たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
134 / 221

頑張れニャンダーマスク⑤

しおりを挟む
 巨兵が消滅したことで、闘技場は落ち着きを取り戻した。

 しかし警備兵に多くの死傷者が出てしまったため、喧嘩一無双大会は中止となり、無期限延期ということになった。

 賭けは全て払い戻し。残念がる人も多かったが安全を確保しなければならない運営側の対応としては仕方なかったのかもしれない。

 騒ぎの発端となった自称優勝候補は生き延びていたようで捕縛後連行され、最初の標的となった剣士は重症を負っていたとのことで教会へと運ばれたそうだ。

 巨兵を消滅させたとされる私にも事情を聞きたがっていた衛兵がいたが「巨兵は勝手に消えた。私は観客席から見ていただけ。私が次期魔王だから何かしたと勘違いしているだけなのでは?」で押し通した。

 となれば長居は無用。逃げるように猫目亭へと向かったのだ。


「ハクレイ怪我は無い?」

「はい、大丈夫です」

「あの剣士は教会に運ばれたらしいけど、神父程度があの怪我治せるのかな」

「カスケードの教会には聖人様がいらっしゃるそうなので、医師や薬師よりも神の奇跡による再生の方が助かるだろうと衛兵が言ってました」

「神の奇跡か、そんなに凄いのかな」

「過去に切断した腕や足も治すらしいですよ」

「あ、切断といえば、あの巨兵の腕を落とすんだから、ビックリしたよ」

「見ていましたが、剣捌きが一太刀も見えませんでした。剣に手をかけた瞬間に剣が納まったといいますか」

「スキルの代償もあるみたいだったけどね。真似しちゃだめだよ。真似しちゃいけないものだから」

「真似してはいけない……わかりました」

「それとさ、あの巨兵変じゃなかった?」

「ハクレイから見ると、ケーナを狙っているようにしか見えませんでした」

「やっぱりそう見えるよね」

「でもなんででしょうか? 最初から仕組まれていたのでしょうか」

「そうかもしれないね」

 巨兵消滅の後、闘技場から離れるレベルの高い魔術師が3人いたのを探索スキルで確認している。
 後にその3人が合流し、探索範囲外に出るとこまではスキルで追っていた。

 範囲内までしか追跡しない理由としては、その3人にはあり得ないほどのアビリティを搭載した、見覚えのあるぬいぐるみがぴったりとストーキングしていたからだ。
 その魔術師たちを泳がせるために今私が出る幕ではないと判断したのだ。

「中途半端に終わっちゃったけど、ハクレイの強さはしっかりと見れたし、これならもう安心して背中を預けられるよ」

「ありがとうございます」

「ここまで鍛えてくれたゼンちゃんには感謝だね」

「師匠にはまだまだ及びませんが、それでもいつかは師匠にも追いつきたいです」

「ゼンちゃん強いでしょ」

「せめて一本でも取りたいのですが、未だに糸口を掴めていません」

「ゼンちゃんは物理完全耐性と魔法完全耐性のスキルを持っているから、ただの攻撃じゃ揺れもしないよ」

「プラチナスライムとの戦闘記録は探してもほとんどありません。唯一酸などによる腐食攻撃が有効だということまでは分かったのですが、ハクレイはそのような特殊な魔法は扱えないので」

「あ、ゼンちゃんは腐食に対して耐性スキルを獲得してるから有効な攻撃にならないよ」

「え……、どうしたら」

「完全耐性スキルの弱点をつくんだよ」

「完全耐性スキルに弱点なんてあるんですか? そんなの知らないです」

「大丈夫、私も最近まで知らなくて空間ごと殴るか、HPを直接減らすしかないと思ってたから。アハハハッ」

「はぁ、笑ごとにならないぐらいどちらも凄い事なんですけど……」

「なーに笑ってるにゃー? いいことでもあったかのかなにゃー?」

 猫目亭近くまで来ると匂いで分かっていたのか、お店の前でミーニャがお出迎えをしてくた。

「いいことあったにゃら歩けなくなるまでいっぱい食べていいくといいニャー!」

「そうだね。今日はハクレイが頑張ったからお祝いだ!」

「にゃー!」

「ありがとうございます」

 喧嘩一無双大会の影響だろうか、ガヤガヤと大盛況な店内。注文はいつものメニューに新メニューを追加した。
 久しぶりに食べる猫目亭料理は、どれも最高な物ばかりだった。

「明日はね、あの剣士のところに行こうと思う」

「気になりますか?」

「もし1人ならパーティーに入れたいねぇ。ハクレイはどう思う?」

「ケーナがそれがいいなら、もちろんいいですよ」

「じゃ、明日教会に行って傷の具合でも聞いてそのついでに誘ってみよう」

「あの……」

「なに? ハクレイ」

「もしかして、本当は力不足でしたか?」

「なんで、急に?」

「ハクレイよりその剣士の方が強いのかなって」

「違うよ。ハクレイは私の背中守ってくれるんでしょ。前衛が足りなくなるじゃないバジェット1人じゃ荷が重いと思ったの」

「そうですよね。バジェット1人じゃ頼りないですよね。よくわかってなくて、すみません」

「嫉妬しちゃった?」

「……はい」

「ちょっと、ハクレイの方が先輩になるかもしれないんだから新入りに意地悪しないでよね」

「……努力します」

 やっぱりハクレイは可愛いな、なんて思いながら調子に乗っておかわりをしまくり、ミーニャの言葉通り歩けなくなるぐらい食べ、ハクレイに背負われて帰路についた。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

乙女ゲームの隠れチートモブ〜誰も知らないキャラを転生者は知っていた。〜

浅木永利 アサキエイリ
ファンタジー
異世界に転生した主人公が楽しく生きる物語 その裏は、、、自分の目で見な。

処理中です...