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天使のホワイトデー
姫たちのターン! ②
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女の子が3人も集まれば勝手に恋の話になる……普通は。
しかし、この場にいるのは恋とは縁遠そうな姫。箱入りというか、城入りのお姫様である。
かく言う一愛も、恋よりどちらかといえば、カードゲームの話とかしたい。
トップメタを効率よく狩る方法とか、最新弾の使いたいカードの話とかしたい。
──まあ、姫相手では無理だけどね。知ってる。
なので、テンプレ通りに恋の話をふる。
「さて、写真も撮ったしお腹も満たされた。ここからは、優雅にグラスを傾けながら、本来女子のするべき話をしようじゃあないか」
テーブルには変わらずに3人。一愛に、ルシアちゃん、ミカちゃん。
本当はミルクちゃんも参加して欲しいのだが、彼女はれーとの企みに参加したダメージが意外とあったらしく、ダウンしてしまった。
『ちょっと休んできますね。ちょっとだけ……』
こう言い残して、休憩しに行ってしまった。
まったく。けしからん身体つきをしているくせに情けない。
あれが一愛にあったなら、もうスゴいことになっていただろうと確信できるほどなのに。
「急に何よ。パーティの席でする話なら、政治の話か、どうでもいいような自慢話とかじゃないの?」
「うん、すごい落差。政治とどうでもいい話が一緒の括りでビックリだよ。というか、ミカちゃんの中ではその2つしかないんだね」
「ミカの言う通りよ。パーティでする話なんて、そんなもんよ。他があるとするなら、後はご機嫌とりね。表向きはニコニコして聞いてるけど、内心は『ウザッ』って思ってるわ」
「ルシアちゃんも本音が出すぎだよ。大変なんだね、姫って。もっと夢があるんだと思っていたよ」
想像以上にこいつらダメだ。
恋なんていったら『鯉?』って言いそう。
「それは姫一般的なパーティの話であって、今日は違うのだよ。今するべきは恋の話だよ。恋バナなんだよ!」
しかし、一愛はできる妹。ダメなれーとなどとは違い、得るべき情報は手に入れる。
ここは攻めて情報を引き出す!
「鯉?」「コイとは?」
「……マジか」
今さ、どっちかは魚ですらなくなかった?
本当に。そこから? そこから説明しないといけない?
「魚ではないよ」
「あぁ、そうなのね」
ルシアちゃんが魚だと思っているのか。
つまり、ミカちゃんが問題外か。
「アタシにも教えなさいよ。コイって何なのよー」
これでは恋なんて話をふるだけ無駄かもしれない。
生きてきた世界が違うということは、こうも違うということなのか。だが、言うだけは言ってみよう。
「好きな人。あるいは気になる異性。恋バナとはそういうことを話すんだよ」
「「…………」」
おや、2人とも黙ってしまった。まさか、この沈黙は……。
これは。もしかすると。いるのか? 好きな人。
城入りだとばかり思っていれば、一愛より進んでいたりするのか。
「お、お付き合いしたいとか。将来的には結婚まであるとか。そういう人が、もしかすると、お2人には、いるのかな?」
「「…………」」
うっかり踏み込んでしまったけど、『いる』って言われたらどうしよう。『れーと、残念だったね。ざまぁ』って言えばいいのかな。
もしくは、『れーと、貴様にはお姉ちゃんがいる。だから大丈夫だ』かな。
一愛としてはお姉ちゃんが第一候補ではあるが、それは一愛の意見であって、当人たちの意思は含まれていない。
あと、れーとにお姉ちゃんは勿体ないと若干思っていたりもする。
「一愛。好きな人と付き合うって何? 結婚って決まってるんじゃないの?」
「うん。親が決めるんじゃないの?」
……あー、そういうパターンだったか。
いつの時代なんだよ、ここ。
そして本当に姫なのかよ。マンガかよー。
「付き合うっていうのは、交際するってこと。恋人と言えば伝わるかな?」
「コイ」「──ビト」
「おい、ちょっと待て? ルシアちゃんは分かってるな。今わかっていてミカちゃんに乗っかったな?」
さては、ルシアちゃんは恋も分かっていたな。
知らんぷりするということは、聞かれては困るという事か。ないとは思うが……。
「質問です。れーとのことが好きである。もしくは、気になっている。マルかバツか」
直球でいこう。そしてマルだった場合は、聞かなかったことにしよう。
バツだった場合は、その言葉を信じられはしない!
「──それはない」
「──うん、ないわね。だってあれよ」
アレとは、未だに騒ぎの真ん中にいる、ダメなヤツのことだ。その勢いは衰えるどころか増している。
これはヤツのための情報収集だったのだが、あんな姿を見ると『一愛は何やってんだろ』と思ってしまいます。
「よく分かりました。じゃあ、ミカちゃんはルシアちゃんが好きなの?」
「な、な、な、な、な、何を言ってるの!? 好きなわけないじゃない!」
「うわぁ……冗談のつもりだったのに。ミカちゃん、反応がマジすぎるよ。で、ルシアちゃんはどうなの? ミカちゃんが好きだってよ」
この本気の反応を見ると、れーとが眼中にないと分かる。ミカちゃんがルシアちゃんを好きなのは、傍目からも非常に分かりやすいが、ルシアちゃん側からはよく分からない。
こちらも、恋バナついでに確かめてみよう。
「好きよ。当たり前でしょ」
「「えぇーーーー!?」」
れーと、ごめんね。まさかの事実が判明してしまったよ。最初から貴様の入り込む余地はなかったようだ。
ルシアちゃんは諦めて、お姉ちゃんルートに入るように頑張ろうね。一愛も応援してあげるから。
「2人して何で驚くのよ。嫌いな方が良かったの?」
「──それは困る! いや、好きなのも困る……」
「一愛のことも好きよ」
「──えぇ?! 一愛のことも好きなの。アタシじゃないの!?」
あー、またこういうやつか。
好きの意味が違うのか。少し焦ったよ。
「ミカちゃん。落ち着きなさい。ルシアちゃんの好きは、友達として好きだということだよ。友達として」
「……友達。そうよね。うんうん、そうよ!」
「はい、よろしい」
ガールズトークのかいが……何でもない。何でもないんだよ。何でもないと言っているではないですか。
この話を掘り下げようものなら容姿しないよ? わかったね。
「ねぇ、ミカはあたしが嫌いなの?」
むっ──、これは思わぬ形で確信に迫ってきた。
こうなると口を挟むに挟めない。黙ってミカちゃんを見守るしかない。
「ルシアのことを……」
頑張れ。私も好きだと言うんだ。それで万事上手くいく。
好きだから、ついちょっかいかけてしまうんだと言うんだー。
「そう、あたしのことを」
ルシアちゃんは言ったぞ。
ごめんなさいとも。好きだとも。
それはミカちゃんのことを想っているからだ。
だから、ミカちゃんもちゃんと言うんだ。
「嫌いではな…………くもないこともないような気がしないということもないような気がするようなしないような──」
「──だーーっ! どうして素直に言えないんだ。さんざん練習しただろうが!」
「一愛、それはナイショだって言ったじゃない!」
「今、いい場面だったのに。台無しだ! 本当にれーとみたいだ。ダメなヤツだ! ダメっ娘!」
「練習とは違うのよーー」
はぁ……。ダメだなぁ。ミカちゃんはダメだ。ごめんなさいも言えないし、好きですも言えない。
仲良くしたいくせに、仲良くしてくれとは言えない。困った娘だ。
しかし、この場にいるのは恋とは縁遠そうな姫。箱入りというか、城入りのお姫様である。
かく言う一愛も、恋よりどちらかといえば、カードゲームの話とかしたい。
トップメタを効率よく狩る方法とか、最新弾の使いたいカードの話とかしたい。
──まあ、姫相手では無理だけどね。知ってる。
なので、テンプレ通りに恋の話をふる。
「さて、写真も撮ったしお腹も満たされた。ここからは、優雅にグラスを傾けながら、本来女子のするべき話をしようじゃあないか」
テーブルには変わらずに3人。一愛に、ルシアちゃん、ミカちゃん。
本当はミルクちゃんも参加して欲しいのだが、彼女はれーとの企みに参加したダメージが意外とあったらしく、ダウンしてしまった。
『ちょっと休んできますね。ちょっとだけ……』
こう言い残して、休憩しに行ってしまった。
まったく。けしからん身体つきをしているくせに情けない。
あれが一愛にあったなら、もうスゴいことになっていただろうと確信できるほどなのに。
「急に何よ。パーティの席でする話なら、政治の話か、どうでもいいような自慢話とかじゃないの?」
「うん、すごい落差。政治とどうでもいい話が一緒の括りでビックリだよ。というか、ミカちゃんの中ではその2つしかないんだね」
「ミカの言う通りよ。パーティでする話なんて、そんなもんよ。他があるとするなら、後はご機嫌とりね。表向きはニコニコして聞いてるけど、内心は『ウザッ』って思ってるわ」
「ルシアちゃんも本音が出すぎだよ。大変なんだね、姫って。もっと夢があるんだと思っていたよ」
想像以上にこいつらダメだ。
恋なんていったら『鯉?』って言いそう。
「それは姫一般的なパーティの話であって、今日は違うのだよ。今するべきは恋の話だよ。恋バナなんだよ!」
しかし、一愛はできる妹。ダメなれーとなどとは違い、得るべき情報は手に入れる。
ここは攻めて情報を引き出す!
「鯉?」「コイとは?」
「……マジか」
今さ、どっちかは魚ですらなくなかった?
本当に。そこから? そこから説明しないといけない?
「魚ではないよ」
「あぁ、そうなのね」
ルシアちゃんが魚だと思っているのか。
つまり、ミカちゃんが問題外か。
「アタシにも教えなさいよ。コイって何なのよー」
これでは恋なんて話をふるだけ無駄かもしれない。
生きてきた世界が違うということは、こうも違うということなのか。だが、言うだけは言ってみよう。
「好きな人。あるいは気になる異性。恋バナとはそういうことを話すんだよ」
「「…………」」
おや、2人とも黙ってしまった。まさか、この沈黙は……。
これは。もしかすると。いるのか? 好きな人。
城入りだとばかり思っていれば、一愛より進んでいたりするのか。
「お、お付き合いしたいとか。将来的には結婚まであるとか。そういう人が、もしかすると、お2人には、いるのかな?」
「「…………」」
うっかり踏み込んでしまったけど、『いる』って言われたらどうしよう。『れーと、残念だったね。ざまぁ』って言えばいいのかな。
もしくは、『れーと、貴様にはお姉ちゃんがいる。だから大丈夫だ』かな。
一愛としてはお姉ちゃんが第一候補ではあるが、それは一愛の意見であって、当人たちの意思は含まれていない。
あと、れーとにお姉ちゃんは勿体ないと若干思っていたりもする。
「一愛。好きな人と付き合うって何? 結婚って決まってるんじゃないの?」
「うん。親が決めるんじゃないの?」
……あー、そういうパターンだったか。
いつの時代なんだよ、ここ。
そして本当に姫なのかよ。マンガかよー。
「付き合うっていうのは、交際するってこと。恋人と言えば伝わるかな?」
「コイ」「──ビト」
「おい、ちょっと待て? ルシアちゃんは分かってるな。今わかっていてミカちゃんに乗っかったな?」
さては、ルシアちゃんは恋も分かっていたな。
知らんぷりするということは、聞かれては困るという事か。ないとは思うが……。
「質問です。れーとのことが好きである。もしくは、気になっている。マルかバツか」
直球でいこう。そしてマルだった場合は、聞かなかったことにしよう。
バツだった場合は、その言葉を信じられはしない!
「──それはない」
「──うん、ないわね。だってあれよ」
アレとは、未だに騒ぎの真ん中にいる、ダメなヤツのことだ。その勢いは衰えるどころか増している。
これはヤツのための情報収集だったのだが、あんな姿を見ると『一愛は何やってんだろ』と思ってしまいます。
「よく分かりました。じゃあ、ミカちゃんはルシアちゃんが好きなの?」
「な、な、な、な、な、何を言ってるの!? 好きなわけないじゃない!」
「うわぁ……冗談のつもりだったのに。ミカちゃん、反応がマジすぎるよ。で、ルシアちゃんはどうなの? ミカちゃんが好きだってよ」
この本気の反応を見ると、れーとが眼中にないと分かる。ミカちゃんがルシアちゃんを好きなのは、傍目からも非常に分かりやすいが、ルシアちゃん側からはよく分からない。
こちらも、恋バナついでに確かめてみよう。
「好きよ。当たり前でしょ」
「「えぇーーーー!?」」
れーと、ごめんね。まさかの事実が判明してしまったよ。最初から貴様の入り込む余地はなかったようだ。
ルシアちゃんは諦めて、お姉ちゃんルートに入るように頑張ろうね。一愛も応援してあげるから。
「2人して何で驚くのよ。嫌いな方が良かったの?」
「──それは困る! いや、好きなのも困る……」
「一愛のことも好きよ」
「──えぇ?! 一愛のことも好きなの。アタシじゃないの!?」
あー、またこういうやつか。
好きの意味が違うのか。少し焦ったよ。
「ミカちゃん。落ち着きなさい。ルシアちゃんの好きは、友達として好きだということだよ。友達として」
「……友達。そうよね。うんうん、そうよ!」
「はい、よろしい」
ガールズトークのかいが……何でもない。何でもないんだよ。何でもないと言っているではないですか。
この話を掘り下げようものなら容姿しないよ? わかったね。
「ねぇ、ミカはあたしが嫌いなの?」
むっ──、これは思わぬ形で確信に迫ってきた。
こうなると口を挟むに挟めない。黙ってミカちゃんを見守るしかない。
「ルシアのことを……」
頑張れ。私も好きだと言うんだ。それで万事上手くいく。
好きだから、ついちょっかいかけてしまうんだと言うんだー。
「そう、あたしのことを」
ルシアちゃんは言ったぞ。
ごめんなさいとも。好きだとも。
それはミカちゃんのことを想っているからだ。
だから、ミカちゃんもちゃんと言うんだ。
「嫌いではな…………くもないこともないような気がしないということもないような気がするようなしないような──」
「──だーーっ! どうして素直に言えないんだ。さんざん練習しただろうが!」
「一愛、それはナイショだって言ったじゃない!」
「今、いい場面だったのに。台無しだ! 本当にれーとみたいだ。ダメなヤツだ! ダメっ娘!」
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