たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
149 / 221

魔王②

しおりを挟む
 魔力の圧縮。
 魔物の体内で見られる現象でその結果が魔石になる。

 小さくても大量の魔力が圧縮されていて、一般に流通している魔石は重さが同じなら魔力量も同じとされている。この性質から金貨の代わりとして使われている地域もあるぐらい信用が高い。

 魔王の証となる魔石は、この常識が当てはまらない魔石だった。

 色も重さも性質も、見たことない特殊な魔石。

 鑑定眼で見たその魔石は、大きさから通常なら10000程度の魔力量のところ、100万を超える程の魔力が圧縮されていた。

 兎にも角にも魔王としての初仕事は、魔王の証を私の物にすることからだ。

「最初は少しだけ注いでみろ」

 という元魔王からのアドバイスをもらい、まぁMP1000ぐらいなら問題ないかと両手で握った魔石に魔力を流し込む。

「どうだ、弾かれずにすんだか?」

「そうみたいです」

「やはりわしの目に狂いはなかった!」

 おおおっ! っと関心の声が響く。
 大したことをしたつもりがなくても、大層な事だったようだ。

「まだ全然いけますよ」

「無理はせんでいい。今と同じこと毎日繰り返せばそのうち内包する魔力量が増え、色も変化しよう」

 もっと注げば色の変化が見えてくるだろうと思い、ギュッと握って一気に100万の魔力をそそぎ込む。
 今私ならこの程度では魔力疲れにならない。

 この注ぎ込んだ魔力を感じ取ったのだろうかテッテ以外の魔族は静まり返り、テッテ以外の魔族全員が微動だにしていない。

「いやはや、相変わらずといった魔力操作だな。一瞬魔力暴走でも起きたのかと焦ったぞ」

「これくらいは余裕だよ」

 そういって手を開くと真っ黒だった魔石は、黒寄りの灰色に変化していた。

「ねぇ、なんか地味だね」

「いや素晴らしい。わしが数年かけても黒のままだったのを一瞬で目に見えて違いがわかる程に……」

 魔石をよく見ようと覗き込んでくるが、お構いなしに再び握る。

【アブソーブで吸収した魔力を放出します】

【10000、100000、1000000、10000000、100000000、1000000000……】

 放出される膨大な魔力を制御して一瞬で流し込んでいく。
 握っている手の中では小石が小さくはずむように動いている。
 もしこれが爆破魔石だったらと考えるとこの城ぐらいは吹き飛ぶかもしれないと思っていた。

「待て!!!」

 顔に血の気の無いトットが腕を掴んでくる。  

「え? え? あー」

「皆が怯えている。それ以上はやめるのだ」

 血の気の無いのはトットだけでは無かった。テッテ以外の魔族たちの顔は恐怖と対面したかのようだった。

「もう十分だ。これ以上は必要ない」

「そう、みたいね」

 そっと手を広げると、魔石は球状に形を変え、色も真っ白になっていた。

「ねぇ、見て! まるで小さな卵みたい」

「ほんとうですわ。とても綺麗ですの!」

 テッテ以外冗談に笑う余裕すらないのだろう、引きつった顔で拍手するのが精一杯のようだった。




 これで本当に魔王となった。私に対する対応もガラリと変わる。

 城の者で対応が全く変わっていないのはテッテぐらいだろうか。
 
 テッテには城内をあちこち案内してもらって、最後に私の部屋を教えてくれた。

「ケーナ姉様のお部屋とは隣同士ですわ」

「どうせテッテがそうしたんじゃないの?」

「たまたま、偶然ですのよ」

 ずっと付いて来てくれたメイド達は一度部屋を出てもらい、私とテッテとハクレイの3人にだけにしてもらう。

 そして、最初から本音をぶつけてみる。

「私ね、魔王になったけど、アヤフローラに帰ろうと思うの」

「そんな、ダメですわ。絶対にダメですわ」

 両手で私の手を握り、絶対に引き留めようという気持ちが伝わってくる。

「わかってる。それは許されることじゃないってぐらい。だからテッテに選んでもらうの」

「一体何をですの?」

「私を選んでもらうの、ちょっと目を閉じてくれる?」

「わかりましたわ」

 目が完全に閉じたことを確認し、手を離す。
 
 ナナスキルを発動。

【コピーにより自身をコピーしました】

 現れたのは、コピーエーナ。魂の複製はせずに並列思考の一部をコピーに移すことで意識が宿る。やっていることはもふもふ猫君とあまり変わらない。
  
「「もう目を開けていいよ。」」

 2人のエーナに困惑するテッテ。

「「さぁ、テッテ。どっちが私だと思う?」」

「そんな、そんな。感じる魔力も、聞き取る声も、……臭いも、一緒だなんて」

「「嗅がないで!」」

「でも勘がこちらだと言っていますわ」 

 右に立っていたケーナに抱きつく。

 ギャンブラーの勘なのだろうか、それともなにかの差を見つけだしオリジナルを選んだのだろうか。

(大正解)

 だとしてもずっとここに残るのは困ってしまうので、後々コピーと隙を見て入れ代わるしかない。

 一応コピーは、ハクレイと一緒に転移魔法で家に帰ってもらう。
 
 そしてテッテと2人きり。

「こんなことができてしまうなんて、ケーナ姉様は本当に凄いですわ」

「誰にも言っちゃダメだからね」

「わかってますわ。でも本当は、魔王になってもケーナ姉様は城から出て行ってしまうと思ってましたの。何者にも縛られない、それも1つの王の姿だと思いますし」

 今後の入れ代わりを見透かされているようでむずがゆい。

「でも、こうやってわたしに優しくしてくれるのもやっぱりケーナ姉様ですわ」

「私はいつでも優しいんだよ」

 ギューっとテッテを抱きしめる。テッテも負けるかとばかりに力を入れて抱きしめ返してくる。

 珍しくテッテとイチャついているところに、家に着いたコピーから意識が伝わってくる。
 
 さほど重要でないことは強く伝わらないようになっているが、それは思わず視線を家の方角に向けてしまうほどの事だった。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

イジメられっ子世に憚る。

satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

処理中です...