連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

天使のホワイトデー ⑩

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 あいこ記録を大幅に更新し、先行後攻じゃんけんはミカエラ選手が勝利した。
 お姫様の計略により、気迫はありながらもクールに、調子に乗ることもなく闘いに臨んでいるミカ。
 そしてこれが、お姫様が勝ちたいミカの姿なんだろう。

 天使ちゃんは調子に乗ったり、勢いで行動したり、必要以上に空回ったりしなければ強い。
 それを体現しているのがアミカちゃんモードなんだから、もっと普段からアミカちゃんに寄ればいいんじゃないかと思うのだが、ライバルであるお姫様の前ではそうはいかないんだろう。

 これはお姫様も同様にだ。
 お姫様もミカの前だと子供っぽいというか、対抗意識が強いからさ。勝ち負けがかかると余計にね。

「勝って証明するわ。アタシの方が強いのだと!」

 しかし、今のはいらないと思う。このデュエルより、もうドンパチやる戦争はないのだというメッセージの方が大事なんだから。
 どうせなら気の利いた台詞を言ってほしい。

「勝つのはあたしよ。負け越すなんてあり得ないわ!」

 だが、姫たちには目先の勝利の方が大事なようだ。互いに勝ちを譲るという気持ちも存在しないらしい。

「「──デュエル!!」」

 3戦目も本気バトルだね。
 これが天使と悪魔の最終決戦です!


 ※


 初戦の再現のように1ターン目から攻めるミカ。
 それを凌ぎ、中盤から終盤にかけて逆転する算段のお姫様。3戦目にして、互いのデッキの持ち味が生きる展開でゲームは進んでいる。

「間に合ったーーーーっ!」

 黙って見守り、要所要所で盛り上がるのを覚えた観客たち。その黙って見守る静かな時間に、下から大声が響き渡った。
 声の主は見たことある中学の制服を着て、手には卒業証書の筒を持っている妹だった。
 一愛いちかはよほど急いで来たのか息を切らしている。

「アマテラス。あいつをここに連れてきてくれ」

 一愛が今いるのは城の庭。俺たちがいる舞台までは、光の階段を100段は登らないといけない。
 すでに息を切らしている状態で、それは可愛そうなのでアマテラスを使い、ビットで足場を作ってここまで連れてきてやろう。俺、優しい!

『……あの女は誰? ご主人様、知ってる人? 制服で現れるなんて、あざとい女……』

 いつになく不満そうなアマテラス。
 なにやら、またおかしな勘違いをしているらしい。

「──あれは妹だ!」

『……妹? アマテラス以外にそんなのいるの?』

「お前のキャラはどんな設定なんだよ! お前、妹設定なのにご主人様はおかしいだろ!」

『世界には、ご主人様と呼ばせているお兄ちゃんもいるんだよ。ご主人様のように』

 いるわけねー、そんなヤツがいたら捕まるわ。
 そして死刑よ、死刑。だいたい、実の妹にどうしたら『ご主人様』なんて呼ばれんの?
 こちとら妹から『お兄ちゃん』ってさえ呼ばれたことないんだわ! はっはっは──……今、お兄ちゃんって言われた? ひょっとすると人生初だったんじゃないか……。

「──とにかく! 連れてきてくれ」

『はーい。うっかり落っことしたらごめんなさい!』

「そんなことしやがったら、宇宙まで行ってアマテラス本体を破壊するからな!」

『むーーっ! 妹とやらがそんなに大事なんだね! アマテラスより! こんなに有能なアマテラスより──』

 ギャーギャー言いながらも、言われたことはやるらしい。素早く離れていっているからよくは聞こえないが、『実妹など恐るるに足らず! 義理のとか。妹キャラの方が強い!』などなど言ってる。
 あんな発言をするアマテラスには絶対に言わないが、『お兄ちゃん』呼びはありかもしれない。
 これは一愛にも、お姫様にも、ミカにもナイショだぞ?

『ほら、連れてきたよ。ほめて!』

 という間にアマテラスは一愛を乗せて戻ってきた。
 なんというか、かまってちゃんの扱いが少し分かったかもしれない。
 余計なことは言うが迅速に行動していた。つまり──

『──ほめて!』

「よ、よくやった。いつもこれで頼む」

『むふーーっ。どう、アマテラス褒められたけど!』

 謎の対抗意識を妹へと向けるアマテラス。
 そのアマテラスに、わけもわからぬまま連れてこられた一愛。
 その一愛は不思議そうにアマテラスの声が出ているビットを凝視している。

「れーと、なにこの子?! スッゲーー! ロボットアニメみたい。もう1回やって! もう1回空へ!」

 そう言ってしまう気持ちは分からなくはない。
 ロボットアニメやSFみたいに飛び回れるのはスゴい。舞空術とか魔法とか超能力とかではなく、機械なもので飛ぶのがスゴいんだ。
 それこそガン◯ムのように!

『なんだと? 今のをスルーしてもう1回だと?』

「じゃあ2回!」

『増えた!? そういう意味じゃないんだけど……──って、掴まないで! 直接は乗れないから、乗ろうとしないで!』

 小型ドローンくらいの大きさを捕まえて乗ろうとする一愛。そのままでは撃墜してしまうから、イヤイヤと暴れるアマテラス。
 まったく何をやってんだコイツらは。お姫様たちなど真剣そのものだと言うのに……んっ?

「──って目を離してる間に決着がつきそうなんだけど?! 本当に何をやってんだ!」

「そうだった!」『忘れてた!』

 目を離していた間に、二クスの出す幻が大量に現れている。この数は闘いの終わりが近いということを表している。
 そして、幻のどれもが人型の天使。悪魔が群れないのに対して天使は群れる。それにしても数が多いな!

「おぉー、大迫力。これはぱない!」

「一愛、これはどっちが勝つ?」

「……れーとは、どっちに勝ってほしいの?」

 審判という立場上、どちらかをヒイキするのはよろしくない。
 しかし、俺がこれを企画したのは、お姫様を負けたままにしたくなかったからだ。
 最初は引き分け。次は負け。それで終わりにしてはいけないと、俺が勝手に思ったからだ。

「俺はお姫様に勝ってほしい」

「正直でよろしい! 最近、ミカちゃんに目移りしているようだから心配していたのだが、気にしすぎだったようだ。勝敗はルシアちゃんの引きにかかっている。1枚しかないカードを引ければルシアちゃんの勝ち。引けないとミカちゃんの勝ち」

「運ゲーか……」

 お姫様のデッキにある、大量の天使を一撃で全滅させる切り札。そいつを引くかどうかで勝敗が決まるのを、闘っている2人も分かっているのだろう。
 お姫様の手元に視線が集まっている。

 この勝負どころでものをいうのは運。
 何故かというと、ここが異世界だろうと手が光ったり、引きたいカードを引けたりはしないからだ。

「運ゲーなどではない。これこそがカードゲームではないか! この局面でのドローにこそ見るべきものがある!」

『妹のくせにいいことを言う』

 ガブリエルさんに言われた、『足りないもの』それがこういうものなんだろうか?
 俺がお姫様の立場だったら絶対に引けない。
 確率とか運とかではなく、精神論の類の話になる。

「れーとは、いつも本当に勝ちたいとは思ってなかったよね。確率とか理論とかを重要視するやつだった。だから、肝心なところで勝てないんだよ?」

 他に何がある? 必要なカードで揃えて、勝ちの可能性を1パーセントでも高くする。普通だろう?
 だが、そんな俺は妹にまるっきり勝てなかったよな……。

「肝心なところも何も俺は、一愛に勝てないからやめたんだけど?」

「それは最終的な話でしょ。最初に勝てなかったのは一愛だよ。ずーーっと勝てなくて、ムカついてムカついて大変だった。一切、妹に手を抜かない外道だし。だから頑張って、考えて考えて、クソ現実主義野郎をブチのめすスタイルを突き詰めた!」

 ……いい話をするのかと思ったら違った。いかにして一愛のクソゲスデッキが完成したのかの話だった。
 トドメを刺されたのも俺なら、生み出したのも俺だったという話だった。知りたくなかった。

「おかげで今があるから今は感謝しているが、当時はぶっころしたくて仕方なかった。勝てないのはカード回りが悪いから。相性が悪いからとか言うし。マキちゃんが止めなかったらヤっていたかもしれない」
 
 マキちゃん。ありがとうございます。
 妹にヤられるのを防いでくれて。
 今度会ったらお礼を伝えよう。

「……まあ、見ていろ。れーとはミカちゃんと同じタイプ。努力せずに出来るし、そのくせすぐ諦めるやつだ。そのうえ鈍感で、自分が負けるのは相手が努力しているからだと気づきもしない。お前たちは本当に自分勝手なやつだ。対してルシアちゃんは努力するやつだ。自分を信じられるやつだ」

『やるな、妹とやら』

「ルシアちゃんは勝つ!」


 ※


「ルシア、早く引きなさいよ」

「引くわよ。けど、引いた瞬間に勝ち負けが決まるというのは初めてね」

「そういえば……そうね。初めてね」

「今まで何回こうやって勝負してきたか分からないけど、ここに来て運で勝ち負けが決まるなんてね。ゲームっていうのは不思議ね」

「それでも、勝ちは勝ちだし負けは負けよ」

「そうね。勝ちは勝ちよね!」

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