たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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魔王③

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 コピーエーナが家に帰ると、周辺にいるはずの人の気配の異変に気づく。

 普段から周囲を警戒するために探索スキルは常時発動状態なので、バグラに行く前と帰ってきた後では人の気配が違っていた。
 
 窓の外に目を向けると、まるで天災が残した爪跡のように家々は壊され、あちこちで火の手が上がり、救助活動や消火活動が行われていた。

 範囲が限定的なので戦場になったと思われるが、誰が戦ったのかは分からない。
 
 この家が無事であったことから、フランが何も知らないことはないだろうとすぐにフランを呼び事情を聞く。

 あったことを淡々と話すフラン。
 ギルドが送り込んできた者との戦闘がこの惨事の原因であることは分かった。
 
 もしフランが本気を出していたらこの程度のは済まないので手加減していたのは分かったが、相手が中途半端に強い力を持っていたせいでこうなったのだと。

「なんで子供が……?」
 
 沸々と怒りが込み上げてくる。
 怒りの感情の大部分はエーナの記憶が元となっている。
 
 カスケード領は、カスケード家にとって庭のようなものだ。そこに住む領民は家族のような存在だ。
 領土内を荒らし、大切な人々を無差別に死へと追いやったのだから無感情ではいられなかった。

 その怒りが強すぎて、魔王城にいるエーナへと大きく伝わったのだ。


 コピーが持つ並列思考の一部だけでは他のスキル使用に不足が生じる可能性があったので、オリジナルの私と交代することにした。

「ごめん、テッテ。私が行かなきゃ。あっちが大変な事になってて。入れ替わるね」

「そんな顔されたらもう引き止められませんわ。でも悔しいのでケーナ姉様がわたしの方に目を向けてしまいたくなるぐらい、もう1人のケーナ姉様にいっぱいいっぱい良い事をしてさしあげますわ」

「変なことはダメ」

「手加減はいたしませんのよ」

 同時に空間転移を使うので瞬きより早く入れ代わりが完了する。見られていても分からないはずだが、テッテの様子から見るに違いが分かっていたようだった。


 そういえばハクレイの姿が見えない。

「ハクレイ! ハクレイ!」

「ハクレイは怪我人を助けるために外に出ていったぞ」

 フランはソファでくつろいだままだ。

「もう向かったのね。フランはそのままでいいの?」

「余が出て行っていいのかの? 外に出てまたややこしい事にはしたくないのじゃ」

「だとしても、人族を1人でもいいから助けて。もうヴァンパイアじゃないんだよ」

「……わかったのじゃ。ケーナと一緒ならそうするかの」

 フランと外に出て、まずは被害の状況を探索スキルで確かめる。
 
 まだまだ怪我人は多いみたいだ。

「フラン天使の祝福使って」 

「わかったのじゃ」

 天使の祝福。

 優しく輝く光の粒が辺り一面に広がる。

 その効果は運が上昇するだけではない。天使の祝福の対象者は、HPが継続的に回復されるので救出までの時間稼ぎぐらいにはなるし、多少の怪我ならこれで治る。

 私はHPがわずかでも残っている者を見つけては空間収納内に放り込む。中のタイムに片っ端から肉体と記憶を怪我をする前の状態まで時間を戻してもらう。ちょっとだけ記憶喪失になるが大怪我の記憶があるよりはましだ。

 30人ぐらいを入れたところで 

⦅ケーナ様ぁ、もう、魔力がギリギリですぅ⦆

 ポンポンと送り込んだせいでタイムが悲鳴のような念話を送ってくる。
 
「あと4人だから頑張って」

⦅はい。……頑張ります⦆

 無理と言わないだけ偉いなと感心してしまった。後で労わないと。

 無我夢中だったが助けられる命は全て助けることができた。残りの人は完全にHPが0になってしまった方々。
 
 1ヶ所に集めてもらい1人ずつ手持ちの完全回復薬を使っていく。
 もし魂がまだ肉体に残っていれば息を吹き返す可能性があるからだ。だが怪我の度合いも様々で、一番酷い場合は肉片を寄せ集めたようなものまである。それでも私が作った完全回復薬なら欠損部分を補い元の状態に戻してくれるので諦めることはしなかった。

 しかし、肉体は治るものの誰一人として動き出すことはなかった。

 魂はすでに連れ去られてしまった後。ナナスキルで勇者のユニークスキル起死回生を取得して魂を呼び戻そうかとも考えたが、代償が私の魂になる可能性もあるので使えなかった。

 救いがあるとするなら、目を覆いたくなるような酷い怪我をして亡くなった人の遺体が、まるで寝ているような状態まで回復して家族と再会できたことぐらいかもしれない。


 救助活動は一段落。日も沈み瓦礫の撤去は翌朝からということになった。大きな山を越えたのでここからは町の人たちに任せた。

 家に戻り精神的な疲労に襲われソファにぐったりと座ったらそのまま寝てしまった。

 
 数時間寝てしまったのだろうか、ふと目を開けると辺りは真っ暗。夜目スキルを使っても月のない夜だからか暗く感じる。

「起きたかの?」

 向かいのソファに座っていたのはフランだった。

 フランが光魔法を使い、蝋燭のように淡く光る光球を作り出し宙に浮かせてくれる。

「ずっと起きてたの?」

「この体になってから昼でも夜でも起きてることの方が多いかの」

「へぇー。今日はありがと。手伝ってくれて」

「ケーナに言われんかったら、ずっとここに座っておったのじゃ」

「でも手伝ってくれた」

「そうじゃな。それで今日は多くの人族の死を見た。分かっておったがどいつもこいつも簡単に死んでしまうの」

「人族なら普通だよ。私を基準にしちゃダメだよ」

「……その者たちは、余がここにいたから死んでしまったのかの……」

 人族に対してあまり関心がないと思っていたけどそんなことはないようだった。

「それを言い出したしたら一番悪いのは私だよ。でも私は私が悪いなんて思わない。フランを助けて一緒に住むことも、テッテと仲良くなってこっちにドラゴンに乗って会いに来たのも、悪い事なんて思わない」

 (ドラゴンじゃなくても良かった気は少しするけど)

「人族は皆弱いから種族の違う強い者や強いモンスターに恐怖を抱くのは仕方ないこともわかってる。ただ自分が恐怖を感じる対象をとにかく消そうとしている大人が一番悪いと思う」

「……やっぱりケーナは優しいの。余だけでなくあの小僧まで庇うのか。余からすればケーナもまだ小娘に見えるがの」

「だからわかるんだよ。子供は大人の言葉を信じるから。そこを利用して洗脳した大人がいるってこと」

「小僧の主が小僧を切り捨てることを選べば、今回の罪を全て背負うことになるじゃろうな。良くて余も巻き添えといったところかの」

「そうだろうね。どこの誰かは知らないけどバレないとでも思っているのかな」

「どあほうじゃの」

「子供を盾にするなんて……」

「人族は狂っている者ほど上に上に立とうとするものが多いから良くないのじゃ」

「少なからず狂った人は確かにいるね。だから真面目な人は関わりたくないから更につけ上がるんだよ。でも私は簡単には許さないから」

「ケーナならできるじゃろ」

「だね。私、今日から魔王だから。私の魔王を見せてあげるよ」

「今まで魔族でありながら、魔王になど全く興味が無かったが、ケーナが魔王を名乗るなら応援したくなるのじゃ」

「よろしくね」

 家や家族をなくした人が訴えたところで、立場も弱い町の人がギルドからの補償や賠償など期待できない。
 だから私なりの弔い合戦をするつもりだ。
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