連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
43 / 101
天使のホワイトデー

姫たちのターン!

しおりを挟む
 今回は姫たちのターン!
 語りはこの時、裏でのどんちゃん騒ぎに参加していた俺がやる。こんな時くらい、誰か代われやって思うけど、誰もいないからね……。

『──ならば私が代わってやろう!』

 そ、そんな、こんな枠外にまでどうやって……。

『貴様は面白楽しく騒いでいるがいい。そんなことをしている間に、こうして徐々に乗っ取られていき、最終的には居場所がなくなるだろうがな! フハハハ────」

 ぐっ……あ……そんな……。じゃあお願いします。

『──任せとけ!』

 そんなわけで始めるよー。
 改めまして、ここからは姫たちのターン!





♢23♢

 これは、クズ……じゃなかった。危ない危ない。
 これは、れーとが馬鹿騒ぎしている間の話だよ。
 一愛いちかは顔の怖いおじさんこと、ミカちゃんパパにかかりきりだったんだけど、すぐ近くにいた姫2人の会話は聞こえていた。

「ねぇ、ルシア。あの写真というやつは貰えるのかしら? まんべんなく。できるなら全体的に欲しいのだけど」

「言えば貰えるんじゃない。でも、そんなに必要なの? いったい何に使うのよ」

「あのね。そうじゃないのよ。あるだけで意味があるというかね。こう……──とにかく!」

 写真撮影も終わり、騒がしかったおじさんたちも大人しくなった。
 まあ、あれだけ飲ませればね。ベロンベロンになるよね。

 そんなふうに脱落者が多数出ても、祭り会場の雰囲気はそんなに変わらない。
 いや、向こうはれーとが騒ぎに加わった……違うや、アレが中心だ。向こうはとても騒がしい。

「──お前ら、飲めや、食えや、歌えや!」

「「ウォォォォォォ──」」

 れーとは昔からお祭りというとあんなんだ。
 きっと変な嗜好があるんだと思う。良く言うとお祭り男かな。

「ここからが本番だ! まだまだ、お開きにはしないからな!」

「「ウォォォォォォ──」」

 向こうは騒がしいけど、逆にこっちは静かだ。
 騒ぎには参加しない人たちしかいないし、いる人たちもおもいおもいに楽しんでいるのだろう。

「写真は必要よ。アタシ、レートの言っていた意味が分かったもの。この楽しかった日のことを、後に残せるのよ。ずっと。ずっーーと。とても素晴らしいことだと思うわ!」

 こっちはいい話で良かったよ。
 ミカちゃんたちがいなかったら、れーとのクズな企みが進行するだけの話だから大変だったよね。

「そうね。これまで、パーティなんていくつも出てきたけど。こんなにみんなが楽しそうなのは初めてね。たまにはいいわね」

「ルシア、甘いわね。楽しいのだから、またやるのよ。その度に写真を撮れば写真もいっぱい。思い出もいっぱいよ!」

「何よそれ」

 そしてもう1つ……良かったよ。
 わだかまりが全部なくなったわけではないのだろうけど、ルシアちゃんとミカちゃんがお話している。

 これを見れただけで甲斐があった。
 気になってダッシュで帰ってきたわけだけど、その甲斐もあったし、2人とそれぞれお話した甲斐もあった。

 しかし、あれは女の子のことなど分からない、れーとには出来ないことだからね。
 しょうがないから一愛が世話を焼きました。ナイショだよ?

「おじさん。お酒もなくなったし、一愛はミカちゃんたちに加わりたいから、おじさんは向こうに混ぜてもらってよ。ちゃんと『まーぜーて』って言うんだよ?」

 とうとうお酒は全部飲みつくされてしまった。
 ここまで付き合う必要もなかったんだけど、一愛は中途半端は嫌いだから。

「そうか、残念ではあるが仕方ないな。だが、座ってばかりでは身体に悪い。向こうに参加するとしよう」

「うん。それから事前に謝っておきます。ごめんなさい。れーとは、やると決めたらとことんやるヤツです。ベロンベロンになった、おじさんたちにも謝っておいて」

 れーとの画策は控えめに言って『クズだわー』と言える。個人に仕掛けているわけじゃあないけど、ハニートラップというやつだね。
 きっと、あのおじさんたちは可哀想なことになるから、あらかじめ妹として謝っておきます。

「奴らは自らの地位に腰掛け、慢心し、些か度がすぎる。何があるのかは分からぬが、灸になるならそれも良し。それに祭りの席のこと。何も謝ることなどあるまいよ」

「おぉー、なんかミカちゃんとは違いしっかりしてる!」

「其方もな」

「うん、否定はしない。れーとはやる時はやるけど、やらない時は何もやらないからね。上振れ下振れのあるれーとより、いつもちゃんとしている一愛の方がスペックは高い」

 青い猫型ロボットの兄妹的な感じ。
 圧倒的に妹の性能が高い。少なく見ても3倍は高いと思う。

「……これからも娘と仲良くしてやってくれ。アレは意外と友達が少ないのでな」

「もちろん。よくやらかすミカちゃんは、れーとのようで放ってはおけない。ちょっと困った娘だけど、悪いヤツではない。一愛でよければ仲良くします」

「頼むぞ」

 妹から見て、今のところ安パイであるミカちゃん。
 この先もそうだとは言い切れないけど、今のところは大丈夫そう。れーとが余計なフラグを立てたり、回収したりしない限りはね。

 しかし、それがれーとでもある……。

 お姉ちゃん一択だとばかり思っていたら、足元をすくわれる可能性もあるか。
 ヤツは中途半端なヤツだからな。

 ……ルシアちゃんも要注意だし……。

 まあ、今からこんなことを考えても意味はない。今はお祭りを、新たなお友達と楽しむべき時だ。

「──ミカちゃん、話は聞いていたよ。それなら足りない写真があるとは思わないかい? ルシアちゃんも」

「一愛?」「足りない写真って?」

「『私たちの』だよ! まだ、3人で撮ってないよ!」

「「!!」」

 スマホのカメラでもいいけれど、せっかくカメラマンがいるのだから撮ってもらおう。

「──おっさん、何でこっちくんだよ! 座ってろよ。もしくは、もう帰れよ!」

「何を言う。最後までいるに決まってるだろう。どれ、我も一曲披露してやろう」

 れーとは、おじさんの相手で忙しそうだし……。
 あと、カメラを持っていたのはイケメンの人たちか。えーと……いたいた。

「そこのイケメンの人や。写真を撮ってください。分かっているな、上手く撮れよ?」

「えぇ、大分使い方も理解してきましたのでお任せを」

「流石はイケメン。れーとが嫉妬するのも頷けるね」

 よし、カメラマンも無事にゲットした。あとは。

「ほらほら、よってよって──」

 お話してはいるが、少し距離がある2人をくっつけて。まったく。仲良いくせに、どっちも意地っ張りなんだから。

「「ちょ──」」

「お行儀よくしているばかりではダメなんですよ。姫しているのもいいけど、一愛が欲しいのはお友達感!」

 2人だけでは足りないなら、お節介を焼きます。
 れーとがこの役をやった場合、少しシメないといかんので一愛がやります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

処理中です...