たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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水平線の向こうに⑪

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「魔王……これが魔王なのか……いやそれ以上……」

 腰が抜けた帝王を立たせるが心ここにあらずといった表情。
 だけどステータスには怪我などないようで一安心。
 じいも自力で立てる程度ではあったけど、他のドボックスの者たちはぐったりとしてうめき声を上げている。

 先ほどまで景色を映し出していたマクラーン魔道具は全て止まっていて、使える魔道具は光を発する魔道具ぐらいだった。

 地下に来るために使った転移の魔道具も使えなくなっており、緊急事態ということもあって私が全員を地上へと転移させた。
 
 そして私は、窓のない部屋で反省中。

「すみません、私がこんな粗相をしてしまって……」

「いや、今回のことに関しては全て隠蔽する。だから謝罪などはしないでくれ」

「マローニア殿、お体は……」

「魔法耐性を上げる腕輪の魔道具があったお陰で大丈夫だ。しかしこの魔道具はもう使い物にはならないだろうな」

「あぁぁ……、そちらは私が代わりの物を用意しますね」

「この程度、気になさるな。それよりも、今回の事でケーナ殿の力をしかと見せてもらった。はっきりと言わせてもらうが、まろはこれほど強大な魔力を感じたことがない。ケーナ殿はいったい何者なのか?」

「私は人族ですけど、鑑定してもそのようになってるはずです」

「まろは魔法に精通しているわけではないが、人族が持ち得る魔力量ではないことぐらいは分かっているつもりだ。それでも人族と言い張るのは、人族側の味方でいてくれるということなのか?」

「……私は魔王ですけど、人族の味方です」

「そうか……ケーナ殿と同盟を結べたことはドボックスを救ったことになるのかもしれないな。間違いをしていたらと思うと、生きた気がせぬ」

 魔力自慢は思った以上の評価をしてもらえたようだ。

 どんなことがあっても、この一件を発表してはいけないと帝王が必死に言うので、今回は『マクラーン魔道具に使われていた大きな魔石の暴走』によるもの、というカバーストーリーを裏に流すこととなった。もちろん表向きには何もなかったということだ。

 ちなみに魔道具の異常は昼頃には回復し、ほとんど元に戻ったそうだ。

 そしてアヤフローラの軍艦は私の大きな魔力反応をしっかりと感知できていたらしく、即時撤退していったらしい。

 これだけ自慢して何もなかった時は、どうしようかとも思ったがあっちにもちゃんと効果があって良かったと思う。

 ただ、この日帝都で起きた怪事件として、魔道具が一時的に使えなくなるというものがあったそうだ。
 帝都では一般家庭でも魔道具が普及していたので、それが使えなくなり大混乱になったとか。

 それと同時に裏では各方面のドボックスの軍が緊急の臨戦体制へと移行していたともいう。
 軍事指令の中枢でもある帝都からの通信が全て途絶え、大魔法の行使や魔力暴走と言える大きな魔力反応を感知したからだ。

 おまけに、あの地下基地ケレブルムにいた者のほとんどが魔力酔いに似た症状を訴えていたそうだ。

 情報が入れば入るほどここに居づらくなってくる。
 いろいろな方面に迷惑をかけてしまったことを考えると、ドボックス観光どころではなくなってしまったので、その日のうちに逃げるように転移魔法で家に帰ったのだった。
 

「ごめんね。せっかくの旅行が……」

「よいよい。そんなに落ち込むでない。余はそれなりに楽しかったぞ」

「ハクレイも楽しかったです。それにケーナの新たな一面も見れた気がしますし」

「そうじゃな」

「どんな一面よ?」

「しっかりしそうで、そうでないところです」

「そうじゃな大暴走じゃったな」

「いやいやいや、全然暴走なんかしてないよ。魔力を使ってもないのに……」

「ケーナはあれでも ”何もしてません” のようなことを言う。あの魔力量は異常じゃぞ、なぁハクレイ、言ってやれ」

「はい、今回は言わせてもらいます。あの魔力量は考えらえる範囲を超えています」

「そんな……ハクレイまで……上限を知りたかっただけだし……」

 ハクレイ曰く、魔力を持つ者は常に体内で微量の魔力を生成していて、最大MPを超えた魔力は体外へと放出されるが、微量なので魔道具や高レベルのスキルで感知しないと分からないらしい。
 それなのに私から漏れ出る魔力が、まるで大波のように押し寄せてきたのだとか。魔力を感じるとか感じないなど言っている場合ではなく。この押し寄せる魔力をどのように対処するべきなのかを考えなければ魔力に溺れてしまうと恐怖を感じたとか。

「ハクレイは魔力を魔力障壁の無駄に重ねることで魔力を消費させ続けたので、体内に流れ込んでくる魔力に耐えることができました」

「普通は肌で感じることさえ無いはずなのにの、それを幾重にも重ねた魔力障壁越しにも関わらず吐き気がしたのじゃ。ひどく酔った時と同じ感覚じゃ」

「……ごめんよて」

「おこってはおらん。今後、あのようなことするなら前もってちゃんと言ってほしいのじゃ」

「そうですね。今回は無事でしたが、次はどうなるのかわかりませんね」

「もうしないよ……」

 スキル、アブソーブの常時発動の手間がMPを上げたせいで1つ多くなってしまったが、発動し続けることは気にしてはいない。それより安易に止めることができないのは不便かもしれない。

「ともあれ、来年の誕生日もまたドボックスに行きたいのじゃ!! 帝王の成長も見たいしのぉ!!」

「……はぁ……考えとくよ」


◇◇◇


 この旅行のせいで大国はもちろん小国でも奇妙な噂が流れることとなった。
 しかし、それを信じる者のほうが希な内容で

『超広範囲で魔道具を使用できないようにする魔法が作られた』
 とか
『どこかの海軍が魔王を追いかけ回していた』
 とか
『帝国は巨大な魔力を持つモンスターを地下に飼っている』
 とか
『魔王の付き人の白い人は脱ぐと凄い』
 とか

 残念ながら、噂を確かめる手段は無いので、どれも飲み屋でのネタ程度どまりだったようだ。

 ただ1つだけ信憑性が高い噂があった。
 
 それは

『ドボックスの帝王の身長が最近伸びている』

 だそうだ。
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