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庭師の進言 片鱗を見た者
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時を同じくして、小さくノックの音が響く。
「開いているぞ」
「夜分に失礼いたします」
エーナの父親であり、辺境伯でもあるベンドラ・カスケードの部屋に庭師のロットが訪ねてくる。
一庭師と当主が2人きりになる状況は極めて稀なことであるが、ロットがどうしてもと強く申し出て今の状況となった。
「珍しいじゃないか、お前が意見を申してくるなんて」
「今回ばかりは、旦那様にお話ししなければと思い、このような場を感謝いたします」
「よい、楽にしろ」
「はい、失礼します」
大きなソファーに腰掛けるロットだが、深く座ることはない。
「それで、話とはなんだ」
「率直に申しましてお嬢様の強さは異常かと思います」
ロットの伝えたいことがいまいちわからないベンドラは戸惑いの表情が出てしまう。
「異常…… そんな、いきなり何を言い出す、確かに試験中の動きは予想よりも凄かったこと確かだ。しかし適性試験でロットが勝ったではないか」
「結果だけですとその通りでございます。旦那様から事前に装備の指定などなければ、フルプレートアーマーも金剛の大盾も準備するつもりはありませんでした」
「大袈裟過ぎると言っておったな」
「しかしながらそれらを装備し、経験の差が大きくあり運も味方したおかげで勝てたと申し上げるほかありません」
「いったい何がそこまで言わせているのだ」
拳を強く握るロット。
適性試験で受けた衝撃を体が覚えているので、思い出すだけで力が入る。
「……初めに対峙した時のお嬢様の短剣を持つ姿は、素人そのものでした。そもそもお嬢様は実戦が初めてと聞いていましたのでそれで当然です。しかし、初撃を盾で受けたとき己に油断があった事を思い知らされました。少女が振るう短剣の衝撃が大型モンスターの突進に匹敵する威力と言っても過言ではありません。お嬢様を一面のみで判断していた自分がとても情けないです」
「エーナが化け物のようなものだと申すのか!」
「お言葉ですが旦那様、化け物なら災害級まで一通り相手をしたことがあります。その程度の強さなら如何様にも対処できます。ですが鈍らの剣を振るう程度であの強さ、仮に武器を揃え、剣術を習い、スキルを得た時には私ではもう相手にならないでしょう」
「な、なぜそのようなことを……」
「エーナお嬢様は打ち合いをしている最中、何度か考え事をしていた様に感じました。まるで何かを試す様にです。私が反撃できたのはその隙ぐらいです」
「………真なのか? エーナにそんな力が?」
ロットが嘘や冗談を言うような者でないことは主であるベンドラが一番よく知っている。それでも嘘だと、冗談だと言って欲しく問いかけてしまう。
「確かめるべきかと」
「ステータスか」
「その通りでございます」
「まだ測定の年齢ではないのだが、やるとするならギルドか神殿か……」
「エーナお嬢様は聡いお方です。いきなり神殿に連れていくとなれば何か裏があるのではないかと勘付かれる可能性があります。冒険者になることを許され、ギルドへ連れていくのが良いかと」
「冒険者を反対した手前、ギルドはなぁ……」
「私からでよければお伝えします。お嬢様を冒険者にさせ、ギルド登録の際必ずステータスを測定します。そこで確かめて見るのがよいかと。冒険者になった以上、依頼をこなさないといけません。その際は、受注する内容を事前にこちらで精査します。お嬢様の強さは勢いだけで中級モンスターや上級モンスターを討伐しかねません。しかしそれでは注目を浴び、よからぬ輩に目をつけかねられません。なので私がお嬢様とパーティーを組み、できる限り穏便にいく道を探せればと思います」
「どんな輩でもエーナに近くことは絶対に許さん。まずは私から一言伝えよう。その後のことは任せて良いか?」
「かしこまりました」
エーナの実力を垣間見たロットにより、冒険者への道が開かれることとなった。
翌朝の朝食にはその事を話すつもりでいたベンドラであったが……
時すでに遅し。
エーナお嬢様絶賛家出中。
「開いているぞ」
「夜分に失礼いたします」
エーナの父親であり、辺境伯でもあるベンドラ・カスケードの部屋に庭師のロットが訪ねてくる。
一庭師と当主が2人きりになる状況は極めて稀なことであるが、ロットがどうしてもと強く申し出て今の状況となった。
「珍しいじゃないか、お前が意見を申してくるなんて」
「今回ばかりは、旦那様にお話ししなければと思い、このような場を感謝いたします」
「よい、楽にしろ」
「はい、失礼します」
大きなソファーに腰掛けるロットだが、深く座ることはない。
「それで、話とはなんだ」
「率直に申しましてお嬢様の強さは異常かと思います」
ロットの伝えたいことがいまいちわからないベンドラは戸惑いの表情が出てしまう。
「異常…… そんな、いきなり何を言い出す、確かに試験中の動きは予想よりも凄かったこと確かだ。しかし適性試験でロットが勝ったではないか」
「結果だけですとその通りでございます。旦那様から事前に装備の指定などなければ、フルプレートアーマーも金剛の大盾も準備するつもりはありませんでした」
「大袈裟過ぎると言っておったな」
「しかしながらそれらを装備し、経験の差が大きくあり運も味方したおかげで勝てたと申し上げるほかありません」
「いったい何がそこまで言わせているのだ」
拳を強く握るロット。
適性試験で受けた衝撃を体が覚えているので、思い出すだけで力が入る。
「……初めに対峙した時のお嬢様の短剣を持つ姿は、素人そのものでした。そもそもお嬢様は実戦が初めてと聞いていましたのでそれで当然です。しかし、初撃を盾で受けたとき己に油断があった事を思い知らされました。少女が振るう短剣の衝撃が大型モンスターの突進に匹敵する威力と言っても過言ではありません。お嬢様を一面のみで判断していた自分がとても情けないです」
「エーナが化け物のようなものだと申すのか!」
「お言葉ですが旦那様、化け物なら災害級まで一通り相手をしたことがあります。その程度の強さなら如何様にも対処できます。ですが鈍らの剣を振るう程度であの強さ、仮に武器を揃え、剣術を習い、スキルを得た時には私ではもう相手にならないでしょう」
「な、なぜそのようなことを……」
「エーナお嬢様は打ち合いをしている最中、何度か考え事をしていた様に感じました。まるで何かを試す様にです。私が反撃できたのはその隙ぐらいです」
「………真なのか? エーナにそんな力が?」
ロットが嘘や冗談を言うような者でないことは主であるベンドラが一番よく知っている。それでも嘘だと、冗談だと言って欲しく問いかけてしまう。
「確かめるべきかと」
「ステータスか」
「その通りでございます」
「まだ測定の年齢ではないのだが、やるとするならギルドか神殿か……」
「エーナお嬢様は聡いお方です。いきなり神殿に連れていくとなれば何か裏があるのではないかと勘付かれる可能性があります。冒険者になることを許され、ギルドへ連れていくのが良いかと」
「冒険者を反対した手前、ギルドはなぁ……」
「私からでよければお伝えします。お嬢様を冒険者にさせ、ギルド登録の際必ずステータスを測定します。そこで確かめて見るのがよいかと。冒険者になった以上、依頼をこなさないといけません。その際は、受注する内容を事前にこちらで精査します。お嬢様の強さは勢いだけで中級モンスターや上級モンスターを討伐しかねません。しかしそれでは注目を浴び、よからぬ輩に目をつけかねられません。なので私がお嬢様とパーティーを組み、できる限り穏便にいく道を探せればと思います」
「どんな輩でもエーナに近くことは絶対に許さん。まずは私から一言伝えよう。その後のことは任せて良いか?」
「かしこまりました」
エーナの実力を垣間見たロットにより、冒険者への道が開かれることとなった。
翌朝の朝食にはその事を話すつもりでいたベンドラであったが……
時すでに遅し。
エーナお嬢様絶賛家出中。
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