彼氏彼女の事情『ビッチと噂の黒川さんとお付き合いします!』

KZ

文字の大きさ
15 / 38

きっかけ ⑨

しおりを挟む
 そして同日の昼休み。
 いつもの場所にいくと友人Aだけでなく友人たちが勢揃いしていて、僕は姫川ひめかわさんへの告白がどういう顛末を迎えたのかを話した。

 誰も僕が喋っている間に口を挟むことなく話はスムーズに終わり、聞いた友人たちがそれぞれの思いを口にした。

 黒川くろかわさんと同じクラスの友人Bは黒川さんにいい印象はないようで、彼らしく厳しくはっきりと否定され。
 同クラスの友人Dは言うまでもなく黒川さんにいい印象がないに加え、とても恐ろしいと認識しているようだった。
 友人Cは最初からビッチと黒川さんを評価していて酷評だし、友人Aも今朝のことと聞こえてくる黒川さんの噂からいい顔をしなかった。

 つまり友人たち全員が黒川さんとの交際に対し、姫川さんに告白すると言った時以上に難色を示した……。

 今回は僕が黒川さんに告白するとかではなく、すでに黒川さんから交際を申し込まれていての状態だったからだろう。
 ここからの失敗はまずないし、黒川さんと付き合うということのマイナス面を友人たちは気にしてくれたのだと思う。

一条いちじょう殿。二次元にとは言わないですが、あの手の女子はやめた方がいいと思います」

「そうだ。姫川さんに告白するのとはわけが違うぞ。姫川さんを高嶺の花と前に言ったけど、あれは高嶺の花とは逆の意味で触れられないものだよ」

 友人たちが僕を心配しているのは理解できた。
 姫川さんへ告白すると言った時も、告白が成功するわけないからと言った友人たちの気持ちの裏には、僕への心配という気持ちも同じくらいにあっただろうからだ。

 だけど、姫川さんに告白すると自分で決めたように、友人たちにどう言われようと決めるのは僕だ。
 彼女がほしいから黒川さんの申し出を受け、彼女と付き合うのかどうなのかを決めるのは自分自身なんだ。
 ここに友人たちが介入するのは違うと思う僕は、友人たちに姫川さんの時と同様に宣言した。

「僕は黒川さんと付き合おうと思う。彼女がどんな人間でもだ」
「やめとけって。女なんて他にいるだろ」
「いないよ。あんなに積極的に行動してくる女の子は他にいない。僕の頭の中はそんな黒川さんでいっぱいなんだ」

 これが「あーしと付き合わない?」と言われたから、彼女がほしいと思う心から生じるものなのかはわからない。
 確かなのは僕は何も嘘をついておらず、間違ってもいないということだ。

「一条、悪い噂のある女子と好き好んで付き合うのか? 噂はいずれ消えるかもしれんが、落ちた評価は簡単には戻らないぞ」

「うん、わかってる。ラブレターが姫川さんに届かなかったのが始まりなだけだ。僕に好きな女の子なんていなくて、僕に好意を向けてくれる女の子がいるんだ。利害は一致してる」

「利害……そんなもので交際して関係が続くと思うのか?」

「僕に交際経験なんてないんだからわからないよ。でも、僕にはみんなみたいに彼女ができることはないのはわかる。それにさ、黒川さんは悪い人じゃないよ。絶対に」

 黒川さんがどれだけ悪い噂を持っていようと、僕は僕が見た彼女のことしかわからないし知りもしないんだ。

 それに誰かが語るその人のことなんて、事実だとしても真実ではないと僕は思う。
 関わってみないと人間の本質なんてわかるわけがないんだから。

 人間の外から見えている部分は外見だけで、内のことは近しい友人にも家族にだってわからないんだ。
 僕は彼女を聞いたものだけで判断して、排除したくなかった。
 お付き合いするなら彼女がいいと思った。

「一条、オマエはいいヤツだけどよ。言い出したら聞かないヤツでもあるよな。オレは忠告をした。あとのことは知らん」

「おい、忠告したからいいというわけではないぞ!」

「わかんねぇヤツだな。姫川の時と同じだ。オレたちにできることはやったんだよ。言って聞かないんだから終わりなんだよ」

 友人Cは心底呆れたのかこれで屋上から去り、以降一度もこの場所に現れていない。
 このあと直ぐに夏休みとなり半日授業だからというだけでなく、僕から連絡しようと友人Cからの返事はない……。

「一条。賛成はできないのは変わらない。でも、意見を変えさせる方法も思いつかない」
「おい、待て!」

 友人Aとはクラスが同じだから夏休み中も会話があるが、友人Aは黒川さんのことには一切触れない。
 これ以降、友人Aと少し距離が空いたのは間違いない……。

「……」
「お前もか、待てと言うのに!」

 友人Dは何も言わずに去ってしまう。
 彼にしたら僕に彼女ができるということは自分一人だけが取り残されるということで、この時の友人Dに僕から言える言葉もなかった。
 気休めも同情にしか聞こえないし。

「あいつら……」

「いいよ。こんなふうになるとわかってた」

「一条、彼女を作らないとと言ったのは自分だ。あの言葉がなかったらと今さら思っても遅いのはわかるが、失言だったと思うしかない。ひどく責任を感じるよ」

「やめなよ。それじゃあ彼女は彼女になってなかったかもしれないじゃないか」

 きっかけと。始まりと。その結果。
 彼女を作るために僕は友達たちを失いました……なんて僕は間違っても思わない。
 間違っていないのだから恥じることも後悔する必要もない。友人たちが友人でなくなるわけもない。

 しかし、これで一人になったのは友人Dではなく僕で、この昼休みの裏でどこかで話が出て広がったのだろう。
 僕が姫川さんに告白したという噂はあっという間に広がっていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...