連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

寝て起きてもホワイトデー! ⑤

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 観光物産センターの近くには観光遊覧船というのがある。
 何度か乗っている俺に言わせると、『ただ船に乗って、少し沖まで出て戻ってくるだけ』だが、実際には決まったルートを通るわけで、初めての人などは本当に遊覧という名前通りに楽しめるようだ。

「──本当に海の上だった!」

 このように、『海の上とか嘘だ』と仰っておられたルシアさんも、いざ船に乗り、それが本当に動き出せばこんな反応をする。
 とても楽しそうです。しかしだね……。

「──寒っ! 寒いよー、中に戻ろうよー。客席で座ってようよ。それで十分に楽しめるよ」

「い、や! 中にいるだけなんてもったいない。もうしばらくはここにいるから!」

 この観光遊覧船には1階、2階の中である客席部分と、後方デッキという外の部分が存在する。
 初めは黙って席に座っていたルシアさんは、外に出れると知った途端後方のデッキに行くと言い出し、寒いからやめようと言ったのも聞かずに、こうして外にいるんです。
 誰かやめさせてください……。

「さっきまでいたところが、もうあんなに遠くに」

 さ、寒い……。
 この時期の海の上ってこんなに寒いのか。
 こんな時期に乗ったのは初めてだし、知らなかった。なんとか気を引いて中に連れていないと、──寒い。

「売店もあったよ。限定のお土産を見に行こうよ!」

「あとでね」

「2階からの眺めも良さそうだったよ。行こうよ!」

「あとでね」

 全然ダメだ……。完全に外に夢中だ。
 ルシアさんは、お姫様らしく優雅にクルージングとか出来ないんだ。子供。いや、男の子みたいだ。

「……別に1人でいいわよ? 寒いなら中にいたらいいじゃない。海に落っこちたりはしないわ」

「そんなわけにいくか! デー……トである以上はな。一緒に行動してこそだし、2人できてんのに1人で何をやってんだ? ってなるし」

「……デートとは?」

 ──なにぃ?! そんな直球で聞いてくるなんて。
 予想外だ。目的地名でないことはバレているし。どうしたら……──はっ、そうだ!

「デートとは、日時や場所を決めて男女が会うこと」

 こんな時のウィ◯ペディアだ。『とは』って入れさえすれば一発検索よ。
 でもって当たり障りのない回答があった!

「具体的には? それだけじゃないでしょう?」

 ちっ──、これで納得はしないか。
 ここで誤魔化すのも変だ。ウィ◯ペディア先生の真の力を発揮する必要があるようだ。

「食事、ショッピング、観光などを楽しむ。そういった内容であることが多いが、これらの行為そのものより、それを通じて互いの感情を深めたり、愛情を確認することを主目的とする。恋愛目的の交際という意味以外にも、単純に異性同性家族問わず遊びに行くことをデートと表現する場合もある」

 いいぞ。思った通り、無駄な部分が多い。
 直接的な表現がされてない辺りも最高だ。
 デートの意味すらあやふやなルシアさんにはこれで十分だろう。あとは適当に相槌をうって煙に巻く。

「なるほど、今のあたしたちに当てはまるわね。でもって、単なる遊びではなく『恋愛目的』というところを、レイトくんは意識しているというわけね」

「そう、そうなんだ」

「寒そうだし。何よりデートだし。手くらい繋ぎましょうか? はい、どーぞ」

「そりゃあ出来ることなら……──何だと!?」

 ルシアさんは俺に向けて手を差し出してきた。
 特に何もしていないのに手繋ぎイベントが発生したようだ。
 いや、そんなイベントが発生したら、手も心も暖かくなる。じゃなくて! どういうつもりでこんなことを……。

「繋がないの? 3、2、1──」

「いやー、寒いからな。寒いから! 仕方ないなぁ!」

 俺は目の前のチャンスを逃したりしない男!
 理由もなにも分からずとも、デートに来て女の子と手を繋ぐチャンスが訪れたなら迷わず手を握る。
 自分から行かずとも来てくれるとか、ルシアさんは天使だったのかもしれない。

「素直に喜べばいいのに。あったかい?」

「うん、とても。まるで……手袋のような感触……」

「うん、だって手袋だもの」

「…………。」

 手袋の上から手を繋いだのは、手を繋いだにカウントされるんでしょうか? されない? されない……。

「直前まで素手だったじゃないっすか。なんでこんなことすんの? イジメっすか?」

「なに、本当に手を繋ぎたいの? いいわよ。はい」

 今度こそ手袋を外して手を出してくるルシアさん。
 どんな思惑があるのか知らないが、チャンスは逃がさない!

「どうしたの、早く握りなさいよ。手が冷たくなるわ」

「ちょっと待って。いざとなると……ちょっと待って」

「はい、終わり。ヘタれた自分を責めなさい。外は満喫したから次は上に行くわよ」

 あー、チャンスが……。
 ヘタれたばかりにチャンスが……。
 だが、勢いでいった1回目のようにはいけない!

「──いくわよ!」

 そう言ったルシアさんは、俺の手を握って引っ張って2階に歩いていった。
 ヘタれた俺には中々の刺激でした。不覚にもドキドキしてしまいました。
 ルシアさんは天使ではなく小悪魔かもしれないと思いました。


 ※


 約1時間の遊覧船の旅を終え、約1時間ぶりに地に足がついた。2人とも船に酔うこともなく無事に海の上を満喫できた。
 そんで地上に戻ってきてからはお土産屋さんを巡り、それぞれお土産を買うべき人たちに買うものを探したりしていた。

「お土産は形に残るものと残らないものではどっちがいいの?」

 お土産をぐるっと見て回り、入り口付近に戻ってきたところでルシアさんから質問がきた。

「そうだな、例えばミカとか来たことがない人には、形に残るものがいいんじゃないか。逆に地元で何度も来たことがあるようなヤツ。俺は一愛いちかには形に残らないもの。つまり食べ物にしようと思う。キーホルダーなんか買って帰っても文句言われそうだし」

「なるほど」

 俺のお土産論はこんな感じだ。まあ、これは今日に限った話かもしれないけどな。
 遠くに行ったりした場合はまた違うだろう?
 名産とか、人気とか、いろいろと考える要素があるし。

 しかし、今日お土産を買うのは一愛の分だけだ。
 わざわざ、地元の水族館に行った理由なんぞ詮索される理由を作る必要はない!
 わけをしならないヤツにお土産なんて買ってったら『俺、デートに行ってきました!』って言ってるようなもんだしね!

「帰りに来てもいいんだから、無理に今買うことないぞ」

「そうね。水族館にもお土産屋さんはあるって話だし、そっちも見たいものね」

「では、そろそろ水族館に行きますか」

 流石に人が増えてきた。観光だけでなく、地元民にとっては魚介類を買う場所でもあるからな。
 水族館もとっくに開いてるし、いい時間だろう。

「そうしましょう。じゃあ、これだけ買ってくるから待ってて」

 気に入ったらしい観光物産センターのマスコットのキーホルダーを買うらしい。
 テレビでもよく見るヤツなので俺はまったくいらない。何の興味もない。
 しかし、観光の人とかは買うだろう。マスコットキャラだし。

「おう、いってらー」

 ……待てよ。見送ってから気づいたが、ルシアさんは現金を持っているのか?
 ここまで全部払いは俺だ。お土産と聞いてあれだったけど、あいつ金はあるのか?

「おい、お土産を買う金はあるのか!」

「失礼ね。セバスがお小遣いをくれたからあるわよ!」

「……OKいってくれ。おれはセバスにハナシがある」

 またかー、またなのかー。何で遊びに行くのに、あの執事たちは諭吉さんを100人も与えるのか。
 ミカよりはマシだが、どちらにせよお小遣いの額ではない。金の出所も不明だが、なんでもありの悪魔だからそこはいい。問題は額だよ。あっ、出た。

「おい、執事! 頭おかしいんじゃねーのか!」
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