たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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魔王①

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 バグラ王国に転移したケーナとテッテとハクレイの3人は城の裏門から城内へと入る。
 廊下で兵やらメイドやらとすれ違う度に熱い視線が向けられていることに気づいた。

「はっくちゅっ!」

「ケーナ姉様、寒気でもいたしましたか?」

「どこかで噂されてるのかもしれない」

「噂でくしゃみはでませんわ」

「私の国ではそうなの」

「それでしたら、毎日わたしが噂してるのでくしゃみが止まらないことになってしまいますわ」

「それもそうね」

 フフフとなぜか得意げに笑いテッテが立ち止まる。
 
「着きましたわ、こちらの部屋でお待ちになってくださいませ」

 やたらと豪華な待合室。中央にはこれまた豪華なソファーとテーブルだ。特別待遇というものなのだろう。
 
「ハクレイも座ったら? ここは警戒しなくても大丈夫だよ」

「たぶん、警戒したところでハクレイでは……」

「あ、ああ。人族と魔族では生まれた瞬間から差があるから。城内の兵もかなり強そうでしょ? ただの人族じゃ威圧で呼吸もままならないよ」
 
「テッテ様もお強いのですか?」

「テッテの場合、スキルだけは別格だから」

 そのテッテはメイドに何やら話をしている。
 話が終わるとメイドは慌てて部屋を出て行った。

「何話してたの?」

「お父様のご都合を確認しに行ってもらったのですわ」

「忙しかったら後回しでもいいよ」

「最優先でございますの」

「そんな気はしてたけど……」

 忙しいところ申し訳ないが、こちらとしても話は早く終わらせたい。
 
 しばらくすると、多くの足音と共に魔王が部屋に入ってきた。

「おお、我が娘、ケーナよ」

 ぞろぞろと家臣たちや近衛兵、メイドたちも入ってくる。そして魔王トットの隣にはテッテの母親であるシリル・ベルクスまで一緒だ。

「あの時はあまり乗り気には見えなかったのでまだまだ先になるとは思っていたが、こんなにも早く魔王になる決意をしてくれるとは」

「……え?」

「今日は魔王の座を継承をしに来たのだろう?」

「……ん?」

「話は聞いたぞ。テッテのため、我が国のために魔王になると。ほれコレが魔王の証じゃ、受け取るがいい」

 ポンと渡されたのは真っ黒な小さな魔石。小石程度なのに異様に重い。普通の人族じゃ持てないぐらいある。

「え、えっ? ちょっと待って……」

「人族の王は王冠を継承するらしいが、魔族は特別な魔石を継承するのだ。それと戴冠式のような事はせんよ。その魔石の受け渡しで全てが完了だ」

「あ、そうなんですか。いや、そうではなくてですね」

「その魔石の中に込められた魔力にはわしの魔力が込められている。その中にケーナの魔力を注ぎ込めば正式な魔王の誕生だ。中途半端な魔力じゃ弾かれてしまって無理だろうがケーナのあの魔力があれば心配なかろう」

「……?」

 話が進み過ぎている。
 しかも私が魔王になりたいような話になっている。
 まさか、魔王もこうなることを見越してぼやいていたのか。
 これらの事がもっと前からの事なのか。
 誰かの企みでしかない。 

「少々お待ちください」

 まずはテッテに訊かないと。

「テッテ!」
 
 私が目を向けると同時に目を逸らす。

「な、なんですの?」

「魔王のぼやきがつい最近の出来事のように話していたけど本当はいつの事なの?」

「ついこの間ですわ」
 
 魔族のついこの間は、人族にとっての数日前とはまったくもって違う。
 数週間前……いやそれ以上か……?
 時間感覚の差があることを逆に利用されたようだ。

「何日前?」

「そんな細かくは覚えていませんわ」

 この答えで数日前ではないことは確定的だ。
 
 ある程度日が経っていて事が進められている状態。
 
 私も次期魔王として了承してしまっている以上、今更それを反故にはできない。
 
 私が気をつけていればココに来ることはなく回避できていたかもしれないこの事態。

(あーどうしよう。でも、もう、ここまで来たら……)

 家臣や護衛兵、メイドたちもからの熱い熱い視線。嫌とは言わせないプレッシャーを肌で感じる。

(ええい!)

「魔王、やってやろうじゃないの!!」

 その意気込みに感嘆声が上がる。
 魔王は本当に嬉しそうだ。肩の荷が下りたというか、厄介ごとから解放されたとうか、やたら晴れ晴れしている。

「きゃー! ケーナ姉様! 素敵! 結婚して」

「それは、イ・ヤ!」

 半分はやけくそ状態だったかもしれない。
 渡された継承用の魔石に予備の魔力も含めありったけをぶつけてやろうと思った。
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