連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
12 / 101
天使のホワイトデー

見覚えのある、アレ

しおりを挟む
♢8♢

 ポンコツ天使がしでかしたことが判明した。
 お姫様が贈ったバレンタインチョコを、ゴミと判断して跡形もなくしたのだ。しかも、付属していた手紙は読まずに破り捨てた。
 そしてボロッボロになりながらも、わずかに残った元ラッピングの袋を、本人の目の前に持ってきて踏みつけ悪態を吐く。

 もう、やりたい放題だね……。

 上記のように、勢いと勘違いでできているらしい天使。
 しかし、このポンコツ天使を見捨てることは俺にはできない。なんか自分と重なるからだ。

 泣いてクローゼットの向こうへと消えてしまったお姫様。天使がやらかしたことも判明したし、天使を別室に隔離したので迎えに行くことにした。
 恐る恐るクローゼットを開けて自室を覗き込むが、そこにお姫様の姿はない。
 代わりに、何故だか妹が俺の部屋にいる。

一愛いちか。お姫様はどうした?」

「れーと。一愛は怒らないから、しょーじきにいってごらん?」

「何の話だ? それよりお姫様は──」

 正座して俺に背を向けていた妹が、握っていた何かを構えて振り返る。上手いこと俺の首の位置でピタリと停止した、それ。
 それ、何か見覚えがあるんだけど……。嫌な思い出もあるんだけど……。

「ルシアちゃんは、どうして泣いてるのかな? おまえは何をやったんだい。しょーじきにいおう」

「違っ──、俺じゃない!」

「──おまえ以外に誰がいるんだ! 何をやったのか正直に言ってみろ。さもないと、こいつを今すぐ振るわなくちゃいけない!」

 こいつとは、一愛が手に持っている木刀のことである。
 アレ、間違いない。おっちゃんが旅行先で買ってきたやつだ。『中学生かよ』と感想を言うしかない。

 あっ! おっちゃんと言うのは、お隣の和菓子屋の、──ってそれどころじゃない!
 それの威力は身をもって知っている。
 俺はついこないだ、その木刀でボコられたからね……。

「一愛ちゃん。それさ、どうしたんだい?」

「お姉ちゃんに借りてきた。れーとをシメると伝えたら、『ほどほどにしろよ』と言われた。だから、ほどほどにシメる」

 ルイーーーー! なんで貸した! ほどほどにとか言ってないで止めてよ!
 この妹はやる。目がマジだし、納得するように説明しないとやられる。

「待て、一愛。話を聞いてくれ。頼む。お願い。この通りです。本当にお願いします」

 とりあえずでやられてはたまらないので、必死に頼んでみた。若干、妹が引いてるように見えるのは気のせいだろう。

「……わかった。話くらいは聞いてやろう」

 だが、俺の必死の思いは伝わったらしい。
 助かったーーっ。幼馴染に次いで、妹にも木刀で殴られるとか笑えないからな。はっはっは──……。

 一愛が木刀を下ろしたのを確認し、ほっと安堵した時、背後からギィとクローゼットが開く音がした。
 どうにか誤解を解く機会を得たのに、それを台無しにする音がした!

「やっぱり、アタシも一緒にいく」

 トラブルの原因がクローゼットから出てきやがった。待ってろと伝えてきたのにだ。
 お前がいるとメンドくさくなるから、大人しくしててくれと言ってきたのにだ……。

「れーと。何か弁解の言葉はある?」

「一愛ちゃん。キミはきっと、何かとんでもない勘違いをしているよ」

 現れた天使を一瞥し、妹は木刀に再び力を込める。
 状況が振り出しに戻った。むしろ、よくない勘違いをしている分だけ悪化した。ダメかもしれない。

「二股……いや、三股? ダメなヤツだと思ってはいたが一愛は悲しいよ。これじゃあルシアちゃん泣くわ。ルシアちゃんとお姉ちゃんに代わって、一愛が成敗してやる! そこになおれ!」

「──話を聞いてくれるんじゃないのか!?」

 またまた天使のせいで、妹が最悪な勘違い。三股って。
 一愛からするとお兄ちゃんは、そんなにモテるくんに見えているというのか。けど、三股って。

「もう貴様と話すことなどない! 黙って成敗されろ。三股最低男!」

「……いや、三股どころか誰ともお付き合いしてない。悲しいがそれが現実だ」

 自分で言って、これほど悲しいことがあるだろうか? 涙が出てきそうだよ……。
 本当に三股だったら最低だが、その最低ですら俺はない。悲しい現実があるだけだ。

「それもそうだね。じゃあ……──女の子を泣かすようなセクハラをしたんだね! やっぱり成敗。セクハラ最低男!」

 一瞬納得したかに思えた一愛は、俺に新たに罪状を追加して、振り上げた木刀を振り下ろす。
 自分に真っ直ぐに向かってくるそれを、なんと俺は白刃どりした。俺すごい!

「──話を聞けって!」

 普段なら、今ので殴られて死んでいただろう。しかし、今日の俺はひと味違う。
 なんか痛い思いをたくさんしてるし、バトルもののようなバトルを生で見たからな。このくらいはな。

「はなせ、そして殴られろ! おうじょうぎわがわるいぞ!」

「天使ちゃん! 妹に私がやりましたと証言して。私がお姫様を泣かせましたと言ってーーっ!」

 白刃どりはしたが状況はあまり変わらない。ここは天使に助けを求めるしかない。でないと一愛は木刀を振り回す。
 仮に俺が避けたとしても、狭い部屋の中でそんなことされたら、絶対にどこかしらは壊れる。
 天使には辛いだろうがやってもらわねば。

「……天使? お姫様の次は天使? 見境なしだな!」

「天使だけど天使も姫だ。そして早く証言してーーっ」

「れーとは姫が好きなの? そんな特殊な趣味なんだ。だから彼女ができないんだね……」

「妹が勝手に納得してるから、──早く証言しろや! お前のせいだぞ、これ!」

 兄妹のやり取りに見入っていたらしい天使は、ハッとした顔をしてから、ようやく口を開く。

「そいつにセクハラされました。押し倒されて胸を揉まれました。ルシアを泣かせたのもそいつです」

 そう言って俺を指差した。

「!?」

「──やはり貴様が犯人だ! なにが、何もしてないだ。白々しい! ルシアちゃんにも同じことをしたんだな、しねっ!」

 天使の嘘(一部本当を含んではいる)に、思わず天使の方を見てしまった。
 一愛はその隙に、俺のスネを蹴っ飛ばし、木刀の自由を確保する。

「いてえ! このポンコツ天使、ぎゃぁぁぁぁぁあ────」

 結局、妹にも木刀で殴られました。
 天使はこの様子を見てニヤニヤしていました。『やってやった!』そんな顔をしていました。


 ※


「事情はわかりました。れーとはセクハラの犯人だったが、ルシアちゃんを泣かせた犯人ではなかったと。れーと、ごめんね」

「そうだね。もっと早く気づいて欲しかったね。俺じゃないとずっと言ってたしね」

「そんなの信用できません。現にルシアちゃんは泣いていました」

「妹への俺の信用がないのが、そもそもの問題だから仕方ないね」

「そのとおりです」

 俺の部屋に今週の週刊誌を勝手に、、、借りにきた一愛いちかは、俺の部屋で1人で泣くお姫様を発見。どうしたのかと尋ねるも、お姫様は泣くばかりで要領を得ない。
 仕方ないのでお姫様に質問し、お姫様が頷いた部分だけの情報を頼りに、俺を成敗しようと部屋で待ってたらしい。マンガを読んでね……。

 そんな偏った情報だけで木刀を用意し、俺をやるつもりで待っていたことに、これまで以上の恐怖を感じました。
 この妹はヤバいです。うっかりやられないようにして生きていきます。

「じゃあ、お名前からお願いします。私は白夜はくや 一愛いちかといいます」

「ミカエラといいます」

「ミカエラさん。ご職業は姫でよろしかったでしょうか?」

 ──で、再びの事情聴取的作業。お姫様の時もだが、こいつはこれ好きね。
 何か、ドラマとかの影響なんだろうか? それとも、実は刑事になりたいとかか?
 よくは分からないが、自分で聞かなくても天使のことが分かりそうなので良しとする。

「……職業? アタシは学生よ」

「姫、天使、学生、ギャル、色黒、巨乳……少し盛りすぎじゃないでしょうか?」

「何の話? ちょっと理解ができないんだけど」

「なら結構です。れーと、なんかある?」

 何故だか急に事情聴取を俺に振る妹。もう事情聴取ごっこには飽きたのだろうか?
 だが、なんかと言われたら気になるところはある。

「学生ってどういうことだ。天使の学校があるのか?」

「そうよ。天使のいろいろを学ぶ学校よ。アタシは今年卒業するわ! やっと地獄が終わるのよ!」

「あれは制服みたいな服じゃなくて、本当に制服だったのか。宿題ってのも納得したわ」

 着替える前の天使の格好が何だったのか分かった。だからどうだということでもないが、わかった。
 しかし、天使の学校ね。聞いただけでとっても神々しい感じがするね。
 でも、通ってる人は地獄だと言っているけどね。

 天国にあるのに地獄のようなところか……絶対に行きたくないね。絶対にだ。
 異世界転生しようと通いたくないね。その天使の学校だけには。フラグは立たないようにしなくちゃ。

「天使……いや、ミカエラと呼んでもいいか?」

「ミカと呼びなさい。アタシは三股最低男と呼ぶことにするから!」

「わかっ……──ふざけんな! 人前でそんな呼び方したらぶん殴るからな。白夜はくや 零斗れいとだ!」

「わかったわよ。レートと呼ぶことにするわ」

 まったく、本当に三股最低男とか呼びやがったら、マジでぶん殴る。
 こいつなら殴っても、不思議と心は痛まなそうだ。

「ミカちゃん……なんか、れーとに似てる。ダメなとことか似てるし、他も似てる気がする。一愛が言うんだから間違いないと思う」

「「──誰がこんなやつと!?」」

「ほら、思考のパターンも一緒。やらかすのも一緒。 うわぁ……2人はとってもお似合いだよ」

「「──嬉しくない! こんなやつ無理だから!」」

「こわい。ダメなやつが2人になった……。世界は大丈夫なんだろうか? 天変地異とか起きそうでこわい」

 それ、世界規模で恐れるようなことなの? もし俺みたいなのが3人になったりしたら世界は終わるの?
 そうなんだとしたら、確かに怖い……。なんて冗談はさておき、最初から言ってるけど改めて聞かないと。

「それで。お姫様は?」

「お姉ちゃんのとこ」

「わざわざ木刀を借りに行ったわけではなかったのか。よかった……」

「木刀を借りるついでに、泣きやまないルシアちゃんを、お姉ちゃんに押し付けてきたんだよ?」

「「…………」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...