連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

プロデューサーの策略

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♢5♢

「プロジェクトとしてはひどく簡単な内容だ。人を集め、城下の再生と発展を目的としている。それに足りないのは人と金だ。まず、城下には他からの人が寄りつかない。何故かと言うと……頭に輪っかもついてないくせに天使だという人たちが、下に一切いないからだ。そこに、終戦の宣言がちゃんとなされていないという問題もある」

 ミカの執事であるナナシくん。彼に聞いたところによるとそうらしい。
 彼には他にも、えらーい天使たちの家族構成も教えてもらった。だから俺は、誰に奥さんがいるとか知ってたんだよ!
 そして、そいつらをもてなしたというわけだったんだ。

「これでは、いつまた戦いがあるとも分からず人々は安心できない。貴様らが宣言を濁している理由も分かっている。しかし、いつまでもありもしない事を、あるかもと思わせておく必要を感じない。もう、いいだろう? 戦いは終わったんだ。未来を見るべきだと俺は思う」

 天使と悪魔間のシコリというやつを最も体現しているのが、眼前の偉い天使たち。
 悪魔側には脳筋がおお……もう過去にこだわる人は少ないらしいのだが、天使側は偉い奴らがクズ……未だに確執はあると言い張るのだ。

「だから。これから先を『みんな仲良く』の時代にしていきたい。ただ、それだけの事なんだ……」

 まずはそこから変えていかないといけない。
 そのためには偉い天使たちには協力してほしい。できれば自発的に。
 脅してとか。無理矢理とかがつくと俺のイメージがね。クリーンなイメージで生きたいからね。

 たまたま、セバスに連れてこられた異世界。
 中には『お前がこの世界の何を知ってんだよ?』と言う人もいるだろう。
 しかし、それでも俺はこの世界を変えると決めたんだ!

「──ギブ、ギブだ! 分かったから、この絞め技をやめさせてくれ!」

「俺は。俺は──」

 バレンタインの時より更に見えてきた、この世界の実状。大人がダメなせいで、子供たちまで迷惑しているという悲しい世界。
 それを変革者たる俺は良い方向に導くんだ。

「──ギブだって言ってるだろ! く、苦しい……」

「…………」

「何故黙る! 本当にやめさせてくれーー」

 なんかイライラしてねー。どんだけ俺が画策してこの場を作ったと思っているのかとか。
 出来るだけ穏便に済ませてやろう考えているのかが、あんまりえらーい天使たちに伝わらなくてさ。

「チッ、そのまま終わりまで固められていれば良かったのに。別にサインだけあればいいんだから、おっさんたち全員など不要なのに。自分たちだけお姫様にボコられなかったくせにーー。どうせならホワイトデーの終わりまで、入院でもしていてくれた方がいいのに」

 出番も欲しいだろうし脳筋のおっさんたちに、しぶる天使たちを締め上げてもらっている。
 姫たちのバトルは天使側に軍配が上がったが、下の方の戦いは悪魔側が有利というか完勝でした。

「貴様、全部聞こえているからな……うっ……」

「おや、1人脱落したか。残るキミたちはまだ続けるかい?」

「「──もう勘弁してください!」」

 それが総意であるなら仕方ない。これで、やっとお話しできるようだ。
 えらーい天使さんたちは、本当に手間をかけさせてくれる。


 ※


 残る天使。その1。
 最初に作るチョコレート工場の資料を見て。

「これは本当に必要なのか?」

「必要だ」

「そもそもチョコレートとはなんだ?」

「目の前のテーブルにあるだろう。お食べ」


 残る天使。その2。
 ホワイトデーの資料を見て。

「本当にこれは成功するのか?」

「する」

「したとして我らの立場はどうなる?」

「どうしようもないクズから、『あれっ? あの人意外といい人?』くらいにはなる」


 残る天使。その3。その4。
 もう見返りを求めて……。

「協力したら本当にモテるのか?」

「それは知らん。いい人だと宣伝はするが、あとは自分次第だろう。最後まで責任は持てない」

「無責任じゃないか! 聞いた話と違うぞ!」

「うるせぇぞ、ハゲ! 何もやってもみないで何を言ってんだ。まずはスタートラインに立つ。これだろうが! そのチャンスを与えてやると言ってんだよ、ハゲ!」


 残る天使。その5、6、7、8、9。
 もう面倒なのでまとめて!

「協力したら出番があるし、あの写真は拡散しない。お姫様からの粛清もなしだ。身の安全も保証しよう。そして、キミたちは良い人として有名になる」

「「…………」」

「逆に嫌だと言うなら、明日中に貴様らの地位と信用は失墜する。もうそのための仕込みは終わっている。電話一本で終わりだぜ。その上、『アナタ……離婚よ』『パパ、最低。死んで』となる。プラスして、ミカにも貴様らの不逞を暴露する。分かるだろうが、あの姫に殴られたら死ぬよ?」

「「──協力させていただきます!」」

 上記のようにザックリとお伝えした通りだ。
 これでホワイトデーの道筋がついた。
 初めてのホワイトデーは、終戦の宣言と仲直りの場とする。

 大人たちの確執を完全に消すのはもう無理だろう。そのくらいは俺にも分かる。
 でも、この先までそれを引っ張っていく必要はない。

 悪魔と天使なのに仲良しの姫たちがいるんだ。
 あの2人のこれからが、この先の世界を担うのなら。あの愛される姫たちがそうするなら。
 彼女たちについてくる人たちもそうするはずだ。
 どこかで憎しみとかを切らなきゃならないのなら、実は仲良しな2人がいる今だと思う。

 つまり、ここからの俺の仕事はホワイトデーをいかに成功させるかとなったわけだ。
 あの天使の方の姫にちゃんとやらせなくてはいけない。


 ※


「小僧。話はついたようだな」

「セバス。お前、さっきはよくもやってくれたな!」

 出番は終わったので後を二クスに任せ、会議室を出たところでセバスに声をかけられた。
 会議にも参加しないくせに偉そうな、俺を売りやがった悪魔執事だ!

「求められた事に答えたまでだ。それに考えても見ろ。いきなり天使たちが諂ってくれば誰でも気になるだろうが」

「それは……そうか……」

 こいつからお姫様にではなく、お姫様がセバスに頼んだのだろう。
 謝りに来た天使たちを見て、『俺が何をしているのか?』と。

 執事はそれを分かりやすくお姫様に伝えた。不要な部分を省いて。
 ミルクちゃんも言わなかったが、セバスも言わなかった。あの写真はでっち上げだと。
 もし言われていれば、俺はこの程度で済んでいないと思う。

「何故、事を裏でなさない? わざわざ協力などさせずとも、脅すネタはあったはずだ。必要なのは金と権力。それだけを得ることも可能だったはずだ。手間をかけてまで、表だってまで、回りくどい真似をする理由はなんだ?」

「流石は悪魔。考え方が実に悪魔らしいな。だが、俺は人間なんでね。あまり悪い事は出来ないのだよ。地獄には行きたくないんです」

「誤魔化すな」

「……それじゃあ変わんねーだろ。見えないってだけで変わんねー。ナナシくんもお前と同じようなことを言ってきたが、悪魔ってのはみんなそうなのか? それをルシアにも言えんのか? ミカに言えんのか。って言ったらナナシくんは黙ったよ。お前はどうなんだ?」

「……」

 流石の悪魔執事も黙った。
 嘘も方便と言いそうな悪魔が黙るということは、そういうことなんだろう。

「次は俺の番だな。実は俺からも1つ聞きたい事がある。変革を望まないヤツってのは誰だ? ソイツは世界を今のままにしておきたいんだろ。天使と悪魔どちらにも顔が利くヤツだとしか分からないんだが」

「ほう、1人でそこに行き着くか……。しかし、今の小僧にはどうしようもない相手だ。聞いたところで会うことすらできん。立ち向かうにしても力が足りん。 ……時が来れば教えてやる」

「まって。そんなつもりじゃなかったんだけど……。えっ、何、ラスボスはバトル必須なの? だとしたら無理なんだけど?」

「力とは何も腕力に限る話ではあるまい。今は、ホワイトデーを成功させる事を考えろ」

 えぇ──、俺にバトルは無理なんだけど……。
 ラスボスのことはあきら……考えないようにして、ホワイトデーを成功させよう! うん、それがいいと思う!
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