107 / 221
魔の誕生日③
しおりを挟む
「ただいまー。あれ、バジェットはお出かけ中?」
帰宅し、ぐったりとソファーに倒れこむ。
初の社交場は気を使いまくった。作り笑顔をずっとしていたせいか、頬が筋肉痛になっている。
(しんどい)
簡易人物鑑定4回。人物解析5回。精神操作3回。怨念4回。呪い1回。
今回エーナの誕生会中にそれぞれレジストした回数だ。
これが貴族たちの本当の挨拶の形なのかもしれない。
魔力は使用すると発光するものが多いので魔法は使わず、魔道具を何処かに仕込ませて発動させていたのだろう。
貴族たちが貴重なアイテムを持つ理由はここにあるかもしれない。
相手の情報を盗み出したり、相手自体を手駒にしようとしたりすることが日常茶飯事であれば、それらに対抗すべくレアやエピックの防御・耐性系のアイテムを持つことは当たり前になる。貴族達の情報戦だ。
「私相手によくやるなー。ハクレイちょっと来て」
「はい、なんでしょう」
万能薬と同等の状態異常回復魔法のキュアルをかけてあげる。
「ありがとうございます。これは何でしょうか?」
「念のため。今日のあの場所には人の皮をかぶったいやらしい魔人が多かったから。ハクレイが洗脳されやしないか私は心配だったよ」
「そう、でしたか?」
ハクレイには何も無かったみたいでホッとする。
「お茶でも飲みますか?」
「よろしくー」
貴族の社交の場を体験して、思っていた以上に物騒で、私がいかに警戒されているのかがよく分かった。次期魔王という肩書のせいなのはいわずもがなのだが。
今後は狙われていることを前提に行動しないと隙を突かれてしまうかもしれない。
「はいレモンティーです」
「ありがとー」
ハクレイは特訓期間中、鍛えていたのは体だけじゃ無かった。
コピーから料理全般を仕込まれたそうだ。
お茶の淹れ方も満足に出来なかったあの頃とは既におさらばしている。
「おいし―」
「ありがとうございます」
「ゼンちゃんとの特訓って何してるの?」
「そうですね、最初は師匠を殴ることからでした」
「え、殴るの?」
「はい、師匠にはダメージが入らないのでハクレイの拳が痛くなってしまい大変でした」
「殴るだけでレベル上がるの?」
「師匠が言うにはレベル差が開きすぎて殴るだけでも十分な戦闘経験を得られてるそうです」
まさかゼンちゃんがそんな事を知っていたなんて、勇者のレベル上げの時も同じようなことをしていたのかもしれない。
「剣や弓も同様に師匠に向けて攻撃をしてました。それである程度扱えるようになったら、模擬戦闘を繰り返す感じです」
レベル上げと武器の扱いの成長を最高効率で行っていたのだろう。
「ハクレイは何の武器が得意になったの?」
「今使えるのは剣、弓、槍ぐらいです」
「十分すごいよ。私なんて扱える武器ないもん」
「その分素晴らしい魔法をお持ちではないですか」
「じゃあさちょっと私に剣を見せてよ」
「今ですか?」
「ダメ?」
「構いません、少々お待ちください」
ゼンちゃんとのレベル差でもレベル上げが出来るなら、私とならどうなるのか試さずにはいられなかった。
「お待たせしました」
「庭に行こうか」
外はもう暗くなっていたが剣を振るぐらいなら問題ない。
「じゃ、私を切るつもりで思い切って振り下ろしてみて」
「わかりました。正面、上から斬り込みます。ちゃんと避けてくださいね」
様になっている剣士の構え、そこから振り下ろされる剣の軌道は私の正中線を捉えている。
まだ目で普通に追えるスピード。一歩だけ引いて剣を髪の毛一本分で避ける。
「すごいね」
「ケーナ、ちゃんと避けてください!! 当たってしまうかと思いました!」
「見えてるから大丈夫だよ。何か剣のスキルは取得した?」
「まだ完全ではありませんが高速剣の真似ごとならできます」
「それ見たい」
「わかりました」
と剣を片手だけに持ち構える。
「いきます」
の掛け声で剣が消えたように見える。
真似ごとなんて謙遜していたけどスキルとして発動していてもおかしくない剣技の速さだった。
しかし、ハクレイの攻撃を危険な攻撃と判断したのか、アブソーブが自動発動してしまい剣が止まってしまう。
「あ、ごめん私のスキルが邪魔しちゃったみたい」
「あれを止めるスキルがあるのですか……」
「自動で発動しちゃうんだよね。止めることもできるんだけど忘れてた」
「剣が届かなくスキルですか? 聞いたことはありませんが……」
「まぁそんな所、もし当たってたらどれくらいレベル上がるのかみてみたかったんだよね」
「避けないつもりだったんですか?」
「うんまぁ、そうなるかなぁ」
「ケーナ! 私はケーナを斬りつけたくありません」
「大丈夫、私強いから」
「そんなこと言わないでください。ハクレイは大切な人を傷つけてまでレベル上げたくありません」
「傷つかないよ」
「そういう問題ではありません!! 気持ちの問題です!」
一段と大きくなる声に圧倒されそうになる。
それだけ大切に想ってくれることなだろう。
このハクレイの気持ちは貰っておく。
「ごめん、ごめんね、ハクレイ」
「……わかってくれるならいいですよ」
「大きい声上げて何をしてるのですか?」
ちょうどそこへバジェットが帰ってきた。
「ちょっと特訓の成果を見てたんだよ」
「ハクレイ、ケーナに一撃でも当てましたか?」
「いいえ、剣を止められてしました。といいますか、当てたいとは思っていません」
「それならトンファーの方がかすりそうになるまで近づけたと考えると、僕の方が上になるのでしょうか」
「バジェット、あなたには遠慮なく剣を抜くことができそうです」
「ちょっと不毛な争いはしないで皆でお茶でもしましょうよ」
ほっといたら本当に始まりそうだったので間に入って止めるしかなかった。
「グラフはどこかに出かけていたの?」
「はい、ちょっと恋人のところへ」
「へ?」
「恋人の所に行ってパーティーメンバーの事とか拠点の事とか話してきました」
「あ、そーなんだ……」
恋人なんていたことない私にとっては少々立ち入りづらい話でもある。
「言っちゃまずかったですか?」
「全然、そんなことないよ。どんな人なのかなーって」
「年上で」
(年上は包容力があっていいかも)
「優しくて」
(思いやる気持ちって大切だし)
「ヒゲが濃くて、筋肉もとてもすごい人です」
(あれ?)
「それってもしかして男?」
「当たり前じゃないですか、髭の濃い女性なんて滅多にいないですよ。僕の素敵な彼氏、今度紹介しますね」
「う、うん!」
私はこの話にこれ以上踏み込む勇気が出なかった。
あのテッテが性別については寛容だったので慣れていたつもりだったが、私はまだまだ未熟だったようだ。
帰宅し、ぐったりとソファーに倒れこむ。
初の社交場は気を使いまくった。作り笑顔をずっとしていたせいか、頬が筋肉痛になっている。
(しんどい)
簡易人物鑑定4回。人物解析5回。精神操作3回。怨念4回。呪い1回。
今回エーナの誕生会中にそれぞれレジストした回数だ。
これが貴族たちの本当の挨拶の形なのかもしれない。
魔力は使用すると発光するものが多いので魔法は使わず、魔道具を何処かに仕込ませて発動させていたのだろう。
貴族たちが貴重なアイテムを持つ理由はここにあるかもしれない。
相手の情報を盗み出したり、相手自体を手駒にしようとしたりすることが日常茶飯事であれば、それらに対抗すべくレアやエピックの防御・耐性系のアイテムを持つことは当たり前になる。貴族達の情報戦だ。
「私相手によくやるなー。ハクレイちょっと来て」
「はい、なんでしょう」
万能薬と同等の状態異常回復魔法のキュアルをかけてあげる。
「ありがとうございます。これは何でしょうか?」
「念のため。今日のあの場所には人の皮をかぶったいやらしい魔人が多かったから。ハクレイが洗脳されやしないか私は心配だったよ」
「そう、でしたか?」
ハクレイには何も無かったみたいでホッとする。
「お茶でも飲みますか?」
「よろしくー」
貴族の社交の場を体験して、思っていた以上に物騒で、私がいかに警戒されているのかがよく分かった。次期魔王という肩書のせいなのはいわずもがなのだが。
今後は狙われていることを前提に行動しないと隙を突かれてしまうかもしれない。
「はいレモンティーです」
「ありがとー」
ハクレイは特訓期間中、鍛えていたのは体だけじゃ無かった。
コピーから料理全般を仕込まれたそうだ。
お茶の淹れ方も満足に出来なかったあの頃とは既におさらばしている。
「おいし―」
「ありがとうございます」
「ゼンちゃんとの特訓って何してるの?」
「そうですね、最初は師匠を殴ることからでした」
「え、殴るの?」
「はい、師匠にはダメージが入らないのでハクレイの拳が痛くなってしまい大変でした」
「殴るだけでレベル上がるの?」
「師匠が言うにはレベル差が開きすぎて殴るだけでも十分な戦闘経験を得られてるそうです」
まさかゼンちゃんがそんな事を知っていたなんて、勇者のレベル上げの時も同じようなことをしていたのかもしれない。
「剣や弓も同様に師匠に向けて攻撃をしてました。それである程度扱えるようになったら、模擬戦闘を繰り返す感じです」
レベル上げと武器の扱いの成長を最高効率で行っていたのだろう。
「ハクレイは何の武器が得意になったの?」
「今使えるのは剣、弓、槍ぐらいです」
「十分すごいよ。私なんて扱える武器ないもん」
「その分素晴らしい魔法をお持ちではないですか」
「じゃあさちょっと私に剣を見せてよ」
「今ですか?」
「ダメ?」
「構いません、少々お待ちください」
ゼンちゃんとのレベル差でもレベル上げが出来るなら、私とならどうなるのか試さずにはいられなかった。
「お待たせしました」
「庭に行こうか」
外はもう暗くなっていたが剣を振るぐらいなら問題ない。
「じゃ、私を切るつもりで思い切って振り下ろしてみて」
「わかりました。正面、上から斬り込みます。ちゃんと避けてくださいね」
様になっている剣士の構え、そこから振り下ろされる剣の軌道は私の正中線を捉えている。
まだ目で普通に追えるスピード。一歩だけ引いて剣を髪の毛一本分で避ける。
「すごいね」
「ケーナ、ちゃんと避けてください!! 当たってしまうかと思いました!」
「見えてるから大丈夫だよ。何か剣のスキルは取得した?」
「まだ完全ではありませんが高速剣の真似ごとならできます」
「それ見たい」
「わかりました」
と剣を片手だけに持ち構える。
「いきます」
の掛け声で剣が消えたように見える。
真似ごとなんて謙遜していたけどスキルとして発動していてもおかしくない剣技の速さだった。
しかし、ハクレイの攻撃を危険な攻撃と判断したのか、アブソーブが自動発動してしまい剣が止まってしまう。
「あ、ごめん私のスキルが邪魔しちゃったみたい」
「あれを止めるスキルがあるのですか……」
「自動で発動しちゃうんだよね。止めることもできるんだけど忘れてた」
「剣が届かなくスキルですか? 聞いたことはありませんが……」
「まぁそんな所、もし当たってたらどれくらいレベル上がるのかみてみたかったんだよね」
「避けないつもりだったんですか?」
「うんまぁ、そうなるかなぁ」
「ケーナ! 私はケーナを斬りつけたくありません」
「大丈夫、私強いから」
「そんなこと言わないでください。ハクレイは大切な人を傷つけてまでレベル上げたくありません」
「傷つかないよ」
「そういう問題ではありません!! 気持ちの問題です!」
一段と大きくなる声に圧倒されそうになる。
それだけ大切に想ってくれることなだろう。
このハクレイの気持ちは貰っておく。
「ごめん、ごめんね、ハクレイ」
「……わかってくれるならいいですよ」
「大きい声上げて何をしてるのですか?」
ちょうどそこへバジェットが帰ってきた。
「ちょっと特訓の成果を見てたんだよ」
「ハクレイ、ケーナに一撃でも当てましたか?」
「いいえ、剣を止められてしました。といいますか、当てたいとは思っていません」
「それならトンファーの方がかすりそうになるまで近づけたと考えると、僕の方が上になるのでしょうか」
「バジェット、あなたには遠慮なく剣を抜くことができそうです」
「ちょっと不毛な争いはしないで皆でお茶でもしましょうよ」
ほっといたら本当に始まりそうだったので間に入って止めるしかなかった。
「グラフはどこかに出かけていたの?」
「はい、ちょっと恋人のところへ」
「へ?」
「恋人の所に行ってパーティーメンバーの事とか拠点の事とか話してきました」
「あ、そーなんだ……」
恋人なんていたことない私にとっては少々立ち入りづらい話でもある。
「言っちゃまずかったですか?」
「全然、そんなことないよ。どんな人なのかなーって」
「年上で」
(年上は包容力があっていいかも)
「優しくて」
(思いやる気持ちって大切だし)
「ヒゲが濃くて、筋肉もとてもすごい人です」
(あれ?)
「それってもしかして男?」
「当たり前じゃないですか、髭の濃い女性なんて滅多にいないですよ。僕の素敵な彼氏、今度紹介しますね」
「う、うん!」
私はこの話にこれ以上踏み込む勇気が出なかった。
あのテッテが性別については寛容だったので慣れていたつもりだったが、私はまだまだ未熟だったようだ。
0
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
イジメられっ子世に憚る。
satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる