少々痛いかも知れませんが我慢してください聖水はすぐに振りかけてあげますので」
「ゔーゔー」
声もまとも出せず反論の余地は一切ない。
そこへ傷つけ役の聖騎士が近づいてきて
「恨みは無いが許せ、一瞬で済ませる」
と、耳元で喋った瞬間だった。
腕に何かが当たったような感じかしたと思ったら、聖騎士はもう剣を鞘にしまっている。見る人が見れば、スキルと剣技を使った見事な剣だっただろう。
右肩より少し先の部分が、じんわりと熱くなってきた直後に激痛が走る。
「ゔゔゔぅぅぅぅ!!!!!!」
叫びのような声を上げたところで、右手首を掴んでいた者も手を離すと、
ボトン ゴロ
右腕が下に落ちたのだ。
勢いよく吹き出す血液。左腕は拘束されたままなので自分で押さえることもできない。
溢れだす大量の血のせいで意識も保てなくなっていた。
民衆は悲鳴を上げる者、目を逸らす者、血を見て倒れこむ者と様々だったが、リーフだけはニッタリと笑っていた。
「それではここに聖水をかけて奇跡とやらを見せてもらいましょう」
瓶の蓋を開け、切りたての切断面にゆっくりとかけていく。
自らが手掛けたストーリー通りに事が進んでご満悦なリーフは笑い声を押さえるのに必死だった。
公開尋問から始まり、最終的には女神の御前で公開処刑をする。まるで自分が神の代行者になったかのような優越感に浸っていたのだ。
ブハッサの様子を心配した教徒も我慢の限界を超え、捕縛覚悟で舞台の近くまできて声をあげ、泣き、叫んでいた。
「聖人様! お気を確かに!」
「聖人様に止血を! 早く!!」
「聖水はもうほとんど残っていなかったはず。それは偽物だ!!」
この期に及んでブハッサを聖人と呼ぶことが気に入らなかったリーフは、その者たちに近づいていき
「お前らも詐欺師の仲間か? こうなりたくなければ黙っていろ」
といって瓶を投げつけたのだ。
その瓶を大事そうに拾い上げる教徒。
涙の訴えも聞き入れては貰えなかった。
詐欺師が死のうが生きようが、リーフにはどうでもよかった。とりあえず邪魔者を1人消すことができ、残りの2人も同じように消してやろうと、考えていた矢先
「女神様から頂いた物を投げるとは、それでもフローラ教の枢機卿か!」
強い口調で怒鳴られ混乱するリーフ。
慌てて振り向くと腕が治っているブハッサがいたのだ。
「質問しているのはこちらです。勝手な発言はおやめください。見苦しい言い訳にしか聞こえませんよ」
確かに空だったことの証明ができなければ意味がない。あの時の聖騎士たちがいればよかったが、周りの聖騎士達は全員フルプレートのせいで誰が誰だか分からない。
リーフの印象操作は今のところ上手くいっているようで、
「言い訳してんなよ!」
「さっさと白状しろ」
「いちゃもんつけてんじゃねーよ」
などのヤジまで飛び出していた。
口を出したら捕らえられるはずが、尋問官の追い風になるような言葉には一切動かない聖騎士たち。
「もう一度お聞きします。この中身はポーションですね」
「渡されたときはポーションだと言われましたが、ただのポーションではなく神の力を持ったポーションだと思います」
言い方を変えてはみたものの天秤の傾きは変わる事は無かった。
ブハッサも正直、中身の液体がなんなのか正確に分からない。その迷いが言葉に乗ってしまっているようだった。
ここが見せ場だと感じたリーフは、立ち上がり民衆に向かって話始める
「皆さん、どうでしょう。どんな巧みに嘘を隠そうとしても、この天秤の前では無力と言うことです。この者が詐欺師ということがこれで証明されました」
ここでテーブルと天秤は下げられる。次のステージ作りだ。
「何か言いたいことはありますか? 自白していただければ少しは罪が軽くなるかもしれませんよ」
「私は聖水の力で多くの人の傷や病気を治してきました。それに治療費はいただいておりません。数人から寄付はいただきましたが、全て教会へ譲渡しております。この言葉に嘘はございません」
天秤を下げておいて良かったと安堵するリーフ。勘だがブハッサの言葉に嘘があるとは感じられなかったからだ。
「……分かりました。仕方ありませんね。あなたがそこまで仰るのであれば、聖水の力をここで見せていただきましょう。あなたの体に少々傷をつけますので、こちらの聖水で治してみましょう。最後は自分の身で潔白を証明してください」
「そんな、その中身は――」
リーフの言葉で会場がショーのように盛り上がってしまい、ブハッサの言葉に耳を傾ける者などいなかった。
「聖水なんだろ? この場で治して見せろ!!」
「浅いと傷だと普通のポーションでも治っちまうから深めにイケ!」
「どうせ詐欺師だろ、殺す勢いでやれよ!!」
民衆の声に紛れるようにリーフは傷つけ役の聖騎士に耳打ちをする。
「余計な事を喋らせないようを口に布でも詰めておきなさい。それと、傷でははく右腕を切り落としてかまいません」
さすがにやり過ぎではないかと戸惑う聖騎士であったが
「これは詐欺師全体への見せしめも兼ねています。あなたに責任はありません、ルマーブ教皇も許可されております」
その一言でやっとやる気になってくれた聖騎士に一安心し、切断ショーを開演するのであった。
ブハッサの右腕の拘束だけを解き、真横に上げる形で右手首をがっちりと掴まれ固定される。
「それでは始めてもらいましょう。少々痛いかも知れませんが我慢してください聖水はすぐに振りかけてあげますので」
「ゔーゔー」
声もまとも出せず反論の余地は一切ない。
そこへ傷つけ役の聖騎士が近づいてきて
「恨みは無いが許せ、一瞬で済ませる」
と、耳元で喋った瞬間だった。
腕に何かが当たったような感じかしたと思ったら、聖騎士はもう剣を鞘にしまっている。見る人が見れば、スキルと剣技を使った見事な剣だっただろう。
右肩より少し先の部分が、じんわりと熱くなってきた直後に激痛が走る。
「ゔゔゔぅぅぅぅ!!!!!!」
叫びのような声を上げたところで、右手首を掴んでいた者も手を離すと、
ボトン ゴロ
右腕が下に落ちたのだ。
勢いよく吹き出す血液。左腕は拘束されたままなので自分で押さえることもできない。
溢れだす大量の血のせいで意識も保てなくなっていた。
民衆は悲鳴を上げる者、目を逸らす者、血を見て倒れこむ者と様々だったが、リーフだけはニッタリと笑っていた。
「それではここに聖水をかけて奇跡とやらを見せてもらいましょう」
瓶の蓋を開け、切りたての切断面にゆっくりとかけていく。
自らが手掛けたストーリー通りに事が進んでご満悦なリーフは笑い声を押さえるのに必死だった。
公開尋問から始まり、最終的には女神の御前で公開処刑をする。まるで自分が神の代行者になったかのような優越感に浸っていたのだ。
ブハッサの様子を心配した教徒も我慢の限界を超え、捕縛覚悟で舞台の近くまできて声をあげ、泣き、叫んでいた。
「聖人様! お気を確かに!」
「聖人様に止血を! 早く!!」
「聖水はもうほとんど残っていなかったはず。それは偽物だ!!」
この期に及んでブハッサを聖人と呼ぶことが気に入らなかったリーフは、その者たちに近づいていき
「お前らも詐欺師の仲間か? こうなりたくなければ黙っていろ」
といって瓶を投げつけたのだ。
その瓶を大事そうに拾い上げる教徒。
涙の訴えも聞き入れては貰えなかった。
詐欺師が死のうが生きようが、リーフにはどうでもよかった。とりあえず邪魔者を1人消すことができ、残りの2人も同じように消してやろうと、考えていた矢先
「女神様から頂いた物を投げるとは、それでもフローラ教の枢機卿か!」
強い口調で怒鳴られ混乱するリーフ。
慌てて振り向くと腕が治っているブハッサがいたのだ。
10
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
イジメられっ子世に憚る。
satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる