連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

天使のホワイトデー

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♢13♢

 ここで前回までを振り返ると、ホワイトデーでの最大の難敵であったガブリエルさんを、『俺が!』説き伏せた。
 これにより、残っていた問題は全てがクリアされたというわけだ。これでホワイトデーできる!

 そして今日は、そのホワイトデーの当日である3月14日。なお、これは異世界の日付であり実際には3月13日である。
 なんか知らないが、日付が1日ズレているんだ。不思議だねーー。

 しかし、バレンタインに続きドタバタではあったが、こうして当日を迎えられたことを嬉しく思います。感無量です!
 ……なに? ラスボスはどうしたのか? お前は嘘ばかりだ? ちょっとなにをいってるのかわからないな。

 今はホワイトデーの成功を願えよ!
 別にバレンタインのお返しを渡したりはしないけどな!
 バレンタインすら周知されてないんだから、ホワイトデーなどあるか!

 あとラスボスもまだ早いからな?
 装備もなければ仲間もいない。こんなんでバトル必須のラスボス戦など到底無理だ。
 まあ、仲間がいようと装備があろうと、バトルがある時点で無理なんだけど。
 なので、無理なことは無理だと割り切り、今は目先のホワイトデーを成功させる。これが大事!

 ちなみに異世界初のホワイトデーは、またイケメンの提案で、クッキーを振る舞う会と表向きはなっている。
 今回はこうなるのがバレンタインと違い予め分かっていたし、バレンタインのお返しする必要がある人も1人しかいないので特に何もない。
 来年からはバレンタインもちゃんとやって、ホワイトデーもちゃんとやる。以上だ。

 次に確認のために本日の予定を説明する。
 まず正式な終戦宣言を人気者にやってもらう。
 本来やるべきである王様とミカエルのおっさんには、顔が怖いからという理由で遠慮してもらった。
 あんな顔がこわいマンが前面に出てくるからダメなんだ。今日はずっと隅の方にいてもらう。画面にも極力映らないでもらう。

「プロデューサーさん。姫様が呼んでますよー」

 おっと、説明もほどほどにしなくてはいけないようだ。
 クッキーに釣られてやってきたミルクちゃんが俺を呼びに来た。始まる時間が来たということだろう。
 残りは要所要所で説明するつもりではいる。期待しないで待て。

「もうそんな時間か。では、行くか」

「カッコいいですね……」

「えっ、俺が? マジで!?」

「いえ、プロデューサーさんではなく。その目に付いてるやつがです。勘違いしないでください」

 ……だと思ったよ。本当だよ?
 ミルクちゃんがカッコいいと言ったのは、このモノクルだと知っていたよ。くそー。

「どうしたんですかそれ?」

「激闘の果てに勝ち取ったのだよ。大天使ガブリエルさんからな!」

「嘘っぽい」

 嘘だけども! お姫様が借りてくれたんだけども!
 お姫様が俺には無理だったのにあっさり借りてくれたんだよ。だが、俺にだって意地とか面子とかあるし、そういうのも必要なんだよーー。

「まあ、いいさ。これから見直される機会はある」

「そうだ。これをプロデューサーさんにも」

 ミルクちゃんに見損なわれている俺が、彼女からの信用を得て『ミルクちゃん。来年はバレンタインくれないかなー』と内心考えていると、何やら紙を手渡される。

「この紙は何? 俺、異世界文字はちょっと……」

「特に読む必要はないですよ。何かあれば助けますという誓約書なので。いまのだけ覚えていれば大丈夫です」

「……誓約書?」

「はい、天使の皆さんからいただきました」

 ミルクちゃんは大変笑顔だが、こわぁーーっ。大丈夫なのかよ。あのえらーい天使たちは。
 確かに、彼らがセクハラしたのが全部悪いんだけど、誓約書って。なんて書いてあるのよこれ?

「参考までに聞くけど。ミルクちゃんは何か頼んだのかな? 助けてって」

「はい。もちろんです! コンビニに無償で出資と、各種優遇を。これからは上からも品物を提供してもらいます。もちろん無償で!」

「も、もし嫌だと言ったら?」

「消します」

 け、消すってどう消すんだろう……。
 存在を? それとも社会的に? どっちにしても怖いんだけど。
 俺が持ちかけた話だけど、ミルクちゃんを侮っていたのかもしれない。彼女は悪魔にもボラれず、天使にも臆さないらしい。

「まあ、ほどほどにね? やりすぎるとお姫様にもバレたりするかもしれないからね」

「そう……ですね。そこまでは考えてませんでした。私はちょっと釘を刺してきますので、プロデューサーさんは姫様のところに行ってくださいね」

「ああ、ほどほどにね」

 あれはダメだ。やんわりと俺からお姫様に話しておこう。そして、お姫様からミルクちゃんに釘を刺してもらわなくては。
 ミルクちゃんはお姫様の言う事なら聞くからね。あの子もお姫様大好きだからね。

 よく分からないが、『天使の誓約書』を手に入れた!


 ※


「おーい、にいちゃん。久しぶりだな!」

「おお、アンチくん。城門の修理ご苦労だったね。途中から様子を見に行けなくて悪かったね」

 えらーい天使を脅しに行ったミルクちゃんと別れ、お姫様の元を目指す俺の前にアンチが現れた!
 いや、元アンチなんだけど、これからも呼びはアンチでいくよ。当人たちも特に何も言わないし。

「使いってのは忙しいんだから仕方ねぇよ。それに、仕事まで紹介してもらっちまって。親方はいい人だしよ」

「そうか、上手くやっているなら何よりだ。他にもアンチ仲間がいるなら、俺かニックさんに相談しろよ? これからは本当に大工は儲かる。何人いてもニックさんも困らないし、俺たちも困らないからな」

「おう!」

 アンチたちも好きでアンチしていたわけではないんだ。本当は普通に生活したいはずなんだ。
 でも、戦うのを仕事にしていたような奴らは、戦いがない以上は仕事もろくない。だから、飲んだくれたりしているしかなかっただけなんだ。

 だけど、これから城下に人が集まれば仕事も増える。今も困ってる人は必ずいるし、仕事を欲する人もいるだろう。そのためのホワイトデーだ。
 最初は大工業だろう。次いで食関係。最後には娯楽といくらでも発展するはずなんだ。
 変わることを望むならば……。

「おう、プロデューサーさんじゃねーか!」

「んっ、アンチの次はニックさんか。城門も庭も見事に直していただきましてありがとうございました」

 アンチに続き、ゴリラ大工のニックさんが現れた!
 お姫様たちがぶっ壊した庭に、ミカが破壊した城門を修理してくださった人……ゴリラの人だ。

「仕事でやったんだ。礼を言われる必要はない。弟子もできたしな」

「一人前になるにはまだまだだろうが、奴らをよろしくお願いします」

 アンチたちをニックさんに紹介したのは俺だからな。大工は何も教えられないから、このくらいのことは言っておかないと。
 ほら、紹介した責任とかあるしね。

「義理堅いな。まあ、任せてくれ。一人前になるまでビシビシ指導してやるさ。実はもう仕事も増えてきてるんだ。これから忙しくなるぜ」

「それは何よりです。しかし、また何かあったら頼まれてくれよ?」

「その辺も抜かりねぇ。オレは兄弟も大工なんだが、こっちに来ないかと誘ったんだ。必要になるだろうからな」

「ほう。つまり多少弟子が多くなっても大丈夫というわけだね。いいことを聞いたよ」

 ゴリラ大工は他にもいたと。覚えとこう。
 重機を必要としないパワーと、大工らしい職人技術。これは大変素晴らしいからね。

「今日は招かれたから来てるが、本当は今日も現場の下見があったんだ。でも、めでたい日だからよ。仕事も大事だがそうじゃないことも大事なんだよな」

「……単にお姫様が好きだからじゃなくて?」

「…………」

 めでたい日だろうと仕事をしている人たちはいる。
 しかし、その人たちに『お姫様が出るよ!』と言えばもれなく全員来ると思う。
 硬派に見えるニックさんも例外ではないと思う。黙ったのが証拠だと思う。

「それは他のヤツには……」

「言わないよ。だいたいそうだと知ってるし」

 すげー、今更だし。
 姫たちがみんなに愛されてるのがいいとこだし。
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