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薬草売りの少女⑨
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まずはお試し用を5つ作らせる。これは宣伝用になる物。
「よし、今日のところはこれくらいで勘弁してあげるね」
「成行とはいえ、魔王と商売することになるなんて思ってなかったぜ」
「最後にもう1つ」
「なんだ、まだあるのか?」
「私に会う前に戦った男の事覚えてるでしょ?」
「なんだ、仲間だったのか? 悪いことをしたな……あいつはもう……」
「大丈夫、生きてるから!」
「なっ!? まさか」
「ちゃんと直ってるよ。後で追加の瓶を運ばせるつもりだから仲直りしとくんだよ」
「うっわ。めっちゃ気まずい。許してくれっかな」
「私からもいっておくから」
「そうしてもらえると助かる」
翌日、屋台で働く顔なじみの奥さん達に宣伝用の瓶を渡しておいた。お金を貰わない代わりに宣伝を頼んだのだ。
その後、瓶を100個準備してグランジにおつかいを頼む。ヤマダが少しでも殺気をとばしてきたら次は油断せず全力で相手をするそうだ。
奥様達の井戸端会議のおかげで順調に噂が広がり、いいころ合いで発売日を迎える。
手始めにブレドニロンが経営する薬屋に協力してもらい、疲労回復薬改め砂糖代替甘味料を販売する。3日ぐらいで全部売れればいいかなと思い100個程並べておいたが、予想以上の売れ行きで即日完売したのだった。
買えなかった人も多く、次の入荷を仕切りに聞いてくる程だ。
この人気に驚いたのはヤマダとブレドニロン。10万メルクをあっという間に稼いでしまったのだ。
「完売か……すげーな」
「とても素晴らしいです。薬としても、甘味料としても使えるものが存在するなんて」
「オレの作った薬なんだ、当然だろ!!」
発案は私。
「買占め防止のために1人2瓶までにしといて良かったね」
「今後もここで売ってくれないか?」
「もちろんですとも」
取り分などの交渉も進み、明日からでもまた販売してもらえることとなった。
商売に敏感な商人たちもその砂糖の代わりになる疲労回復薬なるものを欲しがっていたが、どこから仕入れていいのか分からず困っているみたいだった。
「なぁ、魔王。もう瓶が無いがどうしたらいい」
「また私がすぐ作るから安心して。それとこの甘味料は私の瓶でしか売っちゃだめだからね」
ナナスキルのアイテム作製で作り出す特殊な瓶。1000個でも1万個でも一瞬で作り出せる。
「なんでだ? 瓶代稼ぐためか?」
「それももちろんあるよ。だけど本当の狙いは偽物対策」
「今日発売なのに偽物なんてないだろう?」
不思議そうな顔をするのも無理はない。しかし商人の嗅覚を軽んじてはいけない。
「今はないけど、これが売れるとわかれば中身が全く違う物でも似せて売る奴が出てくると思う」
「そうなったら町の奴にはわからねーだろ」
「だからこそ私の瓶が必要なんだよ。町の人でも本物か偽物か一目で分かるようにしてあるんだから」
「ん? あ、あの瓶のジャガイモマークか! 確かにそんなマークのついてる瓶なんて中々見ないな。なかなかいい考えの偽造防止だな」
「……猫マークですけど」
「あっ、あー、マジか……猫か?あれ」
「その猫マークの付いてる瓶が本物、それ以外は偽物ってわけ!!」
ここにも芸術のわからない奴がいたせいで語尾が強くなる。
もし瓶を真似しようとしても、猫マークがついている瓶はもはや芸術品といってもいい物になる。それを作るとなると偽物の方が売価が高くなって偽物を作る意味がなくなってしまうのだ。
「悪かったって……でもよ、中身だけ取り替えられたらどうするんだ?」
「私の作る瓶がただの可愛い瓶なわけないでしょう? ヤマダが作った甘味料以外がある程度混ざると瓶に大きなヒビが入るの。そして不純物だけが漏れる仕組み。悪用しようとしたかすぐわかるし、かさまし防止にもなる。まるまる入れ替えたら全部漏れるでしょうね」
「なんじゃそりゃ、スゲーな。俺しか作れない。偽物が作れない、専売特許みたいだな」
「そして、あくまで薬ってことだからね。商人が扱う商品とは違って、薬師しか扱えない。面倒な登録とか申請とか要らないし、薬師が売る薬に商人は口出しができないしね」
「庶民向けとはいえ儲かるぞこれ」
「でしょぉ!!」
「こりゃ魔王というより商売上手の悪代官みてぇだ」
「町中を甘い罠にかけてあげる」
これで薬師もヤマダもしばらくは稼ぎに困る事は無いと思う。ついでに私も瓶代でお小遣い稼ぎをさせてもらう。
私が瓶を売るもう一つ隠れた理由がある。この商売を良く思わない者がガラスの買占めをしても販売には影響がでない。
そして仕上げは疲労回復薬兼甘味料の使いどころを教える事だ。
この甘い衝撃はたちまち町中に広がった。そしてもう1つ広がった物がある。ほんのり甘いお菓子だ。
大人も子供もこぞって薬屋に買いに来る。お菓子といっても、名目上は滋養薬ということになっている。だが見た目は完全にクッキーだったり、水あめだったりでまるで菓子屋状態だ。
今までお菓子は上級の貴族のみが口にできる高級品だったのが、庶民のちょっとした贅沢品にまでなったのは衝撃が大きかった。
もちろんレシピの作成者は私。そして惜しげもなく公開した。家でも作れる滋養薬として皆が作りたがる。そうなると疲労回復薬兼甘味料が売れる。
そして消費をさらに加速させるために、料理に使うレシピまで公開予定だ。
以前は危険な物を売っていたプレドニロンの娘の姿はもうない。
今はバスケットにいっぱい滋養薬という名のお菓子を詰め込んで、友達と遊びに行っているそうだ。
「よし、今日のところはこれくらいで勘弁してあげるね」
「成行とはいえ、魔王と商売することになるなんて思ってなかったぜ」
「最後にもう1つ」
「なんだ、まだあるのか?」
「私に会う前に戦った男の事覚えてるでしょ?」
「なんだ、仲間だったのか? 悪いことをしたな……あいつはもう……」
「大丈夫、生きてるから!」
「なっ!? まさか」
「ちゃんと直ってるよ。後で追加の瓶を運ばせるつもりだから仲直りしとくんだよ」
「うっわ。めっちゃ気まずい。許してくれっかな」
「私からもいっておくから」
「そうしてもらえると助かる」
翌日、屋台で働く顔なじみの奥さん達に宣伝用の瓶を渡しておいた。お金を貰わない代わりに宣伝を頼んだのだ。
その後、瓶を100個準備してグランジにおつかいを頼む。ヤマダが少しでも殺気をとばしてきたら次は油断せず全力で相手をするそうだ。
奥様達の井戸端会議のおかげで順調に噂が広がり、いいころ合いで発売日を迎える。
手始めにブレドニロンが経営する薬屋に協力してもらい、疲労回復薬改め砂糖代替甘味料を販売する。3日ぐらいで全部売れればいいかなと思い100個程並べておいたが、予想以上の売れ行きで即日完売したのだった。
買えなかった人も多く、次の入荷を仕切りに聞いてくる程だ。
この人気に驚いたのはヤマダとブレドニロン。10万メルクをあっという間に稼いでしまったのだ。
「完売か……すげーな」
「とても素晴らしいです。薬としても、甘味料としても使えるものが存在するなんて」
「オレの作った薬なんだ、当然だろ!!」
発案は私。
「買占め防止のために1人2瓶までにしといて良かったね」
「今後もここで売ってくれないか?」
「もちろんですとも」
取り分などの交渉も進み、明日からでもまた販売してもらえることとなった。
商売に敏感な商人たちもその砂糖の代わりになる疲労回復薬なるものを欲しがっていたが、どこから仕入れていいのか分からず困っているみたいだった。
「なぁ、魔王。もう瓶が無いがどうしたらいい」
「また私がすぐ作るから安心して。それとこの甘味料は私の瓶でしか売っちゃだめだからね」
ナナスキルのアイテム作製で作り出す特殊な瓶。1000個でも1万個でも一瞬で作り出せる。
「なんでだ? 瓶代稼ぐためか?」
「それももちろんあるよ。だけど本当の狙いは偽物対策」
「今日発売なのに偽物なんてないだろう?」
不思議そうな顔をするのも無理はない。しかし商人の嗅覚を軽んじてはいけない。
「今はないけど、これが売れるとわかれば中身が全く違う物でも似せて売る奴が出てくると思う」
「そうなったら町の奴にはわからねーだろ」
「だからこそ私の瓶が必要なんだよ。町の人でも本物か偽物か一目で分かるようにしてあるんだから」
「ん? あ、あの瓶のジャガイモマークか! 確かにそんなマークのついてる瓶なんて中々見ないな。なかなかいい考えの偽造防止だな」
「……猫マークですけど」
「あっ、あー、マジか……猫か?あれ」
「その猫マークの付いてる瓶が本物、それ以外は偽物ってわけ!!」
ここにも芸術のわからない奴がいたせいで語尾が強くなる。
もし瓶を真似しようとしても、猫マークがついている瓶はもはや芸術品といってもいい物になる。それを作るとなると偽物の方が売価が高くなって偽物を作る意味がなくなってしまうのだ。
「悪かったって……でもよ、中身だけ取り替えられたらどうするんだ?」
「私の作る瓶がただの可愛い瓶なわけないでしょう? ヤマダが作った甘味料以外がある程度混ざると瓶に大きなヒビが入るの。そして不純物だけが漏れる仕組み。悪用しようとしたかすぐわかるし、かさまし防止にもなる。まるまる入れ替えたら全部漏れるでしょうね」
「なんじゃそりゃ、スゲーな。俺しか作れない。偽物が作れない、専売特許みたいだな」
「そして、あくまで薬ってことだからね。商人が扱う商品とは違って、薬師しか扱えない。面倒な登録とか申請とか要らないし、薬師が売る薬に商人は口出しができないしね」
「庶民向けとはいえ儲かるぞこれ」
「でしょぉ!!」
「こりゃ魔王というより商売上手の悪代官みてぇだ」
「町中を甘い罠にかけてあげる」
これで薬師もヤマダもしばらくは稼ぎに困る事は無いと思う。ついでに私も瓶代でお小遣い稼ぎをさせてもらう。
私が瓶を売るもう一つ隠れた理由がある。この商売を良く思わない者がガラスの買占めをしても販売には影響がでない。
そして仕上げは疲労回復薬兼甘味料の使いどころを教える事だ。
この甘い衝撃はたちまち町中に広がった。そしてもう1つ広がった物がある。ほんのり甘いお菓子だ。
大人も子供もこぞって薬屋に買いに来る。お菓子といっても、名目上は滋養薬ということになっている。だが見た目は完全にクッキーだったり、水あめだったりでまるで菓子屋状態だ。
今までお菓子は上級の貴族のみが口にできる高級品だったのが、庶民のちょっとした贅沢品にまでなったのは衝撃が大きかった。
もちろんレシピの作成者は私。そして惜しげもなく公開した。家でも作れる滋養薬として皆が作りたがる。そうなると疲労回復薬兼甘味料が売れる。
そして消費をさらに加速させるために、料理に使うレシピまで公開予定だ。
以前は危険な物を売っていたプレドニロンの娘の姿はもうない。
今はバスケットにいっぱい滋養薬という名のお菓子を詰め込んで、友達と遊びに行っているそうだ。
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