連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。

KZ

文字の大きさ
15 / 67
始まりのバレンタイン

期待したら裏切られました

しおりを挟む
 今日、ルイに買っていったアレ。並ばないと買えないプリンは、実は5個あった。
 買った時に1つだけ別にしてもらったんだ。

 ……理由はね?

「プリン、美味しいわね。卵がこんなふうになるなんて」

 お姫様にも1つ持っていこうと思ってさ。
 優しい俺は、プリンを知らない彼女の分も買っていたんだ。
 もちろん、ただの善意だよ? 他意はない。

「美味しいなら良かった。買ってきたかいがあった」
「昨日からどうしたのよ? 毎晩こんなの持ってくるなんて」

 俺は、美味しそうに食べる姿が見たいだけなんだ。
 昨日のチョコレートケーキも、本当に美味しそうに食べていたからさ。それだけなんだ。

「気にするな、たまたまだ。チョコレートを教えてもらえることになった記念? まあ、そんな感じだ。めでたいからだ」
「そう。あたしはプリンが美味しいから、なんでもいいけどね」

 バカめ、──もちろん嘘だけどな! 昨夜のことを俺は根に持っている!
 寝る前に甘いものを摂取して、それが何日続ければ自分の増量に気がつくのかを、試してみようじゃないか!

「そういえば、ニクスが呼んでたわよ? 次にいらしたら自分のところに来て欲しいって。忘れないうちでよかったわ。確かに伝えたからね」
「……何?」

 わざわざ、そんなことを伝えておくってことは、緊急の要件なのか? 何か起きそうなほど、バレンタイン計画はまだ進んでいないのだが?
 要件をお姫様に話していないというのが気になる。

「今から行ってもいいのか?」

「何時だと思ってるの? もう執務室にいるはずないじゃない。バカなの?」

「もしやと思って聞いてみただけだよ! 緊急だった場合があるじゃん! しかし、そうなると早くても明日の夜になってしまうか……」

 ルイに言われた板チョコなんぞコンビニでも買えるが、財布の中身が心もとなくなってきた。そこで、安く買えそうなスーパーに行きたい。
 早くから開店しているスーパーに、学校に行く前に寄って行きたいから、朝は早く出掛けたいんだ。
 7時から開いてるとか神でしかない。学生の自分は助かっております。

「気になるなら、今日はここに泊まっていったら? それで朝一番で、二クスのところに行ったらいいじゃない」
「──えっ!?」

 泊まっていったらと、今そう聞こえたんですが?
 それも「ここ」ってお姫様はそう言ったよな。確かに言ったよな!
 ここって今いるココってことすっか!?

「い、い、いいのか? 本当に?」
「うん……」

 勘違いではないらしい。聞き間違いでもだ。お姫様は本気で、泊まっていけと言っている。
 あー、ボクわかった! ここって言うのは城のことで、同じ部屋じゃないというやつだ!
 勘違いした野郎がガッカリするっていう、おきまりのやつだ。そんなオチだよね。ボク知ってた!

「今からじゃ、部屋も用意できないから……」

 ──う、嘘だろ? まさか本当に……。

「ここでよかったらだけど」
「えーーーーーーっ!?」

 お泊りイベントが発生するようなフラグが、いったいどこにあった!? 読み返して! 今すぐ!
 読み返して俺に教えて! 主人公は全然わからなかったんだけど!?

「……ダメだ。やっぱり帰る。好意はありがたいが、時間も心配だからな。浦島太郎になってしまっては困る」

 笑いたければヘタレと笑え。俺にそんな度胸などない。急にイベントが発生しても「うひゃっぴー!」とは喜べない。
 うひゃっぴーってところで何?

「大丈夫よ。クローゼットが開いてる間は繋がってるけど、閉じれば向こうの時間は全然進まない。例えば。朝になって帰っても、向こうは夜のままよ」
「何それ。すごくない?」

 つまりあれか。この世界は1日で1年分の修行ができるというアレか。まさか実在したのか……。
 まあ、俺なら修行するくらいなら、1年遊んで暮らすけど。

「でも、1回それやっちゃうと、時間がちぐはぐになんないか? こっちは1日進んで向こうはそのままなわけだろ?」

「大丈夫よ。あんただけ、1日が1日多くなるだけだから。世界間の時間も、世界自体が帳尻を合わせてくれるから特に問題ないわ。時間って、きっちりしているようで融通が利くのよ。少しだけね」

「……んっ?」

 俺だけ1日が2日になるのはなんとなくわかる。けど、世界が帳尻を合わせてくれるというのはどういうこと? 世界さんは話し合いできるの?

「反応を見る限り、説明しても理解薄そうだからやめとくわ……。クローゼットが開いてる間だけ繋がってて、あとは都合よく世界が対応してくれる。わかった?」

「だいぶはしょったよね?」

「でも、これなら理解できるでしょ。変に気にしなければいいのよ。注意するのは、不要な時はきちんとクローゼットが閉まっているか確かめるだけ。簡単でしょ」

 おっしゃるとおりです。難しい話より大分いいです。
 しかし、それではヘタレるわけにはいかないではないか。逃げ出す理由がなくなった……。

「だから、泊まっていきなさい」
「はい」

 ──俺は逃げない! 泊まれというなら泊まるまでだ! まだ、何があるとかないとかはわからないが、この流れに身をまかせる。
 寝るだけ。寝るだけだ。なんて考えても、ドキドキするもんはするわ! ハァハァもしてしまうわ!

「用意するから、いいって言うまで目をつぶってて……」
「はい」

 大人しく指示に従うと、何やら布が擦れるような音がする。男子の想像力をここで働かせるなら、服を脱いでいるようにも聞こえる。
 そう思ったらそうとしか聞こえない! まさに今、俺の前でパジャマにお着替えしているというのか!

 だが、絶対に目を開けない。
 その選択肢はイベント自体をぶっ壊すものだと思うからだ。したがって、本当は何が起きているのかはわからない。

「動かないでね」

「──な、なんで抱きつくの! いや、言うほど抱きつかれてはいないけどなんなの!? 服を脱がせるつもり! 変態、変態!」

「わけわかんないこと言ってないで黙ってなさい! 動くな! 力加減が難しいんだから……」

 身体が何かに素早く包まれる。いや、くるまれる? そして圧迫感。まるで紐でぐるぐる巻きにされているような?
 その作業は非常に手際よく行われ、あっという間に出来上がる。
 ……簀巻きだよね。これ?

「──これでよし!」
「ねぇ、なんで簀巻き? 一緒に寝るんじゃないの?」
「絶対イヤ。変なことされそうだし……」
「──帰る、お家に帰る! 帰るから解け!」

 騙された。なんて巧妙な罠なんだ……。
 これに引っかからない男がいるはずない。
 期待させて、大人しくしてる間に拘束。出来上がるのは、身動き取れなくなった簀巻きマン。

「どうしても帰りたいなら、自分でどうぞ?」

 そう言って、お姫様は俺を突き飛ばす。簀巻きな俺は簡単に床へと転がる。
 ヤバい、起き上がれない! めっちゃ拘束力が高い!
 そして、もぞもぞしている間にクローゼットには鍵がかけられる。

「人の善意は素直に受け取りなさい」
「これが善意だと。この簀巻きがか!?」
「仕方ないじゃない。夜中にわざわざ、誰かを起こして部屋を用意してもらうなんて悪いわ。そう思うでしょ」
「──俺には悪いと思わないのか!」

 クローゼットから寝巻きらしいものを持ってきたお姫様は、それを持って天蓋付きベッドに消えていく。
 シュルシュル音がして着替え終わったのだろう、部屋の明かりが消える。

「甘いもの食べて、そのまま寝るなんて虫歯になるぞ! 俺も虫歯になりたくないから歯を磨きたい。お風呂にも入りたい! そうしなきゃ眠れない! 眠れないよーー」

「うるさい。1回歯を磨いたし、今から水場に行くのもめんどくさい。1日くらいノーカンよノーカン。いいから寝なさい。嫌なら廊下に放り出すわよ」

 なんたる仕打ち。俺が何をしたというのか? これが善意だと言うなら、世界はどうかしている。
 その上、廊下に放り出すだと。この時期に? 俺死んじゃうよ?

「あと……変なことしようとしたら、全力で窓からぶん投げるから。そのつもりで」

 この高さも死んじゃうよ? なんだろう……今日は厄日なんだろうか。
 日頃の行いが良いはずなのに。身体中痛いのに。あれ以上の不幸など、ごめんこうむりたいのに。

 なんか今日は不幸だーーーーっ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...