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天使のホワイトデー
写真撮影 ④
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俺の仕事である、この撮影のための時間は限られている。
騙しているお姫様と天使に見つかっては、何を言われるか分からないからだ。
しかし、その程度のことはあらかじめ予想できたので俺も手を打ち、ナナシくんに頼んで、姫たちの動きはそれとなく妨害してもらってはいる。
だが、それでも長くはもつまい。早急に終わらせる必要がある。
「……本当にやるんですか?」
「──やるんです! 一愛が予定外にミカエルのおっさんから離れられないので、ミルクちゃんだけでお願いします」
あのおっさん、どれだけ飲んでも酔いやしない。やつだけは結局、最後まで酔い潰れなかった。
酔い潰れなかったなら、ミカエルのおっさんもその場に留めておく必要がある。というわけで、一愛には引き続きおっさんの相手をしてもらっている。
その役はおもてなしの裏を知らない、清く正しい姫たちには頼めないのだ。
彼女たちは本当におもてなしをしているのだから。
俺に、普通はおもてなしするもんだと騙されているだけなんだから。
勝手にやってきたわけだが、今日は一愛がいてくれて本当に助かった。ここにミルクちゃんしかいなかったら、どうなっていたことか。
そんな頼れる妹には、今度お菓子を買ってあげよう。
一愛の協力もあって生まれたチャンス。何がなんでも、ものにするしかない!
気づかれぬうちに出来るだけ早くかつ、言い逃れができない写真を撮るんだ!
「ミルクちゃん。スタンバイして」
「わかりました。こう……ですか?」
ミルクちゃんは教えた通りのポーズで、酔い潰れた自称えらーい天使の一人に寄り添う。
嫌々やっている感がいい具合に効いている。
「もうちょっと寄って。角度ももう少し。そう、そのままでいてねー」
──パシャリ
「はい、次行こう! そのまま隣の天使に進んで」
──パシャパシャ
「いいよー、モデルさんみたいだよ」
──パシャリ
「そこで嫌そうな顔!」
──パシャパシャ
「目をぎゅーってつぶって」
──パシャリ
「プロデューサーさん。もういいんじゃないですか?」
「いや、可能な限り撮る。上手くいけばミルクちゃんにも利益があるよ。何せ、えらーい人たちらしいからね。だから、今だけ頑張って!」
モデルさんをその気にさせるのも、カメラマンの役目だ。
この瞬間だけはプロデューサーではなく、変革者でもなく、俺はカメラマンなのだから(キリッ)。
「でも……やっぱり脅すなんて卑怯です。プロデューサーさんがそういう人なのは知っていますけど。その片棒を担ぐなんて……やっぱり嫌です」
あーあ、俺が直接は言わなかったのに、この子言っちゃったよ。その言葉を使わずに事を成したかったのに。
あとね、ミルクちゃん。そういう人って……。
全然さっきので信用が回復してないじゃん。というかマイナスになってないかい?
まあ、そうなんですよね。ええ、開き直りますとも。
バラされてしまったからにはしょうがないですね。
酔い潰した天使たちがミルクちゃんにセクハラしているところを写真に収め、それをネタに脅そうというわけなんです。
「それが何だ? 俺は俺から祭りを奪った。俺たちをバカにしやがったその天使たちを決して許さん。祭り好きの俺が、姫祭りにもろくに参加せずに画策し、天使たちを貶めようとしている。それは認めよう。しかし、こんなやつらがどうなろと、どーーーーでもいい! もう十分いい思いをしたんだからな!」
「最低……。やっぱり、プロデューサーさんは最低です! さらに見損ないました。このクズ!」
「──それは困る! だから語ろう。真実を」
えらーい天使たちをもてなした理由など、最初から嵌めようと思っていたからだ。
なんか偉そうなのが気に入らなかったし、バカにしてくれたらしいし、こんなんでも偉いらしいから使えるんじゃないかと思ったわけだ。
えらーい天使たちを言いなりにできれば、いろいろ解決できそうじゃん。
そんな事を俺に言ってきたナナシくんの、悪魔の提案に乗っかってやったんだ。
「これは言うまいと思っていた。だが、これ以上見損なわれてはたまらない。ミルクちゃん。この天使たちが俺をバカにしたのはついでだ。そのメインは違うんだ……」
そして悪魔の提案だろうと、やると決めたからには本気でやります。
こいつらには是が非でもセクハラの罪を被っていただきやす。そのためには、可愛いミルクちゃんにも片棒担いでもらいやす。
なんとしても。黙っていようと思っていた事を言ってでも。
「それはどういう……」
「──こいつらはお姫様をバカにしやがったんだ! ミカに怪我をさせたのは確かに悪い。だが、それも元を辿れば俺のせい。それなのに、この自称偉い天使たちはお姫様をバカにしやがった。それどころか報復すら企んでいたんだ! ミカエルのおっさんがいなかったら、お姫様はどうなっていたことか! そんなヤツらを許せるか? ……俺には無理だ。だから決めたんだ。こいつらに目にものを見せてやると……」
そういうわけだ。これがおもてなしの真実だ。
俺だって、ただクズなだけではないんだ。
別にキミたちに見損なわれてもいいが、一応言うだけは言っておくよ。
「プロデューサーさん。姫さまのことをそこまで……。姫さまのために、自ら泥をかぶるつもりなんですか?」
「当たり前だ。俺は何だってやる。別に俺とミルクちゃんが逆でもいいんだ。だがその場合、天使たちは男好きの変態。そして俺も同類になってしまう。それは流石に可哀想だし、俺も無理だ。俺は普通に女の子が好きだから」
天使たちがアレなやつだと思われようが構やしないが、自分もそうだと思われるのはちょっとね。
俺はただでさえ、妹からは執事趣味とか言われてるからね。証拠写真があったら、もう言い逃れできないからね。
「姫さまをバカにするなんて、私も許せません。私もやります! そしてふんだくってやります!」
「よし、なら決まりだ! 実はもう少しきわどいのも欲しかったんだ。頼めるか?」
「恥ずかしいですが、姫さまのためです。やりましょう!」
言ったことは全部本当の事だけど、正直なところ、ミルクちゃんには言いたくはなかった。
言えばミルクちゃんはこう言うと分かっていたからだ。
おそらく彼女はお姫様が好きだ。それもガチに。たまにお友達とは違う反応をするんだ。この子。
バレンタインの時から思ってだけど、やっぱりだ。
「プロデューサーさん。早くやりますよ!」
「ミルクちゃん。やるんだけど節度を持ってね?」
「何を甘っちょろいことを! こんな人たちに遠慮はいりません。クズの分際で誰をバカにしたのかを教えてあげます。姫さまに手を出そうとしたことも、死ぬほど後悔させてやります」
ほらー、こうなる気がしてたんだ。
だからゴネないでやってほしかったんだよ。
これでは俺がブレーキをかけていかないとだよ。
※
「えー、プロデューサーからお知らせです。えらーい天使の皆さんですが、散々どんちゃん騒ぎをした挙句、全員が酔い潰れて寝てしまいました。そのまま置いておくと邪魔なんで、全員片付けましたのでご心配なく。皆様は引き続き姫祭りをお楽しみくださいませ。なお、ここからは私も祭りに参加いたします。いくぜ、お前ら! こっからが祭りの本番だーー!」
そんなわけで姫祭りは後半を迎え、邪魔者たちも軒並みいなくなったことで益々盛り上がった。
笑い声にあふれ。時に感動を呼び。参加した全員が何かしら得ただろう。
──ここに姫祭りの成功を宣言します!
俺の感想はな……楽しかった。もう、めっちゃ楽しかった!
お祭りという響きだけで楽しかったけど、参加したらもっと楽しかった!
次は出店も出そう。より祭りの雰囲気を出すために。
今から案を考えておけば、次にやる祭りはよりいいものに……何、大事なところを全部端折るなって? えー、次に進もうよ?
しかし、姫たちがどうなったのかを知りたいという気持ちも分かる。次回で何とかしよう。
あまり期待しないで待っていてくれ。
騙しているお姫様と天使に見つかっては、何を言われるか分からないからだ。
しかし、その程度のことはあらかじめ予想できたので俺も手を打ち、ナナシくんに頼んで、姫たちの動きはそれとなく妨害してもらってはいる。
だが、それでも長くはもつまい。早急に終わらせる必要がある。
「……本当にやるんですか?」
「──やるんです! 一愛が予定外にミカエルのおっさんから離れられないので、ミルクちゃんだけでお願いします」
あのおっさん、どれだけ飲んでも酔いやしない。やつだけは結局、最後まで酔い潰れなかった。
酔い潰れなかったなら、ミカエルのおっさんもその場に留めておく必要がある。というわけで、一愛には引き続きおっさんの相手をしてもらっている。
その役はおもてなしの裏を知らない、清く正しい姫たちには頼めないのだ。
彼女たちは本当におもてなしをしているのだから。
俺に、普通はおもてなしするもんだと騙されているだけなんだから。
勝手にやってきたわけだが、今日は一愛がいてくれて本当に助かった。ここにミルクちゃんしかいなかったら、どうなっていたことか。
そんな頼れる妹には、今度お菓子を買ってあげよう。
一愛の協力もあって生まれたチャンス。何がなんでも、ものにするしかない!
気づかれぬうちに出来るだけ早くかつ、言い逃れができない写真を撮るんだ!
「ミルクちゃん。スタンバイして」
「わかりました。こう……ですか?」
ミルクちゃんは教えた通りのポーズで、酔い潰れた自称えらーい天使の一人に寄り添う。
嫌々やっている感がいい具合に効いている。
「もうちょっと寄って。角度ももう少し。そう、そのままでいてねー」
──パシャリ
「はい、次行こう! そのまま隣の天使に進んで」
──パシャパシャ
「いいよー、モデルさんみたいだよ」
──パシャリ
「そこで嫌そうな顔!」
──パシャパシャ
「目をぎゅーってつぶって」
──パシャリ
「プロデューサーさん。もういいんじゃないですか?」
「いや、可能な限り撮る。上手くいけばミルクちゃんにも利益があるよ。何せ、えらーい人たちらしいからね。だから、今だけ頑張って!」
モデルさんをその気にさせるのも、カメラマンの役目だ。
この瞬間だけはプロデューサーではなく、変革者でもなく、俺はカメラマンなのだから(キリッ)。
「でも……やっぱり脅すなんて卑怯です。プロデューサーさんがそういう人なのは知っていますけど。その片棒を担ぐなんて……やっぱり嫌です」
あーあ、俺が直接は言わなかったのに、この子言っちゃったよ。その言葉を使わずに事を成したかったのに。
あとね、ミルクちゃん。そういう人って……。
全然さっきので信用が回復してないじゃん。というかマイナスになってないかい?
まあ、そうなんですよね。ええ、開き直りますとも。
バラされてしまったからにはしょうがないですね。
酔い潰した天使たちがミルクちゃんにセクハラしているところを写真に収め、それをネタに脅そうというわけなんです。
「それが何だ? 俺は俺から祭りを奪った。俺たちをバカにしやがったその天使たちを決して許さん。祭り好きの俺が、姫祭りにもろくに参加せずに画策し、天使たちを貶めようとしている。それは認めよう。しかし、こんなやつらがどうなろと、どーーーーでもいい! もう十分いい思いをしたんだからな!」
「最低……。やっぱり、プロデューサーさんは最低です! さらに見損ないました。このクズ!」
「──それは困る! だから語ろう。真実を」
えらーい天使たちをもてなした理由など、最初から嵌めようと思っていたからだ。
なんか偉そうなのが気に入らなかったし、バカにしてくれたらしいし、こんなんでも偉いらしいから使えるんじゃないかと思ったわけだ。
えらーい天使たちを言いなりにできれば、いろいろ解決できそうじゃん。
そんな事を俺に言ってきたナナシくんの、悪魔の提案に乗っかってやったんだ。
「これは言うまいと思っていた。だが、これ以上見損なわれてはたまらない。ミルクちゃん。この天使たちが俺をバカにしたのはついでだ。そのメインは違うんだ……」
そして悪魔の提案だろうと、やると決めたからには本気でやります。
こいつらには是が非でもセクハラの罪を被っていただきやす。そのためには、可愛いミルクちゃんにも片棒担いでもらいやす。
なんとしても。黙っていようと思っていた事を言ってでも。
「それはどういう……」
「──こいつらはお姫様をバカにしやがったんだ! ミカに怪我をさせたのは確かに悪い。だが、それも元を辿れば俺のせい。それなのに、この自称偉い天使たちはお姫様をバカにしやがった。それどころか報復すら企んでいたんだ! ミカエルのおっさんがいなかったら、お姫様はどうなっていたことか! そんなヤツらを許せるか? ……俺には無理だ。だから決めたんだ。こいつらに目にものを見せてやると……」
そういうわけだ。これがおもてなしの真実だ。
俺だって、ただクズなだけではないんだ。
別にキミたちに見損なわれてもいいが、一応言うだけは言っておくよ。
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「当たり前だ。俺は何だってやる。別に俺とミルクちゃんが逆でもいいんだ。だがその場合、天使たちは男好きの変態。そして俺も同類になってしまう。それは流石に可哀想だし、俺も無理だ。俺は普通に女の子が好きだから」
天使たちがアレなやつだと思われようが構やしないが、自分もそうだと思われるのはちょっとね。
俺はただでさえ、妹からは執事趣味とか言われてるからね。証拠写真があったら、もう言い逃れできないからね。
「姫さまをバカにするなんて、私も許せません。私もやります! そしてふんだくってやります!」
「よし、なら決まりだ! 実はもう少しきわどいのも欲しかったんだ。頼めるか?」
「恥ずかしいですが、姫さまのためです。やりましょう!」
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言えばミルクちゃんはこう言うと分かっていたからだ。
おそらく彼女はお姫様が好きだ。それもガチに。たまにお友達とは違う反応をするんだ。この子。
バレンタインの時から思ってだけど、やっぱりだ。
「プロデューサーさん。早くやりますよ!」
「ミルクちゃん。やるんだけど節度を持ってね?」
「何を甘っちょろいことを! こんな人たちに遠慮はいりません。クズの分際で誰をバカにしたのかを教えてあげます。姫さまに手を出そうとしたことも、死ぬほど後悔させてやります」
ほらー、こうなる気がしてたんだ。
だからゴネないでやってほしかったんだよ。
これでは俺がブレーキをかけていかないとだよ。
※
「えー、プロデューサーからお知らせです。えらーい天使の皆さんですが、散々どんちゃん騒ぎをした挙句、全員が酔い潰れて寝てしまいました。そのまま置いておくと邪魔なんで、全員片付けましたのでご心配なく。皆様は引き続き姫祭りをお楽しみくださいませ。なお、ここからは私も祭りに参加いたします。いくぜ、お前ら! こっからが祭りの本番だーー!」
そんなわけで姫祭りは後半を迎え、邪魔者たちも軒並みいなくなったことで益々盛り上がった。
笑い声にあふれ。時に感動を呼び。参加した全員が何かしら得ただろう。
──ここに姫祭りの成功を宣言します!
俺の感想はな……楽しかった。もう、めっちゃ楽しかった!
お祭りという響きだけで楽しかったけど、参加したらもっと楽しかった!
次は出店も出そう。より祭りの雰囲気を出すために。
今から案を考えておけば、次にやる祭りはよりいいものに……何、大事なところを全部端折るなって? えー、次に進もうよ?
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