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女神はギャンブルへ、教徒はせっせと布教活動⑥
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先ほどまで騒ぎ立てていた民衆も静まり返り、目の前で起きた奇跡を呆然とたちつくして見ていた。
「!……なぜだ?」
切った腕は確かにそこに落ちて転がっている。
今ある右腕は一体なんなのか。
驚きのあまり腰を抜かし立てなくなってしまった。
「これで証明されたであろう。腕は完全に治った。確かに瓶の中身の正しい名を私は知らない。聖水でもなければただのポーションでもないのであろう。女神様のみぞ名を知る奇跡の水だ。それを正しく答えられないから詐欺師というのはあまりにも強引すぎるであろう」
「それは……」
「それに聖人である私に対しての扱いも酷いように感じた。女神様に会っているのは天秤が証明してくれたはずだ。奇跡の水の証明も、腕を切らずとも方法はいくらでもある。それにこの拘束も早く解いてほしい」
1人の聖騎士が駆けつけ拘束を解くと、ブハッサは立ち上がりリーフに近づく
「リーフ猊下、これでも私を詐欺師というのかね」
完全再生された腕をリーフの前につき出し見せつける。
「いいえ、聖人様……」
と弱弱しい声を出すのがやっとだったようだ。
民衆達にも再生した腕高々掲げながら続けた。
「私は、女神様と会い、奇跡の水を頂いた。病や傷に悩まされている者は私の元に来てほしい。お金などは要らない。女神様は全ての人に平等だ。全ての人に奇跡の水を使う権利がある」
その後、経緯などで間違っていたところを民衆の前で訂正し誤解を解いた。
となると何故このようなことになってしまったのかと後から疑惑がでてかる。その矛先は枢機卿や、その先の教皇にまで向けられた。
そのことに気づいた教会側が必死に言い訳をしたらしいが、疑惑が完全に晴れることはなかった。
ブハッサも疑問を持っていたが、教会を崩壊させるつもりはないので聖人の認定をしてもらうこと、このポーションの瓶の所有と使用を許可してもらうこと以上は求めなかった。
おかげで帰りは竜車になっており行きの時より豪華になっていた。
聖人と正式に認められたので護衛も多い。
その中には行きの時に火傷の痕を治した聖騎士もいた。
「一杯奢る前に帰ることになっちまったな」
「いいんですよ。その気持ちだけでも十分です」
「実はなあの時、民衆を監視する役で近くにいたんだ」
「そうだったのですね。いや、御見苦しいものを見せてしまった」
「そんな……。俺は瓶の中身がないのも知っていたし、かけられた液が聖水じゃないのも知っていた。でも止められずにいた。本当に申し訳ない」
「そんなことで謝らないでください。拘束を解くため一番に駆けつけてくれたじゃないですか」
「勝手に解いちゃまずかったんだけどよ。居ても立っても居られなかったんだ」
「そうでしたか、ありがとうございました。それにあそこで真実を言ったとしても意味がありません。あの場では真実を証明することだけが唯一の手段でした」
「でもどうやって腕を治したんだ?」
「本当にお恥ずかしい話ですが、私は何もしておりません。この瓶の本当の使い方を腕を切られ枢機卿にかけられるまで気づきませんでした」
「枢機卿が何かしたのか?」
「きっと何も知らなかったでしょう。この腕が治り始めた時、女神様からこの瓶を貰った時の言葉を思い出したのです」
『ちょっと失敗しちゃったポーションの瓶だから、これならいいよ』
「と、仰っていました。私は最初から勘違いをしていたのです。この言葉で、てっきりポーションを頂けたのだと思っておりました。後にベロアがただのポーションじゃない聖水だ! などと騒ぐものですから、中身にばかり気に取られてしまい、瓶の事を気にしておりませんでした」
「そうか女神様は奇跡の瓶を与えたのか!」
「そうなのです。こちらの瓶、一見どこにでも売っているポーションが入った瓶に見えますが、よく見ると外側の表面には一切の傷が無いのです。ですが少し離れてみると使い込まれた瓶のようにたくさん傷がついているように見えますが、これは瓶の内側に非常に細かい特殊な魔法陣が刻まれているからです」
目を凝らしギリギリまで近づけた聖騎士であったが
「ダメだ全然わからねぇ」
「でしょうね私も分かりません。拡大眼スキルを持つ教徒がいまして、その者でも辛うじて文字のようなものが見えた程度です。普通じゃ無理ですよ」
「その魔法陣ってのは何ができるんだ」
「内側の魔法陣が発動すると、中の液体が奇跡の水に変化するというものなのではないかと思っています」
「はぁーもう、理解できん」
「そもそも、神の施しがポーション1本でおしまいではちょっと足りないですからね。多くの方を救うために何度も使えるもであってこそ、神から貰ったかいがあるというものです」
「ただの水が奇跡の水に早変わりってか。良かったな女神様に聖水くれって催促しなくて済むもんな」
「そうですね。次に会うのはいつになるのか私にはわかりませんので」
「どこか遊び回ってるかもしれないしな。はははっ冗談、冗談」
「最後にお会いしたときはオオイマキニドで稼いでくると言ってましたよ」
「……それ本当に女神様か??」
カスケードに戻り、待っていてくれた者達と無事再会することができた。
最悪ベロアとブックも処刑されると覚悟をしていたらしく、ちゃんと戻ってきたことで一気に気が抜けたようだった。
「今回のことはケーナ様に報告いたしますか?」
とベロアが聞いてきたが
「もし、今回のことが気に入らないとなれば教会を潰してしまうかもしれません。あのお方ならきっと容易いことでしょう。しかしそれだと心の拠り所を失う方が大勢います。そうなるくらいでしたら、何もなかった事にした方がいいかもしれません」
とケーナへの報告は無しと言うことになったのだ。
世界のバランスを簡単にひっくり返すことができるのは失敗作の瓶1つでも十分理解できる。それならギャンブルでもして大当たりの確率でもひっくり返してもらった方がまだ平和かなと思うのであった。
「!……なぜだ?」
切った腕は確かにそこに落ちて転がっている。
今ある右腕は一体なんなのか。
驚きのあまり腰を抜かし立てなくなってしまった。
「これで証明されたであろう。腕は完全に治った。確かに瓶の中身の正しい名を私は知らない。聖水でもなければただのポーションでもないのであろう。女神様のみぞ名を知る奇跡の水だ。それを正しく答えられないから詐欺師というのはあまりにも強引すぎるであろう」
「それは……」
「それに聖人である私に対しての扱いも酷いように感じた。女神様に会っているのは天秤が証明してくれたはずだ。奇跡の水の証明も、腕を切らずとも方法はいくらでもある。それにこの拘束も早く解いてほしい」
1人の聖騎士が駆けつけ拘束を解くと、ブハッサは立ち上がりリーフに近づく
「リーフ猊下、これでも私を詐欺師というのかね」
完全再生された腕をリーフの前につき出し見せつける。
「いいえ、聖人様……」
と弱弱しい声を出すのがやっとだったようだ。
民衆達にも再生した腕高々掲げながら続けた。
「私は、女神様と会い、奇跡の水を頂いた。病や傷に悩まされている者は私の元に来てほしい。お金などは要らない。女神様は全ての人に平等だ。全ての人に奇跡の水を使う権利がある」
その後、経緯などで間違っていたところを民衆の前で訂正し誤解を解いた。
となると何故このようなことになってしまったのかと後から疑惑がでてかる。その矛先は枢機卿や、その先の教皇にまで向けられた。
そのことに気づいた教会側が必死に言い訳をしたらしいが、疑惑が完全に晴れることはなかった。
ブハッサも疑問を持っていたが、教会を崩壊させるつもりはないので聖人の認定をしてもらうこと、このポーションの瓶の所有と使用を許可してもらうこと以上は求めなかった。
おかげで帰りは竜車になっており行きの時より豪華になっていた。
聖人と正式に認められたので護衛も多い。
その中には行きの時に火傷の痕を治した聖騎士もいた。
「一杯奢る前に帰ることになっちまったな」
「いいんですよ。その気持ちだけでも十分です」
「実はなあの時、民衆を監視する役で近くにいたんだ」
「そうだったのですね。いや、御見苦しいものを見せてしまった」
「そんな……。俺は瓶の中身がないのも知っていたし、かけられた液が聖水じゃないのも知っていた。でも止められずにいた。本当に申し訳ない」
「そんなことで謝らないでください。拘束を解くため一番に駆けつけてくれたじゃないですか」
「勝手に解いちゃまずかったんだけどよ。居ても立っても居られなかったんだ」
「そうでしたか、ありがとうございました。それにあそこで真実を言ったとしても意味がありません。あの場では真実を証明することだけが唯一の手段でした」
「でもどうやって腕を治したんだ?」
「本当にお恥ずかしい話ですが、私は何もしておりません。この瓶の本当の使い方を腕を切られ枢機卿にかけられるまで気づきませんでした」
「枢機卿が何かしたのか?」
「きっと何も知らなかったでしょう。この腕が治り始めた時、女神様からこの瓶を貰った時の言葉を思い出したのです」
『ちょっと失敗しちゃったポーションの瓶だから、これならいいよ』
「と、仰っていました。私は最初から勘違いをしていたのです。この言葉で、てっきりポーションを頂けたのだと思っておりました。後にベロアがただのポーションじゃない聖水だ! などと騒ぐものですから、中身にばかり気に取られてしまい、瓶の事を気にしておりませんでした」
「そうか女神様は奇跡の瓶を与えたのか!」
「そうなのです。こちらの瓶、一見どこにでも売っているポーションが入った瓶に見えますが、よく見ると外側の表面には一切の傷が無いのです。ですが少し離れてみると使い込まれた瓶のようにたくさん傷がついているように見えますが、これは瓶の内側に非常に細かい特殊な魔法陣が刻まれているからです」
目を凝らしギリギリまで近づけた聖騎士であったが
「ダメだ全然わからねぇ」
「でしょうね私も分かりません。拡大眼スキルを持つ教徒がいまして、その者でも辛うじて文字のようなものが見えた程度です。普通じゃ無理ですよ」
「その魔法陣ってのは何ができるんだ」
「内側の魔法陣が発動すると、中の液体が奇跡の水に変化するというものなのではないかと思っています」
「はぁーもう、理解できん」
「そもそも、神の施しがポーション1本でおしまいではちょっと足りないですからね。多くの方を救うために何度も使えるもであってこそ、神から貰ったかいがあるというものです」
「ただの水が奇跡の水に早変わりってか。良かったな女神様に聖水くれって催促しなくて済むもんな」
「そうですね。次に会うのはいつになるのか私にはわかりませんので」
「どこか遊び回ってるかもしれないしな。はははっ冗談、冗談」
「最後にお会いしたときはオオイマキニドで稼いでくると言ってましたよ」
「……それ本当に女神様か??」
カスケードに戻り、待っていてくれた者達と無事再会することができた。
最悪ベロアとブックも処刑されると覚悟をしていたらしく、ちゃんと戻ってきたことで一気に気が抜けたようだった。
「今回のことはケーナ様に報告いたしますか?」
とベロアが聞いてきたが
「もし、今回のことが気に入らないとなれば教会を潰してしまうかもしれません。あのお方ならきっと容易いことでしょう。しかしそれだと心の拠り所を失う方が大勢います。そうなるくらいでしたら、何もなかった事にした方がいいかもしれません」
とケーナへの報告は無しと言うことになったのだ。
世界のバランスを簡単にひっくり返すことができるのは失敗作の瓶1つでも十分理解できる。それならギャンブルでもして大当たりの確率でもひっくり返してもらった方がまだ平和かなと思うのであった。
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