たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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水平線の向こうに①

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「海が見てみたいのじゃ」

 海を見たことのある者と海を見たことのない者では、海を目の前にした時の反応が面白いほど違うのはこの世界でも一緒だった。
 
 結婚相手になりそうだったお姫様の話をしていたら年齢の話になり、誕生日の話になり、そこからフランがもうすぐ600歳を迎えることが分かった。
 不死のスキルを持つ者にとって年齢など意味が無いのかもしれないが、それでも折角なのだからお祝いをしようという流れになった。

 フランは欲しい物より行ってみたい場所があるそうで、それが ”海” だった

 600歳を迎えるフランでもヴァンパイアの頃はずっと水辺を避け、森の奥に引き籠っていたせいで海を見たことがないそうだ。

 当日は私とハクレイとの3人で行くことになり、バジェットは「錆びるから留守番でいい」そうだ。

 めぼしい場所はガイドブックでチェック済み。決めた場所は浜の広がるカスケードから東の港町になる。あらかじめ千里眼スキルでも見たのでいい景色なのは間違いない。

 空間転移だと旅行気分がなくなってしまうので、大奮発して極楽怪鳥を用意してみた。
 
「海に行ったら何をするのかの?」

「うーん。もっと暑ければ海の中に入って遊んだり、泳いだりするんだけどねぇ。ハクレイは何かしたいことある?」

「ハクレイも、初めてで何をしたらいいのか……」

「あ、そっかそっか」

 過去を考えると海に旅行なんて無いのは当然かもしれない。

「泳ぐとき服はどうするのじゃ? 裸かの?」

「いくらなんでも裸は恥ずかしいよ。水着に着替えるんだよ」

「ほう。水着とな。余は持っとらんぞ」

「でも今回はいいかな。まだ時期的には早いかもだし」

「いや待てケーナ。行くのであれば準備は万端にしておくに越したことはないぞ。それに流水を克服したのじゃ、多少冷たくても海に入ってみたいぞ」

「それもそうだね。あっちは暖かいかもしれないし、一通りは揃えていこう!」

 思いつくものを準備をしようとしたものの、海のないカスケードには浮き輪もパラソルもましてや水着なんてのもない。

 海に近い町にはあることが分かったので、当日着いた先で買うことにした。



 目的地である港町ダクリュオンに極楽怪鳥で向かう。
 空の上からスキルアブソーブを使い、行く先の天気を快晴にしていく。そんなことをしてるとは知らない極楽怪鳥を操るテイマーのおっさんが 

「雲一つ見なかった……空が私達を導いているようだな」

  と詩人のようなことを言っていたのには笑ってしまった。

 到着早々水着を入手すべく水着店に入るが、致命的な問題が起こった。

「かわいくない……」

 この世界で一般向けに売っている水着は水着じゃなくて、濡れても平気な服だ。
 店員に可愛い水着のイメージを伝えたのだが、そういうのはお貴族様御用達のオーダーメイド店でないと売ってないらしい。
 一応買ってはみたが諦めきれず店を出て考える。
 
 葉っぱや貝殻でも水着にはなるだろうが、今求めるのはそれではない。
 
 フランが海を楽しみにしていたのでなんとかせねばと思い、緊急事態としてマインドプロンプトに頼る事にした。

《水着ですか?》

 まだこちらは何も聞いていなのに提案をしてくれる。できる奴はやっぱり違う。

(そう、可愛い水着が欲しいの)

《かしこまりました。可愛い水着を知るために少々記憶を頼らせていただきますがよろしいでしょうか》

(フランと、ハクレイはのはとにかく可愛い水着で、私はシンプルな水着でいいや)

《よろしいのですか? 3つとも可愛い方が――》

(いいのいいの。それにベースがエーナだから何でも似合うよ)

《かしこまりました。……空間収納内にご用意いたしましたのでご確認ください》

(ありがと)

 まず取り出したのは、ハクレイ用の水着、黒ビキニで胸元で結ぶリボンがとてもいい感じ。
 次にフラン用の水着は青っぽい花柄のフリフリビキニ。人化状態の時は見た目はおこちゃまなので似合うだろう。
 そして最後は私の

(旧ス……どこまで記憶を見たんだよっ!)

 紺色のとてもシンプルな水着だった。

 試着する為、先にダクリュオンで一番の宿を取り部屋に入る。
 
 マインドプロンプトさんの仕事に抜かりなし。3人ともサイズはピッタリ。
 
「どうじゃ!」

 フランは子供っぽさがとても可愛らしい。

「ちょっと肌が……防御面で不安が……」

 ハクレイもスタイルがいいのでエレガントでかつ可愛い。

「なんじゃ、ケーナの水着はあまり可愛くないのぉ」

「……とても質素ですね」

「私はこれくらいでいいの。とある国ではその昔、女性が全員着てたぐらい人気なデザインだったんだから」

 そう言い聞かせて水着の上に服をはおる。
 
 海についたらアレをしよう、コレをしようなどプランを立てて意気揚々と目的地である浜辺に到着した。



「うおおおおおお!!全部水か……圧倒されるのぉぉぉおおお」

「向こう岸が見えませんね。思ってたよりも凄く凄く大きいです!!」

 初めての海はフランとハクレイに青い衝撃を残したようだ。
 しかし、浜辺の景色は昨日千里眼スキルで見た時とは様子が一変している。

「兵士かの?」

「たくさんいますね」

(え……、昨日は誰もいなかったのに、なんで?)

 砂浜にはたくさんの軍服を着た軍人がひしめいている。
 海で遊ぼうとしてるのは私達ぐらいで、気まずさから引き返そうか、ほかの浜辺に移動しようかと考えを巡らせていると地元の漁師が声をかけてきた。

「お嬢さん方、随分気が早いね。こんな時期なのに海に入ろうってかい?」

「はい。そのつもりでしたが……」

「天気がいいのに運が悪かったね、今日は見ての通りさ。軍人に目をつけられる前に離れた方がいい」

「明日なら大丈夫でしょうか?」

「いやー分からんね。あっちの港では軍の船が十数隻も停泊してるからな、ここ数日はこんな感じが続くだろうよ。おかげで俺たちも海に出られん」

「あの軍人さんたちは何をしてるのでしょうか」

「ああこれから演習だよ。海の向こうはドボックス帝国だからな。もしもの時の為とはいえ、ここでやると挑発とも受け取られかねんから本当はやめてほしいけどな」

 おおよそ100km以上はあるだろうか、確かに水平線のその先には陸地が見える。大きな船なら一晩でこちらに来れる距離だ。

「あのー、近くに遊べそうな浜辺ってありますか?」

「んーそうだなぁ。この海岸線沿いを少し歩いたところに周りが岩で囲まれた小さな浜辺があるぞ。そこなら演習で使われることもないだろうから大丈夫かもしれんな。ただあまり沖の方には行かないほうがいいかもしれんぞ」

「そうですか、行ってみます。ありがとうございます!」

 親切な漁師のおかげで小さな浜辺を見つけることができた。小さいといっても3人なら十分広い。

「よかったのじゃ、いい所が見つかったの」

「軍人の横で遊ぶわけにはいかなかったからね。教えてもらって助かったよ」

「ハクレイも人目があるよりこちらの方が落ち着けます」

「そうだね。岩に囲まれてるから落ち着くね……。あ、ハクレイそのままだと皮膚が焼けちゃうからこれを全身に満遍なく塗って」

「こちらは何でしょうか?」

 取り出したのはUVカット100%のお手製クリームだ。もちろん作ったのはナナスキルのアイテム制作のおかげだけど。売っていなかったので仕方ない。

「ハクレイの肌は白いから、日差しを浴び続けると肌が真っ赤になっちゃうよ。それを防ぐための薬だよ」

「ありがとうございます」

 ぬりぬりと足の方から塗っているが時間がかかりそうなので

「背中は私が塗ってあげるね」

「えっ、えっ」

「ほらほら上着脱がなきゃ塗れないでしょ」

「ちょっと待ってください。脱ぎます脱ぎますから」

 ピタッ!

「ひゃったい!」

「これくらい我慢我慢。隙間なく塗らないと効果ないんだから」

「なんじゃ、楽しそうじゃの。余も手伝ってやろうかの」

 ぺちゃー

「はわっ! フランさんお腹はハクレイでも塗れますので!」

「遠慮するでない。どれヘソの中まで」

「ぬぁぁぁぁ!!」

 
 ハクレイに満遍なくクリームを塗り終え、海で遊ぶ準備は整ったのだった。
 ちなみに3人が持つ聖光耐性スキルがSL.F以上あれば日焼けはしないとフランがこっそり教えてくれたので、私は塗らなかった。
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