たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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魔力量なんてただの飾りですよ⑥

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「どうしたのじゃ、その疲れた顔は」

 帰ったとたんフランに心配されてしまう。禁忌魔法のせいで魔力の消費が激しかったのが顔に出てしまったのかもしれない。

「ちょっと色々あって……」

「ちょっと? 冗談をいうでない」

「変わった魔法を少々……」

「だとするならまた変な魔法でも使ったのじゃな。ならばゆっくり休むのじゃ。ほれ、こっちに来て座れ」

 心配してくれる気持ちは嬉しいが、ゆっくりはしてられない。

「これから行くところがあるんだよ」

「忙しないのぉ。次はどこじゃ」

「本命のクレアのところ。本当に行けるかどうかはこれから確かめるんだけどね」

 そういってマインドプロンプトを発動させる。

《何をなさいますか?》

(何をさせたいか、分かるよね?)

 思考を読ませる許可を出せば、話すより楽で確実に伝えることができる。

《念のため確認になりますが、アブソーブで取得した魔力から同系統の魔力の質を持つ憤怒の魔王クレア・シエヴィスを探し出し、そこまでの案内でよろしいですか?》

(お願いね)

《かしこまりました…………》

 思った以上に時間がかかっている。
 いませんでした。なんてことはないと思いたい。

「ん~」

「どうしたのじゃ? 探索スキルでも使っておるのか?」

「まぁ、そんなとこ」

「近くに居るわけなかろう」

「わかってるよ。もっと広い範囲を探してるの」

「どこまで範囲を広げてるのかは知らんが、そんな簡単に見つけられるわけないと思うのじゃ。憤怒の魔王討伐宣言から今日まで噂の1つもないんじゃから」

 ただの転移で逃げたのであれば、この大陸のどこかにはいるはずなので見つけることも容易だし、噂だって出るはず。
 そうならないのは高い確率で空間転移魔法を使ったか可能性があること。空間収納のような独自の空間へ逃げるのが一番確実で安全なのは私が一番知っている。

《対象者の位置特定が完了しました。クレア・シエヴィスの元までの案内をすることができますが条件があります》

(条件って?)

《物質体が入ることができません。エネルギー体でのみ往来が可能な場所になります。エネルギー体を作成してください》

 物質体で入れない場所となると空間がないということ。空間転移で行ける場所ない可能性がでてきた。

(ちょっと、私エネルギー体の作り方しらないんだけど。かわりに作ってよ)

《かしこまりました。魔力を元にエネルギー体の作成いたします。魔力残量の割合が少ないようなのですがよろしいでしょうか》

(空っぽにはしないでね。ちょっと残してくれればいいから)

《かしこまりました。エネルギー体には魂を乗せますか?》

 魂を乗せて帰って来れないとなれば危険すぎる。バグラ王国にいるコピー体と同様に思考の一部を乗せていくのが安全だと考えた。

(並列思考を割り当てることはできるよね?)

《並列思考スキルは可能でございますが、エネルギー体では使用できるスキルに制限がありますのでご注意下さい》

 物質体でないのであれば、体術スキルや身体強化スキルは使えなくて当然だろう。

《エネルギー体を完成させました》

 並列思考の一部をエネルギー体へと移す。

 視界が変化する。エネルギー体から感知する世界は同じ場所でも別世界のように思える。
 全てが七色の光の粒のようになり大きく波打っている。
 物質体の私からはエネルギー体の私を見ることができない。フランも気づいていないようだ。

《それではご案内いたします》

 エネルギー体の私も光の粒となりその波に融けこんでいく。それでも思考はハッキリとしていた。 
 
 あとはエネルギー体に任せておけばいいので、こちらの私はソファに腰掛ける。

「どうしたのじゃ、やはり見つけられんかったのかの?」

「見つけたよ」

「見つけたのか! 生きておったのかあの魔王」

「んー生きてるって言っていいのかまだ分からないけど……まぁもうちょっと待ってて」

「存在がまだ完全に消えておらんというだけでも大変なことになるのじゃ。これからすぐ会いに行くのかの?」

「もう、向かってる」

「いや、座っておるだけじゃろ」

「この体じゃ行けない場所だから、違う体で向かってるんだよ」

「ん? んん??」
 
 私の言葉を理解しようと試みたフランが首をかしげ固まっている。

 分からなくても構わないのでこれ以上ややこしいことは言わないでおこうと思った。

「ハクレイが見えないけど、どこか行ったの?」

「買い物といっておったが、あやつはレベル上げをする気じゃろう」

「そうなんだ……えっ、レベル上げ? ハクレイのレベル400超えてなかったっけ?」

「そうじゃの。もう英雄や勇者の領域じゃの」

「もう十分強いのになんでまたレベル上げなんて」

「あぁ可哀そうにのハクレイ……想いが全然届いておらんようじゃ」

 大袈裟に頭を抱えて見せるフラン。

「私のためってこと!?」

「それ以外に考えられんのじゃ。ハクレイはケーナのことを自身の命よりも大切にしておる。いざという時の盾ぐらいにはなりたいのであろう」

 フランの言うことが本当だとしたらなんと重い想い。
 いつの間にそこまで考えるようになってしまったのか。

「いや、私そんなに弱くないよ」

「余でもそれぐらいわかっとるわ。ハクレイもわかってはいるがケーナの底が見えんから余計に不安なのじゃろうに」

 確かにそれはありえるのかもしれない。
 冒険者同士でもある程度の強さまでは喧嘩などのいざこざがあるが、馬鹿でも分かる黒銀ぐらいの強さともなれば下から喧嘩を売られることはまずない。

 黒銀が戦うとなれば同格以上の強いモンスターや敵が相手になる。

 その助けになりたいと思うなら、その仲間と同等のレベルでなければ助けることができない。
 ハクレイは私のレベルが分からないけど分からないなりに何とかしようとしていたのだと気づかされてしまった。

「そっかぁ。不安にさせてたのかなぁ」

「じゃろうな」

「私のレベル教えれば少しは安心するかなぁ」

「逆にそこに近づこうと必死になるかもしれんのじゃ」

「ありえそう」

「ちなみに今いくつなのじゃ? まさか10とは言うまいな」

 隠蔽スキルで常にLv10のステータスに改竄してるので、鑑定・解析系のスキルやアビリティで調べたときは本当のステータスを知ることができないようにしてある。
 だからLv10に喰いつくと言うことは、いつのまにかフランにも調べられていたのかもしれない。
 フランは鑑定系のスキルを持っていないので、私に気づかれないように調べるとなればミシクル級の魔道具を使った可能性が十分にある。
 普段から持ち物の少ないフランなのでそんな魔道具なんて持っていないと欺こうとしても無駄なことで、容量は小さいながらも空間収納スキルを取得してることを私は知っている。

「それは隠蔽スキルのカモフラージュだからね。でもまぁフランなら教えてもいいかな」

「余が知っているとなればハクレイに妬まれそうじゃの」

「やめとく?」

「ありがたく聞いてやるのじゃ!」

 桁が大きくなるとうる覚えになるのでステータスを開きちゃんと確認する。

「えーっと……Lv28960、だね」

「……なん……じゃと?」
 
 3回言っても信じてもらえなかったので、結局ステータスを見せる羽目になった。

「本当に28960じゃ……ありえんのじゃ。……最大MP1.012640E+19? なんじゃこの魔力量は……、魔女の不在証明? こんなスキル聞いたこともないのじゃ……」

「ちょっと余計なところまで見ないでよ。恥ずかしいでしょ」

「このステータスを恥ずかしがってどうすのじゃ? 前々から桁外れの強さとは思っていたが桁外れも大外れじゃ。常に力を制御せねば大陸が消えるのじゃろうに」

 ちょっと唇が震えている。まぁまぁ驚いているみたいだ。

「消えるって、それはいくらなんでも言い過ぎだよ。ただ魔力の方は正直どれくらいあるのかよくわかってないんだよね。もう飾りみたいに思ってるし」

「そうであろうな。漏れた魔力だけで余は溺れかけたからの……」

 見つめる目から生きる希望が消えかかっている。

「……余は見なかったことにするのじゃ。終焉の魔王も超える者が目の前にいると思うたら冗談も言えんのじゃ」

「何それ悪の大魔王みたいじゃない。私はただの魔王だよ」

「ただ魔王の方がまだ可愛げがあるのじゃ。それに憤怒の魔王と友達になると言っておったのにも納得がいく。本当は友達などではなく奴隷にでさせる気なのかの」

「そんなことするわけないでしょ。友達になりたいだけだよ」

「もうどうでもいいのじゃ。余は何も聞かなかった。何も見なかったのじゃ」

「はいはい、そーゆーことにしておいて」

「あぁハクレイ……おぬしの目指す頂は遥か彼方じゃが希望を捨ててはならんぞぉ」

「何それ。もう、ハクレイには教えないよ。だから言っちゃダメだからね」

 結局何もなかったことになったが、これ以降フランが私を心配することが一切なくなったのでちょっと寂しい気もする。
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