連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
81 / 101
天使のホワイトデー 後編

ホワイトデーの終わり ②

しおりを挟む
 倒れたご主人様と同じく倒れた二クスさんを、片付けの邪魔だという理由から端の方に置き、全体で片付けが行われている。
 お医者さんに過労と判断された2人は、『寝せとけ』と言われ、特に治療とかもされず放置されている。つついてもピクリともしない。

 誰かベッドに連れて行ってあげなよ。とは思う。だが、アマテラスがそれを実行したりはしない。
 何故なら、そんな命令は受けてないからである。

 何より。かく言うアマテラスも、マスターの言いつけで片付けに参加させられているのだ。
 早く帰りたいのに……。だ。

『アマテラス。最後までちゃんとやるんですよ? わたくしは帰りますので』

『マスターだけズルい。アマテラスも帰りたい!』

『アナタがろくに手を貸さないから、彼は倒れたんですよ? それでそのまま帰ってくるなど論外。片付けだけでも、きちんと手伝ってから帰ってきなさい』

 と、マスターは自分だけ帰られた。ズルい。
 マスターの言いつけを無視して黙って帰る選択肢もあるが、それがバレた場合……考えたくないから手伝って帰る。

『不満そうですね』

『──帰ったフリ!? ドキッとするからやめて!』

『フリではないです。一応、辺りの確認をしてきただけです。アナタが進んでやらないから。今日は念のため控えていたのですが、予想外にミカエルがきちんとやったので私は出番なしです。あるかと思っていた妨害等の事態も起きませんでしたし。ただ、観客として見ているだけで済みました』

 結局、帰ったフリをしてアマテラスがちゃんと手伝うのかを見ていただけだと思う。
 でも、良かったー。帰らなくて。

『……それにアレとは違い、あの子は勘がいいですから……。私が残ったところで、姿どころが声すら出しにくいのです。早々に退散するにかぎります』

『誰のこと?』

『さて、誰でしょうね。では本当に帰りますので。そうだ、最後にいいことを教えてあげましょう。アナタが頑張れば、それだけ早く片付けは終わりますよ?』

 マスターの発言はアマテラス内会議で議論するとして……そうだったのか。
 アマテラスが頑張れば、その分早く帰れるのか!

『ふふっ、1つ利口になりましたね』

 アマテラスはこれまで、いかにして頑張らないかを考えていたのだが、それは逆だったのだ。
 頑張らないと時間がかかり早く帰れない。だけど、頑張ると時間がかからず早く帰れる!
 つまり、自由な時間が増える!

 なんたる真理。流石はマスター。流石は大天使だ。これはアマテラス内会議でみんなにも教えなくては。

『より効率のいい片付けプランを作成。人員の配置、アマテラスの担当箇所を確認。作成したプランをご主人様に提案……ご主人様は気絶中だった。お姉様! お姉様に提案。即実行』
 
 マスターが言ったように、アマテラスが頑張ったらとても早く終わった。自由時間確保!
 お姉様にも褒められた! いいことだらけだった!

『お姉様。アマテラス、帰るね!』

「そう。またね」

『──うん、またね! ご主人様にはよろしく言わなくていいや。もう二度と呼ばないでって伝えて』

 真理は得たがそれはそれ。いかに真理だろうと、そもそもがなければ真理もない。
 余計なことをやらされなければ、真理の出番もないのだ。

 ご主人様は嫌いではないが、あれやれこれやれは好きではない。警備だけで大変なんだから、他はできるだけ何もしたくない。
 ──というわけで帰ろう! 帰ってダラダラしよう!


 ※


「ルシア、ちょっと……」

 柱の陰からミカエラ嬢がお姉様を呼ぶ。
 その様子はあからさまに不自然。
 告った。とされる先ほどと酷似している。

「なに? コソコソしないで普通に出てきたら?」

 帰ろうかと思ったが、これはイベントの予感。
 記録しよう。バレないように。
 後でご主人様が見れるように。

「あの、これ……渡そうと思って……」

 もじもじして近づき、背中に隠すものをお姉様に突き出すミカエラ嬢。これは俗に可愛いというのだろう。
 普通ならあざといと断ずるところだが、ミカエラ嬢はナチュラルにやっているから違和感がない。ズルい。

 ご主人様が今のをやられた場合、容易に勘違いすると推測される。そのくらいの威力があると思われる。
 ミカエラ嬢がアホで良かった。故意にやってのけるようだったら大変だった。

「ありがとう……」

 お姉様もミカエラ嬢の様子の違いに気づいている。
 何か小さな包みを受け取ったはいいが、『これは何だ?』と考えているに違いない。

「その、ホワイトデーのお返し。ルイに手伝ってもらってだけど作ったの。美味しいと思う」

 ルイで人名検索……該当人物あり。
 ご主人様の幼馴染。幼馴染だと?
 少しばかり性格が男勝りだが、他は高水準。
 お菓子作り、ぬいぐるみ集めと乙女な一面もある。
 
 ……はっ? と言ってはいけないんだろうか。
 いろいろと気になる要素があるのに、ご主人様からはスペック以上の情報が入ってない。意識的にガードされているのか、もうそんな次元ではないのか。
 どちらにせよ要注意人物であると認識。記録再開。

「つまり、これを踏み付けてグチャグチャにする権利が、あたしにはあるということよね?」

「……えっ……」

 ──お姉様?! 何故、そんな暴挙に?! いくらなんでもそれはない! と、止めないと!
 人として絶対にやってはいけないことだと思う。

「うん。ルシアがそうしたいなら……」

 ──ミカエラ嬢!? 貴女も何を言っているのか!
 もしや、そうされるのが目的? でも、何のために……。そういう趣味の人。変態。

「……冗談よ。ルイが関わっているんだもの間違ってもそんなことできないわよ。片付けに動いたらお腹が空いたわね。おやつもまだだし。ミカも一緒に食べましょう」

 ほっ……。そして、──お姉様優しい!

「うん!」

 そして、──ミカエラ嬢可愛い!

 これはなんというか、勝手に配信してしまおう。
 無断アップロードと言われないように、ご主人様の許可を得ていますと。
 これでよし! アマテラス、いいことした!


 ※


 ついでだからアマテラスがお送りします。
 ホワイトデーの映像を見ての、とある場所、とある人物の反応になります。

 この一切はマスターはおろか、ご主人様も知らない事になります。アマテラスも許可が出ないので、誰にもお伝えすることは出来ません。
 
「──様、これを!」

 音声に乱れがあるわけではなく、ネタバレとなる部分を意図的に隠しております。ご理解ください。

「騒々しい。埃が舞う。走るな」

「申し訳ありません。ですが、これを観てください!」

「それは……私が時間を割くだけの価値があることなんだな? 私の一秒は貴様の思っているより価値があるぞ。もう一度聞く。それは私が時間を割くだけの価値があるんだな? 無ければ殺すぞ」

 キーボードから手を離すことなく、顔を向けることもなく口だけで物騒なことを言う……いう……。

「……は、はい。是非とも直接観ていただきたく」

 まあ、物騒なこと言っていますが、本心は単にめんどくさいだけだと思う。
 気に入らなかったら本当にやるとも思いますけど。

「ちっ──、貸せ」

「今日の映像のようです。これでは我々の維持してきたバランスが崩壊します! ルシア様の成長は喜ばしいことではありますし、天使を参加させている点も評価に値しますが、それをプラスとしても──」

 その後もダラダラと喋り続ける男の言葉に耳を貸すことなく……なんて表現しよう……女は映像をジッと観ている。

「黙れ。何処かでやる必要があったことを誰かが勝手にやってくれたんだ。感謝しようじゃないか。天使を呼び出す手間も、厄介な事柄も全て引き受けてな」

 お姉様たちの終戦の宣言になったところで、観る価値無しと判断したのか映像を止め、端末を男に投げつける。

「──っ! しかし、」

「命拾いしたな。貴様の言ったことだけだったら死んでたぞ。その小僧に感謝しろ。さて、どうなっている? そんなふうに作った筈はない。なら、どうしてアマテラスを使える? 誰がどう入れ知恵しているのかも調査がいるか……」

「それは上に戻られると?」

「馬鹿を言え。私は忙しい。その程度の些事など他の奴にやらせるさ。その小僧について情報を集めろ」

「放置されるつもりですか?」

「そんなことも言わんと分からんのか、馬鹿が。上手くいっている間はやらせておけ。しくじった時は首をとる。それでいいではないか。利益は最大になったところで回収した方が効率がいい。話は終わりだ。無駄な時間を使った」

 ──記録を完全に消去します。以上です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...