たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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勇者見習い②

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 騒然とするギルド内。
 冒険者達の視線は1枚の緊急依頼に釘付けだ。

 ドラゴン捜索、達成報酬、金貨1000枚。

 捜索依頼の相場は高くても金貨10枚程度になる。家出したとある貴族令嬢の捜索で金貨300枚。今回の額はそれをはるかに超えた破格の報酬になる。

 しかし、野次馬状態になっている冒険者達はこぞって依頼を受けるわけでもなく、押し付け合っているようにも思える。

 町中で噂になっているドラゴンの捜索だからだ。

 突然姿を消すことのできるドラゴンがどれだけ脅威なのかは言うまでもない。
 体を見えなくする不可視化のスキルを持つ可能性や、人化などのスキルで姿を変えてしまっている可能性もある。

 これに対抗する手段を持たない冒険者達は戦力外だ。
 仮に運よく発見できたとしてもドラゴンに見つかり戦闘になった事を考えると勝てる見込みが無ければ金貨1000枚でも手が出なくなってしまうのだ。
 命を大事にするのが冒険者の癖だから仕方ない。

 それでも町の為にと思う者、金の為にと思う者、功績を残したい者などがぽつりぽつりと受付へと足を進めていた。

 緊急依頼が出ている間は通常の依頼は受付できなくなる。
 普段なら暇になった冒険者達は、昼前から酒場に行き休息日にするのだが、いつどこにドラゴンが現れるか分からない状態である今、おちおち酒も飲んでもいられない。
 
 そうなるとギルドに溜まっていた方が情報が集まるのですぐに対応がしやすいとのことで、普段の数倍以上の冒険者達でギルドがごった返していた。

 そんなギルドに一報が入る。

 『子供同士が戦っている』

 緊急依頼を受けた1人の冒険者だ。捜索範囲まで行き、見てきたのだという。
 子供同士の戦いで家などが破壊される被害を見て全力で走って帰ってきたという。息切れも激しく汗も凄い量だ。

 だが、子供の喧嘩のような話に興味を持つ者などいない。子供の喧嘩で家の破壊は誇張しすぎだろと疑う者もいるぐらいだ。
 
 話を聞いている受付嬢も取りあえず落ちついて話をさせようとしている。

 相手にされないと分かっていても必死に受付嬢にギルド長に取り次ぐ事を訴えている冒険者。

「頼む、ギルド長に伝えてくれ!! このままじゃ町が、町が壊れちまう!!」

 この後にも続けざまに緊急依頼を受けた冒険者がギルドに戻ってきて同じ様な事を言う。

 子供同士が戦っていて、その戦闘が激しいあまり周囲の家が破壊され被害を受けているとの事。

 少女の方の情報は、次期魔王の家に最近出入りしている少女だということまでは分かったが、少年の方の詳細な情報は出てこない。

 顔は知らないが、胸にギルドの紋章があったという話もある。

 ギルドに戻ってきた者に対して、子供の喧嘩も止められないのかとヤジを飛ばす者もいたが遠くで大きな爆発の音が聞こえると、

「あの爆発を起こしているのはたぶん俺が見た2人の子供のせいだ。子供の喧嘩を止めるのが得意な奴は早く止めてきてくれ」

 の言葉に返す者はいなかった。
 
  
 やっとのことでギルド長のヘッケンが冒険者達の前にあらわれる。帰ってきた冒険者から子供の話を聞くと顔が徐々に青ざめていった。
 
 少年が勇者見習いのオチョである可能性が大いにあったからだ。

 仮にその少女がドラゴンの人化であったとしても、次期魔王の家の者であるならば、こちらから戦闘を仕掛けるようなことはしてはならない。

「大変なことになったかもしれん」

 ギルド長がボヤいた言葉の真意を誰も理解することができなかったが、顔を見れば今起きてることが冒険者達を震え上がらせるには十分だった。


 建物の被害はケーナの家を中心に広がっていた。まるで局所的に竜巻が起きたかのように家々が潰されている。ただケーナの家だけは今のところ無傷で済んでいる。
 
「いいかげん止めるのじゃ。爆破魔石まで使いおって。周りを良く見よ。余は知らんからな」

「危険なバケモノを見逃せるわけがありません。この町全ての、いや、それ以上の人族の運命がかかっているのです。諦められるわけありません」

 魔法の乱発、爆破魔石の使用など、なりふり構わずフランを攻め続けているのはオチョだった
 
「それなら余も今はこの町の一員じゃぞ」

「人に化けた者が何を言う!」

 炎を纏わせた剣でフランに斬りかかる。

 それをヒラリとかわして大きく距離を取る。

「目的は巨大なドラゴンなのじゃろ? そのドラゴンはケーナが連れて行ったのじゃ」

「あなたのレベルを知ってしまった以上、ドラゴンであってもなくても倒すだけです」

「だーかーらー、何度も言わせるな、余はドラゴンではないのじゃ」

 今度は光を剣に集め始める。
 自分の魔力だけでなく、周囲にある極微量の魔素を収集し自分の魔力に変換させ収束させている。

「おい、小僧その魔法を放つのか? 弱い人族は死ぬぞ」

 逃げ遅れた人や、家の窓からこちらの様子を窺う人も見えている。

「多くを救えるのならば……犠牲の上に勝利はあるのです」

「最近はケーナと共にいたからな、小僧のような狂人を忘れておったぞ」

「聖なる光よ。悪を滅ぼす力となりて敵を殲滅せよ、マテルア!」

 剣を天に突き立てると勢いよく光が射出される。大きく弧を描き、フランの真上にくると無数に枝分かれして雨のように降り注ぐ広範囲攻撃。

 フランの素早さをもってすれば範囲から逃れることはできたかもしれないが、その場から動こうとせず降り注ぐ攻撃を受け止めた。
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