145 / 221
勇者見習い②
しおりを挟む
騒然とするギルド内。
冒険者達の視線は1枚の緊急依頼に釘付けだ。
ドラゴン捜索、達成報酬、金貨1000枚。
捜索依頼の相場は高くても金貨10枚程度になる。家出したとある貴族令嬢の捜索で金貨300枚。今回の額はそれをはるかに超えた破格の報酬になる。
しかし、野次馬状態になっている冒険者達はこぞって依頼を受けるわけでもなく、押し付け合っているようにも思える。
町中で噂になっているドラゴンの捜索だからだ。
突然姿を消すことのできるドラゴンがどれだけ脅威なのかは言うまでもない。
体を見えなくする不可視化のスキルを持つ可能性や、人化などのスキルで姿を変えてしまっている可能性もある。
これに対抗する手段を持たない冒険者達は戦力外だ。
仮に運よく発見できたとしてもドラゴンに見つかり戦闘になった事を考えると勝てる見込みが無ければ金貨1000枚でも手が出なくなってしまうのだ。
命を大事にするのが冒険者の癖だから仕方ない。
それでも町の為にと思う者、金の為にと思う者、功績を残したい者などがぽつりぽつりと受付へと足を進めていた。
緊急依頼が出ている間は通常の依頼は受付できなくなる。
普段なら暇になった冒険者達は、昼前から酒場に行き休息日にするのだが、いつどこにドラゴンが現れるか分からない状態である今、おちおち酒も飲んでもいられない。
そうなるとギルドに溜まっていた方が情報が集まるのですぐに対応がしやすいとのことで、普段の数倍以上の冒険者達でギルドがごった返していた。
そんなギルドに一報が入る。
『子供同士が戦っている』
緊急依頼を受けた1人の冒険者だ。捜索範囲まで行き、見てきたのだという。
子供同士の戦いで家などが破壊される被害を見て全力で走って帰ってきたという。息切れも激しく汗も凄い量だ。
だが、子供の喧嘩のような話に興味を持つ者などいない。子供の喧嘩で家の破壊は誇張しすぎだろと疑う者もいるぐらいだ。
話を聞いている受付嬢も取りあえず落ちついて話をさせようとしている。
相手にされないと分かっていても必死に受付嬢にギルド長に取り次ぐ事を訴えている冒険者。
「頼む、ギルド長に伝えてくれ!! このままじゃ町が、町が壊れちまう!!」
この後にも続けざまに緊急依頼を受けた冒険者がギルドに戻ってきて同じ様な事を言う。
子供同士が戦っていて、その戦闘が激しいあまり周囲の家が破壊され被害を受けているとの事。
少女の方の情報は、次期魔王の家に最近出入りしている少女だということまでは分かったが、少年の方の詳細な情報は出てこない。
顔は知らないが、胸にギルドの紋章があったという話もある。
ギルドに戻ってきた者に対して、子供の喧嘩も止められないのかとヤジを飛ばす者もいたが遠くで大きな爆発の音が聞こえると、
「あの爆発を起こしているのはたぶん俺が見た2人の子供のせいだ。子供の喧嘩を止めるのが得意な奴は早く止めてきてくれ」
の言葉に返す者はいなかった。
やっとのことでギルド長のヘッケンが冒険者達の前にあらわれる。帰ってきた冒険者から子供の話を聞くと顔が徐々に青ざめていった。
少年が勇者見習いのオチョである可能性が大いにあったからだ。
仮にその少女がドラゴンの人化であったとしても、次期魔王の家の者であるならば、こちらから戦闘を仕掛けるようなことはしてはならない。
「大変なことになったかもしれん」
ギルド長がボヤいた言葉の真意を誰も理解することができなかったが、顔を見れば今起きてることが冒険者達を震え上がらせるには十分だった。
建物の被害はケーナの家を中心に広がっていた。まるで局所的に竜巻が起きたかのように家々が潰されている。ただケーナの家だけは今のところ無傷で済んでいる。
「いいかげん止めるのじゃ。爆破魔石まで使いおって。周りを良く見よ。余は知らんからな」
「危険なバケモノを見逃せるわけがありません。この町全ての、いや、それ以上の人族の運命がかかっているのです。諦められるわけありません」
魔法の乱発、爆破魔石の使用など、なりふり構わずフランを攻め続けているのはオチョだった
「それなら余も今はこの町の一員じゃぞ」
「人に化けた者が何を言う!」
炎を纏わせた剣でフランに斬りかかる。
それをヒラリとかわして大きく距離を取る。
「目的は巨大なドラゴンなのじゃろ? そのドラゴンはケーナが連れて行ったのじゃ」
「あなたのレベルを知ってしまった以上、ドラゴンであってもなくても倒すだけです」
「だーかーらー、何度も言わせるな、余はドラゴンではないのじゃ」
今度は光を剣に集め始める。
自分の魔力だけでなく、周囲にある極微量の魔素を収集し自分の魔力に変換させ収束させている。
「おい、小僧その魔法を放つのか? 弱い人族は死ぬぞ」
逃げ遅れた人や、家の窓からこちらの様子を窺う人も見えている。
「多くを救えるのならば……犠牲の上に勝利はあるのです」
「最近はケーナと共にいたからな、小僧のような狂人を忘れておったぞ」
「聖なる光よ。悪を滅ぼす力となりて敵を殲滅せよ、マテルア!」
剣を天に突き立てると勢いよく光が射出される。大きく弧を描き、フランの真上にくると無数に枝分かれして雨のように降り注ぐ広範囲攻撃。
フランの素早さをもってすれば範囲から逃れることはできたかもしれないが、その場から動こうとせず降り注ぐ攻撃を受け止めた。
冒険者達の視線は1枚の緊急依頼に釘付けだ。
ドラゴン捜索、達成報酬、金貨1000枚。
捜索依頼の相場は高くても金貨10枚程度になる。家出したとある貴族令嬢の捜索で金貨300枚。今回の額はそれをはるかに超えた破格の報酬になる。
しかし、野次馬状態になっている冒険者達はこぞって依頼を受けるわけでもなく、押し付け合っているようにも思える。
町中で噂になっているドラゴンの捜索だからだ。
突然姿を消すことのできるドラゴンがどれだけ脅威なのかは言うまでもない。
体を見えなくする不可視化のスキルを持つ可能性や、人化などのスキルで姿を変えてしまっている可能性もある。
これに対抗する手段を持たない冒険者達は戦力外だ。
仮に運よく発見できたとしてもドラゴンに見つかり戦闘になった事を考えると勝てる見込みが無ければ金貨1000枚でも手が出なくなってしまうのだ。
命を大事にするのが冒険者の癖だから仕方ない。
それでも町の為にと思う者、金の為にと思う者、功績を残したい者などがぽつりぽつりと受付へと足を進めていた。
緊急依頼が出ている間は通常の依頼は受付できなくなる。
普段なら暇になった冒険者達は、昼前から酒場に行き休息日にするのだが、いつどこにドラゴンが現れるか分からない状態である今、おちおち酒も飲んでもいられない。
そうなるとギルドに溜まっていた方が情報が集まるのですぐに対応がしやすいとのことで、普段の数倍以上の冒険者達でギルドがごった返していた。
そんなギルドに一報が入る。
『子供同士が戦っている』
緊急依頼を受けた1人の冒険者だ。捜索範囲まで行き、見てきたのだという。
子供同士の戦いで家などが破壊される被害を見て全力で走って帰ってきたという。息切れも激しく汗も凄い量だ。
だが、子供の喧嘩のような話に興味を持つ者などいない。子供の喧嘩で家の破壊は誇張しすぎだろと疑う者もいるぐらいだ。
話を聞いている受付嬢も取りあえず落ちついて話をさせようとしている。
相手にされないと分かっていても必死に受付嬢にギルド長に取り次ぐ事を訴えている冒険者。
「頼む、ギルド長に伝えてくれ!! このままじゃ町が、町が壊れちまう!!」
この後にも続けざまに緊急依頼を受けた冒険者がギルドに戻ってきて同じ様な事を言う。
子供同士が戦っていて、その戦闘が激しいあまり周囲の家が破壊され被害を受けているとの事。
少女の方の情報は、次期魔王の家に最近出入りしている少女だということまでは分かったが、少年の方の詳細な情報は出てこない。
顔は知らないが、胸にギルドの紋章があったという話もある。
ギルドに戻ってきた者に対して、子供の喧嘩も止められないのかとヤジを飛ばす者もいたが遠くで大きな爆発の音が聞こえると、
「あの爆発を起こしているのはたぶん俺が見た2人の子供のせいだ。子供の喧嘩を止めるのが得意な奴は早く止めてきてくれ」
の言葉に返す者はいなかった。
やっとのことでギルド長のヘッケンが冒険者達の前にあらわれる。帰ってきた冒険者から子供の話を聞くと顔が徐々に青ざめていった。
少年が勇者見習いのオチョである可能性が大いにあったからだ。
仮にその少女がドラゴンの人化であったとしても、次期魔王の家の者であるならば、こちらから戦闘を仕掛けるようなことはしてはならない。
「大変なことになったかもしれん」
ギルド長がボヤいた言葉の真意を誰も理解することができなかったが、顔を見れば今起きてることが冒険者達を震え上がらせるには十分だった。
建物の被害はケーナの家を中心に広がっていた。まるで局所的に竜巻が起きたかのように家々が潰されている。ただケーナの家だけは今のところ無傷で済んでいる。
「いいかげん止めるのじゃ。爆破魔石まで使いおって。周りを良く見よ。余は知らんからな」
「危険なバケモノを見逃せるわけがありません。この町全ての、いや、それ以上の人族の運命がかかっているのです。諦められるわけありません」
魔法の乱発、爆破魔石の使用など、なりふり構わずフランを攻め続けているのはオチョだった
「それなら余も今はこの町の一員じゃぞ」
「人に化けた者が何を言う!」
炎を纏わせた剣でフランに斬りかかる。
それをヒラリとかわして大きく距離を取る。
「目的は巨大なドラゴンなのじゃろ? そのドラゴンはケーナが連れて行ったのじゃ」
「あなたのレベルを知ってしまった以上、ドラゴンであってもなくても倒すだけです」
「だーかーらー、何度も言わせるな、余はドラゴンではないのじゃ」
今度は光を剣に集め始める。
自分の魔力だけでなく、周囲にある極微量の魔素を収集し自分の魔力に変換させ収束させている。
「おい、小僧その魔法を放つのか? 弱い人族は死ぬぞ」
逃げ遅れた人や、家の窓からこちらの様子を窺う人も見えている。
「多くを救えるのならば……犠牲の上に勝利はあるのです」
「最近はケーナと共にいたからな、小僧のような狂人を忘れておったぞ」
「聖なる光よ。悪を滅ぼす力となりて敵を殲滅せよ、マテルア!」
剣を天に突き立てると勢いよく光が射出される。大きく弧を描き、フランの真上にくると無数に枝分かれして雨のように降り注ぐ広範囲攻撃。
フランの素早さをもってすれば範囲から逃れることはできたかもしれないが、その場から動こうとせず降り注ぐ攻撃を受け止めた。
2
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる