連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

ホワイトデーまで。あと少し。もう少し。ほんのちょっと。

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♢12♢

 天使くんによる天使講座は1時間ほど続いた。これは有意義な時間だったので特に不満はない。
 しかし、それから時間が経っても、待てど暮らせども、ガブリエルさんとお話ししに行ったお姫様は戻ってこない。

「おせぇ……。もう帰っていいかな? 飽きてきたよ」

「ふざけるな。そこにいろと言われていただろうが」

「限度があるだろう。キミもサボってないで仕事しなよ?」

「貴様を見張るのが今の仕事だ」

 ずっと俺を見張る天使くんは、姫が好きな以外はこんな感じだ。真面目すぎて嫌になるね!
 他の警備天使たちは配置に戻ってしまったし、これと2人きりみたいになっている。
 なんか嫌になるね!

「──んっ? なぁ、アレは何だ?」

 つまらない天使くんから顔をそらし、変わりばえのしない天国の門からも視線をそらし、左右に広がる雲的な地面を見たら、なんか変なものを発見してしまった。
 何か雲の塊が動いているように見える。
 気のせいか、その雲はこちらに向かってきているように見える。

「何がだ? 何も異常はないぞ。あれば警報が鳴る」

「あれは上からじゃ分からないぞ。地面が盛り上がってるのが見えるのかも疑問だし。って、やっぱり近寄ってきてるぞ!」

「だから何も……──!?」

 俺がそれを指差したことで天使くんも気づいたらしい。だけど、なんなのかも分からないし、どういう現象なのかも分からない。
 近寄ってくる雲の塊に天使くんが身構え、無力な俺はいつでも逃げられるようにその背後に潜む。
 いざとなったら天使くんを犠牲にしようとかは思ってない。よ?

「ふう──、上手くいったわね」

「「喋った!!」」

「身構えないでよ! アタシよ。アタシ」

 突如喋り出した雲からする声は、ガブリエルと名前を出しただけで逃げ出したヤツ。天使くん始め天使がみんな大好きなヤツ。
 実は俺も少し気になっ……──天使たちの姫であるミカエラさんでした!

「お前、ミカか? その雲は何だ?」

「抜け出し用のカモフラージュよ。勝手に門の外に出てるのがバレたら怒られるもの。ところでルシアは?」

「ガブリエルさんとお話ししにいった。んで、そのまま帰ってこない。ちなみに俺はここにいろと命ぜられ、ウザい見張りまでつけられた。どう思う?」

「レートのことはどうでもいいわ。それよりもルシアよ。練習も無しに説明だけで飛んでいくし。そのうえ天使長とお話しって……大丈夫なのそれ?」

 ミカは俺のことなど、どうでもいいらしい。彼女は案外ひどいよね。可愛いから許すけど。
 それとカモフラージュがガチだね。きっといつも使ってるんだね。

「ミ、ミカエラ様ーーーーーーっ?!」

「おい、驚くから急に叫ぶなよ」

 俺に叫ぶなと言っていた天使くんが今度は叫んだ。
 自分で言ってたことを自分でやってたら世話ないよね。やかましいヤツだ。

「ちょ──、バレるから大声出さないで! レート、口を塞いで!」

「やだよ。そのうち治まるだろうから、すきに叫ばせておけよ」

 ほら、野郎に密着するとかボク無理だから。
 そういうキャラじゃないし、肉体労働するタイプでもないから。ギャーギャーうるさいけど、嫌なものは嫌だから。

零斗れいとさん、お願いします!」

「任せとけ! おいキミ、もう黙りなさい!」

 そう言われてしまったら仕方ない。
 可愛い彼女に頼まれてしまったからには、口でも何でも塞いで黙らせます! 物理攻撃も辞さないつもりです!

「──やめろ、離せ! どうしてミカエラ様がこんなところに? 許可なく門の外へは出てはいけないと、あれほど天使長に言われたではないですか! これは警備隊の責任問題になりますし、何よりバレたらミカエラ様もお叱りを受けます。気付かれないうちに、ただちに中にお戻りを!」

 背中を取ることは簡単だった。だって、俺は天使くんの背後にいたんだから。
 しかし、羽根が邪魔だし力が強い。口を塞ぐどころか振り払われそうだ。天使強い!

「騒ぐな。それがもうバレる原因になると分かんねーのか、クソ天使! カモフラージュがあるんだから、俺たちが騒がなきゃバレないんだよ。少しは考えろよ!」

「この状況がすでに問題だと言っているんだ。ええぃ、離せ! 私が直接中にお連れする! 引っ張るな、まとわりつくな!」

「いてぇ、この野郎……。話の通じないヤツだな。俺は話が通じないヤツが嫌いだ。いや、相手が女子なら許すかもしれない……話の通じない野郎が嫌いだ! 暴力を好まない俺が物理攻撃にうったえるくらいにはな! というわけだ。この羽根をむしられたくなかったら黙れ!」

「黙るのは貴様だ。少しばかりミカエラ様と親しいからと調子に乗りおって。気にくわん! やろうというなら相手になってやる! ミカエラ様の前で無様な姿を晒すがいい!」

 ……日々ヤンキーたちに囲まれ過ごしている俺を、この天使くんは舐めすぎだ。
 関係ないのに巻き込まれることなど日常茶飯事だということを! お姫様に幼馴染に妹に、なんか日常的に暴力を受けているということを! 知らないらしい。

「貴様など恐るるに足らん! その羽根を1枚残らずむしり取ってくれる!」

「きてみろ。たかが人間の分際で。身の程を教えてやる!」

「「死ねやーー!」」

 背後を取っている俺が有利。
 密着していればビームは出せない。
 死ねやと言ってはいるが、ここでは殺せない。つまり簡単にはやられない!

「──アンタたちの方がうるさいわよ! バカなんじゃないの!」

「「えっ!?」」

 雲のカモフラージュからミカが飛び出した。
 口を出すのを我慢していたのか、かなり怒っている。

「もっと静かにやりなさいよ。これじゃあ何の意味もないじゃない。だいたい、何で喧嘩になんのよ! 騒ぐなって言ってんでしょ!」

「いや、キミも騒いでるよ? それにカモフラージュは?」

「姿を出されてしまっては警備に……」

 プンプン怒っているからか、俺たちよりミカはうるさい。着ていたカモフラージュを破壊しているし。
 もう、本人が出てしまっているし。

『何やらずいぶんと楽しそうですね?』

 そう天から聞こえた声に、瞬時にピタリと全員の動きが停止する。騒がしかったのが一瞬で静かになる。

「ヒッ──」

 一番早くミカが反応し、次に俺たちも同じ反応をする。全員からダラダラと冷や汗が出るのに時間はかからなかった。

『男同士で抱き合っていることとか。言い付けと見張りはどうしたのかとか。何故、ミカエラがいるのかとか。気になることを言い始めるとキリがないのですが……とりあえず全員正座なさい!』

「「「はい!!!」」」

 瞬時に正座を実行し、これ以上ガブリエルさんを怒らせないようにする。
 それは本当にマズいと思われるからだ。

『これは少しばかり反省が必要ですね。さて、どうするのがいいのか……』

「この天使たちが悪いんです! ボクは巻き込まれただけです!」

 騒いだのは天使くんだし、止めろと言ったのは天使ちゃん。俺は被害者であり巻き込まれただけである。
 悪くもないのに反省などさせられてたまるか! 悪いなキミたち。

「レート、この裏切り者!」「貴様ーー!」

 ガブリエルさんがどこから見ていたのかは分からないが、タイミング的にミカの辺りからだと思う。となれば、悪いのはやはり天使!
 俺はそもそも天国関係ない一般人だしー。

わたくしの前に嘘は無駄です。そこの映像は全部記録されていますから。 ……貴方は何をしていたんでしょうか? 何故、大人しくしていることが出来ないのでしょうね。それにこれは……写真? はぁ……』

「何だと? カメラの類は無いのに……」

『門の内に下界の物の持ち込みは禁止。厳罰に処されます。その罪は持ち込んだ者より、渡した者の方が重い。まあ、極刑ですね』

「処されるのはちょっと……」

『嫌ですか? なら、3人で罪を割りましょう。それなら、それぞれ罰せられるより罪は軽い。そうですね、今なら反省文で手を打ちますがどうしますか?』

「はい、反省文書きます!」

 反省文は内容を考える必要はなかったが、『ごめんなさい』と無限に書かせられた。
 お説教を受けながらノート1冊を1人ずつだ。
 

 ※


「何をやってんのよ。あんたたちは……」

 別室にて反省文を書かされた俺たちの前に、見受け人としてお姫様が現れた。
 一番早く反省文を書き上げた天使くんはすでに上司に連れられて行き、俺たち2人は今しがた反省文が終わったところだ。

「すいません。反省しています。ガブリエルさんは?」

「……知らないわ。終わったなら帰るわよ」

「おう、行くぞ。ミカ」

「何でミカも行くのよ。ここが住まいでしょう」

 そうだった。ミカは天国にお住まいだった。
 この警備隊の詰所からも、あの部屋は遠くはないのだろう。ちなみにこの詰所は門の中にある。
 門の内には入っていない!

「嫌よー、アタシも一緒に帰る。絶対に天使長はまた叱りにくるわ! 助けてよ。一緒にいてよー」

「と、言っておられますが?」

「じゃあ、ミカの部屋に行きましょう。あの人も部屋までは来ないでしょうから。それで、あそこから帰りましょう」

 ……そういえば俺が乗ってきたゴンドラは破壊されていたな。
 どっちみち俺はミカの部屋まで行くしかなかったのでは? というか、お姫様は飛んで帰るつもりだったのか?

「ルシアーー」

「はいはい、泣かなくていいから。それに、何も追いかけてくることなかったのよ?」

「だってー、真正面から突撃すれば天使長とは絶対にぶつかるもの。あれよ? あんななのよ?」

「あんたたちが悪いんじゃなくて?」

 お姫様の最もな指摘に2人とも黙ったのは言うまでもない。
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