連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。

KZ

文字の大きさ
46 / 67
始まりのバレンタイン

本当に心からすまないと思っています。ごめんなさい。

しおりを挟む
 アンチの……俺のせいで、お姫様のこれまで隠してきた素が露呈しました。
 姫らしい姫を演じていたんだと、たくさんの人にバレてしまったのです。アンチ……俺のせいで。

 そんな多大な犠牲を払ったバレンタインの宣言は、試食のチョコレートとお姫様のこともあり、インパクトはひじょーーに大きく、かなりの注目を集めたので、成功と言えるでしょう。
 チョコレートの甘さを知り、お姫様の素を知り、民衆たちはホクホク顔でした。あの信者たちは恐ろしいです……。

 これで今年のバレンタインに代わる、『みんなで仲良くチョコレート食べよう!』という不本意な会に、人は大量に集まるでしょう。
 お、俺が血の涙を流せばいいんだ……。そうすれば上手くいくんだ。来年、来年がある! 来年こそは黙っていてもチョコレートを貰う!

「……」

 あっ──、いっけねー。忘れるところだった!
 僕はそろそろ、ルイのところに行かなくちゃな。カカオマスからチョコレート作んないといけないし。
 あー、1日が2回あるのは疲れるわー……。

「…………」

 ──お、思い出したんけど! こないだの毒い植物ってあったじゃん? あれは本当に毒があったんだ。ヤバい色してたんだよなー。

 普通は毒ないけど、毒い植物たちを食べあわせたことにより、ある毒が発生したらしい。その毒の効力を聞いてビックリよ?
 幼馴染や気になる女子にドキドキしてしまう。そんな毒なんだって!

 ──ハハハ、なんだよそれ! ビックリだよな?
 ルイが変なもの食べたんじゃないかって言ってたのは、超当たってたんだよ。いやー、参ったね。

「……はぁ」

 ──そ、それから! お姫様が日本語を習得していました。お姫様はどうなってんだろうね? あいうえから始めたのにね。
 もう、漢字の辞書なんかにまで手を出している。俺の書いた原稿の間違いを指摘するくらいには、覚えている。

 お姫様は頭がいいとかのレベルを超えてるよね。六法全書とか渡したら大変そうだな。いちいち、法に触れると言われるようになりそうだ。
 本当に名探偵が誕生したりしたら困っちゃいますよー。

「…………はぁ。きえたい。もう、生きていけない」

 やはり無視はできないらしい。これを放っておいて帰るのは気が咎める。
 このまま帰っても、チョコレート作りに集中できなくて、幼馴染大明神様に怒られる。そんな結果は見えているのだ。

 しかし、どうしよう。アンチ……俺のせいだし。

 お姫様はひたすらに落ち込んでいる。気合いの入ったドレス姿のまま、ベッドに突っ伏して動かない。
 時折、今のような声を発するだけ。俺は帰ろうにも帰れずにいます。

 しかし、そんなに猫かぶっていたかったのか? 俺はこっちの方がいいと思うけど。
 なに? それをそのまま言えばいいって? ……そんなことはできません。

「本当にごめんなさい。謝るから、もう気にすんなよ。すいませんでした」

「……あんたが謝ってきたところで、もう取り返しはつかないのよ。きっと今ごろ……──あーーっ、どうしよう!」

「大丈夫だって。みんなお姫様のこと好きだから。きっと今ごろは、『お、オレたちも、お姫様に空高くぶっ飛ばされたいぜぇ……ハァ……ハァ……』とかって思ってるって」

「そんな変態はあんただけよ。そのお気楽さをわけてほしいわ。本当にどうしよう!」

 そんなことないと思う。
 割と。それなりの数。その変態たちはいると思う。

 だいたい、猫かぶってたくらいで嫌われるなら、その方がいいと思う。自分を偽って生きていくのは辛いはずだから。
 結果的にその必要がなくなったんだ。これからは自分を出して、素の自分でいけばいいんだと思う。

 だけど、どうしたらいいんだろう……。

 今日は、あれだけの人が、お姫様を目当てに集まった。何の実績もないバレンタインはおまけだ。
 みんなお姫様を見にきていたんだ。あのアンチたちですら。

 なぁ、やっぱりさ。全部、あいつらのせいじゃないか?
 あいつらがいなかったら……いや、やめよう。あいつらは忘れよう。さらばアンチ。

「アンチたちのことは忘れて元気出せよ!」

「元気なんて出るわけない……はぁ……」

「くよくよしてても良いことないぜ! 元気出せよ! 余ったチョコレートやるから……」

 はっ、──ひらめいた! これはいいんじゃないか! 俺はやっぱり冴えている!

「一緒に行くか?」

「……どこに?」

「チョコレート生成しに。少しは気がまぎれるんじゃないか? 1人で部屋で突っ伏しているよりはさ」

 いい考えだろう。1人でいては気持ちは悪い方にしかいかない。没頭とはいかなくても、動いてる間は気持ちはマイナスにはならないよな?
 好きなチョコレートを自ら作るってのはプラスに働くはずだ!

「……チョコレートを作りにってこと?」

「そうそう」

「あたしが一緒でいいの? あの子とイチャイチャできなくなるわよ?」

 俺たちはさ、そんなにイチャイチャしてるように見えるの。実際には見てないお姫様から見ても?
 あれがイチャイチャなの? 本当に?

「実のところ1人では不安なんだ。ほら、まだ毒が抜けてないかもしれないじゃないか」

「……ドギマギしてやらかしそうだから?」

「──もう、それでいいよ! なんなんだよ! それなりに心配してやってんだぞ! 気をつかってるの!」

「……なら、いかない」

 興味はあるのか顔を上げてこちらを見ていたお姫様だが。
 もう少しで起き上がりそうだったのに、再び枕に顔をうずめて、元の体勢に戻ってしまった。またやってしまった。

「──冗談だよ? 本当は一緒に行ってほしいんだ。今すぐ許可取ってくるから、着替えてろよ。そのフリフリは、チョコレート向きじゃないからな」

「……」

「自分で作ったチョコレートは倍美味しいよ!」

「……(むくり)」

 もう、なんなんだよ! だが、行く気にはなったらしいな。起き上がり服を取りに行ったからな。
 あっ、俺も着替えなくちゃ!

◇◇◇

 俺も使いの服から着替えるために、お姫様の部屋を出て、プロデューサーとしての部屋へと向かう。あそこは着替え部屋として活用しているんだ。
 その移動の途中、セバスと鉢合わせた。

「小僧、材料は用意できた。後は、本当にチョコレートを作ればいいだけだ」

「──マジか! 宣伝もしたし、チョコレートだけあればいいのか。終わりが見えてきたな。ところで聞きたいんだが──」

 かくかくしかじか。かくかくしかじか。

「──と、いうことがあったんだけど。お姫様は猫かぶってなくちゃいけないのか?」

「母君からの言いつけだからな。姫として振る舞うようにと、キツく言われている」

「なんだ。いもしないやつの話か。気にして損した」

 もっと、特殊な理由があるんだと思ってた。
 親に言われたことを真面目に守っていただけか。お姫様も真面目やね。あと、ママンがクソやね。

 俺なら、『嫌なもんは嫌だ』と反発する。反抗期では済まないくらいには反発する。『親がなんぼのもんじゃい!』ってな。

「……言葉に気をつけろ。仕事でいないんだぞ? 今の発言だと死んでるように聞こえる。気をつけろ」

「ふーん。そんなのどっちでもいいよ。そいつは分かってないじゃないか。未だに、お姫様らしく振る舞う必要なんてあるのか? 自分を誤魔化してまでだ。誰かのため? 支えとなるように? バカらしい。それは自分を犠牲する理由にはならない。もういいはずだ。世界を変えるんだ。そんなのも変えるべきだ」

「……後悔するなよ。その言葉。小僧がそう思っている内は協力してやる」

 ……協力? バレンタインのことかな?

「連れ出せ。部屋にいてもいじけているだけだ。皆、知っている。知らぬのはあの子だけだ。そう振る舞ってみせるあの子に、救われていたのは事実だがな。もう必要ないのも事実だ」

「言ったかんな! あとで怒られたらセバスに言われて仕方なくって言うからな!」

「構わんが、向こうのことは責任とらんからな?」

 向こう? 責任も何も、ただチョコレート作るだけなんで、どーーにもならないと思う。

「じゃあ、俺は行くから! 着替えてルイに連絡入れなくちゃだから!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...