連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

机の中も異世界 ②

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♢17♢

 たかーーい天井。上は屋根ではなくガラス張り。そこから眩しいくらいに太陽の光が降り注いでいる。
 しかし、ガラス張りなのに不思議と暑さはさほどでもない。ガラス張りなのに。超眩しいのにだ。
 上の感想はこんなところだ。続いて首を左右に動かしてみよう。

 まず総額おいくら万円か分からないくらいの家具の数々。あとザ・シャンデリアに、姫ご用達の天蓋付きのベッド。
 などなど、高価な物が溢れる白を基調としたひろーーい、たかーーい部屋。

 で、どこなのよ……ここは。

 俺は真っ暗な謎空間に取り残されていたはずなのに。目を開けたら、このゴージャスな部屋にいた。
 ここは部屋だよね? 死後の世界とかではなく。

 実は死んでいて、『ここは天国だよ』とか言わないよね!? かなり現実離れしてるところなんだけど!
 あるいは実は俺の妄想の中で、本当はまだ謎空間に取り残されているとかじゃないよね?!

 お、落ち着こう。一度、頭の中を整理しよう。

 俺は真っ暗闇の中、スマホの明かりだけを頼りに、謎空間から脱出する方法を探していた。
 そのうち無重力的な空間での移動にも慣れてきて、暗いところにも目が慣れてきて、『あっ、これは無理なやつだ』と諦めてきて……そこからどうしたんだろ?

 寝たのか? 寝た感はないけど寝たんだろうか?
 よくは分からないが気づいたらここだった。
 めっちゃ高級かつ、めっちゃ心地いいソファに横になっていた。何も分からない。ということしか分からないな。

 いっそ話を聞いてみようかな。誰にかって、いるんだ1人。
 先ほどから何やら、テーブルに向かって鼻歌交じりに書き物をしている、ザ・見た目から姫がね。

 この体勢からざっくりと容姿をお伝えするとだな。
 肩口までの薄い銀の髪。とても綺麗なルビー色の瞳。顔立ちも相まって人間とは言えない感じ。まずこの世のものではないと思う。以上だ。

 やっぱりここは死後の世界。そんでもってあの子は女神様とかじゃない?
 そうだとすると、俺はついに異世界転生とかするんだろうか。マジで嫌なんだけど。

 えっ、他? 俺の異世界転生話を流して他だと?
 みんなヒドイな。同じ状況になってみろっていうんだ。

 まあ、あれかなぁ。あの子も姫なドレスを着ている。なので他の姫と比較する。
 ルシアと比べてだけど、こう、お胸の辺りがスゴい! あのプニプニの威力は計り知れない!

 あれっ、俺は少し前にもこんなこと言わなかったか? その時にも同じような比較をした気がするな。あれは確か……。

「目が覚めたのね? 気づいたなら、そう言ってくださらないと。私ったら人前で鼻歌なんて恥ずかしい。もうっ!」

 こそこそ探っていたからだろうか、彼女に目覚めたことを気づかれたらしい。
 そして何というかシンプルに……可愛い……。私、怒ってますな反応も可愛い。

 ザ・姫なのは見た目だけでなく中身もらしい。俺の周りにはいないタイプの女の子だ。
 俺はたまにくる、この感じに弱いな。可愛い。

「すいません。つい見惚れてしまって」

「まぁ、お上手ですこと。いつもそんなことを言ってらっしゃるのね? 悪い人」

 くすくすと笑う姿も可愛い。表情豊かでおしとやか。まさに理想的な姫だ。
 ルシアもあれはあれで悪くはないけどね。すぐに手が出るのがなかったらね。
 そうすれば見た目だけでなく中身も理想的な……──違う、なんでもない!

「他の女の子のことを考えてますね。私が目の前にいるのに。悲しいです……」

「そ、そんなことないです。貴女のことを考えてました! そういえば、お名前は?」

 彼女をなんとお呼びしたら。
 姫呼びでは駄目なんだ。その枠はもういっぱいだから。

「あーーっ、ミ……アミカと言います」

 アミカさん。いや、フレンドリーにアミカちゃん? あみたんとかもいいか。
 いや、まずは自分も名乗らないと。こういうのは最初が大事。知ってた!

「僕は白夜はくや 零斗れいとと言います。お友達からお願いします!」

 し、しまったーー。勢いあまったーー!
 最初が大事とか思ってたからか、握手を求めて右手を前に出してしまった。俺は何をやってんだーー!

「はい、お友達です。零斗さん」

 そしてお友達になったーーっ!
 なんとも友好的な姫だったーーっ!
 両手で手をギュッとされたーーっ!
 あと、零斗さんなんて初めて言われたーー!

「楽しい人。私、お友達というのは初めてです。だから嬉しいです」

「それは、こんなに姫感をだしていたら恐れ多くて、誰もお友達になってとは言えないと思います」

「そうなんです。私は構わないのですが、皆さん私を特別と扱ってしまうようで、お友達になってくれないのです……」

 アミカちゃんも、姫ならではの悩みをお抱えか。
 確かに同じ姫であるルシアも友達は少ないからな。普通に考えて声掛けにくいもんな……。
 だが、俺が友達になってしまったからには、ここは俺が友達として頑張らなくてはいけないな!
 お悩みの1つや2つ軽く解決してあげないとな。

「他にお悩みは?」

「学校でも皆さん良くしてくださるのですが、やはり一線があり、その距離も中々縮まらなくて、最近では授業も個別で受けているんです。私、本当は皆さんと一緒に学校生活も送りたかったんですが……」

 なるほど。なるほど。それは教師側からもだいぶ気を遣われているようだな。
 一般生徒と同じでは無理だと判断したな。ダメ教師が。教育委員会に訴えられるぞ。

「確かに。こんな子がクラスにいたら気を遣ってしまう。クラスメイトの気持ちも分かる。しかし、それではアミカちゃんは可哀想。歩み寄るにしても、一愛いちかくらいなヤツがいないと繋ぎにならない。よし! 俺が転校してクラスメイトとの仲を取り持ちましょう!」

「…………」

 今のは割と本気な発言だったのだが、聞いたアミカちゃんが停止してしまった。
 その顔はひどく驚いた表情をしている。

「どうかしたか……しましたか?」

 もしや、アミカちゃん呼びがマズかったか?
 あまりにも気安かったか。姫だし、アミカ様じゃないといけなかったかな。
 むしろ様を付けた方がいいんじゃなかろうか。

「いえ、少し……。いえ、やっぱりお聞きします! 零斗さんがお優しいのは、私が姫だからですか? それとも誰にでもそうなのですか?」

「誰にでもではないだろう。俺は野郎には全体的に厳しいと自負している。例えば、横で死んでいてもスルーできる自信がある。でもまぁ、助けてくれと言われたら、条件次第では助けるかもしれないけどな。死んでたらそいつはもう喋らないけどな! はっはっはっ──」

 そんなもんだろう。厳しく接していても、俺は頼まれたら断れない人だからな。
 そうなれば結局なんやかんや世話を焼くんだろうが、オープンに助ける人をやっていると、アンパン男的になってしまう。あそこまでいい人にはなれない。
 どちらかといえばバイキン男的に生きたい。たまにいい事したら褒められるくらいでいいと思う。

「……正直な人……」

「アミカちゃん。今、何か言った?」

「いえ、何も。話していたら喉が渇きますね。お茶を用意します」

 おぉ──、姫自らお茶を入れてくださるとは。
 物理が強い。すぐ手が出る。理不尽を押し付けてくるくらいしか姫のイメージがなかったが、お茶を入れてくれるとか、姫っぽくはないが女の子っぽい!

「だから、もっとお話しを聞かせてくださいね?」

「そんなこと言われたら断れないっす!」
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