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魔力量なんてただの飾りですよ④
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「当時、私を身ごもっていた母は息を引き取る前に、魔王トットにお願いしたそうです『お腹の子はもう十分大きいから、私が死んだらこの子を取り出し、どうか保護してほしい。その子が私たちの生きた証しだから。その後の私の死体はどう扱ってもいい』と。トット魔王はクレア魔王とも交流があったそうなので、無下にはせず聞き入れてくださいました」
「“どう扱ってもいい”って討伐対象になっていたから引き渡し要求があったってこと?」
「そうだと思います。赤子の私を取り出したあと、母の遺体は討伐隊に引き渡されたそうです」
「そうか…………でも、気づかれなくてよかったね」
「そうでもなかったみたいです…… 身重だったことは調べられていたそうで、赤ん坊の引き渡し要求もあったそうですが、討伐対象になっていないことを理由に魔王トットがその要求を拒否したそうです。結局要求する側も名前も容姿もわからない者を討伐対象にはできず最終的に諦めたそうです」
「んー、その要求してきたのって誰なの?」
「最後まで引き渡しを粘ったのはインテルシアの魔女だったと聞いています」
「ここでもインテルシアか……」
魔王クレア討伐パーティーにインテルシア魔導国出身の魔法使いがいたのは調べたので知っている。
ただその者が冒険者ではなく六大魔導士の1人だったことに違和感を覚えたので印象に残っていたのだ。
生きていれば英雄だったが、魔王クレアとの戦闘で命を落としてしまったとされている。恨みでもあるのだろうか。
「シエヴィス家の者は全員が討伐対象になり、対象者の遺体は死亡確認がとられています。シエヴィス家の生き残りは私だけかもしれません」
「ヨシエさん、辛い話をしてくれてありがとうね」
「いえ、本来ならもっと早くお話すべきでした。ケーナ魔王様に隠し事を続けることになっていたので……」
「いいよ。気にしないで」
生まれる前から死線をくぐる過去を持ち、混血であること以外ほぼ人族でありながら魔王城で育てられる。
生きている意味を知り、母との約束を果たしている魔王トットへの感謝が厚い理由も分かった。
だからこそ魔王の娘であるテッテの専属なのだろう。
そして父のトットや母のシリル以外にテッテの色欲スキルを、耐性スキルや対抗スキルを持たないのに影響を受けない理由もここにあるのかもしれない。
「ちなみにヨシエさん名前は誰がつけたの?」
「”ヨー“の名は母が残してくれたそうです。母の国では ”かけがえのない“ という意味だそうです。その名を忘れないようにとトット魔王様が”ヨシエ“と名を付けてくださいました。身分としてはシリル様の家系の者となっております」
「そっか、ヨーの名は母親が残してくれたんだね」
「唯一の形見かもしれません」
「そんなことはないよ。ヨシエさんが生きているじゃない」
「……そう、ですね」
「それで今日まで生きてくれたヨシエさんに、お願いがあります。クレアさんを探すために魔力を分けて下さい」
「そんなことでよろしいのでしょうか。私の魔力でよければかまいませんよ」
ヨシエが魔王クレアと血縁関係であることは間違いない。
となるとヨシエの魔力の質は魔王クレアと似ているはず。魔族同士の子供でないのも利点と言える。人族のほとんどは魔力が弱いので魔力の質に変化を与えにくい。
ヨシエのMPをちょっとでも貰えるなら、吸収、解析、増幅はアブソーブにお任せ、探すのはマインドプロンプトに任せよう。
ということでさっそく、ヨシエからMPをちょっこっとアブソーブで吸収させてもらった。
「もう、いいのですか? 変化がありませんでしたけど」
「ちょっぴり頂いたからもう十分だよ。あとは私がなんとかするから。見つけられたらクレアさんに会ってみたい?」
「はい、お会いしてみたいです。私の祖母ですから」
「わかった。お願いしてみる」
魔力を頼りに空間と空間をつなげるのは空間転移魔法の基本だ。
今回は自分の魔力ではないけれど、魔王が魔力をもっていないなんてことはないと思うので、見つかるまで数多の空間を総当たり作戦だ。
これで魔王クレアを探すための足がかりは整った。
遮音の魔法を解いて、最後にヨシエにお礼を言って部屋を出ようとすると、扉の前でテッテが両手を広げてとおせんぼうしてくる。
「どちらに行きますの?ケーナ姉様」
「自室に戻るだけよ」
「嘘はいけませんわ」
「嘘は言ってないよ」
「急いでいらっしゃるのは承知していますが、ちょっとぐらい……お時間ありませんの?」
自室に戻り、そこからアヤフローラに帰ろうとしていることまで分かっている言い草だ。
ヨシエとばかり話していて嫉妬したのだろうか。色欲スキルを持っているのだから嫉妬している場合ではないだろうと思ったが、相手が私なので色欲スキルの効果がない以上こうするしかないのだろう。可愛いのでちょっとだけ時間を割くことにした。
「わかった。わかったよ。じゃぁ……その本持ってきて」
テッテが勉強するために用意された古びた極厚の魔導書だ。
「ケーナ姉様が魔法を教えてくださいますの?」
「残念だけど魔法を教えるのは得意じゃないんだよね。だから見せてあげる。見るだけでも少しは勉強になるんじゃないかな。魔導書にあるもので見てみたい魔法ある?」
「で、でしたら…………こちらの魔法はできますの? 見たことも聞いたこともない魔法ですの。想像しようにも効果がいまいちわからないですわ」
前々から気になっていたのだろう。
ページをパラパラとめくり、スッと指さすその先には
【禁忌指定】聖魔混合魔法 ヘブンズゲート
「ち、ちょっと、禁忌指定ってかいてあるけど大丈夫なのこれ……」
「大丈夫ですわ。ケーナ姉様が魔法を失敗するなどありえないと思っていますので」
「“どう扱ってもいい”って討伐対象になっていたから引き渡し要求があったってこと?」
「そうだと思います。赤子の私を取り出したあと、母の遺体は討伐隊に引き渡されたそうです」
「そうか…………でも、気づかれなくてよかったね」
「そうでもなかったみたいです…… 身重だったことは調べられていたそうで、赤ん坊の引き渡し要求もあったそうですが、討伐対象になっていないことを理由に魔王トットがその要求を拒否したそうです。結局要求する側も名前も容姿もわからない者を討伐対象にはできず最終的に諦めたそうです」
「んー、その要求してきたのって誰なの?」
「最後まで引き渡しを粘ったのはインテルシアの魔女だったと聞いています」
「ここでもインテルシアか……」
魔王クレア討伐パーティーにインテルシア魔導国出身の魔法使いがいたのは調べたので知っている。
ただその者が冒険者ではなく六大魔導士の1人だったことに違和感を覚えたので印象に残っていたのだ。
生きていれば英雄だったが、魔王クレアとの戦闘で命を落としてしまったとされている。恨みでもあるのだろうか。
「シエヴィス家の者は全員が討伐対象になり、対象者の遺体は死亡確認がとられています。シエヴィス家の生き残りは私だけかもしれません」
「ヨシエさん、辛い話をしてくれてありがとうね」
「いえ、本来ならもっと早くお話すべきでした。ケーナ魔王様に隠し事を続けることになっていたので……」
「いいよ。気にしないで」
生まれる前から死線をくぐる過去を持ち、混血であること以外ほぼ人族でありながら魔王城で育てられる。
生きている意味を知り、母との約束を果たしている魔王トットへの感謝が厚い理由も分かった。
だからこそ魔王の娘であるテッテの専属なのだろう。
そして父のトットや母のシリル以外にテッテの色欲スキルを、耐性スキルや対抗スキルを持たないのに影響を受けない理由もここにあるのかもしれない。
「ちなみにヨシエさん名前は誰がつけたの?」
「”ヨー“の名は母が残してくれたそうです。母の国では ”かけがえのない“ という意味だそうです。その名を忘れないようにとトット魔王様が”ヨシエ“と名を付けてくださいました。身分としてはシリル様の家系の者となっております」
「そっか、ヨーの名は母親が残してくれたんだね」
「唯一の形見かもしれません」
「そんなことはないよ。ヨシエさんが生きているじゃない」
「……そう、ですね」
「それで今日まで生きてくれたヨシエさんに、お願いがあります。クレアさんを探すために魔力を分けて下さい」
「そんなことでよろしいのでしょうか。私の魔力でよければかまいませんよ」
ヨシエが魔王クレアと血縁関係であることは間違いない。
となるとヨシエの魔力の質は魔王クレアと似ているはず。魔族同士の子供でないのも利点と言える。人族のほとんどは魔力が弱いので魔力の質に変化を与えにくい。
ヨシエのMPをちょっとでも貰えるなら、吸収、解析、増幅はアブソーブにお任せ、探すのはマインドプロンプトに任せよう。
ということでさっそく、ヨシエからMPをちょっこっとアブソーブで吸収させてもらった。
「もう、いいのですか? 変化がありませんでしたけど」
「ちょっぴり頂いたからもう十分だよ。あとは私がなんとかするから。見つけられたらクレアさんに会ってみたい?」
「はい、お会いしてみたいです。私の祖母ですから」
「わかった。お願いしてみる」
魔力を頼りに空間と空間をつなげるのは空間転移魔法の基本だ。
今回は自分の魔力ではないけれど、魔王が魔力をもっていないなんてことはないと思うので、見つかるまで数多の空間を総当たり作戦だ。
これで魔王クレアを探すための足がかりは整った。
遮音の魔法を解いて、最後にヨシエにお礼を言って部屋を出ようとすると、扉の前でテッテが両手を広げてとおせんぼうしてくる。
「どちらに行きますの?ケーナ姉様」
「自室に戻るだけよ」
「嘘はいけませんわ」
「嘘は言ってないよ」
「急いでいらっしゃるのは承知していますが、ちょっとぐらい……お時間ありませんの?」
自室に戻り、そこからアヤフローラに帰ろうとしていることまで分かっている言い草だ。
ヨシエとばかり話していて嫉妬したのだろうか。色欲スキルを持っているのだから嫉妬している場合ではないだろうと思ったが、相手が私なので色欲スキルの効果がない以上こうするしかないのだろう。可愛いのでちょっとだけ時間を割くことにした。
「わかった。わかったよ。じゃぁ……その本持ってきて」
テッテが勉強するために用意された古びた極厚の魔導書だ。
「ケーナ姉様が魔法を教えてくださいますの?」
「残念だけど魔法を教えるのは得意じゃないんだよね。だから見せてあげる。見るだけでも少しは勉強になるんじゃないかな。魔導書にあるもので見てみたい魔法ある?」
「で、でしたら…………こちらの魔法はできますの? 見たことも聞いたこともない魔法ですの。想像しようにも効果がいまいちわからないですわ」
前々から気になっていたのだろう。
ページをパラパラとめくり、スッと指さすその先には
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「大丈夫ですわ。ケーナ姉様が魔法を失敗するなどありえないと思っていますので」
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