連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

姫祭り

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♢19♢

 やあ、今日は3月3日。ひな祭りではなく、姫祭りの日。
 ボクは朝から異世界に来ています!

 あっ、これは異世界の日付であって現実では3月2日だ。本当のひな祭りは明日なのです。
 異世界側は何故だか、1日日付がズレているのです。
 繰り返しになりますが異世界二重生活をしていると、日付けの感覚があやふやになりつつあるので、1回確認するという意味も込めて、あん?

 ……なに、平日だろ? 学校はどうしたのかって?
 決まってんだろ、自主休講だよ。
 別にいいんだよ。どうせ授業はないんだから。

 今日は授業なしで、明日の卒業式の用意なんだよ。
 とはいえ俺が卒業するわけじゃないし、そもそもそんなのやってらんなくね?
 ボクね、椅子並べたりとか無理だから。

 まずね。在校生が卒業式の用意する時点で意味が分からない。どっか借りてやるとか。業者を使うとかしなさいよ。
 いや、それだと通常の授業になってしまうな……。今のナシで。

 今日は卒業式の用意だけの半日授業だって言って、ヤンキーたちは喜んで学校に行ったが、俺は授業がない時点で行かない。
 もちろん、奴らにそれを言いはしない。あまりに頭数が減ったら自主休講がバレるからな。
 何より、彼らには俺の分も卒業生のために労働してもらわなくてはいけないからね。

 そんなわけで今日は休みです。やったぜ! もちろん明日も行きません。やったぜ!
 その後は期末試験でその間は半日だけだし、受験の時は1週間休みや。やったぜ!
 そして、そのまま春休みになるな。やったぜ!

 最高だな。3月。休みがいっぱいある。
 ずっと3月と8月と12月だけにしてほしいな。

「ずいぶん機嫌が良いわね。今日はどうしたのよ?」

 休みは最高だなと考えていたら、エプロン姿のお姫様がやって来た。
 手には小皿にのった、自作スウィーツを持っている。

 姫のエプロン姿というのも最初は珍しかったが、流石に見慣れてきた。
 しかし、調理場に立つ姫。悪くないと思う。

「いやー、休みは最高だなぁと思ってね。それにお祭りだし、テンションは上げていかないと!」

「そう。どうも様子が違う気がするけどいいわ。これ、味見してちょうだい」

 昨日の内に完了させたプロデューサー業務。
 前の日の夜に二クスを急襲し、シェフ~たちも叩き起こし、姫祭りのアレコレを確認した。
 そんなんで結局、一昨日は朝までかかったんだ。
 朝方帰ったら即学校だったし、昨日は1日寝てしまったな。学校で。

 帰宅後も今日のためにやる事は山のようにあったし、頑張った。もう頑張ったんだ。
 そんな俺に今日は仕事はないと思っていたが、あったらしい。それもかなりの重要な仕事がな。

「こいつが例のチョコレートケーキだな。では、いただきます」

 見た目から普通にチョコレートケーキ。匂いも良いし、上手にできているのは確かだ。
 ルイに教えてもらってとはいえ、時間も経たずにこうして1人で作るんだもんな。
 将来はお姫様をやめて、お菓子屋さんになるんだろうか?

「習った通りにはできてると思う。だけど、ルイのとは違うのよね。同じく作ったはずなのに」

 あれはプロを目指してる人だからね。習ったとはいえ、同じくは出来ないだろう。
 出来たら出来たで、ルイちゃんの立場がないし。

「うん、普通に美味しいです」

 甘いもの自体をそんなに食べないからか、チョコレートケーキというのは新鮮だ。
 見た目だけでなく味もちゃんとしてる。お姫様にしては甘すぎないし。

「それはもう散々聞いた。何か違うこと言って!」

 美味しいものを美味しい以外に何て言うのよ……。食リポの人みたいにするの?
 やったことないけど、『宝石箱やぁ~』って言えばいいの?
 でもこれ、チョコレートケーキなんだけど。見た目が真っ黒なんだけど。

「お姫様は無茶を言うね。じゃあ、1つだけ気になったところを言うね」

「うん」

「黒い。全体的に黒い。味はいいし、チョコレートケーキなんだから黒いんだけど黒い。ミカは最初、チョコレートの黒さを気にしていた。食ったら甘いと認識したけどな。あの時は……イチゴのカラフルなやつに反応したな」

「なるほど。色合いということね」

「バレンタインの時のチョコペンがあったじゃん? あれで色を足したら?」

 思いつきだがいい案なのではないか?
 メッセージを入れたりしたら色合いだけでなく、特別感も出るし。

「流石はプロデューサーさんね。聞いて良かったわ」

「ふっ、この程度。どうということはないよ」

 今日の俺はいつにも増して冴えてる。
 きっと休みだからだな。休みパワーだと思う。

「ねぇ、ところで1つ聞いていい。こないだね。お菓子箱から新発売のイチゴのチョコレートが消えていたんだけど。何か知らないかしら?」

「えっ──」

 忘れてたーー!
 後で買って戻しておけばいいとか思ってたのに。
 思っただけで終わってたーー!

「ミカがイチゴのチョコレートに反応したって言ったわよね。どういうこと? まさか、あたしのチョコレートじゃないわよね?」

「ボク、そろそろミカを迎えに行ってくるね? あー、いそがしいなぁ、忙しい。忙しい」

 撤退。撤退! 即退散! お祭りの日にまで痛い目にあいたくない!
 予定より早いがミカを迎えに行こう。ここにいては命が危ない。

「それで誤魔化せると思うの……」

「今度、買ってくるから許してーー!」


 ※


 あ、危ないところだった……。
 そういえばそんなことあったわ。いろいろありすぎて、すっかり忘れてた。
 あのチョコは本当に買ってこよう。お詫びも兼ねて2つ買ってこよう。
 それならば、お姫様も許してくださるはずだ。

 それにしても……クローゼットから出てきて、そのまま机の引き出しに入っていくという、この画はどうなのよ?
 俺の部屋が中間点になっていて、繋がっているからしょうがないけどさ。

 次があるとしたらどこかな?
 同じものじゃなきゃダメなんだろ? ……ゴミ箱とか?
 いや、これ以上があるなら断ろう。その前に変なフラグが立たないようにしよう。

「ミカ。いるーー?」

 もう3回目だし、謎通路のくだりなどない。
 考えながら歩いていても移動など造作もない。

「「…………」」

 造作もないけど。これは予想外だな。
 ノックするということが不可能な時点で、部屋を覗き声をかけるしかないんだけど。これは予想外だな。
 大事なことなので2回言いました。

「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ──」

 顔を出したら、すぐそこでお着替え中でした。って、このパターンもマズい。殺される!
 なんだ? どうした? サボったからか? サボったからバチが当たるのか!?

「──何も見てません!」

「嘘をつくなーー! 閉めて、早く閉めてーー!」

「じゅ、10分後にまた来ます!」

「わかりました……──じゃなくて。早く閉めろーー!」

 撤退。撤退! 安全地帯まで撤退! お祭りの日にまで痛い目にあいたくない……いや、ちょっと待てよ。
 このままではダブルでヤバくない?
 お姫様も怒っている。天使ちゃんも怒っている。そして、学校はサボっている……。

 天使は謝れば許してくださるだろうか?
 あるいはパパンとママンに見つからずに、お姫様のチョコレートを買いに行って戻ってこれるか?

 今、姫たちと部屋でバタバタやるのはよろしくない。すぐどちらかは選ばなくてはいけない。
 何故なら、制限時間付きだからだ。

 ミカのことだから、10分しても俺が来なかったら勝手に出てくるだろう。
 そんでクローゼットに入っていき、向こうでお姫様と合流。『着替えを覗かれたの!』と、お姫様に話して、2人で俺を待ち構えている。

 これが最悪のパターンだ。まず、俺は死ぬね。
 これを回避するには……ミカに謝って許していただくしかない!
 また土下座かな。DO・GE・ZA。
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