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乾いた怒り③
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エーナに頼まれ思いついた
『クレアに注意を向けさせ戦争させない作戦』だが、1つ不安要素があった。
作戦が上手くいかず、結局戦争をすることになってしまった場合のことだ。
ほっといたところで小国と大国の摩擦の変化に良い兆しなどあるなんて思わないし、12国の連合とは言え小国側に勝ち目がないのはなんとなくでも分かっていた。
それを確実にしてくれたのがマインドプロンプトが立てた勝利確率。
《現状、12の連合国が勝つ確率は0.001%未満です》
(0%ではないのか……私が介入したら?)
《勝率は99.999%以上です》
(100%でもないのね)
《もしもがあるかもしれませんので》
介入をしてしまうと、国と国の関係がさらにややこしくなるのでするつもりなどない。
なのでせっかく連れてきたクレアを説得して予定通り進めようと思っている。
ちなみにこちらの作戦成功確率はクレアの憤怒スキルに未知数な部分があるので計測不能だそうだ。
テーブルの上にインテルシア魔導国とその周りの小国を描いた地図を広げる。
地図と言っても、ガイドブックに載っていたものを真似て描いた簡易的なものだ。
おおよその国境線はエーナの記憶を借りている。自国の事も他国の事も知っておかないとならないのが貴族らしい。
インテルシア魔導国が攻めるならどこからになるのか予想は簡単だった。
小国の1つマゴメコ国が過去に何度か攻め込まれていたこと。
理由は地形的に攻めやすく、その後他の小国に攻める起点に出来る国らしい。
それでもインテルシア魔導国から国を守ってこれたのは、周囲の小国もマゴメコを落とされると次に狙われるのが自国になる可能性があるのでマゴメコ国を裏で援護している可能性があったと考えるのが妥当とみている。
クレアは細かく分断された土地をじっくりと見るとため息をついていた。
「大国の一部そして、この小国のほとんどはわっちの支配領域でありんした。いなくなってからわずかな時でここまで細々となって……」
わずかと言うが、40年ぐらい前の話だ。
40年をわずか時というのは超長寿の種族しかいない。
小国が増えたのは聖剣の勇者トラーゼンがクレアを討伐したことになり、支配者が消えた土地を貴族やそこで暮らしていた者達が奪い合った結果だ。
「クレアにはこの小国達と大国の戦争を止めるきっかけになって欲しいんだよね」
「わっちが? なぜでありんす?」
「いざこざは少ない方がいいし……」
「したいのであれば存分にやり合えば良いでありんす。どうせ人の国などすぐ滅びるゆえ、滅びた場所から取り戻していけばいいでありんす」
寛大であり冷たくもある。関わりたくない気持ちもあるのだろうけど。
「それでも今回だけ何とかしたいんだよね」
「わっちに頼むよりケーナのほうが何とかなると思うでありんすよ」
それはそうだと言いたいが
「立場があるから、難しいんだよぉ」
「人族のしがらみでありんすか? ……致し方なし、でもわっちへのお願い事は高くつくでありんすよ」
「え~安くしてぇ~」
精一杯の猫撫で声で懇願する値引き。
元がどれくらい高いのかは分からない。
「まぁケーナは特別でありんすから、んー、1日わっちの言うことを何でも聞くというのはどうでありんすか」
「なんでも……?」
「なんでも! でありんす」
なんでもの内容を今知って無理となれば、こちらのお願いも聞き入れてもらえなくなるので聞かない方がいい。
「分かった、それでいいよ」
「ケーナは偉いでありんす。頭撫でてあげるでありんす」
よしよしと撫でられ約束事が決まった。
それを横で見ていたフランだったが、目線を合わせようとしない。
まるで何も聞いていないかのような態度だ。
クレアの協力を得られることが決まったので早速作戦について細かく練っていきたいところだったが、初っ端から物言いがついた。
「今回の『クレアに注意を向けさせ戦争させない作戦』についてだけど——」
「ちょっと待つでありんす。その長ったらしい名を毎回使うでありんすか?」
「そうじゃの。ちとながいのぉ」
急にクレアとフランでタッグを組んできた。
そもそもフランは作戦のメンバーに入ってはいないのだけど、暇をもてあましているので巻き込まれたいのだろう。
「そんなにいうなら、2人が考えてよ」
「なら、こういうのはどうでありんすか?作戦名『刮目せよ! わっちの名はクレアでありんす! 世の怒りを背負い、継ぐ者! 今ここに再誕せし作戦』でありんす」
「んーちょっと作戦名っぽくないかな。口上だよねそれ」
オブラートに包み返したが、正直私の作戦名より長い。
「余も考えたぞ『クレア様の御前である皆の者頭が高い、ひかえろぉぉお!』どうじゃ?」
「わかった。わかった。考え直すよ」
このままだと大喜利になりかねない。
なるべく短く私たちだけが分かればいいので
『クレア降臨作戦』
となった。
『クレアに注意を向けさせ戦争させない作戦』だが、1つ不安要素があった。
作戦が上手くいかず、結局戦争をすることになってしまった場合のことだ。
ほっといたところで小国と大国の摩擦の変化に良い兆しなどあるなんて思わないし、12国の連合とは言え小国側に勝ち目がないのはなんとなくでも分かっていた。
それを確実にしてくれたのがマインドプロンプトが立てた勝利確率。
《現状、12の連合国が勝つ確率は0.001%未満です》
(0%ではないのか……私が介入したら?)
《勝率は99.999%以上です》
(100%でもないのね)
《もしもがあるかもしれませんので》
介入をしてしまうと、国と国の関係がさらにややこしくなるのでするつもりなどない。
なのでせっかく連れてきたクレアを説得して予定通り進めようと思っている。
ちなみにこちらの作戦成功確率はクレアの憤怒スキルに未知数な部分があるので計測不能だそうだ。
テーブルの上にインテルシア魔導国とその周りの小国を描いた地図を広げる。
地図と言っても、ガイドブックに載っていたものを真似て描いた簡易的なものだ。
おおよその国境線はエーナの記憶を借りている。自国の事も他国の事も知っておかないとならないのが貴族らしい。
インテルシア魔導国が攻めるならどこからになるのか予想は簡単だった。
小国の1つマゴメコ国が過去に何度か攻め込まれていたこと。
理由は地形的に攻めやすく、その後他の小国に攻める起点に出来る国らしい。
それでもインテルシア魔導国から国を守ってこれたのは、周囲の小国もマゴメコを落とされると次に狙われるのが自国になる可能性があるのでマゴメコ国を裏で援護している可能性があったと考えるのが妥当とみている。
クレアは細かく分断された土地をじっくりと見るとため息をついていた。
「大国の一部そして、この小国のほとんどはわっちの支配領域でありんした。いなくなってからわずかな時でここまで細々となって……」
わずかと言うが、40年ぐらい前の話だ。
40年をわずか時というのは超長寿の種族しかいない。
小国が増えたのは聖剣の勇者トラーゼンがクレアを討伐したことになり、支配者が消えた土地を貴族やそこで暮らしていた者達が奪い合った結果だ。
「クレアにはこの小国達と大国の戦争を止めるきっかけになって欲しいんだよね」
「わっちが? なぜでありんす?」
「いざこざは少ない方がいいし……」
「したいのであれば存分にやり合えば良いでありんす。どうせ人の国などすぐ滅びるゆえ、滅びた場所から取り戻していけばいいでありんす」
寛大であり冷たくもある。関わりたくない気持ちもあるのだろうけど。
「それでも今回だけ何とかしたいんだよね」
「わっちに頼むよりケーナのほうが何とかなると思うでありんすよ」
それはそうだと言いたいが
「立場があるから、難しいんだよぉ」
「人族のしがらみでありんすか? ……致し方なし、でもわっちへのお願い事は高くつくでありんすよ」
「え~安くしてぇ~」
精一杯の猫撫で声で懇願する値引き。
元がどれくらい高いのかは分からない。
「まぁケーナは特別でありんすから、んー、1日わっちの言うことを何でも聞くというのはどうでありんすか」
「なんでも……?」
「なんでも! でありんす」
なんでもの内容を今知って無理となれば、こちらのお願いも聞き入れてもらえなくなるので聞かない方がいい。
「分かった、それでいいよ」
「ケーナは偉いでありんす。頭撫でてあげるでありんす」
よしよしと撫でられ約束事が決まった。
それを横で見ていたフランだったが、目線を合わせようとしない。
まるで何も聞いていないかのような態度だ。
クレアの協力を得られることが決まったので早速作戦について細かく練っていきたいところだったが、初っ端から物言いがついた。
「今回の『クレアに注意を向けさせ戦争させない作戦』についてだけど——」
「ちょっと待つでありんす。その長ったらしい名を毎回使うでありんすか?」
「そうじゃの。ちとながいのぉ」
急にクレアとフランでタッグを組んできた。
そもそもフランは作戦のメンバーに入ってはいないのだけど、暇をもてあましているので巻き込まれたいのだろう。
「そんなにいうなら、2人が考えてよ」
「なら、こういうのはどうでありんすか?作戦名『刮目せよ! わっちの名はクレアでありんす! 世の怒りを背負い、継ぐ者! 今ここに再誕せし作戦』でありんす」
「んーちょっと作戦名っぽくないかな。口上だよねそれ」
オブラートに包み返したが、正直私の作戦名より長い。
「余も考えたぞ『クレア様の御前である皆の者頭が高い、ひかえろぉぉお!』どうじゃ?」
「わかった。わかった。考え直すよ」
このままだと大喜利になりかねない。
なるべく短く私たちだけが分かればいいので
『クレア降臨作戦』
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