連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

ひな祭りの用意 ②

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♢12♢

 ああ、今年もいよいよきてしまった。
 このめんどくさい作業をしなくてはならない日が……。あー、本当に嫌だわ。自分で言い出してアレだけど、嫌だわー。

 こういうのを請け負う業者とかどっかにないの? 需要あると思うんだけどな。
 まあ、今回に限っては、お姫様たちの仲直りのキッカケくらいにはなるだろうし。
 めんどくさいけど、いまさらやらないとか言ったら、一愛いちかにシメられるし。やるんだけどさー、嫌だわー。

「はい、物置のカギ」

 1人で『嫌だわぁ』と考えていたら、物置のカギを持った妹がやってきた。
 あぁ、俺は我が家の物置の前に現在いる。

 我が家は本屋。しかし、その倉庫とかではなく本当に物置だ。
 立派な蔵みたいなのが家の敷地内にあるんだ。だいぶ幅食ってるし正直言うと邪魔だが、代々あるらしいから。

 これを時系列的に話すと元々家と蔵があり、そこの裏手に今の家兼本屋ができ、現在に至る。
 今は無い元々あった家のことは分からない。俺が生まれるより前の話だし、聞いたことしか知らないからな。
 この事にも特に意味はない。俺の家は、無駄にデカい物置のある家だというだけの話だ。

「サンキュー。ところで奴らはどうした?」

「無。無だよ。ルシアちゃんが無」

「……ミカは?」

「無に耐えきれなくなってメソメソしてる」

 実は、ひな祭りの用意に天使も参加するとお姫様に言わなかったんだ。ほら、サプライズ的な感じにしようと思ってさ。
 ──逆効果だった。失敗した! お姫様の『クチモキカナイ。メモアワセナイ』は絶賛継続中でした!

「ミカには悪いことをしてしまった。こんなはずではなかったんだが……」

「いや、また勝手に出てきたミカちゃんが悪いと思う。あの子はわざとやってるのかもしれない」

「そう言うな。ミカを縛って動けないようにしてくるのを忘れた俺のミスだ」

「それ、いかがわしい感じがするな。もしやってたらブン殴ってたかんな?」

 ……らしい。良かったやらなくて。
 また、待ってろと言ってきたのに天使ちゃんは勝手に出てきたんだ。そんでお姫様と鉢合わせた。
 そして昨日のように勢いのまま話しかけるが、対するお姫様は無を貫いている。

「何故、天使は待てないのか。待てができる犬もいるというのに」

「あれは性格だからしょうがないね。そう言うれーとも、そういうところあるけどね」

 妹はそんなことを言うが、俺にそんなところないよ?
 俺は何日だって待つ気になれば待てる男だよ。天使のように、欲望のままに行動したりはしないのだよ。

「一愛、2人を下に呼んでこい。俺より力があるんだ。運び方もやらせよう」

「だね。あの無の空間にミカちゃんを置いとくのは酷だしね」

「頼むわ。俺がいくとトラブル発生しそうだし、カギ開けたりしとくから」

 縁側から中へと戻っていく一愛を見送り、自分は物置のカギを開ける。久しぶりに入った物置は埃っぽくて、古いものの匂いがする。

「うわぁ、くしゃみでそう。まずは空気を入れ替えないとだな」

 窓はガラスだが古い感じのやつで、なんか回して開けるカギみたいなのが付いてるやつだ。
 そういえば小学校とかもこれだったな。田舎だなぁ。

「──で、肝心のお雛様はどこだ? 去年は何もやらなかったから、出すところも戻すところも見ていないな」

 俺の記憶にある場所には違う物が置いてあり、お雛様はない。あると思っていたところにない。
 開ければ分かるかと思ってたのに……。

「れーと、連れてきたよー」

 一愛が無の表情のお姫様と、明らかにテンションの低い天使を連れてた。当然2人に会話などなく、黙ってついてきたのだろう。

「おぉ、ちょうど聞きたいところだったんだ。お雛様はどこだ?」

「あー、奥だよ。こっちこっち」

 先導する一愛についていくと、上にいく階段の裏に風呂敷がかかった、だいぶ場所を取っている箱たちを発見した。
 箱たち。何も間違いではないし、キミたちが思っている以上の大きさの箱たちだ。

「足元気をつけろよ? 古いからぶん抜けるかもしれないからな」

「変な匂いがするわね……」

 そう言いながら、顔をしかめながらお姫様が先に。

「ここが宝物庫なのね。どんなお宝なのかしら、オヒナサマ。言葉からは想像もつかないわね」

 なんか間違ったことを言いながら、天使が物置に入ってきた。
 天使が言うような宝物庫ではないが、俺はここでお宝を発見した。現在修理中だ。

「ここに宝などないぞ。ガラクタと普段は使わないものしかない。とはいえ、見る人が見ればお宝かもしれないものはある。たとえば……」

「れーと、無駄口たたいてないで風呂敷とるの手伝えや」

 ちっ──、無駄に喋って少しでも労働を減らそうと思ってたのに。一愛にはバレてしまったらしい。
 しかし、改めて見るとやはり箱からして無駄にデカい。それに豪華だ。箱なのに。

 何故、ばあちゃんはこんなお雛様を買ったのか。やけに一愛は可愛がられてはいたけど。女の子だからかな?
 こんなスーパーなお雛様を買って貰いたくはないが、それならそれで俺にも何か買って欲しかったな。
 一愛ばっかりズルいなー。これはジジババによるえこひいきだな。

「ほれ、ついには階段下に追いやられていたとは。ママンもかさばると認めたわけだな」

「おまえ、そんなこと言ってるとお雛様に呪われるぞ?」

「その歳になって何を非科学的なことを言ってるのか。こんなのただの人形じゃないの」

「本当にそうかな? 実は夜な夜な動いていると知らないのか? くくく……おまえはそのうち、呪いでひどい目にあうぞ」

 ……呪いなんてない。ないよ。
 信じてないからには呪いなんてないんだよ。
 いかん、気を取り直して!

 取り払った風呂敷から出てきた、お雛様の入った箱たち。なんか箱からして豪華で綺麗なやつだ。
 けど、昔はもっとピカピカしてた。記憶の中と比べるとずいぶん色あせてきた。呪いなんてないが、ずいぶんと時が経ったとは感じますね。

「「この箱を運ぶの?」」

「そうそう、ぶつけたり揺らしたりしないように気をつけてね。大きいし1人だと危ないから、2人ずつに別れて運ぼう。一愛は、れーとと運ぶから!」

「おい、それは──」

「早くそっちもて? 午前中に終わらなくなるぞ」

 マジか。大丈夫なのか!?
 天使に対して無を貫くお姫様と、すでに無に耐えきれなくなっている天使の組み合わせは大丈夫なのか!?

「……はぁ」

 お姫様は一愛を見ながらため息をつく。
 すでに一愛が俺のところでスタンバッてるから、組み合わせに思うことがあっても何も言えないし。
 手伝うと言ってしまっている手間、いまさら嫌だとも言えないのだろう。

「早くそっち持ちなさい」

 始めキョトンとしていた天使は、お姫様の今の台詞が自分に言われたのだと気づき『パァっ』と明るい表情になる。

「──任せない! テキパキやるわよ!」

 メソメソしてたのが急に元気になった。わかりやすいやつだ。
 まあ、天使ちゃんは元気ないよりはあった方がいい。天使らしくかは知らないが明るい方がいい。

「おい、早く進めよー」

「悪い。よし、さっさと運び方を終わらせよう!」

 って、ここで気づいたが俺が後ろ向き? この箱はカニ歩きでは物置から出せないんだ。
 どっちかは後ろ向きに歩かなくてはならないんだが、自動的に俺が後ろ向きなの? ジャンケンとかで決めるとかじゃなくて?

「ルシア。アタシたちもいくわよ!」

「…………」

 向こうは天使が後ろ向きか。
 あれは絶対に転ぶか、ぶつかるかするな。ああ、そう思ってるそばから──

「──危ないわよ! 後ろ見て……は無理か。ゆっくり動きなさい」

「気づかなかったわ。ありがとう」

「いいから。気をつけなさいよ」

 か、会話している! 作業中の必要なことではあるがね。まさか、一愛はここまで計算していたというのか……。

(にやり──)

 ──悪い顔してる! 『計算通りだ』って言いそう!


 ※


「運び出しは今ので終わりだな。次は……はぁ……」

 無事に箱を物置から出し、縁側に持っていくところまでは終了した。物置の鍵もかけたし、いよいよとなってしまった……。

「どうしたのよ?」

「はぁ……ここからが長い」

「人形は6つだけでしょ。あれで時間がかかるの?」

「甘い、箱1つに人形1体ではない。そんなに優しい仕様ではないぞ。中からマトリョーシカのように次々と箱が出てくる。あー、今日の夢に出てきそう」

「……次々と出てくる?」

 お姫様よ。もう少しだけ分からずにいたまえ。
 17人も箱から現れる恐怖を。あー、本当に夢に出てきそう。

「次は何するの?」

「ミカちゃん、いい質問だ。いよいよ箱から出して飾り付けるのだよ!」

「そうなのねーー」

 一愛いちかと喋りながらチラチラとこちらを、主にお姫様を天使は見ている。『また話しかけてくれないかな?』って顔だな。
 運び出しが終わったらすぐに、お姫様がずっと自分から離れてしまったから、何とか話す機会を探っているらしい。

「ミカちゃん。無理にルシアちゃんに構っちゃダメだよ? 今の距離感を保ちなさい。いいね?」

「一愛。ありがとう……」

「ありがとうは言えるのだね。よしよし!」

 普通にありがとうは言えても、素直にごめんなさいは言えないか。困ったやつだ。
 しかし、悪い空気ではなくなった。これはもう少し何とかできるかもしれない!
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