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レベルの壁

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ハクレイ 女 15歳 人族 白き守護者

LV111 HP 5233 MP 2110 STR 2201 VIT 1824 MND 890 SPD 423 DEX 7230 INT 392 LUK 3

スキル
探究B 身体強化E 体術の心得C 飛脚の心得E 根性E 受け身上手C 見切りF 剣術の心得C 盾の心得C 弓術の心得C 槍術の心得C 大槌の心得C 料理上手C 投擲強化E 錬金術の心得F
精神耐性C 物理耐性E 魔法耐性E 火炎耐性E 水流耐性E 雷電耐性E 氷雪耐性E  土石耐性E  風圧耐性E 闇黒耐性E 聖光耐性B 痛覚耐性D 恐怖耐性D  毒耐性B 麻痺耐性B 疲労耐性B  混乱耐性B 

属性適性魔法
光、火、水、雷、風、空間、時間

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「師匠、ハクレイはもっと強くなりたいです」

 家にあるとある扉からケーナの空間収納内へと自由に行き来することができるハクレイは、今日もまたゼンに特訓をお願いしていた。

⦅おめぇはもうレベル限界だ。これ以上魂詰めても意味ねぇな。ここからは実戦経験積むしかねぇぞぉ⦆

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トクゼンウ 255歳 プラチナスライム/特殊個体 永遠の輝き

LV393 HP 1000 MP 1000 STR 3203 VIT 65355 MND 65355 SPD 3219 DEX 4095 INT 4095 LUK 1

スキル
擬態SS 再生S 分裂S 体積変化S 好奇心A 危機察知A 阻害A 隠密A 身体強化A 指導C 
物理耐性S(SSS) 魔法耐性S(SSS)睡眠耐性S(SSS) 麻痺耐性S(SSS) 毒耐性S(SSS)魅了耐性B 洗脳耐性B 耐性強化 念話S 腐食耐性B  

使役者
エーナ・カスケード(仮)

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「やはりそうでしたか。最近ずっとレベルが上がった感じがしなかったのは限界だからでしたか」

⦅そうだなぁ、人族のレベル限界は100を超えたあたりだと思ったからなぁ。もうそんぐれぇになってんのかもしんねぇな⦆

「師匠、簡単に限界を超える方法はないのでしょうか?」

⦅人族でもレベル限界を取っ払った奴がいるのは知ってっか?⦆

「勇者でしょうか。やはりそれしか道はないのでしょうか」

⦅知ってんのかぁ。勇者はそれなりにつぇからな。人族のレベル限界を超えた奴らばかりだぞ。そもそも人族じゃねーのかもしんねぇけんど⦆

 ゼンは過去に何度か遭遇し、攻撃されたことがあるそうだ。お互いに攻撃が通りづらいのでめんどくさくなる前に全力で逃げるのがお決まりらしい。

「勇者は人族で間違いありません。勇者はハクレイなどよりもレベル限界が高いわけではなく、レベル限界を超えて強くなっているということですね」

⦅そーゆーこったな。ハクレイも勇者になりてぇのか⦆

「いいえ、民衆の期待に応えるような勇者に興味はありませんが、勇者にならないと強くなれないのであれば勇者になります」

⦅なりますって、簡単になれるものなのか勇者ってのは⦆

 勇者の条件は、勇者の称号を持つ者と決まっている。

 そして勇者の称号を手に入れる条件はアヤフローラ教の教えの中に書いてあった。

「どんなに強大な敵にも恐れず、どんな絶望の中でも勝利を諦めず、命を賭して立ち向かう勇敢な者へ女神から贈られる称号とされています」

⦅恐怖からも、絶望からも逃げることが許されねぇのか。しかしよ、勝利することが条件じゃねーんだな。立ち向かうことが条件なのか。そうなったら大体死ぬだろ、人族なんてのは⦆

「それでも命さえ残れば、勇者になれますので。ハクレイは、ケーナのためならできます」

⦅運の良し悪しみたいなもんだろぉ⦆

「なので師匠、お願いがあります」

⦅おいおい、オラと本気で戦ってくれぇとかいわねぇよな⦆

「その通りです」

⦅オラはそこそこ強ぇから本気出したらおめぇ死ぬぞ。で、おめぇ殺したら、ケーナが黙ってる訳ねぇ。そしたらオラが死ぬんだぞ。それくらい分かっかんな⦆

「ハクレイが死ぬのは今ではありません。なので師匠も死にません」

 ゼンはしばらく考え込んだ。
 弟子として育ててきた以上、最後まで面倒を見てやりたい。しかし、ここで死ぬ可能性があるとなると躊躇してしまう。

 それでもハクレイの真剣な眼差しを感じ取ると

⦅……わかった。相手してやる。ただし全力は出さねぇ、が勝たせるつもりもねぇぞ⦆

「ありがとうございます。本気を出してもらえるよう頑張ります」

⦅で、いつにするんだ?⦆

「もちろん、今、ここでです」

⦅本当に勇者になれるか分からねぇが、物は試しだ。いっちょやってみっか!⦆

 その言葉を始めの合図としたハクレイは、ゼンに特大のファイアストームを放ち距離を取る。

 ゼンが基本的には魔力の消費を抑えるために魔法を使わない事を知っているので、ハクレイが有利な距離を選ぶ。

 炎の渦がゼンを取り囲む。
 魔法完全耐性を知っていて放っているのだからただの目隠しにしかならないが、その隙に身体強化スキルと用意していたステータス向上アイテムを使用した。

 無傷のままファイアストームを受けきるとゼンはケーナの姿になっていた。

⦅どうだ? やりにくいか? おめぇが守りてぇ相手だもんな⦆

「擬態スキルですか。いいえ構いませんよ。ケーナ本人でないと分かっていますので問題ありません」

 ゼンのスピードはハクレイを遥かに上回る。せっかく距離を取ったハクレイだったが、一呼吸で詰められ、接近戦へと持ち込まれた。

 ドスッ、バシッ、ドスッ、バスッ

 と鈍い音が重なり合う。

 ハクレイが突き打てば同じく突きを出す。ハクレイが上段を蹴れば同じように蹴り返す。ハクレイの攻撃をゼンが完璧に模倣して、ほとんど同じタイミングで打ち返しているのだ。

 ハクレイは自分が攻撃をするタイミングに合わせられてしまうのでどうしても完璧な防御が取れない。対して物理完全耐性を持つゼンには一切のダメージが入らない。

 じわじわと削られていくのはハクレイ。このままの近接戦闘では勝ち目がないので、自らをも巻き込むような爆炎魔法と自らを守る魔法障壁で身を守りつつ一度距離を取る。

 思った以上に息が上がっているようだった。

⦅諦めるか?⦆

「ハァ、ハァ、何、言ってるんですか……まだまだ、ここからですよ」

 ハクレイが空間魔法と時間魔法を同時に発動させる。

 何かを察したゼンが後ろへと下がる。
 
 ギィン!!

 その瞬間、ゼンが直前までいた空間が縦にズレたのだ。

「これは避けるんですね」

⦅てぇした魔法だ。いつの間に覚えたんだ? あぶねかったぞ⦆

 指定した空間内の物質を一瞬だけ止めて、その範囲の空間をほんの少しズラす。中の者には何が起きているか分からないが、時の流れが戻った時真っ二つに割れてしまう。

「対師匠用の魔法です。必ず切れる、無刀の刃です」

⦅オラを切るってか、やっぱおめぇは自慢の弟子だぁ⦆

「さっきのを避けられるのは思っていてもいませんでしたけど」

 ゼンが空間と時間に干渉するスキルや魔法をもっていないので数少ない攻撃手段となりえる。
 それでも相手が分からない状態での一撃目が重要だったのだろう。焦るように連続で発動する空間と時間の魔法。

 しかし、すぐにこの魔法の最大の弱点に気づいたゼンは、攻撃の手を休めることなく、そしてハクレイに接近攻撃と離脱を繰り返しダメージを与えていった。

 その最大の弱点とは、効果範囲の大きさにある。

 高難易度の空間魔法と時間魔法の同時連続使用となれば今のハクレイでは1回の攻撃範囲は拳ほどまでに小さくなってしまう。
 しかも高速で移動するゼンに、戦闘をしながらとなると空間魔法の制御が上手くいかず狙ったところで発動ができない。

 せっかくの対師匠用の攻撃にも即座に対策を取られてしまい、ゼンの思惑通り多くの無駄撃ちを強いられるハクレイ。
 
 このまま魔力を使い切り諦めてくれることを考えるゼン。容赦なく打撃を与えていく。 

 最終的には一方的になってしまった。


 ハクレイ、残りHP70 残りMP32 ゼン、HP1000 MP1000

 ハクレイは魔力の大量消費による疲労とダメージが重なり、膝をつき呼吸をするのがやっと。

⦅おめぇ、これ以上やっと本当に死ぬぞ⦆

「……あきらめ、られません……」

⦅勇者にならんくても、十分つえーぞ。オラが保証してやる⦆

「……このまま、じゃ、……」

 ズルリ
 と、前のめりになり倒れこむハクレイ。

⦅気、失っちまったか……? でもほんとよくやったぞ⦆

「……」

⦅さて、どおすっかな。ケーナに知らせて回復させるか⦆

「……」

⦅確か、ポーションがあったかな。とりあえずはそれでいっか⦆

 ゼンの視線がハクレイから外れた瞬間。

「タイム!!!」

「はい!! マスタークロック発動!!」

 対象はタイム自身とハクレイを除く空間収納内の全ての時間停止。
 
 異変を感じて後ろに避けようとしているゼンだが、空中で止まってしまっている。

 空間収納内の世界において、時の権限を持つタイムがハクレイの味方についていたのだ。

 『仲間と共にどんなに強大な敵にも恐れず、どんな絶望の中でも勝利を諦めず、命を賭して立ち向かう勇敢な者へ贈られる称号』

 ”仲間と共に”という言葉が本来は入っていることなどアヤフローラ教に興味のないゼンは知らなかった。そしてハクレイはあえてゼンには教えなかった。

「……ありがとう師匠。動かない師匠なら絶対当てられるよ」

 最後の魔力を振り絞り、発動させる無刀の刃。 

 スーーーッ
 
 だが、その空間魔法が吸い取られるように消えていく。

「なーに、やってんの?」

 今ここでタイムのマスタークロックスキルを無視して動けるのはただ一人。

「ケーナ」
「ケーナ様!」

「仮使役とはいえゼンちゃんとは感覚がうっすらと繋がっているからね。急に焦りが伝わってきたから何事かと思えば……喧嘩でもしてたの?」

「いえ、そのようなことは」

「じゃ、なに? ハクレイはボロボロだけど、本気で命の駆け引きしてたの?」

「……そうでもしないと勇者になれないと思って」

「はぁ? いいからじっとしてなさい」

 フルケアをハクレイに施す。

「タイムは時間元に戻して」

「はい!」

 動き出すゼン。

⦅いやー助かったぜ。あんがとな⦆

「ゼンちゃんも、何やってんのよ。その姿、私でしょう」

⦅いやな、ハクレイがどーしても勇者になりてぇっていうからな。試練を与えてやろうって思って⦆

「ハクレイ本気なの?」

 ハクレイはレベル限界の話をケーナにすると。


「……ハクレイの気持ちは十分わかった。でも、勇者になるのは面倒事が増えるからやめてね。その代わり私が勇者以上にハクレイにピッタリの称号をあげる」

 ナナスキル発動、仲間ステータス変更を使用。

 オリジナル称号 白眉 を付与。

 称号追加効果 レベル限界突破 全ステータス3倍 ステータス鑑定妨害 を付与

「どう?」

 称号が与えられた瞬間、レベル上限で溜まっていた経験値が一気にレベルを押し上げていく。
 最終的にはステータス3倍の効果も合わさり、レベルが426になる

「先ほどとはまるで別人のようです。ありがとうございますケーナ」

「まぁこんなで良ければ、いつでも言って。てか無理しないでよね」

「申し訳ありません」

「ちなみに、私が割って入らなかったらゼンちゃんどうなってたの?」

⦅運良く核を真っ二つに割られてたら本当にやられてたかもしれねーが、こっちは分裂した側で核はねぇぞ⦆

「やっぱりそうよね。核は別でしょ。あれが当たっていても勝負は決まってたってことか」

⦅オラに分裂する隙を与えたのがまずかったなぁ。そんでもって分裂したことに気付けなかったしなぁ⦆

「ファイアストームでしょうか……」

⦅ケーナに擬態して注意も引きつけたからな⦆

 初手の魔法が大きな隙を与えてハクレイの敗因となってしまった。強くはなったが実戦経験はまだまだ必要になるようだ。

 ただ、ハクレイがゼンのレベルを超えてしまったので、ハクレイのレベル上げができなくなってしまったが、これからはより実戦的な経験を積むことがハクレイの強さを伸ばすことになる。

 まだまだゼン師匠の役目は続くのだ。
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