たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
140 / 221

バレないように①

しおりを挟む
 家に帰って後は寝るだけといきたかったが、気になっていることが1つ。例の着ぐるみたちが追っていたその後の事だ。

 今すぐカスケード家に行くとラルンテが起きている可能性があるので夜中になるまで待つ。

 そして、人族も妖精族も妖魔族も寝静まった頃。自室からカスケード家の自室へと転移する。

「そろそろ来る頃かと思って待ってたよ」

 小さな明かりを付けてベットの上で座って待っていたコピーエーナ。

 言われなくともいつものフュージョンとコピー。もう慣れたものでこの作業も一瞬で終わる。

 そしてじわじわとコピーエーナの記憶が私の記憶に混ざってくる。

 例の着ぐるみ達の行動により導師とやらを手懐けていたていたり、勝手に勇者を名乗り始めていたりと。
  
「私より楽しんでる……」

「まぁ、ここからできる事は限られているわ」

 コピーの方が優秀というか、要領がいいというか、ここにいるコピーエーナは空間収納内のタイムのお供に付けているコピーエーナとは明らかに違いがある。

 あちらは正に私のコピーといっていい。想定内の思考、想定内の行動で驚くことは特にない。
 だが実家のコピーには以前にも私が思いも付かないことをして驚かされる事があった。

「ねぇ……。今中にいるのは本当に私のコピーなの?」

「私はあなたのコピーだよ」

「本当に私なの?」

「私はあなたのコピーだって」
 
 これでは押し問答だ。

 どうせ鑑定眼スキルを使っても複製体に違いなんてない。

 となればいつもの最終手段を使うしかない。

《何をなさいますか?》

 困った時のマインドプロンプトさんだ。

(私のコピーに宿る魂について調べて)

《複製された魂の他に、もう1つの魂を見つけました。が、見失いました》

(魂を見失うって……)

 対抗できるとするなら、同じマインドプロンプトしかない。私だけがこのマインドプロンプトを使っているわけではない。実家のコピーエーナに限っては勝手にナナスキルを使用してスキルを増やしていた事がある。
 
 ならば万能スキルともいえるこのマインドプロンプトを使用して、魂を隠すのは容易なことだ。

「そっか、そうだよね。私だよね。ごめんごめん。じゃ、また来るからよろしくね」

 混乱しそうになったので逃げるようにケーナの自室に戻る。
 
 コピーとはいえ強さは同等。ゴースト系モンスター風情が憑依できる隙などない。

 となると見失った魂について思い当たるのは1つだけ。
 
 それはもともとのエーナ・カスケードの魂だ。

 もしエーナの魂が転生した英太の魂と入れ替わりであるなら、最初に見るのは天井じゃなくて、やたら目立つ格好の死神が目に飛び込んでいたかもしれない。
 私が特別なスキルを発動していなくても死神が見えるのは、幸運の勇者の時に見ていたのでわかる。

 エーナの魂を既に迎えに来ていてすれ違いの可能性もあるが、エーナのHPが完全に0になっていたらあのラルンテが気づいて大騒ぎになっていたはず。
 
 となるとHPが僅かに残っている状態で、エーナの魂もあるところに転生した英太の魂が入ったと考える方がいい。

 ステータスの値は注文通りだったので、魂が入る直前に病気で弱っていた体を強制的に回復と強化を施したと見て間違いない。

 転生後しばらくの間はエーナの魂は潜んでいて、コピーを作った時はそちらに移動していたのだろう。

 フュージョンする時はコピーエーナに残る元のエーナらしい行動や感情の記憶を操作してしていたとするならこちらは気づく事はできない。

 そこまでして魂の存在を隠すのは、死神の存在を記憶の統合で知っているからなのか。あとは私が邪魔だと思って消されるとでも思っているのか。

 あくまで憶測で確証を得たわけでは無いので、こちらとしても知らないふりをしておくことにした。

《何をなさいますか?》

(次回以降フュージョンするときは今考えていた元のエーナの魂に関する記憶だけ統合しないようにできる?)

《できますが……》

(やっぱりできるんだ。ん? どうしたの?)

《いえ、そのようにいたします》

(よろしくね)

 寝る前に統合された膨大な記憶を整理していると思う。
 
 私が全ての魔族・魔物を統べる魔王になって、エーナが国力をも圧倒する歴代最強の勇者になれば、それはもう世界征服したのと同じ事じゃないかと。

「それは、それで逆に面倒だなぁ」

と呟き、フフッと鼻で笑った。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

乙女ゲームの隠れチートモブ〜誰も知らないキャラを転生者は知っていた。〜

浅木永利 アサキエイリ
ファンタジー
異世界に転生した主人公が楽しく生きる物語 その裏は、、、自分の目で見な。

処理中です...