連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

ひな祭りの用意 ③

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 ──こ、ここか?
 それとも、もう少しこっちだろうか?

 分からない。もう一周回って分からない。
 どう違うのかも分からない。
 何が違うのかも分からない。
 だけど、いつまでもこうしていても埒が明かない。

 ならば…………──ここだ!!

「ちがーーーーう! そうじゃない! おまえは何年やってんだ! 毎年毎年、同じことを言われるな!」

「──申し訳ありません。姫殿下!」

 今のはリアルお姫様に言ったわけではなく、我が家のお姫様に言ったものだ。
 この時期だけは我が家にも姫がいるんだ。口うるさいお雛様の姫様がな。

「「一愛いちかがこわい」」

 ダブルお姫様の感想は最もだ。しかし、俺にとっては毎年の出来事だから……。
 この妹はお姫様を飾るのに全力なんだ。1ミリも妥協したりしないのだ。この作業は姫が気にいるまで永遠と続くんだ……。

「もうちょっと。もうちょっと……──はいそこ! そのまま手を離して」

 お雛様を箱から全部出し、飾り台も組み立てた。
 ちなみに組み立てる作業。これは俺が全部行いました。やつらは何も手伝いませんでした!

「ルシア、どうしよう。一愛がこわいわ」

「し、刺激しなければ大丈夫よ。あっ──」

 何故なら、女子たちはお雛様に夢中だったからね。1人として俺を手伝おうとはしなかったよ?
 まぁ、お雛様を出す作業をやってくれただけいいと思ってる。本来なら、あれも手伝わせられてたからさ。

「……話しかけてこないで」

「うん……」

 それで並べる作業へと移行したわけだが。
 人形だけで17体もあるんだ。人形だけでね!?
 他にも付属品がもう無数にあるんだ。無数に。こんなのおわんねーよ。ぜんぜんおわんねー。

「ルシアちゃん、次のやつ! れーとに渡して。早く!」

「──はい!」

 あとな、お姫様たちに会話がある。さっきもお雛様を可愛いと2人で言っていた。
 策士の策により何となく会話している時がある。
 それを俺たちは何も言わず見守っている。というか、そんな場合ではないんだ! お姫様たちに構ってなどいられない!

「ミカちゃんもボサっとしない。次は二段目だから。そっちのやつ持ってきておいて!」

「──はい!」

 お雛様を飾る作業は、『まだ!』一段目が終わったばかりだからだ。
 どっから見ても真っ直ぐ向いてると思うのだが、妹は1回では納得せず、角度を微妙に変えながら調整しなくてはいけないんだ。
 これが永遠と続く。お姫様たちのところにある人形と付属品がなくなるまでな。

「一愛ちゃんや、少しペースアップしないかい。このままだと、お昼を過ぎても終わらないと思うんだ」

「だったら1回でバシッときめろや!」

 絶対に違うと思うのだが、まるで俺のせいで作業が進まないかのように言われた。
 俺のせいなの? これって俺が悪いの? 言われた通りにやっている俺が悪いのかい?

「あんたがしっかりすれば早く進むのよ! しっかりすれば!」

 妹に乗っかりお姫様もこんなことを言う。
 だが、一愛がムダに細かいだけだと思う。自分でやればいいじゃんって思う。

「もう貸しなさい! アタシがやるから!」

 天使はそんな無茶なことを言……いや、それはアリかな?
 絵心は皆無だったが掃除は出来る。空気は読めないが行動力はある。そんな天使にやらせてみるのはアリだと思う。

「一番上は終わったからな。お姫様たちにも、もう手が届くだろう。見てるだけだとツマラナイだろうし。キミたちも是非とも並べ方に参加したまえ」

「なっ──、あたしを巻き込まないでよ!」

 もう俺だけガミガミ言われるのも辛くなってきたんだ。くくく、だから道連れじゃーー! 自分もやってみろや!

「いいでしょう。キミたち2人も参加したまえ。れーとは、お菓子でも持ってきたまえ。飲み物も忘れずにね」

「かしこまりました。では、失礼します」

 やった! お姫様たちが俺に代わりガミガミ言われてくれるらしい。ようやく俺は解放される。
 せっかくだし、うんと時間をかけてお菓子を持ってこよう。

「レイト、自分だけ逃げるなんて卑怯よ!」

「そうよ、卑怯よ!」

「2人とも。れーとはいいからお雛様持って。並べて、──早く!」

 ……最低だと思うって? そんなことはないヨ。


 ※


 馬鹿な、お菓子がない。何もない。
 そんなはずはないのだが、──ない!
 戸棚を開けようとない。ないものは何度見てもない。お菓子の類いが家に何もない。

 これはもしかすると『やられた』のではないだろうか?

 あの妹の事だ。これを知っていた可能性は十分にある! それを最初から知っていて、俺を利用してお菓子を手に入れようとしたのではないだろうか。
 かなりあると思う。なんて恐ろしい子!

 しまった、『かしこまりました』って言ってしまっている。執事ふうに。うっかり真似して言ってしまってる。
 マズイぞ、『何もなかったよー』って言って手ぶらで戻った場合、妹と姫たちから小言を頂戴するだろう。それだけならいいが、それ以上もあるかも。

「くそー、買いに行かなくてはいけないか?」

 近いのはコンビニか? あまり近くはないが、比較的コンビニが近いか?
 他に近所でお菓子など売っているところは……。

「あるよね。お隣は和菓子屋さんだった」

 財布だけ持てばいい。移動など1分くらいだ。
 こんな事を説明している間に到着する。

「いらっしゃいませ~」

 ほらね。もう到着したよ。
 いや、まさかこの展開まで予想して? なんて、おそろしい子。

「なんだ。れいちゃんか」

 自動ドアから和菓子屋の店内に入るとすぐに声をかけられた。今日はおっちゃんではなく、おばちゃんが店にいる。
 これが珍しいのかは分からないが、おっちゃんはどうしたのだろう? 死んだんだろうか?

「おばちゃん。ずいぶんな挨拶だね。一応客だよ?」

 まぁ、おっちゃんなど別にどうでもいいか。
 そして、俺だと分かった途端に雑な反応だね。概ね予想通りなやつだけどね。

「そうね。一応、お客様ね。いちおう」

「その部分だけ強調しないでくれますか? 本当に買いに来たんだから」

 さて、何がいいのか。ここは高いがケーキか?
 全く必要性は感じないが、オヤツが豪華なら姫たちの機嫌は良くなるだろう。
 あわよくば話に花が咲いてくれるかもしれない。

「何にするの?」

 饅頭とかは一愛は喜ぶかもしれないが、お姫様たちはアンコは食べるのだろうか?
 ここは実験がてらアンコのヤツにしようかな。しかしケーキも捨てがたい。

「ちょっと考え中」

「ねぇ、騒がしかったけど今日は何かやってるの?」

 まあ、あれだけギャーギャーやっていれば分かるか。家が真横だし、おばちゃんだってずっと店にいるわけじゃないだろうし。

一愛いちかのお雛様を飾っているんだ。ヒメちゃんが手伝いに来ているんだが、出すお菓子が何もなくてさ。コンビニまでは遠いし。近場で済ませたかったんだ」

「お雛様ってあのスゴいやつね。あれは高いわよね。ところで、最後失礼よね。とっても」

 そうじゃなければわざわざ来ないよ? とは言えない。きっと酷い目にあう。
 軽くぶっ殺されるかもしれない。何せおばちゃんは、あの凶暴な幼馴染様の母上様なんだから。

「まあまあ、ちゃんと買うから。そうだ。ひな祭りといえば何?」

「菱餅。桜餅。ひなあられじゃない」

 菱餅? あの三色のやつか。
 ひなあられも同じカラーリングだよね。
 桜餅はピンクの葉っぱが付いてるやつ。
 ひな祭りって言ってるしこれだな。

「桜餅を4つと……ひなあられはないの?」

「うちで作ったやつじゃないけどあるわよ。そっちそっち」

 ひな祭りが近いからか、ひな祭りコーナーが小さいながらあって、そこにひなあられを発見した。菱餅もあるな。

「じゃあ、ひなあられも4つ」

「んっ、人数おかしくない?」

「おかしくない。俺と一愛。ヒメちゃんと……あー、ヒメちゃんの友達のミカちゃんもいるんだ」

「また女の子を増やしているだと……」

 やっぱり悪意のある言い方をするな。が、わざとだから特にコメントしない。
 おばちゃんはだいたいこんなんだし。

「そういうのいいんで会計してください」

「つまんないわね」

「つまんないって何? どう反応したら面白いの? 別にお笑いの道を志してはいないから、面白い返しとかしないよ」

 お菓子はこうして入手したのだが、飲み物もなかったことを思い出した。
 コンビニは遠いので飲み物は自販機でいいよね。コップに注げば文句も言われまい。
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