たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
5 / 221

庭師の進言 片鱗を見た者

しおりを挟む
 時を同じくして、小さくノックの音が響く。

「開いているぞ」

「夜分に失礼いたします」

 エーナの父親であり、辺境伯でもあるベンドラ・カスケードの部屋に庭師のロットが訪ねてくる。
 一庭師と当主が2人きりになる状況は極めて稀なことであるが、ロットがどうしてもと強く申し出て今の状況となった。

「珍しいじゃないか、お前が意見を申してくるなんて」

「今回ばかりは、旦那様にお話ししなければと思い、このような場を感謝いたします」

「よい、楽にしろ」

「はい、失礼します」
 
 大きなソファーに腰掛けるロットだが、深く座ることはない。

「それで、話とはなんだ」

「率直に申しましてお嬢様の強さは異常かと思います」

 ロットの伝えたいことがいまいちわからないベンドラは戸惑いの表情が出てしまう。

「異常…… そんな、いきなり何を言い出す、確かに試験中の動きは予想よりも凄かったこと確かだ。しかし適性試験でロットが勝ったではないか」

「結果だけですとその通りでございます。旦那様から事前に装備の指定などなければ、フルプレートアーマーも金剛の大盾も準備するつもりはありませんでした」

「大袈裟過ぎると言っておったな」

「しかしながらそれらを装備し、経験の差が大きくあり運も味方したおかげで勝てたと申し上げるほかありません」

「いったい何がそこまで言わせているのだ」

 拳を強く握るロット。
 適性試験で受けた衝撃を体が覚えているので、思い出すだけで力が入る。

「……初めに対峙した時のお嬢様の短剣を持つ姿は、素人そのものでした。そもそもお嬢様は実戦が初めてと聞いていましたのでそれで当然です。しかし、初撃を盾で受けたとき己に油断があった事を思い知らされました。少女が振るう短剣の衝撃が大型モンスターの突進に匹敵する威力と言っても過言ではありません。お嬢様を一面のみで判断していた自分がとても情けないです」

「エーナが化け物のようなものだと申すのか!」

「お言葉ですが旦那様、化け物なら災害級まで一通り相手をしたことがあります。その程度の強さなら如何様にも対処できます。ですが鈍らの剣を振るう程度であの強さ、仮に武器を揃え、剣術を習い、スキルを得た時には私ではもう相手にならないでしょう」

「な、なぜそのようなことを……」

「エーナお嬢様は打ち合いをしている最中、何度か考え事をしていた様に感じました。まるで何かを試す様にです。私が反撃できたのはその隙ぐらいです」

「………真なのか? エーナにそんな力が?」
 
 ロットが嘘や冗談を言うような者でないことは主であるベンドラが一番よく知っている。それでも嘘だと、冗談だと言って欲しく問いかけてしまう。

「確かめるべきかと」

「ステータスか」

「その通りでございます」

「まだ測定の年齢ではないのだが、やるとするならギルドか神殿か……」

「エーナお嬢様は聡いお方です。いきなり神殿に連れていくとなれば何か裏があるのではないかと勘付かれる可能性があります。冒険者になることを許され、ギルドへ連れていくのが良いかと」

「冒険者を反対した手前、ギルドはなぁ……」

「私からでよければお伝えします。お嬢様を冒険者にさせ、ギルド登録の際必ずステータスを測定します。そこで確かめて見るのがよいかと。冒険者になった以上、依頼をこなさないといけません。その際は、受注する内容を事前にこちらで精査します。お嬢様の強さは勢いだけで中級モンスターや上級モンスターを討伐しかねません。しかしそれでは注目を浴び、よからぬ輩に目をつけかねられません。なので私がお嬢様とパーティーを組み、できる限り穏便にいく道を探せればと思います」

「どんな輩でもエーナに近くことは絶対に許さん。まずは私から一言伝えよう。その後のことは任せて良いか?」

「かしこまりました」

 エーナの実力を垣間見たロットにより、冒険者への道が開かれることとなった。

 翌朝の朝食にはその事を話すつもりでいたベンドラであったが……
 
 時すでに遅し。

 エーナお嬢様絶賛家出中。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

イジメられっ子世に憚る。

satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

処理中です...