たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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魔王降臨オンステージ③

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「当たったはずなんじゃがのぉー。まさかこれほどとは……」

「何? ギビじぃ、もうあきらめちゃうの?? はやくなぁーい?」

「炎熱耐性高かっただけとちゃいます? おこりんぼさんと聞いてはりましたので、沸点は低いんと思うてましたわ」

「くるよ!!!」
 
 クレアが天高く打ち上げた炎の球が花火のように炸裂すると、フワフワと赤い炎が雪のようにゆらめきながら無数に落ちてくる。

「憤怒の結晶じゃ、数多の勇者達を苦しめた魔法での、これがある限り奴には対策なしに近づけん」

「当ったらヤバいの?」

「我を忘れて手当たり次第攻撃しはじめるぞ」

「めんどくさっ!」

「一旦下がりませんとですかねー」

「退くのはなしじゃ、これ以上距離を取ると憤怒の結晶のせいで魔法が阻害されてうまく当たらんようになる。それが奴の狙いじゃ」

「めんどくさっ!!!」

「でしたら、前に進むしかないでっしゃろ」

「待て! 魔法障壁を何重にも全面展開しながら魔法を放て。効いとらんようでもかまわん。隙あらばわいが仕掛ける」

「めっちゃっ! めんどくさっっっ!!!」

「そんな雑な魔力の使い方しなさったら、長く持ちませんよ」

「六大魔導士と呼ばれおる者がこの程度で泣き言いうでない! 奴をここで仕留めねば、残りの3人に任せるしかなくなるのだぞ」

 サニーとシイナは残りの3人のことを考える。
 
「しゃーーーーないかぁーーーー!! ミストとレインよりはお姉ちゃんだからなぁーー!!」

「そーですなぁ、エクレールは教師やってたほうが似合ってはりますし」

「覚悟は決まったか? 気合い入れろ! ポーション使うのに躊躇をするな。油断した奴から命持ってかれるからの!」

 六大魔導士は自らに全面展開の魔法障壁を何重にも張りながら散り散りに飛び、クレアとの距離を詰め最上位魔法を放つ。

 最上位の魔法で威力があるとは言え、憤怒の炎の盾によりクレアには届かない。

 憤怒の炎がクレアの意思とは関係なく、飛んでくる魔法に対して相殺するように盾になる。

 その盾代わりになった憤怒の炎が、相殺するときに弾けて憤怒の結晶に変わり飛び散る。

 増えた結晶は六大魔導士が張る魔法障壁と接触するとジリジリと削って、一層、また一層と減らしていく。

 六大魔導士たちは減った分の魔法障壁を張り直さないといけないので魔力を更に消費する。

 そのうえ隙を作るために攻撃をしなければならないので、最上位魔法を放って魔力を大きく消費する。

 通常の何倍もの勢いで消費する魔力。
 エピック級のポーションをガブ飲みしながらの戦闘は映像越しにも緊張感が兵士たちに伝わっていた。

 対するクレアの表情は変わっていない。
 それどころかまだ自身の魔力を消費していない。

 クレアのド派手なドレスのあちこちに付いているルビーのような宝石は、全てクレア自身の魔力を圧縮して精製した魔力結晶。

 守りと妨害、時々攻撃に使っている憤怒の炎の魔力は魔力結晶の魔力を消費しただけ。

 クレアにとってはまだ戦闘すら始まっていないのかもしれない。

 それでも続く一方的な消耗戦が六大魔導士たちを追い詰めていった。

「ギビじぃ! もうポーションないよ!!!」

「シエルはどうじゃ!!」

「すまんなー、もうあらへんわ!」

「仕方ない、一旦立て直す。こっちこい!」

 2人がギビと共に憤怒の結晶の範囲から離れて作戦会議のご様子。

 その間にも憤怒の結晶はどんどん増えていく。
 再度距離を詰めるのが難しくなっていた。

「あと1本づつになるのー。ほれっ、大事につかえー」

「ありかと、ギビじぃ!」

「すみませんー、隙が作れんくて」

「憤怒の炎が厄介じゃ。以前戦った時より強くなっておる。仮に勇者がおったところで大して変わらんかったかもしれんな」

「こっからどーするー?」

「離れてしまうと魔法が当たらんとちがいます?」

「わいをあやつの近くまで連れて行け、亜空間封印魔法を使う」

「それじゃ、ギビじいまで……」

「他に方法はないんでっしゃろか?」

「あるのかもしれんが、今はわからん……」

 巨大魔石に映る各々の表情からも焦りがハッキリ分かり、声援も悲鳴も徐々に小さくなっていく。

 あまりにも作戦会議が長引いている様子なのでこちらからアクションするように指示をだす。

⦅クレア、ゆっくり近づいてみて⦆

⦅どうしてでありんす?⦆

⦅困ってるみたい⦆

⦅弱すぎるだけでありんす⦆

⦅それは分かるけど。気配抑えて近づいてみて⦆

⦅それからどうするでありんすか?⦆

⦅聞きたい事とかないの? なんか会話してよ。絵になるから⦆

⦅あいつらより かめらまん の方が厄介でありんす⦆

 魔力を抑えて気配を殺してクレアがゆっくり近づく。

「もう止めるでありんす」

 クレアの声に3人とも思わず固まってしまう。
 やっぱり誰もクレアの接近に気付けないほどに話し込んでいた。

「なんで挑んでくるかや? 女神は争うなと言ったでありんすよ」

 ギビだけが向かい合うようにゆっくり前にでてくる。

「個人的な恨みじゃ、それに女神様があんたと手を組むなどありえん。どうせ偽者じゃろう」

「ほぅ……察するにわっちが殺した人族の弔いかや」

「そんなところだ。他の2人も似たようなもんだ」

「殺意を向けた者をヨシヨシしてやるほどわっちは優しくはないでありんす。お前らと同じように炎で追っぱらっただけでありんす」

「それで多くの者が死んどるんじゃ!!」

「そもそもなぜ挑む? 勝てぬ相手になぜ挑む?」

「お主聞いとらんかったのか?」

「最初に挑んだ奴の話しでありんす」

「それはお主が魔王であるからだろう?」

「勇者と名乗る者が初めて挑んだ時、わっちが魔王となっていたことを初めて知ったでありんすよ」

「何を言っている、そんな戯言誰が信じる」

「わっちが何者か知らぬのに、勝手に魔王と呼んでいるだけでありんせんか?」

「馬鹿げたことを言いおって!」

「逆に聞きく、魔王とはなんでありんす?」

「魔族の王であろうに」

「そうでありんすか。どおりでわっちが魔王などと呼ばれはじめたのでありんすな」

「違うとでも言いたそうだな?」

「わっちはクレア・シエヴィス。クレは天と地、アは始まりと終わり、シエヴィスは見通す者の意味がありんす」

「随分と大層な名じゃな。」

「正確には名ではない、強引に訳するなら時空の監視者という役割でありんす。わっちに名がなかったから、名前の代わりに名乗っただけでありんす。そんな事もわからず挑んでたのでありんすか? はぁ、今の魔法使いは言葉を知りんせん」

「……」

「無知を嘆かんでもよいよい。わっちが長生きなだけでありんす」

「昔の事ばかり詳しくてもの、最近の流行りを知らんようでは時代に置いていかれるぞ」

 高速の二重詠唱。
 
 1つは体力を魔力に変換する魔法。
 もう1つは空間に干渉する魔法。

「ギビじぃ! ダメ!!」

「止めて下さい! ここで死ぬべきではありません」

 体力の全てを魔力に変えて発動させるつもりなのだろう。
 
「サニー! シエル! 奴の言葉は混乱をまねくぞ。人族が築き上げてきたものを崩される。ここでやらねば! ここでやらねばならぬ!!」
 
「ギビじぃぃ……一緒に戦うぅぅ」

「シエル! サニーと共に退け!! 巻き込まれるぞ!!」

 大きな魔法陣が現れ、その魔法陣が真っ二つに割れると空間にも亀裂が入る。

「その魔法お主も使えるでありんすな」

「こいつはわいのオリジナルじゃからの、他に使える者は1人しかおらんかったが憤怒の魔王とやらに殺されてしもうたわ」

「命を代償にする魔法など無闇に教えるものではないでありんす」

「この魔法はわいで最後じゃ安心せぇ……」

 そう言い残し、空間の亀裂の中に吸い込まれていくギビ・クラウド。
 更に空間の亀裂が広がりはじめ、吸い込む勢いも強くなる。
 
 間近にいるクレアは吸引力に逆らい耐えているものの、ジリジリ引き寄せられているようだった。
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