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魔王②
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魔力の圧縮。
魔物の体内で見られる現象でその結果が魔石になる。
小さくても大量の魔力が圧縮されていて、一般に流通している魔石は重さが同じなら魔力量も同じとされている。この性質から金貨の代わりとして使われている地域もあるぐらい信用が高い。
魔王の証となる魔石は、この常識が当てはまらない魔石だった。
色も重さも性質も、見たことない特殊な魔石。
鑑定眼で見たその魔石は、大きさから通常なら10000程度の魔力量のところ、100万を超える程の魔力が圧縮されていた。
兎にも角にも魔王としての初仕事は、魔王の証を私の物にすることからだ。
「最初は少しだけ注いでみろ」
という元魔王からのアドバイスをもらい、まぁMP1000ぐらいなら問題ないかと両手で握った魔石に魔力を流し込む。
「どうだ、弾かれずにすんだか?」
「そうみたいです」
「やはりわしの目に狂いはなかった!」
おおおっ! っと関心の声が響く。
大したことをしたつもりがなくても、大層な事だったようだ。
「まだ全然いけますよ」
「無理はせんでいい。今と同じこと毎日繰り返せばそのうち内包する魔力量が増え、色も変化しよう」
もっと注げば色の変化が見えてくるだろうと思い、ギュッと握って一気に100万の魔力をそそぎ込む。
今私ならこの程度では魔力疲れにならない。
この注ぎ込んだ魔力を感じ取ったのだろうかテッテ以外の魔族は静まり返り、テッテ以外の魔族全員が微動だにしていない。
「いやはや、相変わらずといった魔力操作だな。一瞬魔力暴走でも起きたのかと焦ったぞ」
「これくらいは余裕だよ」
そういって手を開くと真っ黒だった魔石は、黒寄りの灰色に変化していた。
「ねぇ、なんか地味だね」
「いや素晴らしい。わしが数年かけても黒のままだったのを一瞬で目に見えて違いがわかる程に……」
魔石をよく見ようと覗き込んでくるが、お構いなしに再び握る。
【アブソーブで吸収した魔力を放出します】
【10000、100000、1000000、10000000、100000000、1000000000……】
放出される膨大な魔力を制御して一瞬で流し込んでいく。
握っている手の中では小石が小さくはずむように動いている。
もしこれが爆破魔石だったらと考えるとこの城ぐらいは吹き飛ぶかもしれないと思っていた。
「待て!!!」
顔に血の気の無いトットが腕を掴んでくる。
「え? え? あー」
「皆が怯えている。それ以上はやめるのだ」
血の気の無いのはトットだけでは無かった。テッテ以外の魔族たちの顔は恐怖と対面したかのようだった。
「もう十分だ。これ以上は必要ない」
「そう、みたいね」
そっと手を広げると、魔石は球状に形を変え、色も真っ白になっていた。
「ねぇ、見て! まるで小さな卵みたい」
「ほんとうですわ。とても綺麗ですの!」
テッテ以外冗談に笑う余裕すらないのだろう、引きつった顔で拍手するのが精一杯のようだった。
これで本当に魔王となった。私に対する対応もガラリと変わる。
城の者で対応が全く変わっていないのはテッテぐらいだろうか。
テッテには城内をあちこち案内してもらって、最後に私の部屋を教えてくれた。
「ケーナ姉様のお部屋とは隣同士ですわ」
「どうせテッテがそうしたんじゃないの?」
「たまたま、偶然ですのよ」
ずっと付いて来てくれたメイド達は一度部屋を出てもらい、私とテッテとハクレイの3人にだけにしてもらう。
そして、最初から本音をぶつけてみる。
「私ね、魔王になったけど、アヤフローラに帰ろうと思うの」
「そんな、ダメですわ。絶対にダメですわ」
両手で私の手を握り、絶対に引き留めようという気持ちが伝わってくる。
「わかってる。それは許されることじゃないってぐらい。だからテッテに選んでもらうの」
「一体何をですの?」
「私を選んでもらうの、ちょっと目を閉じてくれる?」
「わかりましたわ」
目が完全に閉じたことを確認し、手を離す。
ナナスキルを発動。
【コピーにより自身をコピーしました】
現れたのは、コピーエーナ。魂の複製はせずに並列思考の一部をコピーに移すことで意識が宿る。やっていることはもふもふ猫君とあまり変わらない。
「「もう目を開けていいよ。」」
2人のエーナに困惑するテッテ。
「「さぁ、テッテ。どっちが私だと思う?」」
「そんな、そんな。感じる魔力も、聞き取る声も、……臭いも、一緒だなんて」
「「嗅がないで!」」
「でも勘がこちらだと言っていますわ」
右に立っていたケーナに抱きつく。
ギャンブラーの勘なのだろうか、それともなにかの差を見つけだしオリジナルを選んだのだろうか。
(大正解)
だとしてもずっとここに残るのは困ってしまうので、後々コピーと隙を見て入れ代わるしかない。
一応コピーは、ハクレイと一緒に転移魔法で家に帰ってもらう。
そしてテッテと2人きり。
「こんなことができてしまうなんて、ケーナ姉様は本当に凄いですわ」
「誰にも言っちゃダメだからね」
「わかってますわ。でも本当は、魔王になってもケーナ姉様は城から出て行ってしまうと思ってましたの。何者にも縛られない、それも1つの王の姿だと思いますし」
今後の入れ代わりを見透かされているようでむずがゆい。
「でも、こうやってわたしに優しくしてくれるのもやっぱりケーナ姉様ですわ」
「私はいつでも優しいんだよ」
ギューっとテッテを抱きしめる。テッテも負けるかとばかりに力を入れて抱きしめ返してくる。
珍しくテッテとイチャついているところに、家に着いたコピーから意識が伝わってくる。
さほど重要でないことは強く伝わらないようになっているが、それは思わず視線を家の方角に向けてしまうほどの事だった。
魔物の体内で見られる現象でその結果が魔石になる。
小さくても大量の魔力が圧縮されていて、一般に流通している魔石は重さが同じなら魔力量も同じとされている。この性質から金貨の代わりとして使われている地域もあるぐらい信用が高い。
魔王の証となる魔石は、この常識が当てはまらない魔石だった。
色も重さも性質も、見たことない特殊な魔石。
鑑定眼で見たその魔石は、大きさから通常なら10000程度の魔力量のところ、100万を超える程の魔力が圧縮されていた。
兎にも角にも魔王としての初仕事は、魔王の証を私の物にすることからだ。
「最初は少しだけ注いでみろ」
という元魔王からのアドバイスをもらい、まぁMP1000ぐらいなら問題ないかと両手で握った魔石に魔力を流し込む。
「どうだ、弾かれずにすんだか?」
「そうみたいです」
「やはりわしの目に狂いはなかった!」
おおおっ! っと関心の声が響く。
大したことをしたつもりがなくても、大層な事だったようだ。
「まだ全然いけますよ」
「無理はせんでいい。今と同じこと毎日繰り返せばそのうち内包する魔力量が増え、色も変化しよう」
もっと注げば色の変化が見えてくるだろうと思い、ギュッと握って一気に100万の魔力をそそぎ込む。
今私ならこの程度では魔力疲れにならない。
この注ぎ込んだ魔力を感じ取ったのだろうかテッテ以外の魔族は静まり返り、テッテ以外の魔族全員が微動だにしていない。
「いやはや、相変わらずといった魔力操作だな。一瞬魔力暴走でも起きたのかと焦ったぞ」
「これくらいは余裕だよ」
そういって手を開くと真っ黒だった魔石は、黒寄りの灰色に変化していた。
「ねぇ、なんか地味だね」
「いや素晴らしい。わしが数年かけても黒のままだったのを一瞬で目に見えて違いがわかる程に……」
魔石をよく見ようと覗き込んでくるが、お構いなしに再び握る。
【アブソーブで吸収した魔力を放出します】
【10000、100000、1000000、10000000、100000000、1000000000……】
放出される膨大な魔力を制御して一瞬で流し込んでいく。
握っている手の中では小石が小さくはずむように動いている。
もしこれが爆破魔石だったらと考えるとこの城ぐらいは吹き飛ぶかもしれないと思っていた。
「待て!!!」
顔に血の気の無いトットが腕を掴んでくる。
「え? え? あー」
「皆が怯えている。それ以上はやめるのだ」
血の気の無いのはトットだけでは無かった。テッテ以外の魔族たちの顔は恐怖と対面したかのようだった。
「もう十分だ。これ以上は必要ない」
「そう、みたいね」
そっと手を広げると、魔石は球状に形を変え、色も真っ白になっていた。
「ねぇ、見て! まるで小さな卵みたい」
「ほんとうですわ。とても綺麗ですの!」
テッテ以外冗談に笑う余裕すらないのだろう、引きつった顔で拍手するのが精一杯のようだった。
これで本当に魔王となった。私に対する対応もガラリと変わる。
城の者で対応が全く変わっていないのはテッテぐらいだろうか。
テッテには城内をあちこち案内してもらって、最後に私の部屋を教えてくれた。
「ケーナ姉様のお部屋とは隣同士ですわ」
「どうせテッテがそうしたんじゃないの?」
「たまたま、偶然ですのよ」
ずっと付いて来てくれたメイド達は一度部屋を出てもらい、私とテッテとハクレイの3人にだけにしてもらう。
そして、最初から本音をぶつけてみる。
「私ね、魔王になったけど、アヤフローラに帰ろうと思うの」
「そんな、ダメですわ。絶対にダメですわ」
両手で私の手を握り、絶対に引き留めようという気持ちが伝わってくる。
「わかってる。それは許されることじゃないってぐらい。だからテッテに選んでもらうの」
「一体何をですの?」
「私を選んでもらうの、ちょっと目を閉じてくれる?」
「わかりましたわ」
目が完全に閉じたことを確認し、手を離す。
ナナスキルを発動。
【コピーにより自身をコピーしました】
現れたのは、コピーエーナ。魂の複製はせずに並列思考の一部をコピーに移すことで意識が宿る。やっていることはもふもふ猫君とあまり変わらない。
「「もう目を開けていいよ。」」
2人のエーナに困惑するテッテ。
「「さぁ、テッテ。どっちが私だと思う?」」
「そんな、そんな。感じる魔力も、聞き取る声も、……臭いも、一緒だなんて」
「「嗅がないで!」」
「でも勘がこちらだと言っていますわ」
右に立っていたケーナに抱きつく。
ギャンブラーの勘なのだろうか、それともなにかの差を見つけだしオリジナルを選んだのだろうか。
(大正解)
だとしてもずっとここに残るのは困ってしまうので、後々コピーと隙を見て入れ代わるしかない。
一応コピーは、ハクレイと一緒に転移魔法で家に帰ってもらう。
そしてテッテと2人きり。
「こんなことができてしまうなんて、ケーナ姉様は本当に凄いですわ」
「誰にも言っちゃダメだからね」
「わかってますわ。でも本当は、魔王になってもケーナ姉様は城から出て行ってしまうと思ってましたの。何者にも縛られない、それも1つの王の姿だと思いますし」
今後の入れ代わりを見透かされているようでむずがゆい。
「でも、こうやってわたしに優しくしてくれるのもやっぱりケーナ姉様ですわ」
「私はいつでも優しいんだよ」
ギューっとテッテを抱きしめる。テッテも負けるかとばかりに力を入れて抱きしめ返してくる。
珍しくテッテとイチャついているところに、家に着いたコピーから意識が伝わってくる。
さほど重要でないことは強く伝わらないようになっているが、それは思わず視線を家の方角に向けてしまうほどの事だった。
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