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頑張れニャンダーマスク③
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「ニャンダーマスクがんばれ!!」
「頑張れメイド猫!!」
応援する声は、先ほどと違ってきている。賭けによってお金が絡んでくるので手のひらは大回転だ。
ランランボーは見た目から拳による近接戦闘を得意とした選手に見える。
間合を詰めたくてもハクレイの出方を警戒しているのだろう。
だが、その睨み合いの時間をハクレイに与えてしまったのが敗因となる。
先に仕掛けたのはハクレイ。
無詠唱でランランボーの足元を爆発させる。威力は小さくダメージにはならないが視線を外す隙を作るには十分。
一気に詰め寄るハクレイ。接近戦に自信があるランランボー選手は、それに気づき、待ってましたとばかりに構える。
拳の打ち合いになるのかと思った瞬間にハクレイの姿がふわりと消える。
幻影だと気づいた時にはハクレイがランランボーの後ろを取り、首に短剣が刺さり始めていた。
「動かないでください。ワイバーンの皮でもスライムのようによく切れる短剣です。下手に動くと太い血管が切れて死にますよ」
「……見事だ。俺の負けだ」
審判が近づき
「ランランボー選手負けを認めたため、勝者ニャンダーマスク選手!!」
大きな歓声と、大穴を狙った者達のため息が少し。
そして両者に拍手が贈られた。
短剣をゆっくり離すと同時に傷口にケアの魔法をかけて治療をした。
「強いわけだ。それだけの魔法を操りながら、近接戦闘もできる。師は誰だ?」
「師匠の名はゼンです」
「聞いたことのない名だな。だが良い師なのであろう」
「強いですよ。勝てたことなどありませんから」
「そうか、上にはまだ上がいるのか。この世界は広いな」
「そうですね。そのまた上もいますのでこの道は険しいです」
「ふっ、想像もつかん。お互いに鍛錬を積むしかないな。またいつか機会があれば手合わせ願うぞ」
「お待ちしております」
ハクレイの目くらましから、背後を取るまでほんの数秒。試合自体は1分もかかっていない。
相手の得意とする土俵を避けて戦うのも1つの作戦だ。
ただ、あっという間の出来事過ぎて観客達の物足りなさは否めない。スカートがひるがえる隙さえ無かったのだ。
二回戦はあの488ダメージを出した二次予選2位通過の剣士と、ハクレイに話しかけていた自称優勝候補の二次予選3位通過の選手。
早くも上位が潰し合う形となっている。客達も好カードに期待を寄せているようだった。
「両者前へ! 審判が戦闘続行不可能と判断した場合は負けとします。但し相手が試合中に死亡した場合は無効試合となります。降参した相手への攻撃は禁止です。何か質問は?」
「無いようですので……。始め!!」
剣士は落ちるように前に出る。歩法による身のこなしは熟練の技を感じさせる。
一方優勝候補の腰袋がアイテムボックスだったようで長い槍を取り出す。
「その剣のリーチで僕に勝てるとでも?」
その挑発をものともせず間合いを詰める剣士。
剣士は素早い斬撃を浴びせ、それを必死に槍で捌きはしたが、槍は不慣れなのか押されている自称優勝候補。
一度距離を取り、槍をな投げつけ武器を変える。
次に取り出したのは双剣だ。
「い、いいか? 降参するなら今のうちだぞ。僕の一番は双剣なんだからな」
「なら最初からそれで来い!」
剣士の声に怒りが混じっているようだった。手加減をされていたと感じたならそうだろうか。
一番と言い放った割には、両手の剣を十分に発揮しているとは言いづらく、片手だけで精一杯の様子。
しばらくすると双剣を投げつけながらまた距離を取り息を整える。
「な、なかなかやるじゃないか。だったらとっておき見せてやる」
そしてアイテムボックスから取り出したのは魔石。
地面めがけ投げつけるとどっと黒い煙が吹き出す。
「さぁ来い!! 巨兵クリゾヘリル!」
声と共にその煙の中に何かが投げ込まれるのが見えた。
すると地面に大きく広がる魔法陣。それを見て剣士が距離を取る。
客達はその呼び名で一斉にざわついている。隣にいたオヤジも顔色が悪い。
「ねぇ、おじちゃん、巨兵クリ何とかっていったい何?」
「嬢ちゃん、巨像物語を知らんのか!?」
「う、うん」
「過去にエルフの国を滅ぼしたとされる巨大な兵の形をした石像のことさ」
「巨大?」
「物語の中だと家も踏み倒すぐらい巨大なんだけどな……」
周囲からも驚きと疑念の声がちらほら。黒い煙はだんだん消えていき、その中から禍々しい魔法陣ともに現れたのは人族の3倍程度大きさの兵士ようだった。
早速、鑑定眼で調べてみる。
(Lv144 試作型人工兵士……試作?)
家より大きい巨兵が完成形だとするなら、これはその前段階のものなのだろうか。
ステータスの中ではHPが異様なまでに高く、そのせいでレベルが高い。
ただ試作型とはいえこの強さだと人族が従えることができるようなものでもないと思っていた。
剣士を指さし自慢気な顔で命令を出す自称優勝候補。
「命令だ! あの剣士をぶっ飛ばせ、でも殺すなよ、半殺しだ!!」
「頑張れメイド猫!!」
応援する声は、先ほどと違ってきている。賭けによってお金が絡んでくるので手のひらは大回転だ。
ランランボーは見た目から拳による近接戦闘を得意とした選手に見える。
間合を詰めたくてもハクレイの出方を警戒しているのだろう。
だが、その睨み合いの時間をハクレイに与えてしまったのが敗因となる。
先に仕掛けたのはハクレイ。
無詠唱でランランボーの足元を爆発させる。威力は小さくダメージにはならないが視線を外す隙を作るには十分。
一気に詰め寄るハクレイ。接近戦に自信があるランランボー選手は、それに気づき、待ってましたとばかりに構える。
拳の打ち合いになるのかと思った瞬間にハクレイの姿がふわりと消える。
幻影だと気づいた時にはハクレイがランランボーの後ろを取り、首に短剣が刺さり始めていた。
「動かないでください。ワイバーンの皮でもスライムのようによく切れる短剣です。下手に動くと太い血管が切れて死にますよ」
「……見事だ。俺の負けだ」
審判が近づき
「ランランボー選手負けを認めたため、勝者ニャンダーマスク選手!!」
大きな歓声と、大穴を狙った者達のため息が少し。
そして両者に拍手が贈られた。
短剣をゆっくり離すと同時に傷口にケアの魔法をかけて治療をした。
「強いわけだ。それだけの魔法を操りながら、近接戦闘もできる。師は誰だ?」
「師匠の名はゼンです」
「聞いたことのない名だな。だが良い師なのであろう」
「強いですよ。勝てたことなどありませんから」
「そうか、上にはまだ上がいるのか。この世界は広いな」
「そうですね。そのまた上もいますのでこの道は険しいです」
「ふっ、想像もつかん。お互いに鍛錬を積むしかないな。またいつか機会があれば手合わせ願うぞ」
「お待ちしております」
ハクレイの目くらましから、背後を取るまでほんの数秒。試合自体は1分もかかっていない。
相手の得意とする土俵を避けて戦うのも1つの作戦だ。
ただ、あっという間の出来事過ぎて観客達の物足りなさは否めない。スカートがひるがえる隙さえ無かったのだ。
二回戦はあの488ダメージを出した二次予選2位通過の剣士と、ハクレイに話しかけていた自称優勝候補の二次予選3位通過の選手。
早くも上位が潰し合う形となっている。客達も好カードに期待を寄せているようだった。
「両者前へ! 審判が戦闘続行不可能と判断した場合は負けとします。但し相手が試合中に死亡した場合は無効試合となります。降参した相手への攻撃は禁止です。何か質問は?」
「無いようですので……。始め!!」
剣士は落ちるように前に出る。歩法による身のこなしは熟練の技を感じさせる。
一方優勝候補の腰袋がアイテムボックスだったようで長い槍を取り出す。
「その剣のリーチで僕に勝てるとでも?」
その挑発をものともせず間合いを詰める剣士。
剣士は素早い斬撃を浴びせ、それを必死に槍で捌きはしたが、槍は不慣れなのか押されている自称優勝候補。
一度距離を取り、槍をな投げつけ武器を変える。
次に取り出したのは双剣だ。
「い、いいか? 降参するなら今のうちだぞ。僕の一番は双剣なんだからな」
「なら最初からそれで来い!」
剣士の声に怒りが混じっているようだった。手加減をされていたと感じたならそうだろうか。
一番と言い放った割には、両手の剣を十分に発揮しているとは言いづらく、片手だけで精一杯の様子。
しばらくすると双剣を投げつけながらまた距離を取り息を整える。
「な、なかなかやるじゃないか。だったらとっておき見せてやる」
そしてアイテムボックスから取り出したのは魔石。
地面めがけ投げつけるとどっと黒い煙が吹き出す。
「さぁ来い!! 巨兵クリゾヘリル!」
声と共にその煙の中に何かが投げ込まれるのが見えた。
すると地面に大きく広がる魔法陣。それを見て剣士が距離を取る。
客達はその呼び名で一斉にざわついている。隣にいたオヤジも顔色が悪い。
「ねぇ、おじちゃん、巨兵クリ何とかっていったい何?」
「嬢ちゃん、巨像物語を知らんのか!?」
「う、うん」
「過去にエルフの国を滅ぼしたとされる巨大な兵の形をした石像のことさ」
「巨大?」
「物語の中だと家も踏み倒すぐらい巨大なんだけどな……」
周囲からも驚きと疑念の声がちらほら。黒い煙はだんだん消えていき、その中から禍々しい魔法陣ともに現れたのは人族の3倍程度大きさの兵士ようだった。
早速、鑑定眼で調べてみる。
(Lv144 試作型人工兵士……試作?)
家より大きい巨兵が完成形だとするなら、これはその前段階のものなのだろうか。
ステータスの中ではHPが異様なまでに高く、そのせいでレベルが高い。
ただ試作型とはいえこの強さだと人族が従えることができるようなものでもないと思っていた。
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