たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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薬草売りの少女①

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「薬草はいりませんか?」

 ハクレイと買い物帰り、カスケードの街に聞こえてくる少女の声。

 目を向けると、小綺麗にはしているが孤児だろうか…… でも最近は教会で孤児を積極的に集めて世話しているので、もしかしたらどこかの子どもが働いてるだけなのだろう。

 バスケットから飛び出ている薬草は、シナシナにくたびれていて本当に薬草なのかも怪しい。

「ハクレイ、ちょっと待って」

「はい……」 
 
 気になったので歩みを止めてしばらく遠くから見ていても、この少女から薬草を買う冒険者はおらず素通りしていく者ばかりだ。

 それもそのはず、この少女から薬草を買ったところでしっかり精製しなければ満足に回復できないことを知っているからだ。

 どうせなら値が張ってもポーション類は道具屋やギルドなどから買った方がいいのは冒険者の常識だ。いざという時ちゃんと回復できるポーション1本あるかないかで命が助かったという話は酒場の定番だからだ。

「お嬢ちゃん、1番いいのを2つくれ」

 誰にも相手されなくて大変だろうなと思っていたら、若い男が薬草売りの少女に声をかけている。
 
 その言葉にハッと表情が変わり、ゴソゴソとバケットの奥から取り出したのは小さな包み。

 それを薬草で隠すように男にササッと渡す。

 少女はお金を受け取ると、少女は走り出し人混みの中に消えていく。
 男も何も無かったように歩き出す。

 当然周りの人は気にも止めないことだ。隣で見ているハクレイも異様さに気づいていない。見えていたところで、少女が薬草を売っているようにしか見えないからだ。

 ただ私だけが異様さに気づいてしまい、目で追ってしまう。
 握られていて普通には見えにくいが、その小さな包みも、渡されたお金が金貨2枚だったことも、隠れていても千里眼スキルで良く見えていた。
 それにどんなに質の良い薬草でも一掴みでその額にはならない。

(あれは……) 

 更に鑑定眼スキルで小さな包みの中身を鑑定すると

-----------------------

ホワイトディアの角(粉末:高純度)

希少種とされるホワイトディアの角。
粉末を少量を水に溶いて飲むことで、一時的に疲労感や痛みなどを和らげる効果がある。
間を置かずに何度も摂取すると幻覚や酩酊などの副作用があるので注意。
副作用の効果が切れると強い脱力感がある。

-----------------------

 知らなかったがこちらの世界にもあったようだ。
 一時的に元気になるが、その反動で体や精神を壊すアイテム。

 少量でも高額なところも変わらない。

 あの少女の後ろに変な奴がいるのは簡単に想像できる。

「私ちょっと用事ができたから、ハクレイは先に帰っててくれる?」

「わかりました…… 何かありましたか?」

「ちょっとこの町に変なネズミがいるみたい」

「それでしたらハクレイが駆除いたしましょうか」

「ん~、まだどんなネズミか分からないから私が行くよ」

「では先に帰りますね」

 ハクレイと別れて、私は少女の後を追った。
 二重尾行の可能性も考え、魔女の不在証明スキルも発動しておく。これで私の存在を感知できる者はいなくなる。 

 コピーエーナの地道な努力のお陰で、カスケードは大きな事件も悪い組織もない比較的安全な町になってきたのは知っているが、その目をかいくぐり良くないことをするとは凄い事でもある。
 あちらに頼ってばかりじゃこちらの面子がたたないので、たまには私が治安維持のボランティアをすることにした。

 着いた家は一般的な家庭よりちょっと裕福そうな家だ。輩たちのアジトというより、幸せ家族の家と言った方がいい。

 不法侵入にはなってしまうが、治安維持活動のため少女と一緒に入らせてもらう。
 
 「おかえり、はやかったね」

 中には男が1人、当然だがこの子の父親だ。

 「パパ、2つも売れたよ!」
 
 「そうか、良かった。これで数日は何とかなる」
 
 一体なぜ、この少女があんな物を売ることになったのかまだわからない。
 とりあえず父親を鑑定眼で見てみると

--------------------

ブレドニロン 男 37歳 薬師
 
--------------------

 薬師だった。

 薬師であるならあの包みの中身を作れることも分かるが、そもそもそんなことをしなくても十分稼げる職業ではあるはずだ。

 その後は母親が帰ってきて、あたたかな家庭を眺めることとなる。

 少女があの包みを売っていた事が嘘のような光景だ。

 だが母親が帰ってから、あの包みの話が一切出ない。知っているのは父と娘だけなのか……
 これ以上のあの包みについての情報は出てこないと思いそっと抜け出して家に帰った。


「ただいまー」

「遅かったの。何をしてたんじゃ?」

「んー幸せそうな家族眺めてた」

「ネズミ駆除だとハクレイから聞いていたのじゃが、だいぶ違うの」

「ネズミだと思ったんだけどねー ちょっと違ったんだよ。情報が足りてないなぁ」

「それなら情報屋に頼るしかないの」

「情報屋ねー、あいつぐらいしか知らないんだよなぁ」

「悪いネズミほど尻尾を出さんぞ、まずはしっかり調べるほうがいいのじゃ」

「まぁ、そうだよねー」


 翌日、グランジと連絡をとるためギルドに行くことに。
 ギルド内だとさすがに私の事を知っている者も多く、入るなり周囲がざわついている。

 本日は伝言だけなのでさっそく受付嬢に伝言をお願いした。

「伝言、承りました。グランジさんは直近ですと2日前に護衛依頼を受注してますので今日あたり報告に来るかもしれません。その時お伝えしておきますね」

「よろしくお願いね」

「ところで魔王様、魔王様はもう冒険者はお辞めになったのでしょうか?」

「全然辞めてないよ。むしろ冒険したいぐらいだよ」

「そうでしたか、それでしたらお誂え向きの依頼がございますよ! こちらです」

 ここぞとばかり渡された依頼書はどれもこれも難易度の高いものばかり。
 アースドラゴンの討伐や、ダンジョンの未到達領域捜索など。行きたい気持ちもあるのだが……

「私のギルドカードはまだ鉄製なんですけど。レートも全然低いんですけど」

「いえいえ魔王様ともなれば、レート関係なしに受注できるように手配いたします」

「そもそもこういう難しいのは白銀の仕事でしょ、あいつらにちゃんと仕事ふってあげてよ」

「いやーそのー…… 今カスケード町に白銀級の冒険者あまりいないんですよね……」

 受付嬢曰く白銀級冒険者達の怠慢がバレてこの町にいづらくなり、ほとんどが他の町へと拠点を変えてしまったとか。
 残っているのは最近白銀級へと昇格された2人を合わせても全部で4人だけだとか。

「そ、そっか……ギルドも大変だね……」

「そうなんです。だから、魔王様のお力を貸していただけるとこちらも嬉しいのですが」

 魔王の力を借りるとは、なんて邪悪な。
 だがそんなことを言ってられない状況であると溜まった依頼書がものがたっている。

「じゃあちょっとだけ……」

 ドラゴン討伐の依頼を3枚ほど手に取り受注する。

「ありがとうござますぅうう。3つとも期限はありませんが……」

「……ん?」

「……期限は、ありません……」

(あーなるべく早くしてくれってことね)

 ただでさえお願いしている立場が更に条件をつけるのをためらったのだろう。

「ドラゴン程度すぐ終わるよ、安心して」

「ありがとうござますぅうううう」

 伝言だけのつもりが、受付嬢にのせられて3つも依頼を受けてしまった。
 フランにおひとよしなどと馬鹿にされるのが目に見えるが、ドラゴン討伐も治安維持ということにしておく。
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