連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

寝て起きてもホワイトデー! ④

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♢21♢

 俺の住んでいるところは太平洋側にあり、クソ長い海岸線を有する。県全域で60キロくらいあるらしいよ。
 調べてみて『スッゲー』とは思ったが、60キロという数字に実感わかないから『スッゲー』と本当に思っただけだ。

 そんなふうに海が近いということは、海水浴場や港も無数にあり、何を隠そう我が家からチャリで10分くらいあれば漁港に着く。

 昔、あそこには釣りしによく行ったな……。
 最近はどうなのか? 最近はまったくよ。
 いっときハマっただけ。ともいうな。

 そんな漁港だけでなく、砂浜までも徒歩で10分あればいけるはずだ。まあ、砂浜から水までは距離がある気もするが、だいたい10分くらいとする。
 俺が実際に試したわけではないので正確ではないかもしれない。海が近いとだけ理解し、覚えてくれればいいんだ。

 今日はそんな海に恵まれた地域。その中で最大の漁港近くの水族館にお姫様とやって来た。
 ホワイトデーのお返しデー……トというわけだ。
 ミカから大量に貰ったフォトスタンドに入れる写真も撮れるし、ルシアさん待望の海もある。

 もちろんメインは水族館だが、他にも見るべきとこや行くべきとこが近くにはある。
 まずはそこを見て回ってから、メインの水族館へと行こうと考えている。
 んっ、そろそろ移動バスの時間も終わりを迎えるようだ。降りる用意をしないとだ。


 ※


「思ったよりバスに乗ってる時間は短かったな。小学校の遠足で来て以来だが、当時はこんなに道中が短いとは思わなかった。やっぱり団体行動だといちいち点呼取ったりして、それだけで時間掛かるからかな?」

「……」

 俺たちが乗ってきたシャトルバスは水族館の目の前のバス停で止まった。
 ここがあのバスの終点であり、今度は折り返し駅に向かって走るんだと思う。それでまた駅から水族館までを走るのだろう。

「で、目の前のここが本日メインの水族館になる。パンフレットによると、水槽を見て歩いて2時間くらい。ふれあいコーナー等を含めると、更に2時間くらいは楽しめるようだ。しかし、まずは……」

「……」

「ルシアさん? おーい、ルシアさんや?」

 バスから降りる少し前からお姫様に返事がない。反応から察するに、俺の話も聞こえていないらしい。
 かといって水族館を見てもいない。その後ろを見ている。ずーーっと広がる海を見ている。

「本当に海だ……」

 海が見えるぞ、とバスの中で教えてから徐々に近づいていた海がそこにあるんだ。
 海が近い土地で生まれ育った俺にはまったく気持ちを共感できないのだが、城で育ったお姫様には違うのだろう。

「海だな。言ったろう、海はすぐそこだと。ここらは整備されたとこだから砂浜もないんで、海には入れないけどな。まあ、季節が冬だし海になんて入れないんだけどね」

「海よ、本当に水ばっか! もっと近くで見たいわ!」

「ちょ──、俺の話は? 無視っすか、ねぇ?!」

 いつか見たいと言っていた海が目の前にあり、ルシアさんのテンションは最大限に上がっているようだ。
 俺の話など聞こえていないように海に向かって走り出す。

 越えられない柵とかは特にないので堤防ギリギリまではいけるし、あの落下防止用なのかもしれないけど、意味があるんだか分からない鎖は簡単に乗り越えられる。だが、いくらなんでも飛び込んだりは……しないよね?

「──おい、勢いのままに飛び込んだりするなよ! 海には入れないんだからな! 聞いてる、聞こえてますか!?」

 ──まさかとは思うが本当に!?

「すごいわ。こんな景色が見れるなんて!」

 なんて、ルシアさんに限ってそんなことはなく落下防止の鎖が繋がっているところで止まる。
 良かった……。で、俺は? かなり勢いついてて急には止まれない感じなんだけど!?

「──自分だけ急に止まんな!」

 あぶねー、俺が海に落下するところだった……。
 3月の海に落ちるとか死ぬわ! フリとかじゃないからな! マジで死ぬからな!
 何よりデートでそれはカッコ悪すぎる。

「何をやってんのよ……」

「誰のせいだと……まあいい。手間も省けた。このままこっちだ」

 最初から水族館ではなくこっちに行く予定だったのだから、手間が省けたと思おう。
 ダッシュする必要は全然なかったけどね!

「どこ行くのよ。建物は向こうよ? 水族館が見えないの?」

 本当に俺の話は聞こえていなかったようだ。
 バスの中でもやんわりと説明したんだがな!
 まあ、はしゃいでいるからだと大目に見よう。
 
「水族館はもちろん見えている。しかし、あそこは一度入ると入りっぱなしになってしまうんだ。その前に俺の腹ごしらえと、もっと近くで海を見よう」

「それは海の中に入れるということ?」

「違う。残念ながらダイビングなんかできねーよ。そんなことするようなところでもないしな。とにかくこっちだ!」

 まずは水族館ではなく少し離れたところにある、観光物産センターに向かう。
 お土産からレストランまでなんでもある、とてもいいところだ。
 以前は、『はよ、水族館』って思っていたが俺も歳をとったな……。今はこっちも気になる。

 漁港がすぐそこということは、ここらの海のものを使った食べ物は美味しいと決まっている。
 レストランはまだ開いてないが、それも問題ない。別に朝から優雅にレストランで食べたりはしない。

「イカ焼き1つ。あとそっちのやつも1つ」

 このように物産センター部分はすでに営業しているので、食べ物がないわけがない!
 しかも、新鮮な魚介類を使用していてとても美味しそうです!
 出来立てだしね。ふふふ、羨ましかろう?

「ソフトクリーム……」

「んっ、ソフトクリーム食べるか? すいません。ソフトクリームも1つで!」

 移動中のバスでのお菓子で小腹が満たされているルシアさんは、『何か食うか?』と聞いても何もいらないと言っていたんだが、甘いものは別らしい。
 この時期に外でソフトクリームもどうかと思うが、ルシアさんだしね。美味しそうではあるし。

「えっ、食べるとは言ってな──」

「──いいからお食べよ。1人だけ食べるのも申し訳ないし。席取っといて。ガラガラだけど」

 本日3月14日は、俺たち受験によって休みな在校生が休みなだけで、世間は普通に平日だ。
 それに観光客の皆さんにもまだ早い時間なようで、フードコートはガラガラ。好きなところに座れる。

 思い出すな。いつだったか家族で来た時、フードコートに座るところがなくて、買うだけ買って近くの石段のところで食べた思い出があるな。懐かしい。
 まさかそこに女の子と2人で来るとは、あの時は思いもしなかった。良かったな、俺。

「はい、おまたせ。ソフトクリームだよ」

 右手にソフトクリーム。左手にイカ焼きと、なんか美味しそうだったやつを持ち、ルシアさんが待っている席にきた。
 これが何かと聞かれても『美味しそうだったやつ』としか言えない。美味しそうだったんだ。

「あ、ありがとう」

「意外と寒くはないな。身を震わせながら食べるのも嫌だけどな」

 海の見える位置に、つまり風がもろに当たる端の方の席を取ったルシアさんだが、思ったほど寒くはない。
 バッチリ冬着だし、なんならカイロも持っているが、ちょうどいいくらいの寒さだと表現しよう。

「ねぇ、お土産も見たいんだけどいい?」

 先ほどから気になっているらしい、フードコートの近くのお土産屋さんの数々。
 行きたいと思うのは当たり前だ。俺も行きたい。
 お土産を水族館の前に見ていくのもありだろう。買ったとしてもコインロッカーはあるだろうし。

「もちろんいいが、これを食べたら海の上に行くんでその後でね」

「──はっ? も、もう1回言って」

「もちろんいいが、これを食べたら海の上に行くんでその後でね」

「海の上? ……嘘よね?」

 そう、間違いなく海の上である。
 もっと近くで海をという表現は、海の上を表していたのだ。続く!
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