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魔王④
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朝日が登る前に空間収納内に入れていた人たちをタイムの魔法で眠らせてもらった後、教会のベットに移した。ブハッサたちには負担をかけることになったが「ケーナ様のお役にたてることが誉でございます」と聖人君子のようなことを言っていた。
その中にタイムの魔法が通用しない者が1人いるとのこと。
「あーそれは無視していいよ。こっち預かるから」
今回の件で否応なしにも要因の1つなってしまったエンダードラゴンだ。空間収納内にしまわれた後すぐに人化していたらしい。
家に戻ってエンダードラゴンを空間収納から出すと深々と頭を下げ挨拶してきた。
見た目は背の高いお爺さん。艶のある礼服のような装いが、格式高い雰囲気を漂わせる。
「お初にお目にかかる。人族の少女よ」
「ご丁寧に、こちらこそ初めましてエンダードラゴンさん? 私はケーナ」
「吾は名を持たぬ。おぬしの好きに呼んでもらって構わない」
「それじゃぁ……エンド、でいいかな?」
「ああ、構わん」
「エンドがこの国に来たことでゴタゴタがあってね。そのこと聞いてもらってもいいかな?」
「聴こう」
エンドがテッテに魅了されていたこと、そしてエンドがこの国に来てしまったことなどなど、私が知ってる限りの事をエンドに話した。最初から最後まで表情はピクリとも動かない。
「……争いか。変わらぬな」
「で、ね。私が色々変えたいんだけど、ちょっと手伝ってよ」
「いいだろう」
「え、いいの?」
「おぬしの頼みだからだ」
「断られると思ってたよ」
こちらの事情を最後まで聞いてくれて、その上手伝ってくれるとは言ってみるものだなと。
「力あるものに従うのは魔族だけではない、ドラゴンとて同じだ」
「私がエンドより強いってこと?」
「あの世界を見せられればそのくらいは理解できる。でなければここまで長生きもできん」
「空間収納のことかな」
「ああ、そうだ。あの世界を作り出したのはおぬしだろう。それでも戦わざるを得ない状況だったとしたら、即ち天に火を吹くのと同じこと。何度吹いても何も変わらぬ。逆にお主が力を振るうなら視線だけで息の根を止められてしまいそうだ」
「いい勘してるんだね」
「何故弱く立ち振る舞うのか、こちらが聞きたいぐらいだ」
「よく聞かれるよそれ。ややこしい事を遠ざけるおまじないかな。効き目はうすいけど」
手伝いが必要になるまで、また空間収納内でゆっくりしてもらう事にした。エンドはあの世界をかなりそれなりに気に入ってくれたようだ。
ただゼンちゃんのように、用が済んでもずっと引き篭もる気ではないかとふと思う。
それでもエンダードラゴンという強い協力者を得られたのは大きい。
魔王城のコピーと今一度入れ替わる。
自室からでると、テッテが廊下で待っていた。
「おはようございますわ! ケーナ姉様!」
「おはようテッテ。待ってくれなくてもいいのに」
「丁度来たところですのよ」
「そう?」
「さっ、朝食ご一緒いたしますわ」
言われて空腹に気づく。確かに昨日の夜から食事を忘れていた。
今後のことをまとめて話をしたかったので朝食の場にはトットとシリルも同席してもらった。
テッテは2人きりの朝食でなかったことに少々不満そうだったがそうも言ってられない。
朝食をとりながら家の周りで起きていたことを話す。
テッテはばつが悪そうで俯き気味。
テッテが悪いわけではないのだが、ドラゴンを魅了して無理やり手懐けたことには反省してもらいたい。
「わしから1ついいか」
トットはフランと戦った強い人族に心当たりがあるという。
「もしかしたら、勇者かも知れぬ。と言っても真の勇者とは異なり、半人前の勇者といったような奴じゃ。過去に報告があったのと酷似しているからの。やたらと強く、相手が誰であれ冒険者のように命を守るような戦い方をせんのじゃ。そ奴らは自らを勇者見習いと称したらしいが……」
「だとしたら家の周りで暴れたのと同一人物の可能性があるね」
「待て待て、こちらの情報では複数人とのことだった。ケーナの場合は単独であろう。同一人物を疑うより、この手の者が複数いると考えるのがいい」
自分の後釜がいるなら捨て身のような戦い方にも筋が通る。命を最優先する冒険者とは確かに性質が真逆だ。
勇者見習いが複数いるのであればそれを取り仕切る者も必ずいるはず。そいつをどうやって引っ張り出せばいいものか。
「ケーナよ。わしに1つ考えがある」
「妙案であるといいのだけど」
「アヤフローラの姫に結婚の話を持ちかけたらどうだ?」
「……え?」
「結婚の話を持ちかけるだけであってだな――」
バン!!!!!
魔王城の外まで響くような音が会話を遮る。テッテが両手でテーブルを叩く轟音だ。テーブルが割れてしまうのではないかと心配になるぐらいだ。
「ありえませんわ!! お父様!! ケーナ姉様と結婚するのはわたしですのよ!!」
結婚という言葉に私以上に反応するテッテを一旦座らせる。
「ちょっと黙って、ね!」
ゴホン
トットが咳払いをすると話を続ける。
「実際に結婚するわけではない、あくまで話を持ちかけるのだ。利益を考えるものは賛成とはい言わずとも、すぐに決断をせず保留にするであろうな。こちら側の意図が分らぬうちは判断できんと思うぞ。ただ単純に魔族を嫌う者は即反対するであろうが、教会やギルドと繋がりのある者も反応するはずじゃ。そこから糸口が見えるかもしれぬな」
「ふるいにかけるのならそれでいいかも知れないけど……」
魔王との結婚を考えてくれるものなのかと一瞬不安が頭をよぎったが、トットの隣で微笑む人族であるシリルを見て可能性はあると思えた。
「どうやってそれを知るかだが」
反対する者をこちら側が把握出来なければ話を持ちかけたところで意味が無い。私も協力者がいないか考えを巡らせていた。
「盗み聞きすればいいのですわ」
テッテのドヤ顔での発言に、頭を抱えるトット。
「テッテよ。それが出来たら一番いいかも知れぬが」
「そうね。順風耳のスキルを取得できればある程度の会話は聞こえてくるけど、国を左右する話し合いとなれば音を遮断するスキルや魔法を使うと思うからやっぱりその場に協力者がいないとね」
「でしたらその場に行けばいいのでわなくて?」
「いくらなんでも、危険すぎる」
普通ならリスクが高い。でも、
「私なら行ける。ダンジョンの最下層に行くよりは楽かも」
「さすがケーナ姉様ですわ。わたしもお供いたしますわ」
「ダメッ!」
「ダメじゃ!」
テッテがいたら侵入は楽になるとは思うが、痕跡が残りすぎてしまう気がする。
「ケーナよ。本当に大丈夫なのか?」
「心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫だから」
「わかった。企ての下準備として本日中にケーナが魔王になったことを他国に通達せねばな」
「よろしくね」
その中にタイムの魔法が通用しない者が1人いるとのこと。
「あーそれは無視していいよ。こっち預かるから」
今回の件で否応なしにも要因の1つなってしまったエンダードラゴンだ。空間収納内にしまわれた後すぐに人化していたらしい。
家に戻ってエンダードラゴンを空間収納から出すと深々と頭を下げ挨拶してきた。
見た目は背の高いお爺さん。艶のある礼服のような装いが、格式高い雰囲気を漂わせる。
「お初にお目にかかる。人族の少女よ」
「ご丁寧に、こちらこそ初めましてエンダードラゴンさん? 私はケーナ」
「吾は名を持たぬ。おぬしの好きに呼んでもらって構わない」
「それじゃぁ……エンド、でいいかな?」
「ああ、構わん」
「エンドがこの国に来たことでゴタゴタがあってね。そのこと聞いてもらってもいいかな?」
「聴こう」
エンドがテッテに魅了されていたこと、そしてエンドがこの国に来てしまったことなどなど、私が知ってる限りの事をエンドに話した。最初から最後まで表情はピクリとも動かない。
「……争いか。変わらぬな」
「で、ね。私が色々変えたいんだけど、ちょっと手伝ってよ」
「いいだろう」
「え、いいの?」
「おぬしの頼みだからだ」
「断られると思ってたよ」
こちらの事情を最後まで聞いてくれて、その上手伝ってくれるとは言ってみるものだなと。
「力あるものに従うのは魔族だけではない、ドラゴンとて同じだ」
「私がエンドより強いってこと?」
「あの世界を見せられればそのくらいは理解できる。でなければここまで長生きもできん」
「空間収納のことかな」
「ああ、そうだ。あの世界を作り出したのはおぬしだろう。それでも戦わざるを得ない状況だったとしたら、即ち天に火を吹くのと同じこと。何度吹いても何も変わらぬ。逆にお主が力を振るうなら視線だけで息の根を止められてしまいそうだ」
「いい勘してるんだね」
「何故弱く立ち振る舞うのか、こちらが聞きたいぐらいだ」
「よく聞かれるよそれ。ややこしい事を遠ざけるおまじないかな。効き目はうすいけど」
手伝いが必要になるまで、また空間収納内でゆっくりしてもらう事にした。エンドはあの世界をかなりそれなりに気に入ってくれたようだ。
ただゼンちゃんのように、用が済んでもずっと引き篭もる気ではないかとふと思う。
それでもエンダードラゴンという強い協力者を得られたのは大きい。
魔王城のコピーと今一度入れ替わる。
自室からでると、テッテが廊下で待っていた。
「おはようございますわ! ケーナ姉様!」
「おはようテッテ。待ってくれなくてもいいのに」
「丁度来たところですのよ」
「そう?」
「さっ、朝食ご一緒いたしますわ」
言われて空腹に気づく。確かに昨日の夜から食事を忘れていた。
今後のことをまとめて話をしたかったので朝食の場にはトットとシリルも同席してもらった。
テッテは2人きりの朝食でなかったことに少々不満そうだったがそうも言ってられない。
朝食をとりながら家の周りで起きていたことを話す。
テッテはばつが悪そうで俯き気味。
テッテが悪いわけではないのだが、ドラゴンを魅了して無理やり手懐けたことには反省してもらいたい。
「わしから1ついいか」
トットはフランと戦った強い人族に心当たりがあるという。
「もしかしたら、勇者かも知れぬ。と言っても真の勇者とは異なり、半人前の勇者といったような奴じゃ。過去に報告があったのと酷似しているからの。やたらと強く、相手が誰であれ冒険者のように命を守るような戦い方をせんのじゃ。そ奴らは自らを勇者見習いと称したらしいが……」
「だとしたら家の周りで暴れたのと同一人物の可能性があるね」
「待て待て、こちらの情報では複数人とのことだった。ケーナの場合は単独であろう。同一人物を疑うより、この手の者が複数いると考えるのがいい」
自分の後釜がいるなら捨て身のような戦い方にも筋が通る。命を最優先する冒険者とは確かに性質が真逆だ。
勇者見習いが複数いるのであればそれを取り仕切る者も必ずいるはず。そいつをどうやって引っ張り出せばいいものか。
「ケーナよ。わしに1つ考えがある」
「妙案であるといいのだけど」
「アヤフローラの姫に結婚の話を持ちかけたらどうだ?」
「……え?」
「結婚の話を持ちかけるだけであってだな――」
バン!!!!!
魔王城の外まで響くような音が会話を遮る。テッテが両手でテーブルを叩く轟音だ。テーブルが割れてしまうのではないかと心配になるぐらいだ。
「ありえませんわ!! お父様!! ケーナ姉様と結婚するのはわたしですのよ!!」
結婚という言葉に私以上に反応するテッテを一旦座らせる。
「ちょっと黙って、ね!」
ゴホン
トットが咳払いをすると話を続ける。
「実際に結婚するわけではない、あくまで話を持ちかけるのだ。利益を考えるものは賛成とはい言わずとも、すぐに決断をせず保留にするであろうな。こちら側の意図が分らぬうちは判断できんと思うぞ。ただ単純に魔族を嫌う者は即反対するであろうが、教会やギルドと繋がりのある者も反応するはずじゃ。そこから糸口が見えるかもしれぬな」
「ふるいにかけるのならそれでいいかも知れないけど……」
魔王との結婚を考えてくれるものなのかと一瞬不安が頭をよぎったが、トットの隣で微笑む人族であるシリルを見て可能性はあると思えた。
「どうやってそれを知るかだが」
反対する者をこちら側が把握出来なければ話を持ちかけたところで意味が無い。私も協力者がいないか考えを巡らせていた。
「盗み聞きすればいいのですわ」
テッテのドヤ顔での発言に、頭を抱えるトット。
「テッテよ。それが出来たら一番いいかも知れぬが」
「そうね。順風耳のスキルを取得できればある程度の会話は聞こえてくるけど、国を左右する話し合いとなれば音を遮断するスキルや魔法を使うと思うからやっぱりその場に協力者がいないとね」
「でしたらその場に行けばいいのでわなくて?」
「いくらなんでも、危険すぎる」
普通ならリスクが高い。でも、
「私なら行ける。ダンジョンの最下層に行くよりは楽かも」
「さすがケーナ姉様ですわ。わたしもお供いたしますわ」
「ダメッ!」
「ダメじゃ!」
テッテがいたら侵入は楽になるとは思うが、痕跡が残りすぎてしまう気がする。
「ケーナよ。本当に大丈夫なのか?」
「心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫だから」
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「よろしくね」
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