たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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勇者見習い①

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 その頃カスケードの町はまたまた大混乱に陥っていた。
 見たことのない大きさのドラゴンが町の上空を横切って行ったのだからそうなるだろう。

 町が壊滅すると恐怖に怯える者。
 教会に逃げ込み神の救済を信じる者。
 また変なのが来たのかと楽観的に思う者。
 
 ドラゴンを見た者の反応はそれぞれ違っていたが、我こそはと立ち向かうものはさすがにいなかった。
 町の人々も冒険者達も情報を探し求めていたものの、明確な情報など出てくるわけなどなく、噂が一人歩きを始める。

 終焉を呼ぶドラゴンが召喚された。
 魔王軍が本気で攻めてきた。
 次期魔王のペットが逃げ出した。
 封印されていたドラゴンが目覚めた。
 などなど。
 
 ドラゴンを見た者は多く、見間違えなどとは言えないぐらいハッキリと目撃されていただけに、ドラゴンがいた事だけは事実なので噂にも妙な信憑性がついてしまう。

 ギルド長のヘッケンも巨大なドラゴンを窓から見ていた。
 自分の目で確認してしまった以上無視できる問題ではない。

 しかし、カスケードのギルドに登録されている冒険者に、あのドラゴンを討伐できるような猛者は浮かんでこない。

 最低でも黒銀級が複数人のパーティー。

 できれば英雄の称号を持つ者。

 万全を期すのであれば勇者が望ましい。

 あのドラゴンを見た後で自分にできることは、本部にできる限りの強者の派遣を依頼することだけなのだから。


 カスケードでは短期間で度々緊急事態が多発していたということもあり、ギルド本部との魔道具による伝達手段が設置されていた。
 特殊な紙に字を書くとそれがそのまま相手側の紙に転写される仕組みになっている。転送程高度な術式を必要としないので要所要所で普及はされているが高価な物だ。

ーーーーーーーーーー
報告

本日、南よりカスケード領上空に巨大なドラゴンを確認。
詳細は不明。

通過はせず領内にて姿を見失い、痕跡を現在捜索中。

戦闘になる可能性があるが対抗手段無し。

故に速やかな勇者派遣を要請する。

ーーーーーーーーーー

 ヘッケンは書き終わると、祈るように魔力を込め文章を送る。返事が来た時のようにと新しい紙を設置すると早速返事の文章が浮かび上がってきた。

「おお、さすが本部は仕事が速くて助かる」

ーーーーーーーーーー

未知の巨大なドラゴンについて

アヤフローラ国内の各地で軍からの目撃情報有り。

バグラ王国方面より飛来したとの情報有り。詳細を確認中。

念のため軍は戦備体制へ移行。

モンスター襲来に備え、ギルドでも白銀以上を召集中。

最終目撃地点の速やかな捜索を行うことを推奨する。

カスケード領が終点で違いないのであればギルドの転移魔法陣の使用を許可。
勇者に準ずる者の派遣をするので用意されたし

ーーーーーーーーーー

 ギルド本部も把握している事態のようで、話が速い。

 ギルドの地下へ走り、3つの鍵がかかっている部屋のドアを開ける。その部屋の床には緻密に書かれた魔法陣。これがギルド本部とカスケードのギルドを繋ぐ転移魔法陣になる。

 所定の場所に拳ほどの大きさの魔石を設置し終わると魔法陣が淡く光り出す。これで受け入れの準備は完了だ。

 転移魔法陣は誰でも使えて便利だが、とにかく燃費が悪い。カスケードギルドの魔法陣は1度の使用で拳ほどの魔石を1個使用するのだが、この1個が金貨500枚以上するので許可がないとギルド長でも使えないのだ。

「俺がここで待つとなると。最終目撃地点の捜索は危険だが、誰かに動いてもらうしかないか……。おい!! 誰かいるか!! 誰か来てくれ!!」

 ヘッケンの声に気づいた受付嬢が地下へと走り、早急に緊急依頼の準備を始めた。
 
「報酬はどれくらいにしておきますか?」

「1000枚だ!」

「銀貨支払いですか?」

「金貨でだ」

「金貨で、1000枚……」

 破格の報酬額に受付嬢が目を丸くしていると、魔法陣の光が徐々に強くなる。片方の転移魔法陣が使われて共鳴しているのだ。
 設置した拳ほどあった魔石は跡形もなく消えていた。それほどまでに魔力を消費したということだ。

「転移者の対応は俺がする。君は緊急依頼の配布を頼む」

「かしこまりました」

 魔法陣の中が光に包まれると、中央には誰かが立っている。
 
「こちらはカスケードのギルドで間違いないですか」

 ヘッケンに話しかけた幼い声。

「ようこそ、ギルド長ヘッケンです。君は?」

「僕は勇者見習いのオチョです。よろしくお願いします」

 見た目は子供。まだ10歳にもなっていないような男の子だ。

「勇者見習い……初めて聞く職業だが」

「ギルド本部の機密事項ですので他の方には秘密にしておいてください。表向きにはギルドから来た調査員ということで」

「俺はいいのか?」

「各支部のギルド長までは開示できることになっています」

 受け答えがしっかりしていて10歳と話している気がしないがやっぱり子供だ。

「巨大ドラゴンの件はどこまで調べていますか?」

「まだほとんど情報が無くてまいっていてな。最終目撃地点へ緊急の捜索依頼を出したところだ」

「わかりました。僕も捜索を手伝います」

「それはありがたいのだが、転移してくる人は他にいないのか?」

「いませんけど……」

 本部から転移してきたのが子供だけということで心配になる。

「オチョ君、君は強いのか?」

 本部から送られてきた人物なので疑いたくはなかったが聞かずにはいられなかった。

「僕ですか。んーどうでしょうか? 10人いる仲間の中では下から3番目になります」

「実戦経験は?」

「まだありません」

 実践経験がものを言うモンスターとの戦闘だが、子供で実践未経験の者をドラゴンの捜索に行かせることが心配でならなかった。

「そんな露骨に心配な顔をしないでください。これでもレベルは133ですから自分の命ぐらいは自分で守ります」

 それを聞いて唖然とするヘッケン。
 レベルだけなら既に黒銀の域に達していて英雄と言ってもいい。足りないのは実戦経験ぐらいだ。逆に実戦経験を積まずにそこまでのレベルに到達させたその方法が気になるところ。

「本部はこんな子供を10人も抱え込んで一体どうする気なんだ」

「あくまでも勇者に育てるのが目標みたいですよ」

「それはいくら何でも……組織としてそこまでの力が本当に必要なのか疑問だな」

「だから機密って事なのかもしれませんね」

 いままで自然発生のように生まれてきた勇者を独自で確保できるとなれば、脅威でしかない。
 建前上、勇者を含め冒険者が国家へ肩入れすることは禁止だ。
 しかし、実際は勇者がいる地域が攻め込まれることなどなく、他の地域への抑止力として機能しているのは明らかだった。
 一番いい例は最強の勇者がいるアヤフローラのフォーリアがそうだ。最強の勇者が力を拠点を構えて以降平和が続いていると聞く。
 
「心配ではあるが、本部の人選を尊重したいと思う。気を付けて行ってきてくれ」

「ありがとうございます。期待に応えられるよう頑張りますね」

 準備を整え、捜索範囲の説明を終えると小さな勇者見習いは駆け出して行った。
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