転生少女は片腕をなくした薬屋の片腕になる

しのだ

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前世の想いを届けるために①

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 5歳の誕生日はとてもお祝いと言った雰囲気では無かったと思う。

 朝から高熱になり、直ぐに医者のところに担ぎ駆け込むも町医者程度ではどうにもできなく、夜になっても熱は下がらなかった。

 夜が更けてきた頃、うなされ朦朧としながら夢を見る。

 1人の男を命をかけて助けた夢だ。

 配達屋をしていた私が、品物を届けに行く。

 そこには思いを寄せる男性がいる。

 でもその男性がいる建物が火事なっている。

 外には男性の姿見えない。

 まだ中にいると感じた私は火の中に飛び込み部屋で倒れている男性を見つける。

 駆け寄り外まで引きずり出し助ける。

 私は全身火傷のせいなのか溶けるような感じでぐったりとする。

 彼が気づき目を開けるところを見て、安心して私が息絶える。

 といったものだった。

 目を開けると泣いている私。そして夢の中の私の記憶が断片的に蘇ってきた。

(私、転生したんだ……)

 ただの夢じゃなく過去の記憶として理解できたことに疑いは持てなかった。

 熱はもう無くなっている。

 足元には父親が看病してくれていたのだろう、椅子で寝てしまっている。

 あの火事は5年前にあったことなのだろか……

(確かめたい)

 でも今の私はまだ5歳の女の子である。思うようにことを進めることはできなかった。


 ◇◆◇◆◇


 前世の記憶を少し取り戻してから2年、7歳になると1人で少し遠くのお出かけが許されるようになった。

 町の道はあまり変わることはない。配達屋をしていただけあって、道を歩けばその先に何があるのか思い出してくる。

 今の私が初めてくるところでも目立つ看板などは前世の記憶が思い出す。

 気分は前世と同じ配達屋になっていた。
 そしてついに思いを寄せいていた男性の家の前までくる。

「あれ、ここのはずなのに……」

 既に新しい建物が建っていた。
 そこは町でも有名な商人、トブオイの雑貨店となっていたのだ。

 念のためと思い中に入ってみるも、知っている顔など1人もいるわけもなく、しかたなく帰るしかなかった。

「あら、リーンおかえり。今日は早かったのね。どこを探検してきたの?」

 会えると思っていた人に、会えない気持ちが妙に悲しくなってしまい涙こぼれてしまう。

「どうしたの? 嫌なことでもあったの?」

「ちがうの、かなしくなっちゃたの」

「どうして? お母さんに教えて」

「お母さんあのね――」

 前世の記憶の事、火事の夢、夢の中で助けた男の人、今日見た建物の事。

 一通り話すと母親は少し慌ててはいたが信じてくれた。
 前世の記憶を持った人や転生者と呼ばれる人は探せばいるらしい。

「火事の話は誰かに聞いたことはないの?」

「ないよ」

「本当にないのなら前世の記憶としか考えられないわね。10年前の事だからリーンが生まれる前のことよ」

 10年。それだけ時間が経てば変わってしまっていて当然かもしれない。

「火事のこと他には分からないの?」

「お母さんは詳しく知らないわ。お父さんなら何か知っているかも知れないから帰ってきたら聞いてみましょ」

「うん」

「じゃ、一緒におやつでも食べましょうね」

「うん!」

 その夜、父親にも同じ話をした。
 とても驚いていたが嘘を言っているようには見えないと言うことでしっかり聞いてくれた。
 
 火事があった事は知っていたが救出された男やその男を救出した者までは分からないとのことだった。

「前世の記憶だった頃の名前は思い出せないのかい?」

 何度も思い出そうと試みてはいるものの、肝心な名前のところはモヤがかかっているようで思い出せずにいた。

「わかんない」

「そうか、でも無理に思い出す必要な無いよ。今のリーンは俺らの子のリーンだから、前世の人ではないんだよ」

「うん、わかった」

 父親の心配も理解できるのだけど、転生をしているので、記憶を引き継いだというより転生前も今も同じ私なのだ。

 ◇◆◇◆◇

 翌日、諦めきれない私はまた同じ建物の前にいた。

 10年前の火事を知っていそうな人を探すためだ。

 しかし、10年前の火事のこと知らない人がほとんどで、知っていても詳しく教えてくれる人などいなかった。
 7歳の子供の話にまともに付き合う大人など、いないのが現実だ。

 また悲しくなってきてしまったが、ここで前世の記憶が少し蘇る。
 近くの肉屋も配達先で、そこの肉屋のお姉さんがちょっとお節介で優しい人だったということだ。

 記憶を頼りに走り出す。
 いくつかの角を曲がり、骨付き肉の看板が変わらずそこにはあった。

 しかし恰幅のいいおばちゃんが肉を切り売りしている。
 もうあの肉屋のお姉さんはいないのだろうかと思っていたが

「まいど、ありがとぅ!!」

 ありがとうの喋り方の癖が一緒なことに気がついた。

(このおばちゃん、肉屋のお姉ちゃんだ!)

 10年で店の外見は変わらなかったが、お姉さんの外見は大きく変化を遂げていたのだ。

「あのー」

「いらっしゃい。おつかいかな?」

「ちょっと聞きたいことがあって、お話いい?」

「いいよ。なんだい? いってごらん」

「トブオイの雑貨屋の前にあった、お店の火事の話を知りたくて、その――」

「ちょ、ちょ、ちょっと。こっちおいで、こっち」

 わけもわからず店の奥に引っ張られる。
 そして、おばちゃんがコソコソと続けた。

「お嬢ちゃん、あのお店の事はあまり人前で聞いちゃダメだよ」

「え、もう聞いちゃった」

「じゃ、もうおよしなさい。いわくつきの火事だったからね。あまりいい噂はなかったんだよ」

「でも、知りたいの!」

「んー仕方ないね。私が知ってる噂だけど、揉め事があって火をつけられたとか、消火隊までグルだったとか良くない噂ばかりだよ。だけど、誰かが男を引きずり出したおかげで命は助かったんだけどね。助けた方は死んじまったって話さ」

(やっぱり助けたんだ)

「ねぇ、その男の人は今どうしてるの?」

「男はね、確か、西の町はずれに引っ越したとか聞いたけど……、もう10年前の話だからね。今もそこにいるかはわからないよ」

 それでも十分な情報だった。
 さっそく、確かめるため走り出す。

「肉屋のお姉さん、ありがとう!!」

 思わず、前世の頃のまま呼んでしまった。

「はいよ! お姉さんだなんて……ん?」
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