たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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未来の花嫁⑩

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 城の中はもちろん豪華絢爛。
 キョロキョロしながら進むと大きな扉に豪華な装飾。その前に並ぶと、この先にいるのだろうと思わせる扉がゆっくり開いた。

「おおお薔薇姫! やっと会えたでの!!!」

 全身黄金に包まれた小太りのおっさんが出迎えてくれる。
 成金帝と言われてもこれなら仕方ない。

「招待してくれてありがとうね」

「こちらこそでの!よくきてくれたでの!!わてが金帝トラントでの!」

「ケーナだよ。こちらハクレイとフランとクレア」

「おぉ未来の花嫁たちでの。聞いた通りの美しさでの!」

「花嫁たち、とはなんじゃ?」

「薔薇姫に並ぶ美しさだでの! 全員花嫁にしてもええでの!!」

「何をいっとるんじゃこの金ピカは」

「言わせておくでありんす」

 こちらを煽る盤外戦術のつもりなのか、少しでも優位に立つなら例え確率の世界でもやるだけやる派なのかもしれない。
 
 念のためトラントに対して鑑定眼スキルを使ってみる。
 大一番の賭けでは負けなしの話だったがレアスキルもユニークスキルもない、一般的な交渉スキルとちょっと運がいい程度のおっさんだった。

 逆にここまで成り上がれたのが不思議なぐらいのステータス。
 何か隠し持ってるのかと思ってさらに鑑定してみるが、護身用の魔道具と金の装飾品しか所持していなかった。

 となると考えられるのは会話をした時にこっそり鑑定眼を使用して勇者たちのスキルを探った時に見つけた【運命の先読み】を使って未来を見ていること。

 抗わずに淡々と物事が進むとトラントのシナリオ通りなのだろう。
 
 きっと昨日トラントに会えなかったのは運命の最終確認するため。今日会えたのは確認後勝つ未来が見えたから。

 そして条件が大きく変わった時、再度確認するために今日はまだ【運命の先読み】を温存している可能性は大きい。

 これまでと同様に1日1回の制限があるなかでやりくりして上手くやってきたようだ。

 勝負する場所にスキル封印や魔法封印があったところで、トラント自身は困ることがない。

 これまではこれで勝ってきて、自信がある必勝パターンに今まさになっている状態なのだろう。

(私がしたかった勝負はもっと単純でドキドキする勝負だったんだけどな……つまんなくなっちゃった)

 勇者たちが使う【運命の先読み】のスキルを再度鑑定すると明確な効果は1つだけ。

 使用の制限:3人が同時に対象を直接見ることで1日1回強制的に発動する。

 効果:対象の近いうちに起こりうる1番大きい運命の分岐点を知ることができる。

 行動変化の影響:対象の運命を変化させる。

 未来を知り対象に違う行動を取らせることで、運命を必ず変化させると言うことだろう。変化が気に入らなかったら思い通りの運命になるまで試行錯誤をすればいい。
 
 戦闘だと目の前の死を回避するぐらいしかできないが、その先にまた死ぬ運命があった場合意味がない。
 大きな変化のある運命がハッキリわかるギャンブルなら、このスキルを活かす方法なのかもしれない。
 
 この勝負はもうサイコロを振ることなどどうでもよくなってしまった。

 運命を変えるか、トラントの思い通りになるかの勝負になってしまった。

「あのさ、私とまだ決まってない結婚のこと広めてたらしいけど大丈夫?」

「まぁまぁ時間の問題での!」

「もし逆恨みされたらどうする? 殺されちゃうかもよ?」

「城の前にいる奴らのことでの? 大丈夫だでの! あの程度道端の小石と一緒だでの」

 視界にすら入らないってことか。

「ナインホールの準備はできてるでの!部屋を移動するでの!!」

 ウッキウキで歩き出し、勝利を確信しているのか余裕の笑みがこぼれている。

「確認したいことあるんだけど」

「んー? 言うだけいってみるでの」

「トラントさん、私の付き添いできた者たちも花嫁にするってことは重婚ってことでしょ?」

「そうだでの!浮気ではないでの!重婚での! 一夫多妻での!」

「その優しさなら大丈夫だと思うけど私も重婚してもいいでしょ? もう私クレアとはそんな関係だし」

「それはダメでの! クレアとの関係は今日までの!! それにクレアもわてのお嫁さんにするでの」

「えーダメかぁ」

「嫌なら勝負で勝てばええでの!」

 そうだけど、勝負はもう決まってる。
 リスクを背負っているように見えるだけ。

「着いたでの! この部屋での!!」

 真っ赤な絨毯が敷き詰められた部屋の中央にテーブルが1つ。
 そのテーブルは中央が窪んでいて、9個のサイコロが既に用意されていた。

 入ってしばらくすると脳裏に警告がでる。

【一部のスキルと魔法の使用が制限されます】

 予想通りの対策。

「あのさ、私もサイコロ持ってきたんだけどこっちでやらない?」

 ピカピカのサイコロを見せるが、チラッと見ただけ。
 何も答えてくれないトラントに変わってンダべが答えてくれる。

「心配ないべ、このサイコロに仕掛けなんてないんだべ。不安なら気がすむまで調べるといいべ」

 鑑定眼が既に【サイコロ】とだけ教えてくれているので、それ以上でもそれ以下でもないということは明確だった。
 逆に私が持ってきたサイコロと交換することに固執すればするほど怪しくなってしまう。

 マインドプロンプトに頼ってこの勝負を無かったことにしようか本気で悩んでしまう。

「勝負の前にルールの確認だっぺ」

「ナインホールは9つのサイコロを投げ、出た目の合計が多い方が勝ちになるんさ」

「合計が同じならもう一度やり直しだべ。勝負がつくまで繰り返すんだべ」

「一本勝負だっぺ。後から文句を言うのはなしだっぺ」

「分からないことはねぇでか?」

「ルールは分かった、それで問題ないよ。でもちょっと待ってくれないかな」

「なんでの?」

「お手洗いを……」

「緊張してきたでか?」

「うん、まぁね」

 ドレスを着ているためメイドが2人付き添いにきてくれた。
 専用の部屋に通され、ドレスを一度脱いでから更に奥にあるトイレへと通される。ドアが無い開放的なトイレだ。

 なにより監視が主な目的なのだろう。
 1人が念入りにドレスを整えるフリをして魔道具の類の物がないか確認している。もう1人は逃げられないようドアの前に立ち私を見ている。
 
 心の中でため息をついているとマインドプロントが呼んでもないのに声を掛けてきた。

《何かお困り事でしょうか?》

(相手が未来視してて運命が変化されてるっぽいんだよね。だからせっかくの勝負が台無し、しかも私の負け)

《ずいぶん強いスキルをお持ちのようですね》

(勇者のスキルの影響だからね。でもこの運命を元に戻すと私が勝つってことなんだよね)

《運命を変えても相手に勝ち目を残したいのでしょうか》

(それはそうなんだけど、それって操作してる感じがするじゃん)

《感じではなく、操作することになりますね》

(引き分けにできないかな?)

《ナインホールのルール上、同じ合計値だった場合はやり直しとなります》

(何度も同数にしたところで意味なしか)

《ナインホールではないルールでやるのが運命に干渉する方法の1つではあります》

(受け入れてくれそうにないかなぁ)

《他の人に投げていただくのはどうでしょう。運命と魂は深い関係があります。運命の相手などと言われるのはそのためです》

(詐欺師の常套文句にも一応意味があるのか。でも無理じゃないかな。入れ替わりは無理だよ)

《エーナ様でしたらいかがでしょうか?》

(ん? エーナか……)

《いかがでしょうか。見た目が同じなので入れ替わりでバレる心配はございません。それに見た目が同じでも、別の魂なら先の運命は必ず変化いたします》

(それいいかも、ちょっと実家帰るか。入れ替わりがバレないようにサポートしてよね)

《お任せください》

 ドアの前からずっと私を監視してるメイドが瞬きをする瞬間を狙い、思考加速と時空間魔法で入れ替わりを成功させた。 
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