連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。

KZ

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始まりのバレンタイン

バレンタインを宣言する

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 バレンタイン宣伝作戦の場所の提供はミルクちゃん。集客のあれこれもミルクちゃんがやってくれた。その一部を、イケメンが手伝ったらしい。
 たぶん嘘だね。何もやってないのがバレるのが嫌で、やってるふうを装っているに違いない。

 バレンタインを宣伝するための設備一式を、城の人たちで運び、兵士諸君が設営し、それら全体の指揮を二クスが取っている。
 これも嘘だね。まるで、俺が何もやっていないように見せるために、あのイケメンはそう言ってるだけだね。

 おい、『……本当はお前が何もやっていないんだろ?』って、そう思ったな?
 そんなことはない! 俺は現在、締め切りに追われる作家のように執筆作業をしている!

 何故ならいくらお姫様が万能でも、バレンタインの説明をアドリブでは無理だからだ。上手く宣伝するために、最もバレンタインに詳しい人間が原稿を書かなくてはいけないんだ。しかしだね……。

「美味しいわねー」

「はい、とっても美味しいですー」

「2人とも、ブラウニーチョコをパクパク食べてないで、原稿書くのを手伝ってくれよ! お姫様も、ミルクちゃんもさ!」

 コンビニの店内には現在3人。俺とお姫様とミルクちゃん。だが、彼女たちは俺がお土産に持ってきた、ブラウニーチョコに夢中すぎる! 美味しいけども! タイミングを間違えてる!

「それは、あんたのプロデューサーとしての仕事よね? 自分でやりなさい。内容が気に入らなかったら、もちろんやり直しよ」

「私はバレンタインをほとんど知りませんので、お力にはなれないと思います。ごめんなさい」

「「──美味しい!!」」

 あーーっ、もう! こいつらめーーっ。だったら、そこで食ってんじゃねーよ。気が散るんだよ!
 自分たちは、もう働きましたと言わんばかりだ!

 お姫様は原稿が出来てからが本番なので、余裕があるし。いつもより気合いの入ったドレス姿で、いつもより目立ってるし!
 ミルクちゃんはもうやる事を終えて、本当に働き終わってるし。コンビニ内にいても、外のザワザワが聞こえてくるくらいに、人が集まってきてるみたいだし!

「姫さま。こっちも美味しいですよ」

「えっ、本当? どれどれ」

「こんなのを作れるなんてすごいです! チョコレートは素晴らしいです。美味しいし!」

 もうこいつらには頼まない! 俺1人で何とかしてみせる。だって、宣伝作戦の開始を俺待ちで、みんな待ってるわけだし!
 だいたい、こんな昼間から人がたくさん集まってくるのはどうなの? みんな仕事は? そんなにみんなして、お姫様が好きなの?

 確かに。お姫様は見てくれは可愛いから、俺も嫌いではないよ。ザ・姫なのもいいと思う。
 ミルクちゃんも嫌いではない。ケモミミとメロンは魅力的だ。少しアレなところがあるが、いい子だし。

 あれっ……本当に俺はどうかしたのか?

 こんなことを思ったりしなかったはずなのに。ルイのこともだが、どうかしてしまったのか? そう思わずにはいられない。
 なんで、俺はこんなに……。純情ってこういうことなの?

「ちっとも手が動いてないわよ?」

「ああ、ちょっと考え中だ」

「こういうの得意なのかと思ってたのに。どうかしたの?」

「どうもしない。原稿の内容はだいたい決まってるから、もう少し待て」

 バレンタインの書を元に、お姫様に喋らせることを原稿としてまとめる。スピーチに時間制限がないだけに、長くはなり過ぎず、かと言って伝えることは伝えないといけない。
 意外と難しい……。必要なところをピックアップするのを手伝ってほしい……。

「失礼します。白夜はくやさん、少し伺いたいことが」

 忙しいフリをしていたイケメンが、役立たずの女子しかいないコンビニに現れた。
 こいつなら手伝ってくれるだろう。イケメンは有能だし、イケメンは暇だろうし。

「二クスくん。キミ、いいところに来たねー。ちょっと手伝って。女子2人がチョコレートに夢中で、役に立たないんだ」

「そのことで少しお話が……」

 イケメンの手には、俺のと同じバレンタインの書のコピーしたやつが、握られている。
 中はバリバリの日本語だが、セバスが訳してやったのだろう。イケメンも今日になって、バレンタインの書を読んだというわけだ。

「なに?」

「バレンタインの概要についてなんですが、これだと、始めの年からチョコレートを贈るのは、無理なのではないですか? まだ、チョコレートありませんよ」

「……」

 俺の背後では、女子2人が美味しそうにチョコレートを食べている。それは俺が持ってきたからだ。
 しかし、異世界にはチョコレートが、そもそも存在していない。だからこそのルイちゃんのチョコレート講座であり、材料調達であったんだ。

 その苦難を乗り越え、チョコレート制作の道筋は見えた。そっちも、あとは俺待ちの状況になったわけだ。残るはバレンタインの宣伝と、2月14日のバレンタインの本番。

 だけど、今、二クスは何て言った?

 今チョコレートがないんだから、バレンタインに女の子からチョコを貰えるわけがないと、そう言わなかったかい? …………。

「──な、なんだってーー!?」

「女性たちはチョコレートを、自作するなり買うなりすると書にはありますが、どちらも今年は無理かと……」

「──な、なんだってーーーー!?」

「そこで今年は妥協し、チョコレートを振る舞う会にされてはどうでしょうか? 今年はそうして、来年からは本来のバレンタインとすると」

「──な、なんだってーーーーーー!?」

「ニクス、それ壊れてるわよ?」

「──な、なんだってーーーーーーーー!?」

◇◇◇

「おっ──、原稿出来たみたいね。どれどれ……まあまあね。これならいいわ」

「姫さま。その文字読めるんですか?」

「覚えたからね。あっ、ここ字間違ってる」

「ところで……プロデューサーさんは大丈夫なんですか? ブツブツ言いながら書いてましたけど」

「きっと、まだ毒が回ってるのよ。ほっときなさい。こいつは、少しヘコんでるくらいがちょうどいいみたいね。ふざけてる時よりちゃんとしてるわ」

 き、気がつかなかった……。
 全然、全く、これっぽっちも……。

 チョコレートがない異世界でバレンタインをやる。材料すらなかったが材料を見つけ出し、チョコレートの生成を教わりチョコレートを作る。ここまでは漕ぎ着けたのに……。

 あとは、人気者のお姫様に宣伝してもらって、みんなに興味を持ってもらえばいいと思ってた。
 そうすれば、発案者かつ権力者の俺は、黙っていてもチョコレート貰えると。トラックで1台分くらいは貰えると思ってたのに……。

 しかし、言われてみればそうだ。チョコレートないのに、女子がチョコレートくれるはずがない……。
 もう、ミルクちゃんあたりにチョコレートを渡して、それを俺に……──って、何だその悲しいのはーーっ!

 そんなん嫌だー。自作自演じゃん! あくまでも女の子から、義理であろうとチョコレートを貰いたいんだー!

「こちらの用意は整いました。いつでも始められますが、どうしますか?」

「行きましょう」

白夜はくやさんはどうしましょう?」

「原稿はあるし、もういなくても大丈夫よ。放心状態だしね。そのままで……一応、そいつも持ってきて」

 ……………………。
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