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魔王⑤
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各国へ激震が走る。
トット・ベルクスの退位、新魔王ケーナの即位。
人族でありながら魔族の王となった少女。バクラ国の狙いを各国が探り始めるが、ケーナについての情報が少ないせいで、策略は漏れることなく噂ばかりが飛び交っていた。
アヤフローラの都市フォーリアでは、新魔王即位の話から暫くしてルマーブ教皇の元に秘密のお手紙が届く。内容は婚約者がまだ決まっていない第4皇女、ルオーシアル・コン・ニライ姫への婚約の申し出だ。
しかし、この婚姻の申し出をどう扱うべきかルマーブ教皇1人では判断できず、信頼する者を呼びつけて4人で話し合いをすることにしたのだ。
集まったのは、枢機卿のリーフ・ブ・シイーロ。同じく枢機卿のスパッツァ・ライドン。そして突然の参加となったらしいギルドトップのレドロスがそこにはいた。
自国出身で平民から若くして魔王にまで成り上がったケーナの人気は、国内ではそれなりにあり祝福する人の方がおおかった。
それと前魔王のトット・ベルクスが平和を望む魔王だということは他国の子供でも知っていることなので、その地位を人族に渡すことで更なる友好を望んでいるととらえられたからだ。
このケーナの人気にあやかるためにも婚姻を進めたいとするルマーブ教皇。
以前にカスケードにいる聖人を処刑しようとしてイメージダウンした件を挽回したい考えがある。
「うちの変わり者の娘で良いなら願ってもない話だ。どうせ貴族相手ではすぐに返品されてしまうのが目に見える。それならば人気の魔王に貰ってもらう方がいいというもの。向こうから申し出た手前、簡単に返品もできんだろう。好感度を上げる為にも婚姻を成立させたいと思うておる」
その意見に待ったをかけるのはイメージダウンの大きな原因を作ったリーフ。
「お待ちください、ルマーブ教皇。確かにあの娘の嫁ぎ先でしたら魔王でも構わないでしょうが、公にしない方がよろしいかと思います。人族とはいえ魔王は魔王です。フローラ教に種族の境はありませんが、人気取りより繋がりを持たせる程度で十分でしょう」
その意見には同意できないという顔で話を聞いているのは、例の公開尋問の提案者でもあったスパッツァ。
「魔王はどこまでいっても魔王であるぞ。少女の皮を被っているだけかもしれぬ。忘れたわけではないと思うが、どこかの魔王のせいで吹き飛んだ土地もあるということ」
スパッツァの意見に同意するのはレドロスだ。
「その通りでございます。私めもスパッツァ様と同じ思いでございます。魔王になるにはそれなりの強さが必要とされており、未確定ではごさいますがケーナは最低でもレベル1000を超えているとトラーゼン様が仰っています。未知の力は脅威であります。それと手を結ぶなどアヤフローラが他の大国の標的になりかねません」
後押しをしてくれると期待していたルマーブ教皇だが、2対2で意見が分かれてしまいややこしさが増す話し合い。
この日は平行線のまま、結局は持ち越しとなった。
(やっと終わったかぁ)
部屋の隅でずっと話し合いを聞いていたケーナ。強さを隠しているのに意外と高い評価に驚く。
ここは空間収納のような特殊な部屋だったので外から中の様子を探るのは難しいと思い、ルマーブ教皇を尾行して一緒に中に入っていたのだ。
もちろん、ナナスキルを使って隠密や潜伏のスキルを凌ぐ新スキル、魔女の不在証明を発動している。スキル発動中はそこに存在しながらこの世界から隔絶された存在となり、この世界のどこにもいなかったとなる、矛盾をはらむ究極のスキルだ。
発動して城に潜入してしまえば、後から痕跡を消す必要もないので今回のような時にはもってこいのスキルになるが、世界から無視されるような疎外感を味わうことにはなる。
(あいつとあいつは怪しい……)
この話し合いで目星をつけたのはスパッツァとレドロス。
その2人が部屋から出た後、コソコソと話を始めたので私も間に入り込んだ。
「急な呼び出しだったが来てくれて助かったぞレドロス」
「いえいえ、スパッツァ様のためでしたら」
「もし私1人だったら、ルマーブ教皇の意見が通ってしまったかも知れぬ」
「確かにその可能性はありましたね。リーフ枢機卿は婚姻自体には反対でなかったようですから」
「あの娘の嫁ぎ先をルマーブ教皇からよく相談されていたから、いいかげん面倒だったのであろうな」
「そうでしたか。しかしながら魔王と婚姻など……」
「絶対にあってはならぬ。東の魔女や北の脳筋共に目をつけられたらアヤフローラが地図から消えるかもしれないのだぞ。あの者たちの魔族への恨みはまだ消えておらんだろうよ」
「ローネバッハでの争いですね」
「40年以上経ったとしても、我々人族が魔族と手を取り合うなどできぬだろうよ」
「確かに東の魔法も、北の武力も人族や野良モンスターを相手にするには過剰戦力になりつつあります。その矛先を誰に向けるのかは分かりきってます」
「ローネバッハにいた魔王は好戦的過ぎた。だがバグラの魔王は遥か昔から自分が生き残る方法をわかっておったのだろう。このまま何もせず余生を過ごしていればよかったもののなぜ今になって動き出したのか」
動き出した理由は私がいるからだ。
その私についてよく知ることができないので手詰まり状態なのだろう。
悩む2人。
もしかしたらこいつら使えるかもしれないと思いつき、エーナの世界に招待することにしたのだ。
(お2人様ごあんなーい)
突如広がる見たこともない世界に硬直している様子。
「ここはいったい……どこなんだ?」
「わかりません。さっきまで廊下にいたはずですが……」
「夢……か?」
寝言のようなことを言っている2人の目を覚ますために、魔女の不在証明スキルを停止させ後ろから元気よく自己紹介をしてみた。
「初めまして、スパッツァさん、レドロスさん。先日魔王になりましたケーナと申します! ご気分はいかがですか?」
トット・ベルクスの退位、新魔王ケーナの即位。
人族でありながら魔族の王となった少女。バクラ国の狙いを各国が探り始めるが、ケーナについての情報が少ないせいで、策略は漏れることなく噂ばかりが飛び交っていた。
アヤフローラの都市フォーリアでは、新魔王即位の話から暫くしてルマーブ教皇の元に秘密のお手紙が届く。内容は婚約者がまだ決まっていない第4皇女、ルオーシアル・コン・ニライ姫への婚約の申し出だ。
しかし、この婚姻の申し出をどう扱うべきかルマーブ教皇1人では判断できず、信頼する者を呼びつけて4人で話し合いをすることにしたのだ。
集まったのは、枢機卿のリーフ・ブ・シイーロ。同じく枢機卿のスパッツァ・ライドン。そして突然の参加となったらしいギルドトップのレドロスがそこにはいた。
自国出身で平民から若くして魔王にまで成り上がったケーナの人気は、国内ではそれなりにあり祝福する人の方がおおかった。
それと前魔王のトット・ベルクスが平和を望む魔王だということは他国の子供でも知っていることなので、その地位を人族に渡すことで更なる友好を望んでいるととらえられたからだ。
このケーナの人気にあやかるためにも婚姻を進めたいとするルマーブ教皇。
以前にカスケードにいる聖人を処刑しようとしてイメージダウンした件を挽回したい考えがある。
「うちの変わり者の娘で良いなら願ってもない話だ。どうせ貴族相手ではすぐに返品されてしまうのが目に見える。それならば人気の魔王に貰ってもらう方がいいというもの。向こうから申し出た手前、簡単に返品もできんだろう。好感度を上げる為にも婚姻を成立させたいと思うておる」
その意見に待ったをかけるのはイメージダウンの大きな原因を作ったリーフ。
「お待ちください、ルマーブ教皇。確かにあの娘の嫁ぎ先でしたら魔王でも構わないでしょうが、公にしない方がよろしいかと思います。人族とはいえ魔王は魔王です。フローラ教に種族の境はありませんが、人気取りより繋がりを持たせる程度で十分でしょう」
その意見には同意できないという顔で話を聞いているのは、例の公開尋問の提案者でもあったスパッツァ。
「魔王はどこまでいっても魔王であるぞ。少女の皮を被っているだけかもしれぬ。忘れたわけではないと思うが、どこかの魔王のせいで吹き飛んだ土地もあるということ」
スパッツァの意見に同意するのはレドロスだ。
「その通りでございます。私めもスパッツァ様と同じ思いでございます。魔王になるにはそれなりの強さが必要とされており、未確定ではごさいますがケーナは最低でもレベル1000を超えているとトラーゼン様が仰っています。未知の力は脅威であります。それと手を結ぶなどアヤフローラが他の大国の標的になりかねません」
後押しをしてくれると期待していたルマーブ教皇だが、2対2で意見が分かれてしまいややこしさが増す話し合い。
この日は平行線のまま、結局は持ち越しとなった。
(やっと終わったかぁ)
部屋の隅でずっと話し合いを聞いていたケーナ。強さを隠しているのに意外と高い評価に驚く。
ここは空間収納のような特殊な部屋だったので外から中の様子を探るのは難しいと思い、ルマーブ教皇を尾行して一緒に中に入っていたのだ。
もちろん、ナナスキルを使って隠密や潜伏のスキルを凌ぐ新スキル、魔女の不在証明を発動している。スキル発動中はそこに存在しながらこの世界から隔絶された存在となり、この世界のどこにもいなかったとなる、矛盾をはらむ究極のスキルだ。
発動して城に潜入してしまえば、後から痕跡を消す必要もないので今回のような時にはもってこいのスキルになるが、世界から無視されるような疎外感を味わうことにはなる。
(あいつとあいつは怪しい……)
この話し合いで目星をつけたのはスパッツァとレドロス。
その2人が部屋から出た後、コソコソと話を始めたので私も間に入り込んだ。
「急な呼び出しだったが来てくれて助かったぞレドロス」
「いえいえ、スパッツァ様のためでしたら」
「もし私1人だったら、ルマーブ教皇の意見が通ってしまったかも知れぬ」
「確かにその可能性はありましたね。リーフ枢機卿は婚姻自体には反対でなかったようですから」
「あの娘の嫁ぎ先をルマーブ教皇からよく相談されていたから、いいかげん面倒だったのであろうな」
「そうでしたか。しかしながら魔王と婚姻など……」
「絶対にあってはならぬ。東の魔女や北の脳筋共に目をつけられたらアヤフローラが地図から消えるかもしれないのだぞ。あの者たちの魔族への恨みはまだ消えておらんだろうよ」
「ローネバッハでの争いですね」
「40年以上経ったとしても、我々人族が魔族と手を取り合うなどできぬだろうよ」
「確かに東の魔法も、北の武力も人族や野良モンスターを相手にするには過剰戦力になりつつあります。その矛先を誰に向けるのかは分かりきってます」
「ローネバッハにいた魔王は好戦的過ぎた。だがバグラの魔王は遥か昔から自分が生き残る方法をわかっておったのだろう。このまま何もせず余生を過ごしていればよかったもののなぜ今になって動き出したのか」
動き出した理由は私がいるからだ。
その私についてよく知ることができないので手詰まり状態なのだろう。
悩む2人。
もしかしたらこいつら使えるかもしれないと思いつき、エーナの世界に招待することにしたのだ。
(お2人様ごあんなーい)
突如広がる見たこともない世界に硬直している様子。
「ここはいったい……どこなんだ?」
「わかりません。さっきまで廊下にいたはずですが……」
「夢……か?」
寝言のようなことを言っている2人の目を覚ますために、魔女の不在証明スキルを停止させ後ろから元気よく自己紹介をしてみた。
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