連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

姫祭り ④

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 バカな天使ちゃんがまた、お姫様からのお手紙を読まずに食べた。これで2度目だ。
 彼女はヤギかなんかなんだろうか? そう言う他にあるまい!

 天使が貰ったお姫様からのチョコレートケーキには、その表面にメッセージが書いてあったんだ。こいつが今回のお手紙な。
 異世界文字が分からない俺は、そのメッセージをケーキごと写真に収め、後でこっそり解読しようと考えたんだ。
 野暮だとか最低だとかは今はいい。あとにして!

 しかし、それを実行に移す前に黒ヤギさんがメッセージ部分を食べたんだよ。
 自分はしっかり読んだのかもしれないが、そもそもだ。ケーキをホールで食うってなんだ!? バカなんだよ。天使は!

 しかも俺にケーキを取られると、勘違いの姫は思ったのかケーキを食うのは止まらず、チョコレートケーキは瞬く間に消滅した……。
 お姫様には聞けないし、天使も意外と口が堅い。
 あのメッセージの内容を、俺が知る日はこないらしい。

 ちなみにここで撮れた写真は、チョコレートケーキを口いっぱいに頬張り続ける天使ちゃんだ。
 隣でお姫様は笑っているし、いい写真ではある。なので、デカデカと引き伸ばして飾ってやろうと思う。

「た、食べすぎた……」

「当たり前だ。もうお腹いっぱいだろ!」

 チョコレートケーキを一気に全部食べ切った天使は、テーブルに突っ伏している。
 ドレスという格好も合わさって、とても苦しそうだ。
 女子曰く、甘いものは別腹とはいえ、ホールでいけばそんなの関係ないだろう。こいつはしばらく使い物にならない。

「お腹いっぱい。もう無理……苦しい……」

「ケーキを横取りしたりしないと言ったろうが! 写真におさめたいだけだったのにー。まあ、いい写真は撮れたから、覚悟しておくんだな!」

 こっちの姫はダメだな。
 勢いと勘違いで生きすぎている。
 もう少し姫らしくした方がいいと思う。

「まったく……。ミカがこのように使い物にならないため、ひとまず予定通りにいこうと思う。準備お願いします!」

 ダメな方ではない姫に、この後の用意をお願いする。ダメな方がダメなので仕方ないのだ。
 予定を知らないからだとしても、いきなりはっちゃけすぎである。

「わかったわ。それじゃあ着替えてくるから」

「お願いします! こっちは準備しておきますんで!」

 お姫様はお着替えに行かれた。さて、これでお姫様待ちだな。
 その間にこっちも後のメンツを決めないとな。どうしようかな? やっぱりジャンケン大会が無難かなーー。

「ねぇ、ルシアはどこに行ったの?」

 天使は食べ過ぎて動けないからか、お姫様の後をついていきはしなかったが、どこに行ったのかと不思議そうにしている。

「どこにって部屋にだろ。写真撮る用のドレスに着替えに行ったんだよ」

「……写真って何?」

 この前、お姫様にも同じ説明をしたが、異世界人は知らないからな。メンドくさがらずに説明します。

「こないだバレンタインの資料で見ただろう。こういうやつだ」

 姫祭りの資料用に撮影した人入り前の会場と、まだ作成時の会場の様子。すでにプリントアウトしたそれを天使の前に出してやる。
 いきなりの一眼レフでは、どう撮れるのか分からなかったので事前に予習しておいたんだ。

 カメラっていうのも、いろいろ設定とかあるんだよ。勝手に使ってるわけだから、パパンに聞くこともできないし、ネットで調べたんだが大変だった……。
 その甲斐あって、そこそこ使いこなせるようになったけどねー。

「ふむふむ。それでパシャパシャすると、風景が絵になり、こうして出てくるというわけね。へぇーー」

 意外と理解が早い天使ちゃん。おかげで余計な説明をしないですんだ。
 普段からこうならいいのにねー。

「そうだ。これが写真。こっちはカメラだ。撮ったものがそのまま写真としては出てはこない。撮ったものを写真にするには、別にプリンターというものが必要になる。まあ、カメラは写真を撮るための──」

「写真ってどうするの?」

 べらべらとカメラのあれこれを喋ろうと思ったら、核心をつくことを天使ちゃんは言ってきた。
 無いということは『どうするのか?』も分からないのだ。どう使えるのかもな。

「後で見返せば『この時はこうだった』『この時はああだった』ってなるだろう? 記憶だけじゃなく画像として残っていれば、思い出は鮮明になるし、証拠としても利用できるんだよ。ふふふふっ……」

「レート、何かこわい……」

 ──おっと。余計な警戒感を持たれるのはよろしくない。ミカは関係ないが、こいつも天使だからな。
 執事への対応がムダに優しいし、意外と身内に甘いかもしれないしな。写真をどう使うのかを、気取られるわけにはいかない。

「──気にすんな! どれ、試しに何枚か撮ってやろう。はい、カメラ目線でお願いします!」

 苦しくてもカメラ目線くらいはできるだろう。本番前の最終確認といことで、満腹の天使ちゃんを撮影します。

「こ、こう?」

「いいよー、ちょっと動いてみようか」

「こうかしら」

 ミカは立ち上がっただけだが、お腹が苦しいからそんなもんでしょう。
 それに姫というだけあって絵になるね。撮る側としては嬉しいよねー。

「いいよー、次は好きに動いてみて」

 俺は結構カメラが好きかもしれない。
 普段は携帯のカメラで足りてる感はあるけど、こうしてカメラで撮るのもいい。
 これが高級なカメラだからかな? これ、頼んだら俺にくんないかな? クソ高いんだろうけど。

「プロデューサーさん。何をしてるんですか」

「その声はミルクちゃん。着替えは終わったの……か」

 お姫様より一足早く、撮影のために着替えに行っていたミルクちゃん。
 というのもね。普段着で姫祭りへとやってきた彼女にルシアさんは大層怒り、自分のドレスを貸すから『着替えてきなさい!』ということがあったのです。

 しかし、ルシアさんは重大な見落としをしていらしたらしい。あの名探偵らしくない。
 ああ見えて実は、ミカが来ることに緊張していたのでしょうか。名探偵らしくないミスだ。

 すーはーすーはー。
 いや、ちょっと深呼吸が必要なんだ。ごめん。
 すーはーすーはー。
 よし、じゃあいくよ?

「──ミルクちゃん。自分の格好を鏡で見た!? 胸元がスゴいことになってるよ。そんなに出していいの!? 何と言うか……──ありがとうございます!」

 ──以上だ。ルシアさんとミルクちゃん。身長は同じくらい。
 しかし、胸元のサイズは……こう……とても比べられないんだ。察して!

「何度も鏡で見ました。明らかに露出が多すぎるのも自分で分かってます! でも、姫様いないし。外でお祭り始まっちゃうし。出るに出られずにいたら、着替えに来た姫様に怒られるし! 散々なんですよーーーー!」

「そりゃあね……。同じ服を着て。こうも違うのを見たら。キレるのもわかる気がする」

 俺がもしお姫様の立場だったなら、やっぱりキレると思う。まあ今の俺には、ありがとうしかないけどね! ありがとうございます!

 ミルクちゃんのメロンが、うっかりこぼれそうな感じだ。これはシャッターチャンスを見逃さないようにしなくてはいけないな。

「ミルク……。アンタ、その胸はなに! どうしたらそんなになったの!?」

 立ったまま唖然とした表情で、ミルクちゃんを見ていたミカが急に反応した。

「えっ──、ミカさん?」

「んっ、ミルクちゃんはミカを知ってるのかい?」

「はい。ただ、色が……」

 ミルクちゃんはミカと同じく、お姫様の数少ないお友達。その友達同士に繋がりがあることは驚かない。
 だが、今の反応がなんか変だったよな?

 ミカはミルクちゃんに気づいたのに、ミルクちゃんはミカに気づかなかったような。
 それに色って何? ドレスってこと?

「──! ちょっとこっちに来なさい。触らせなさい!」

 来なさいと言ったのに後ずさるミルクちゃんに、ミカが飛び掛かり押し倒した。
 なんて羨ましい。じゃなくて!

「きゃ──、や、やめてください! 本当にサイズが。何とか押さえてるだけだから! あっ、ああっ──」

 ナイスだミカ。シャッターチャンスだ!
 俺の疑問など、このシャッターチャンスの前には些細なこと! 絶対に逃さないようにしなくては。

「うそ、本物よこれ……。ルシアに勝ったと自慢していた自分が恥ずかしい。こんなところに伏兵がいたなんて。しばらく会わないうちに、こんなことになっていたなんて……」

 押し倒した体勢のまま、ミルクちゃんのメロンを触りまくるミカ。なんて羨ましい。
 しかし、これは女同士だから許されることであり……ミカが邪魔でしっかり見れない。テーブルとかイスも邪魔だ。取っ払おう。

「プロデューサーさん。助けてください!」

 ──な、なにぃ!?
 俺に助けを求めるの? この状態で?

「指が吸い込まれる。馬鹿な。こんなことが──」

 千載一遇のシャッターチャンスか。
 失っているミルクちゃんの信用か。
 どっちだ? どちらを取る?

「ぷ、プロデューサーさん」

 うぬぬぬっ……信用だ!
 ここはミルクちゃんに見損なわれている、俺の信用を取り戻すチャンスだ!

「──セクハラはやめぃ! このエロ天使が! 姫たる者がはしたないぞ。はしゃぎすぎるなと言ってあったろうが。強制帰還になるぞ」

「うっ、それは嫌!」

「よろしい。ほら、ミルクちゃん。立てるか?」

 強制帰還という言葉でミカは冷静さを取り戻したようだ。ミカを引きはがし、ミルクちゃんの手を掴み起き上がらせる俺。
 ──よし! これでいくらかは信用が回復しただろう!

「プロデューサーさん。ありがとうございます!」

 起き上がったミルクちゃんは、そのまま俺に抱きついてくる。そんなことされると感触が。あっ──。
 しかし、これは感謝されてのことであり、いかがわしい気持ちなど無いわけであって──

「おい、また新しい女か?」

「あたしが着替えて戻ってくるまでの間に、いったい何をしているの?」

 えっ……。き、気のせいかな……。
 今、お姫様の他に、我が家のお姫様の声も聞こえた気がするんだが。気のせいだよね?

「こっち向けや。学校サボって、貴様は何をやってんだい?」

「また、調子が良いこと言ってたのね」

 嫌だな。怖いなぁ。
 そうは思いながらも振り返るしかない。
 確かめなくてはいけない。
 勘違いということもあるかもしれないからね。

一愛いちかちゃん。どうしているの?」

 全然、勘違いじゃなかった……。

「今日は学校終わるのが早かった。以上だ」

 これまた、お姫様から借りたのだろうドレスを着た。我が家のお姫様こと妹が現れた!
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