たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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水平線の向こうに⑩

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「なにも言わなくてよいぞ」

 朝の食事で帝王と再び顔合わせ。非公式なのは相変わらずらしく、また窓のない部屋だ。

 ニコニコしているフランの横で謝罪をしようとしたが、すまし顔の帝王がそれを止めた。機嫌がいいフランの様子からするとまぁ楽しめたのだろうか……
 フランが何かを言いたそうな雰囲気がちょっと鬱陶しいぐらいだ。

 とはいえ粗相が許されたのであれば願ってもないことで。

「朝の食事から付き合わせてしまって申し訳ない。本日は急に忙しくなりそうでな。時間を取れるのはこの時間ぐらいなんだ」

「いえいえお気になさらず。でしたら今日は帝都の散策でもしようかなと……何かあったのですか?」

 事情をツッコまれるのは嫌かなと思ったけど、すんなりと話してくれた。
 
「それが、自国の海域で演習をしていたはずのアヤフローラ海軍がこちらの海域ギリギリまで来ていると連絡があったのだ。こちらとしても無視するわけにもいかないのでな、小競り合いになりそうだ」

 追いまわしてきたあいつらのことかもしれない。
 もしかして、私を探してる? 
 まだ諦めていないのだろうか、それとも海上で待ち伏せているだけなのだろうか。
 私も無視できそうにない。

「アヤフローラはケーナ殿の母国でもあるのだが、もしもの時は応戦しなければならない。こればかりは……」

 この事を敢えて私に話したのは帝王なりの気遣いなのかもしれない。
 ただ今回は私が関わってそうなので、何かいえる立場では無いのだけど、一応同盟のこともあるので一言だけ。

「何かお手伝いしましょうか?」
  
「いやいや、痴話喧嘩に魔導砲を持ち出すようなことだ。勘弁していただきましょう」

 と、断られてしまった。
 付け加えて、秘密裏に結んだ約束を公開するには早すぎるそうだ。
 
 ただ、せっかくなので実際の戦闘を見学したいとお願いしてみたら、あっさりと受け入れてもらえたのは意外だった。

「もしよろしければ我が国の戦力を見た上で、意見を述べてもらいたい」

 知っておくに越したことはなけど、魔王の力も教えてほしいと主張する裏返しなのかもしれない。
 
 私に軍事力を評価できるほどの知識は無いのだけど、知恵を全力でめぐらせればちょっとぐらいあることを信じて快く返事をした。


 案内された部屋には小さな転移魔法陣があり、周囲に設置された魔石を光らせ転移の準備を済ませてあった。

 これを使い海岸へと移動するのかと思いきや、着いた先は城の真下、地下だそうだ。
 
 ここには転移魔法陣を使わなければここに来ることが出来ないという。

「私に教えてしまってよかったのですか?」

「さほど驚いていない様子を見るに、ケーナ殿にとってはその程度のことなのでしょう。でしたら問題ない」

「そ、そうですか……」

 地下程度で驚かないのは、前世の記憶のせいなのは間違いない。ただハクレイがいつも通り冷静で、フランもいつも通りワクワクしているのは私のせいなのかもしれない。

 最深部に続く一本だけの長い通路にも意味があるらしく、万が一敵が侵入してきたときはこの通路ごと埋めてしまうのだとか。

 長い通路の先には ”ケレブルム” と書かれた大きな扉があった。
 ゆっくり開く扉の内部は大きな地下の秘密基地だ。

 いくつも並べられた手のひらサイズの魔石に、ぼんやりと映し出されるのはドボックス各地域の現在の状況。
 そして中央にある見上げる程大きな魔石に映し出されているのはこれから小競り合いになるかもしれない海岸線が映し出されていた。

 他にも見たことのない魔道具がチラホラ並んでいる。

「これらは我が国自慢の魔道具たちだ。特にこの遠くの景色をそのまま見る事のできる特殊な魔石はここにしかないものだ。この魔道具の制作者の名前から取って ”マクラーン魔石”と呼ばれている」

 マクラーン魔石を使えば安全を確保しつつ帝王が現場の状況を知り、直接指示を出すことさえできる。単純とはいえこの世界に似合わないぐらいの魔道具だ。
 
 どうだ、すごいだろ。とドヤ顔をされては褒めるしかない。

「す、すごいですね」

 ここまで見せてもらったのだから気も使う。

 そして肝心のアヤフローラ軍は、海岸からの景色では見ることができず水平線の向こう側にいるらしい。
 近くの沖に見えるのは全て待機しているドボックスの軍艦だそうだ。

「魔力充填、魔導砲発射用意!」

 部屋に響く帝王の声。部下に指示を出している。
 映像からでは見えないものの各軍艦は既にアヤフローラの船影を捉えてるらしい。

「本国の海域に少しでも入り次第発射する。但し初弾は外せ」

 この言葉が即時、各戦艦に伝えられているようだ。

「すぐには撃たないんですね」

「まろとて争いなどしたくはない。避けられられるならそれが一番いい」

「でも撃たないのにどうやって……」

「何をおっしゃるか、それは一番ケーナ殿が知っているではないか。あの主砲に充填させている膨大な魔力反応をあちらに感知してもらうのだよ」

「あ、そうですよねー」

 確かにそれで私も気づかれたのを思い出す。例の消えない火に使った膨大な魔力のこと。
 
 それなら私がお手伝いできるかもともう一度だけ手伝うことを提案してみた。

「確かに強大な魔力量であれば遠くからでもその反応を掴むことは可能だが、いくらなんでもこの城からでは距離がありすぎる。魔王級の魔力とは言え――」

「私、魔力は強いし、見つけてもらった時以上の魔力ならこの安全な場所からでも感知できると思う」

「確かにそうだが……」

 帝王はちょっと呆れている。

「まぁまぁ、ダメもとでもいいからやってみるよ。それにここからなら誰の魔力かなんて分からないでしょ」

 城の地下。海岸までの距離もある。更に水平線の向こう側にいる者へ伝わるようにしなければならないのだから帝王が呆れ顔なのも無理はない。

「ハクレイ、フラン、念のため魔法障壁張ってここにいる人達を守ってくれる?」

「何重にすればいいのじゃ?」

「3重ぐらい?」

「ハクレイよ、3重で足りると思うか?」

「たぶん無理です。ケーナが本気で魔力を見せびらかすなら、その3倍はないと」

「余もそう思うぞ」

「2人とも、大げさなんだから」

 前魔王に見せた魔力の圧縮とは違うやり方、すぐ近くに人がいるのだから当然安全第一。

「とりあえずやってみるね」

 慌てて2人が魔力障壁が張る。

 まずは、隠蔽スキルによって隠していたステータスを解除。これによって、解析・鑑定スキルが無くても近くにいれば私の魔力を感じることができるぐらいにはなっている。

 ハクレイは目を輝かせてソワソワし始める一方で、フランは青ざめた表情でため息をついている。
 帝王は後ずさりし、尻もちそうになるのを側近が受け止め支えていた。

 ここからは内包する魔力(MP)を上げてあちらさんに感知させるために、とりあえずはMPをカンストさせてみようと思う。それでダメなら諦めるしかない。
 
 現在のMPは2,531,600。アイテムによる魔力量の補正は無い。
 
 そしてナナスキルの中でも初めて使うスキル。
 
 ”ステータス変更 Cat0” 
 ”自分のステータスの値を自由に変更できます。”

 シンプルだが、下手には使えないと思って無視していたスキルの1つだ。
 
 今回の場合、私のMPはアブソーブの亜空間にある予備分も合わせればステータスの数十万倍もあるので、MPの数値を今更いじったところで使えるMPに大きな変化があるわけではないから大丈夫だろうと……

(まずは2倍)

 MP5,063,200

(次でカンストかな?? また2倍)
 
 MP10,126,400
 
(カンストは8桁なのかな?)

 更に10倍
 MP101,264,000
 
(あれっ? まだ上がるの?)
 
 更に10倍
 MP1,012,640,000

 宝くじのような数値になっていく。当たったことなんてないけど。

(一気にやってみようかな……)

 10000倍
 MP101,26,400,000,000

 ここまでくると、ステータスの表記と私との意地の張り合いのようになってくる。

 ここから更に怒涛の100万倍を決行。

 するとステータス値がなかなか表示されなくなった。
 
 ついに9が並ぶのかと期待して待ってみたが……

 
 …
 ……
 ………
 MP1.01264e+19 

「電卓かよ!!」

 乗数表示となってしまい、カンスト表示にはまだまだ遠いようだった。

「ケーナ!! 何をわけの分からんことを言っておるのじゃ!! もうやめい!! 魔力を抑えるのじゃ」

 集中しすぎてフランに言われるまで気づかなかったが、フランとハクレイ以外誰も立っていない。

 しかし、抑えろといわれても魔力暴走をしているわけではない。ただ内包する魔力が大きすぎるせいでちょっと漏れ出る魔力が尋常じゃない密度と魔力量になっているだけだ。

 急いで隠蔽スキルを発動させ、アブソーブで漏れ出ている魔力を吸収させる。
 完全に抑えきれたようで、大きな溜息とともにフランとハクレイは膝から崩れ落ちた。

「ちょっと多すぎちゃったね……」

 虚ろな目を向けるハクレイがカラカラな声で

「それが、ケーナの……本当の魔力なのですか? もうそれは、人族でも、ましてや魔王でも、ありません……」

 フランの方はブツブツと

「もう余は知らんのじゃ、知らんのじゃ」

 と何故かなげやりになっていた。
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