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乾いた怒り②
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「……いきなり大胆なことをいうでありんすな」
「ここから脱出できる方法かもしれないんだよね」
出たがっていると思っていたけど、少々困る様子のクレア。それでも意を決したように快諾してくれた。
「わかりんした。このままずっとここにいるよりはずっとマシでありんす」
「それなら早速、目を閉じて」
ギュッと目を閉じたところで空間収納にクレアを指定して収納する。
何事もなく収納できた。
「やっぱりできるんだ……空間収納って便利」
魔王すら外に出さないとされる特別な空間。このまま放置するのはちょっと勿体ない。
後々物置とかに使えると思ったので足元に魔力でマーキングを残して私も収納した。
もちろんエーナの世界へ来ている状態になる。ここに来ると本体と途切れていた繋がりが元に戻ったので思考を伝達させ本体のケーナにクレアを取り出してもらうだけ。
「あーはいはい。上手くいったみたいだね」
エネルギー体からの思考を読みクレアを空間収納から取り出す。
「もういいよ」
パッと目を開けたクレアは状況を一瞬で理解したみたいだった。
「凄いでありんす。あの場所から本当に戻ってきたでありんす」
脱出失敗の可能性の方が高いと思っていたのだろうから嬉しさもひとしおだ。
「だ、だれじゃ、そ、やつは!?」
私の隣に立つクレアに怯え警戒をするフラン。
「紹介するね、さっき友達になったクレアだよ」
「まさか……本当に憤怒の魔王を呼び寄せたというとるのか?」
「そうだけど」
紹介しても警戒を解こうとしないフラン。そんなフランをよそに私の手を握ってくるクレア。
「恥ずかしいのはわかるでありんすが友達だなんて冗談をいうなでありんす。先ほどのケーナの物になると契りを交わしたばかりではありんせんか」
「契り……?」
物になれとは確かに言ったが物体という意味のつもりだった。
色恋めいたセリフのつもりは一切なかったし誤解ははやめに解いておいた方がいい。
「ごめんね私の言葉が足りなかったみた――」
「アレは嘘だったと申すでありんすかぁ?」
一瞬で空気が悪くなったのが分かった。
それだけじゃない怒りの感情がフツフツと沸いてきているのが握っている手に伝わってくる。
(誤解させて怒っちゃった)
なんて気安く思っていたが、フランが慌てふためていている。
「ケーナ! 誰を怒らせているのか分かっておるのか!! このままじゃ1つ国が消えるかもしれんのじゃぞ!?」
表情もみるみる変わり怒りが更に高まってくると脳裏に警告が表示された。
【憤怒のスキルが使用条件を満たしています】
確かに憤怒の魔王を怒らせスキルを使わせるわけにはいかない。
手っ取り早く冷静に戻すためにマインドプロンプトを発動させる。
《何をなさいますか?》
(クレアの怒りの感情を沈めてあげてほしい)
《……できませんでした》
(ん? え?)
《できませんでした!》
(え?なんで?)
《怒りの感情は憤怒のスキルと深く結びついている感情です。七大スキルである憤怒のスキルは仕様外スキルのため現在マインドプロンプトから感情に干渉することは不可能です》
(じゃ、どうすればいいの?)
《スキルの譲渡をしてもらい取り込むことで、解析し改変が可能かもしれません》
(アブソーブで吸収すればいいのね?)
《それはできません。アブソーブも憤怒もカテゴリー6に属するスキルですが、都合上カテゴリー6なだけであり憤怒のスキルはアブソーブよりも上位に位置するスキルなので吸収はできません》
(ブチギレ寸前のクレアにスキル頂戴なんて言えるわけないでしょ。どうにかしてよ)
今まで色欲スキルや暴食スキルを見てきたが、どれも攻撃的なものではなく私自身に特に影響がなかったので試したことがなかった。
《示せばよろしいかと》
(……シメ?)
《誰が誰の物なのか明確にすればよろしいのではないでしょうか》
(どうすればいいの?)
《キスがとても効果的かと》
(……キス?)
《よもやキスを存じない? 》
(し、しってるよ)
前世でも今世でも恋愛に関してはド初心者なのに、いきなり凄い高いハードルが目の前に現れる。
国が吹き飛んでもたぶん私は無事だと思うが、『国が吹き飛ぶ』と『キス』を天秤にかけたら圧倒的に後者が軽い。
並列思考と思考加速で全力で考えた結果、だした答えはコレだ。
「ごめん、恥ずかしかったからつい友達だなんていって」
と言いつつ握っていた手を両手で優しく包み込み目を見つめながら手の甲にキスをした。ちょっと気持ち長めに。
マインドプロンプトも口にキスをしろとは言っていなかった。それにいきなり口にキスをして更なる怒りを買うわけにもいかない。
どうやらこれが功を奏したようで脳裏の警告は消え、クレアの表情も元に戻っている。
「おどろかせないで欲しいでありんす」
「ご、ごめんね」
フランもホッとしてる様子を見るに最悪の事態は避けることができたのかもしれない。
怒りの沸点が低い人なのかと思っていたけど思っていた場所とは違う場所に沸点があっただけなのかもしれない。
「あぁ、紹介しておくね。こちらはこの家で一緒に住んでるフランだよ。元ヴァンパイアだったけど今はちょっと特別な存在なんだよね」
「一つ屋根の下で特別な存在でありんすかぁ?」
僅かにピリつく空気。
「た、ただの居候みたいなものなのじゃ。特別なのは聖魔混合の魔力なのじゃ。余は無害な生き物なのじゃ、よろしくなのじゃ」
「あらホント、珍しいでありんすね。よろしくでありんす」
フラン相手にこの対応。ハクレイはまだ大丈夫だと思うが、テッテに合わせたら面倒ごとしかうまれないと思う。
ヨシエさんには申し訳ないがすぐに合わせることはできなさそうだ。
「ここから脱出できる方法かもしれないんだよね」
出たがっていると思っていたけど、少々困る様子のクレア。それでも意を決したように快諾してくれた。
「わかりんした。このままずっとここにいるよりはずっとマシでありんす」
「それなら早速、目を閉じて」
ギュッと目を閉じたところで空間収納にクレアを指定して収納する。
何事もなく収納できた。
「やっぱりできるんだ……空間収納って便利」
魔王すら外に出さないとされる特別な空間。このまま放置するのはちょっと勿体ない。
後々物置とかに使えると思ったので足元に魔力でマーキングを残して私も収納した。
もちろんエーナの世界へ来ている状態になる。ここに来ると本体と途切れていた繋がりが元に戻ったので思考を伝達させ本体のケーナにクレアを取り出してもらうだけ。
「あーはいはい。上手くいったみたいだね」
エネルギー体からの思考を読みクレアを空間収納から取り出す。
「もういいよ」
パッと目を開けたクレアは状況を一瞬で理解したみたいだった。
「凄いでありんす。あの場所から本当に戻ってきたでありんす」
脱出失敗の可能性の方が高いと思っていたのだろうから嬉しさもひとしおだ。
「だ、だれじゃ、そ、やつは!?」
私の隣に立つクレアに怯え警戒をするフラン。
「紹介するね、さっき友達になったクレアだよ」
「まさか……本当に憤怒の魔王を呼び寄せたというとるのか?」
「そうだけど」
紹介しても警戒を解こうとしないフラン。そんなフランをよそに私の手を握ってくるクレア。
「恥ずかしいのはわかるでありんすが友達だなんて冗談をいうなでありんす。先ほどのケーナの物になると契りを交わしたばかりではありんせんか」
「契り……?」
物になれとは確かに言ったが物体という意味のつもりだった。
色恋めいたセリフのつもりは一切なかったし誤解ははやめに解いておいた方がいい。
「ごめんね私の言葉が足りなかったみた――」
「アレは嘘だったと申すでありんすかぁ?」
一瞬で空気が悪くなったのが分かった。
それだけじゃない怒りの感情がフツフツと沸いてきているのが握っている手に伝わってくる。
(誤解させて怒っちゃった)
なんて気安く思っていたが、フランが慌てふためていている。
「ケーナ! 誰を怒らせているのか分かっておるのか!! このままじゃ1つ国が消えるかもしれんのじゃぞ!?」
表情もみるみる変わり怒りが更に高まってくると脳裏に警告が表示された。
【憤怒のスキルが使用条件を満たしています】
確かに憤怒の魔王を怒らせスキルを使わせるわけにはいかない。
手っ取り早く冷静に戻すためにマインドプロンプトを発動させる。
《何をなさいますか?》
(クレアの怒りの感情を沈めてあげてほしい)
《……できませんでした》
(ん? え?)
《できませんでした!》
(え?なんで?)
《怒りの感情は憤怒のスキルと深く結びついている感情です。七大スキルである憤怒のスキルは仕様外スキルのため現在マインドプロンプトから感情に干渉することは不可能です》
(じゃ、どうすればいいの?)
《スキルの譲渡をしてもらい取り込むことで、解析し改変が可能かもしれません》
(アブソーブで吸収すればいいのね?)
《それはできません。アブソーブも憤怒もカテゴリー6に属するスキルですが、都合上カテゴリー6なだけであり憤怒のスキルはアブソーブよりも上位に位置するスキルなので吸収はできません》
(ブチギレ寸前のクレアにスキル頂戴なんて言えるわけないでしょ。どうにかしてよ)
今まで色欲スキルや暴食スキルを見てきたが、どれも攻撃的なものではなく私自身に特に影響がなかったので試したことがなかった。
《示せばよろしいかと》
(……シメ?)
《誰が誰の物なのか明確にすればよろしいのではないでしょうか》
(どうすればいいの?)
《キスがとても効果的かと》
(……キス?)
《よもやキスを存じない? 》
(し、しってるよ)
前世でも今世でも恋愛に関してはド初心者なのに、いきなり凄い高いハードルが目の前に現れる。
国が吹き飛んでもたぶん私は無事だと思うが、『国が吹き飛ぶ』と『キス』を天秤にかけたら圧倒的に後者が軽い。
並列思考と思考加速で全力で考えた結果、だした答えはコレだ。
「ごめん、恥ずかしかったからつい友達だなんていって」
と言いつつ握っていた手を両手で優しく包み込み目を見つめながら手の甲にキスをした。ちょっと気持ち長めに。
マインドプロンプトも口にキスをしろとは言っていなかった。それにいきなり口にキスをして更なる怒りを買うわけにもいかない。
どうやらこれが功を奏したようで脳裏の警告は消え、クレアの表情も元に戻っている。
「おどろかせないで欲しいでありんす」
「ご、ごめんね」
フランもホッとしてる様子を見るに最悪の事態は避けることができたのかもしれない。
怒りの沸点が低い人なのかと思っていたけど思っていた場所とは違う場所に沸点があっただけなのかもしれない。
「あぁ、紹介しておくね。こちらはこの家で一緒に住んでるフランだよ。元ヴァンパイアだったけど今はちょっと特別な存在なんだよね」
「一つ屋根の下で特別な存在でありんすかぁ?」
僅かにピリつく空気。
「た、ただの居候みたいなものなのじゃ。特別なのは聖魔混合の魔力なのじゃ。余は無害な生き物なのじゃ、よろしくなのじゃ」
「あらホント、珍しいでありんすね。よろしくでありんす」
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