たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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魔王降臨オンステージ②

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 フランが両手を上げ、ゆっくりと広げる。
 
⦅いい感じかの? 余、神々しいかの?⦆

⦅そうそう、いいよ! いい感じだよ!⦆

 それに合わせて雨雲に開いた空も更に広がるようにしていく。
 
 天候を操っているような姿に皆が釘付けになる。六大魔導士の3人もまだ様子をうかがっているようだ。

 開いた空の中心にクレアを転移させる。 

 クレアの姿はまだ真っ赤に輝く憤怒の炎をまとっているので見えない。

 憤怒の炎が徐々に大きく、花のつぼみの様な形になっていく。
 
 つぼみが完全に出来上がったところで、巨大魔石に再び女神が映る。

⦅フラン、セリフ!!⦆ 

「人族よ! ここは神が降り立つ神聖な場所である。いかなる理由であっても争いを禁ずる」

 巨大魔石から女神の声が拡散されるので、その声が両軍の兵士に届く。
 突然の大音量の声に驚き体を震わせているのが分かる。

「この言葉に意を唱えるのであれば、余の代わりにこの者が粛正いたす」

 言い終わったあたりでフランには戻ってもらう。
 
⦅次、余の出番はいつじゃ?⦆
 
⦅え? もう大丈夫だよ……⦆

⦅はぁ? 嘘じゃろ? まだなにもしとらんではないか!⦆

⦅じゃあクレアがピンチになったらでいい?⦆

⦅よしわかった! ちゃんと出番をまわすのじゃぞ⦆

⦅……⦆

 つぼみが映し出されるとゆっくりと地上に降りていく。

 地に着くと花が咲くように広がり、周囲の地面に積もった雹を一気に溶かし水蒸気爆発を起こし霧に包まれた空間を作り出した。

 自然の風によって徐々に霧が晴れていくと、真っ赤な憤怒の炎で作られた花の中心にクレアが微笑んでいた。

 一目でグッと飛び込む美しさ。

 沈むような紅の瞳に赤い髪、真っ赤なドレスに真っ赤な炎。

 両軍の兵士たちが巨大魔石に映し出されたクレアの微笑みに魅了されているように見えた。
 思っていた方向と違うような気がしてマインドプロンプトに確認を取る。

(あのさぁ)

【いかがなさいましたでしょうか?】

(魔石に映ったクレアを見て憤怒の魔王って気づいてくれたと思う?)

【十分伝わっている可能性がとても高く見受けられます】

(ほんと? 魅了されてない? 大丈夫?)

【問題ありません。彼らにとって赤色とはとても特別な色になります。赤色にまとわりつく暗い感情。幼い頃に聞いた、多くの勇者を苦しめた魔王の物語。40年以上経っても残る、国境を越えて広まった憤怒の魔王の噂。これらのことが本能へ刷り込まれております。もうすぐ変化があるでしょう】

 赤色との結びつきで巨大魔石に映る者が憤怒の魔王だったらと思いうがべるのだろう。それでも『勇者に討伐されているからありえない』と、まだ理性で否定している段階なのかもしれない。

 ただ一人でもあの言葉を口にしてしまったら連鎖が始まると思う。

 それが時間の問題なのだろう。


「……ふ、ふんど……憤怒の魔王だ……」


 どこかで、誰かがつぶやく。

 確証も証拠もない言葉であっても、それを自分で否定できず受け入れそうになり誰かに否定して欲しくて連鎖が始まった。 

 周りがざわつき、そのざわつきに更に周りがざわつく。

 恐怖の伝播が一瞬で広がっていくのが上からだとはっきりわかった。

 腹の底から這い上がる恐怖を抑え込むことができず、多くの者が本能的に恐怖を感じて取り乱し始めていた。

 立ち尽くす者。座り込む者。泣き出す者。

 危機に直面した行動をそれぞれが表現していた。

 それでも、あの3人だけは違っていた。

 抑えていた魔力を解放し、クレアに飛んで向かっている。

「ねーねー! アレ本物?? アレ本物だよね??」
 
「あの姿、あの魔力、忘れるわけないわい。まさか生きている間にまた会う事になろうとは夢にも思わなんだ」

「この3人が集められた理由がわかった気がしますわぁー。粋な計らいしてくれますなぁ」

「そだねー、うちらアイツの死体見るまで死ねないもんね!!」

「先手はわいが放つ、援護頼むぞ。生きて帰って祝杯じゃ!」

「サニーに合わせます、いつでもかまへんよ!」

「わかった! 魔力障壁の全面展開、いっくよー!!」

 サニーとシイナによって全面展開される魔法障壁。一瞬で10層の魔法障壁を作り上げている。
 1層でも全面展開とその維持となると魔力消費が桁が変わってくる。
 それを5層ずつ。六大魔導士と呼ばれるだけあるなと関心するしかない。

 同時にギビの詠唱が始まり、障壁の外で魔力が集積していく。
 詠唱が終わっても撃つことはせずに魔力の集積を止めようとはしない。

「ギビ! まだ!?」

「相手が相手だからのぉ、まだまだぁ!」

 更に魔力が集まり強く大きく輝き始めた。
 空間にある微量の魔力である魔素を根こそぎ集めて、自らの魔力もそこに加えて威力を上げようとしているのだろう。

⦅クレア、あれ受けれる?⦆

⦅無茶を言うでありんすな。でも当たったようには見せれるでありんす⦆

⦅分身とか?⦆

⦅憤怒の炎による分身体を作るでありんす⦆

⦅便利ねその炎⦆

⦅守りにおいては万能でありんす⦆

⦅あとで教えて⦆

⦅料理のレシピみたいにはいかないでありんすよ⦆

 大きな輝きに気づくふりをするクレア。
 視線を向けるだけで動きはしない。

「何もしてこーへんなぁー」

「舐められたもんじゃ、撃ってこいってことか? 上等!! その上品な顔、今歪めてやっからよー!!」

「思いっきり、やっちゃいなよ!」

 集積魔法の限界がきたようだった。
 集める魔力と漏れる魔力が等しくなるとそれ以上は集まらない。

「そろそろじゃ。受けよ国崩しの一撃じゃあ!!」

 強く輝く魔力の球が、一気に鋭く伸びてクレアをめがけて飛んでいく。

 憤怒の炎がクレアの姿を隠すように何重もの盾となり守ろうとするものの、全て貫きクレアに届いた。

 地を揺るがす大爆発。
 天まで届く爆煙が石の雨を降らす。

 憤怒の魔王 対 3人の六大魔導士

 この一連の流れもしっかり巨大魔石に映している。

 インテルシア魔導軍からは歓声が起き、連合聖騎士軍からは悲鳴のような叫びが届く。
  
 インテルシア魔導軍にとっては六大魔導士に勝ってもらわないと、自分たちの命が危ないので必死の応援になるのは当然かもしれない。

 連合聖騎士軍にとっては、どちらが勝ってもその相手をしなければならないのだから同士討ちを願うしかないのだろう。

 舞い上がった土煙が晴れていく。

 焼ける大地の中心に真っ赤に輝く憤怒の炎のつぼみ。

 再び花開くと傷ひとつ無いクレアの微笑を巨大魔石に映し出した。

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