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魔王降臨オンステージ⑥
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人族の中で最高戦力の一角を担う六大魔導の1人の命と引き換えに発動させた魔法に耐え、六大魔導の2人の命を代償にして現れた巨大な双頭の蛇も消え去った。
各国の兵士たちが最後に見た映像はその双頭の蛇と憤怒の魔王との大激闘だろう。
私の介入によって一度映像が切れ、再び巨大魔石に映し出されたのは憤怒の魔王だけ。
兵士たちは完全に戦意喪失し、誰も勝てないという空気が漂ってしまっているのは仕方がない。
そして憤怒の魔王が勝ち残った場合を想定していたかのように、両軍から白い大きな旗が掲げられた。
両軍が負けを認める珍しい終戦となっていた。
ここで私の失敗が一つ。
私がクレアやフランと3人一緒いるところを見られた可能性があった。
望遠スキルや千里眼スキル持ちが兵の中にいた場合、ヘブンズゲートから戻ってきたところを見られた可能性がある。
違うと言ったところで、その疑いを晴らすことが難しい。
せっかく争いを平和的に解決できたのに亡き者にするわけにもいかない。
以前には女神姿のフランと一緒にいるところも見られていて、女神との繋がりもあることになっている。
司祭たちに口止めはしたが、情報屋たちがいつどこで嗅ぎつけるかは分からない。
わずかでも手掛かりがあれば、私とクレアとフランの繋がりに気づくことなど容易いことだろう。
だったらいっそのことバラした方が変な誤解が生まれにくい。
フランとクレアを並ばせる。
その間に私が入り、目の前にレンズを浮かせ巨大魔石への投影を始めた。
「あ、えーと。魔王ケーナです」
兵士たちがざわざわしているのが伝わってくる。
「皆さん初めまして。本当は前に出る予定はなかったのですが、訳あってここに並んでます。女神様が――」
「女神の言葉じゃ、聞け!! 人族!!」
急にフランが割って入る。
フランが前にでると色めき立つざわざわに変化する。
服装のせいなのは間違いない。
「この平原全域を女神の聖域とする!! そして聖域と聖域から早馬1日分の距離を不戦の領域とする!! 破った者がいればクレアがその国ごと燃やす!! その他の小事は良きにはからえ!!」
「わっちからも、一言いいかや」
今度はクレアが前にでた。
ざわつきがピタリと止む。
「人族たちよ。気に入らんならいつでも相手をするでありんす。ただ、人族は命を無駄にしすぎなのが悲しい……。兵の命も王の命も同じ命でありんす。等しく燃え、等しく消えゆくもの。それをいま一度考えてくりゃれ」
「えっと、2人とも私が話していいかな?」
大丈夫そうなので続ける。
「女神様がクレアをこの地に呼び戻しました。私はそのお手伝いをしただけです。それと元々クレアの支配領域でしたのでインテルシア魔導国からの返還ということにしてください。注意してほしいのですが、あの蛇のせいで毒がヤバいので、しばらく普通の人族は立ち入らない方がいいです」
横槍を入れられて、その上土地まで奪われるような話。受け入れ難いのは分かる。
それでその鬱憤がこちらに来ないようにしておかなければならない。
「最後に、私は争いを求めていません。私自身の考えです。弱い者の考え方かと思われてしまうかもしれませんが、一応魔王ですのでそれはありえません」
「あやふやに伝えるのはやめるでありんす」
「いいんだよ、それくらいのほうが!」
「よいか、人族。ケーナはわっちより遥かに強いでありんす。わっちが嫁になる程の強さじゃ。冗談でもハッタリでもないことはわかってくれるかや?」
そう言って私に抱きつき、ほっぺにキスしてきたので
「あっ! もぅ! はい! 終わり!」
パリン!
とレンズを割って映像を止めて、締まらない幕引きとなった。
◇終戦◇
インテルシア魔導国は六大魔導士の3人と国とは一切の関与を否定して、「3人とも独断で動いていた」と、見え透いた嘘を言っていた。
ただそうでも言わないとクレアに先に仕掛けた事になってややこしくなるのも分かっている。
国は女神様の意見を尊重して憤怒の魔王と敵対することはしない考えだそうだ。
連合聖騎士軍の方は12万の軍勢がいながら、女神様の言葉通り争いは一切行わない事を連合国全てが即時決定したそうだ。
こちらは裏にエーナが付いているので当然かもしれない。
魔王クレア復活を目撃した両軍合わせて約15万の兵士たち。
それだけの目撃者の口を封じることなどできるはずもなく、憤怒の魔王クレア復活は全ての国々に知れ渡ることになった。
恐怖に怯える日々になるのかと思いきや、女神様が姿を見せた聖域で人族の魔王とイチャイチャしている。という噂も一緒に広まり昔のように『魔王、即討伐』より『触れぬ魔王に怒りなし』のような無闇に手をださない方向になっていった。
そうなったのも今回の戦いの様子を広めた事も要因である。
討伐するにせよ、攻略法がない限り勇者や英雄を送りこんでも無駄死にさせるだけになる。
最低限憤怒の炎だけでも攻略法を見つけないと挑むこともできない。
更にクレアは代名詞でもあるスキルの憤怒を使用していないので、まだ未知の部分も多い。
それなら特に害がない今、手を出す必要はない。
それが全ての国の共通認識になりつつあった。
インテルシア魔導国は領土返還という形で領土を奪われたわけになるが、毒まみれの広い平原を返すだけで憤怒の魔王と不戦の約束をしたと思えばお釣りが来る。
むしろ国防に関して、不戦の領域がある国境付近はインテルシア魔導国側も、小国側も以前より安全になった。
おまけに不戦の領域内にたまたま入った村や町の一部では治安も良くなった。
不戦の解釈がどこまで適用されるのかわからないのが逆に悪事に対して抑止力となったみたいだ。
女神様は「小事はよきにはからえ」としか言わなかったので詳しくはわからない。
悪さをすると関係者全員が憤怒の炎で焼かれるなどと噂がまわれば、誰も自分の身で一か八か試そうとはならない。
どうせなら不戦の領域の外でやればいいとなる。
曖昧なルールのせいで、悪事を生業とする者全員が不戦の領域には近づかなかった。
唯一女性のビンタが許されることは実証済みらしい。
犠牲者もいたが、大きな衝突なく終わりにできたエーナからの頼み事。
大きな貸しを作れたので、今後の貯金としてとっておくことにする。
各国の兵士たちが最後に見た映像はその双頭の蛇と憤怒の魔王との大激闘だろう。
私の介入によって一度映像が切れ、再び巨大魔石に映し出されたのは憤怒の魔王だけ。
兵士たちは完全に戦意喪失し、誰も勝てないという空気が漂ってしまっているのは仕方がない。
そして憤怒の魔王が勝ち残った場合を想定していたかのように、両軍から白い大きな旗が掲げられた。
両軍が負けを認める珍しい終戦となっていた。
ここで私の失敗が一つ。
私がクレアやフランと3人一緒いるところを見られた可能性があった。
望遠スキルや千里眼スキル持ちが兵の中にいた場合、ヘブンズゲートから戻ってきたところを見られた可能性がある。
違うと言ったところで、その疑いを晴らすことが難しい。
せっかく争いを平和的に解決できたのに亡き者にするわけにもいかない。
以前には女神姿のフランと一緒にいるところも見られていて、女神との繋がりもあることになっている。
司祭たちに口止めはしたが、情報屋たちがいつどこで嗅ぎつけるかは分からない。
わずかでも手掛かりがあれば、私とクレアとフランの繋がりに気づくことなど容易いことだろう。
だったらいっそのことバラした方が変な誤解が生まれにくい。
フランとクレアを並ばせる。
その間に私が入り、目の前にレンズを浮かせ巨大魔石への投影を始めた。
「あ、えーと。魔王ケーナです」
兵士たちがざわざわしているのが伝わってくる。
「皆さん初めまして。本当は前に出る予定はなかったのですが、訳あってここに並んでます。女神様が――」
「女神の言葉じゃ、聞け!! 人族!!」
急にフランが割って入る。
フランが前にでると色めき立つざわざわに変化する。
服装のせいなのは間違いない。
「この平原全域を女神の聖域とする!! そして聖域と聖域から早馬1日分の距離を不戦の領域とする!! 破った者がいればクレアがその国ごと燃やす!! その他の小事は良きにはからえ!!」
「わっちからも、一言いいかや」
今度はクレアが前にでた。
ざわつきがピタリと止む。
「人族たちよ。気に入らんならいつでも相手をするでありんす。ただ、人族は命を無駄にしすぎなのが悲しい……。兵の命も王の命も同じ命でありんす。等しく燃え、等しく消えゆくもの。それをいま一度考えてくりゃれ」
「えっと、2人とも私が話していいかな?」
大丈夫そうなので続ける。
「女神様がクレアをこの地に呼び戻しました。私はそのお手伝いをしただけです。それと元々クレアの支配領域でしたのでインテルシア魔導国からの返還ということにしてください。注意してほしいのですが、あの蛇のせいで毒がヤバいので、しばらく普通の人族は立ち入らない方がいいです」
横槍を入れられて、その上土地まで奪われるような話。受け入れ難いのは分かる。
それでその鬱憤がこちらに来ないようにしておかなければならない。
「最後に、私は争いを求めていません。私自身の考えです。弱い者の考え方かと思われてしまうかもしれませんが、一応魔王ですのでそれはありえません」
「あやふやに伝えるのはやめるでありんす」
「いいんだよ、それくらいのほうが!」
「よいか、人族。ケーナはわっちより遥かに強いでありんす。わっちが嫁になる程の強さじゃ。冗談でもハッタリでもないことはわかってくれるかや?」
そう言って私に抱きつき、ほっぺにキスしてきたので
「あっ! もぅ! はい! 終わり!」
パリン!
とレンズを割って映像を止めて、締まらない幕引きとなった。
◇終戦◇
インテルシア魔導国は六大魔導士の3人と国とは一切の関与を否定して、「3人とも独断で動いていた」と、見え透いた嘘を言っていた。
ただそうでも言わないとクレアに先に仕掛けた事になってややこしくなるのも分かっている。
国は女神様の意見を尊重して憤怒の魔王と敵対することはしない考えだそうだ。
連合聖騎士軍の方は12万の軍勢がいながら、女神様の言葉通り争いは一切行わない事を連合国全てが即時決定したそうだ。
こちらは裏にエーナが付いているので当然かもしれない。
魔王クレア復活を目撃した両軍合わせて約15万の兵士たち。
それだけの目撃者の口を封じることなどできるはずもなく、憤怒の魔王クレア復活は全ての国々に知れ渡ることになった。
恐怖に怯える日々になるのかと思いきや、女神様が姿を見せた聖域で人族の魔王とイチャイチャしている。という噂も一緒に広まり昔のように『魔王、即討伐』より『触れぬ魔王に怒りなし』のような無闇に手をださない方向になっていった。
そうなったのも今回の戦いの様子を広めた事も要因である。
討伐するにせよ、攻略法がない限り勇者や英雄を送りこんでも無駄死にさせるだけになる。
最低限憤怒の炎だけでも攻略法を見つけないと挑むこともできない。
更にクレアは代名詞でもあるスキルの憤怒を使用していないので、まだ未知の部分も多い。
それなら特に害がない今、手を出す必要はない。
それが全ての国の共通認識になりつつあった。
インテルシア魔導国は領土返還という形で領土を奪われたわけになるが、毒まみれの広い平原を返すだけで憤怒の魔王と不戦の約束をしたと思えばお釣りが来る。
むしろ国防に関して、不戦の領域がある国境付近はインテルシア魔導国側も、小国側も以前より安全になった。
おまけに不戦の領域内にたまたま入った村や町の一部では治安も良くなった。
不戦の解釈がどこまで適用されるのかわからないのが逆に悪事に対して抑止力となったみたいだ。
女神様は「小事はよきにはからえ」としか言わなかったので詳しくはわからない。
悪さをすると関係者全員が憤怒の炎で焼かれるなどと噂がまわれば、誰も自分の身で一か八か試そうとはならない。
どうせなら不戦の領域の外でやればいいとなる。
曖昧なルールのせいで、悪事を生業とする者全員が不戦の領域には近づかなかった。
唯一女性のビンタが許されることは実証済みらしい。
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