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魔力の残り香
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あの巨大な魔力は一体なんだったのか。
ドボックス帝国は囮の話を流したが、各国特に大国はそれを鵜呑みになどするわけもなかった。
魔力をしっかりと捉えていたのはバクラとインテルシアの2国。
バグラでは魔王ケーナの魔力の質については解析済みなので、あの巨大な魔力も魔王によるものだと判断することができた。その魔力量も全ての計測器が振り切ってしまい正確な値を計ることはできなかったが、それも確証の一つとなった。
インテルシアも同様に巨大な魔力反応を捉えていたが、魔力暴走にも似た膨大な魔力量をどうやって制御したのか。そもそも国防の中枢とされるマクラーン魔道具の暴走を発表するわけがない。ただそれぐらいの話でないとあの魔力を誤魔化すこともできない事態だった、というところまでは読んでいた。
ドボックスがいったい何を隠そうとしているのか、そこまでは掴めずじまいであった。
逆にあまり関心を持たないのはアヤフローラとオオイ・マキニド。
アヤフローラの軍は警戒しても教会側が神の御加護があれば何が来ようとこの国は大丈夫と、斜に構えているので動くことはない。
オオイ・マキニドでは、その事が最終的に自分達の金になるのかならないのかが重要で、前代未聞の魔力量であっても興味が薄いようだ。
自分の身に火の粉が飛んでこない限り金だけを追いかける姿勢は変わらない。
この一件からしばらくして、ドボックスに宣戦布告をした国が1つだけある。カセンバルという小国だ。ドボックス帝国と隣接する小国で、林業と誇りしかないといわれている独裁国家だ。
町に流れた噂でも真に受けたのか、国の最高権力者が
「ドボックスは我がカセンバル大国を殲滅する魔導兵器を作っている。やられる前にやるぞ!」
と言い放ち宣戦布告したそうだ。
誤解を解くために奔走したドボックスだったが、それも虚しく開戦への流れになる。
周辺の国はこの戦争に対して、完全に沈黙をしていた。帝国の流れ弾を貰いたくないからだ。
最後までカセンバルに賛同する国は現れなかった。
ドボックスがカセンバルの木材を欲しがってたのは周知の事実ではあったが、誇り高きカセンバル国は統合されるのを拒否し続けていた。武力行使せずにいたのは、カセンバルの唯一の取柄ともいえる林業を守るためでもあった。統合しても何もなければただのお荷物でしかないからだ。
そんな特別扱いだったカセンバルが、強引に開戦まで持ち込んだのには裏があるとドボックスは警戒を強める事となったのだ。
◆◆◆
「尻尾はつかめたか?」
帝王の問いにいい返事が返ってこない。
地下のケレブルムからあちこちに指示を出しているが探し物は中々見つかりそうにないそうだ。
「だろうな。何も出てこないということは魔女の悪知恵であろう。他の国に仕掛けさせ、そのどさに紛れてあの魔力について探りを入れようとしているのか、はたまた ”不発弾” でも回収に来たのか……六大魔導師ともなれば単独でも厄介だ侵入には十分に気をつけるのだぞ」
黒幕の尻尾が見つからないのは毎度の事。それだけ上手に隠せるのは大国が陰で糸を引いているからだと予想する。
「戦況はどうだ?」
カセンバルの軍が進軍しているが、戦闘は起きていない。一方ドボックスの精鋭部隊は懐の奥の奥まで潜り込み、仕事をこなしている頃合いらしい。
「何度も言うが、こちらは反撃せずに避難と退却だけに徹して時間を稼げればいい。こんな戦争で血を流すなど馬鹿らしいのだ。世間知らずな上層部の首だけ取れれば事足りる」
日の出から始まった精鋭部隊の作戦は、お昼前には完遂の知らせが届く。
そしてあっさりと終戦となった。お互いの国民の間では、いつ始まっていつ終わったのかもよくわからない者がほとんどだった。
戦争というにはあまりに期間が短く、そして死者の少ないものとなった。
「じい、戦後処理は任せた。あの国は木しか取り柄が無いからな…… 今後も良質な木材が手に入るなら統合でも自治でもどちらでも構わん。あの土地の者達がこれまで通り暮らせる配慮を適当にすればいい。それよりも数日は侵入者に目を光らせろと各方面に伝えておけ」
「はっ、仰せのままに」
「ところでじいよ」
「いかがなさいましたか?」
「ケーナ殿の一件で流したあの囮の話は失敗だったと思うか」
「……小規模ながらも戦争にまで発展してしまったことを考えると、効果は薄かったと言わざるを得ません」
「では、最善手はなんであったと」
「恐れながら申し上げます。魔王様に目を向けさせるべきだったのかもしれません。あの魔力が誰のものなのか公表すればバグラに矛先が向くことになったでしょう」
「この戦争は回避できたかもしれないが、ケーナ殿はよく思わんぞ。それなら今の状況の方が最善に思えるぐらいだ」
「でしたら結果的に囮の話が失敗して良かったのではないでしょうか」
「そう、なるのか…… 上手くいかんな」
「そんなものでございますよ」
後にカセンバルは属領化、フォレストランプと名を変え、林業だけでなく森林浴が楽しめるリゾート地へと変化を遂げる事となったのだった。
ドボックス帝国は囮の話を流したが、各国特に大国はそれを鵜呑みになどするわけもなかった。
魔力をしっかりと捉えていたのはバクラとインテルシアの2国。
バグラでは魔王ケーナの魔力の質については解析済みなので、あの巨大な魔力も魔王によるものだと判断することができた。その魔力量も全ての計測器が振り切ってしまい正確な値を計ることはできなかったが、それも確証の一つとなった。
インテルシアも同様に巨大な魔力反応を捉えていたが、魔力暴走にも似た膨大な魔力量をどうやって制御したのか。そもそも国防の中枢とされるマクラーン魔道具の暴走を発表するわけがない。ただそれぐらいの話でないとあの魔力を誤魔化すこともできない事態だった、というところまでは読んでいた。
ドボックスがいったい何を隠そうとしているのか、そこまでは掴めずじまいであった。
逆にあまり関心を持たないのはアヤフローラとオオイ・マキニド。
アヤフローラの軍は警戒しても教会側が神の御加護があれば何が来ようとこの国は大丈夫と、斜に構えているので動くことはない。
オオイ・マキニドでは、その事が最終的に自分達の金になるのかならないのかが重要で、前代未聞の魔力量であっても興味が薄いようだ。
自分の身に火の粉が飛んでこない限り金だけを追いかける姿勢は変わらない。
この一件からしばらくして、ドボックスに宣戦布告をした国が1つだけある。カセンバルという小国だ。ドボックス帝国と隣接する小国で、林業と誇りしかないといわれている独裁国家だ。
町に流れた噂でも真に受けたのか、国の最高権力者が
「ドボックスは我がカセンバル大国を殲滅する魔導兵器を作っている。やられる前にやるぞ!」
と言い放ち宣戦布告したそうだ。
誤解を解くために奔走したドボックスだったが、それも虚しく開戦への流れになる。
周辺の国はこの戦争に対して、完全に沈黙をしていた。帝国の流れ弾を貰いたくないからだ。
最後までカセンバルに賛同する国は現れなかった。
ドボックスがカセンバルの木材を欲しがってたのは周知の事実ではあったが、誇り高きカセンバル国は統合されるのを拒否し続けていた。武力行使せずにいたのは、カセンバルの唯一の取柄ともいえる林業を守るためでもあった。統合しても何もなければただのお荷物でしかないからだ。
そんな特別扱いだったカセンバルが、強引に開戦まで持ち込んだのには裏があるとドボックスは警戒を強める事となったのだ。
◆◆◆
「尻尾はつかめたか?」
帝王の問いにいい返事が返ってこない。
地下のケレブルムからあちこちに指示を出しているが探し物は中々見つかりそうにないそうだ。
「だろうな。何も出てこないということは魔女の悪知恵であろう。他の国に仕掛けさせ、そのどさに紛れてあの魔力について探りを入れようとしているのか、はたまた ”不発弾” でも回収に来たのか……六大魔導師ともなれば単独でも厄介だ侵入には十分に気をつけるのだぞ」
黒幕の尻尾が見つからないのは毎度の事。それだけ上手に隠せるのは大国が陰で糸を引いているからだと予想する。
「戦況はどうだ?」
カセンバルの軍が進軍しているが、戦闘は起きていない。一方ドボックスの精鋭部隊は懐の奥の奥まで潜り込み、仕事をこなしている頃合いらしい。
「何度も言うが、こちらは反撃せずに避難と退却だけに徹して時間を稼げればいい。こんな戦争で血を流すなど馬鹿らしいのだ。世間知らずな上層部の首だけ取れれば事足りる」
日の出から始まった精鋭部隊の作戦は、お昼前には完遂の知らせが届く。
そしてあっさりと終戦となった。お互いの国民の間では、いつ始まっていつ終わったのかもよくわからない者がほとんどだった。
戦争というにはあまりに期間が短く、そして死者の少ないものとなった。
「じい、戦後処理は任せた。あの国は木しか取り柄が無いからな…… 今後も良質な木材が手に入るなら統合でも自治でもどちらでも構わん。あの土地の者達がこれまで通り暮らせる配慮を適当にすればいい。それよりも数日は侵入者に目を光らせろと各方面に伝えておけ」
「はっ、仰せのままに」
「ところでじいよ」
「いかがなさいましたか?」
「ケーナ殿の一件で流したあの囮の話は失敗だったと思うか」
「……小規模ながらも戦争にまで発展してしまったことを考えると、効果は薄かったと言わざるを得ません」
「では、最善手はなんであったと」
「恐れながら申し上げます。魔王様に目を向けさせるべきだったのかもしれません。あの魔力が誰のものなのか公表すればバグラに矛先が向くことになったでしょう」
「この戦争は回避できたかもしれないが、ケーナ殿はよく思わんぞ。それなら今の状況の方が最善に思えるぐらいだ」
「でしたら結果的に囮の話が失敗して良かったのではないでしょうか」
「そう、なるのか…… 上手くいかんな」
「そんなものでございますよ」
後にカセンバルは属領化、フォレストランプと名を変え、林業だけでなく森林浴が楽しめるリゾート地へと変化を遂げる事となったのだった。
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